相続において不動産を売却するメリット・デメリット

不動産を相続した場合、売却するかそのまま所有し続けるか、悩まれる相続人の方は多いと思います。特に幼少期からずっと住んでいた自宅(ご実家)を手放すことには心理的な躊躇を覚えることもあるでしょう。不動産の売却は人生の中でも大きな決断の1つですから、悩まれるのは当然のことです。

ここでは、相続において不動産を売却する場合に考えられる主なメリットとデメリットについてご紹介します。ご判断の参考にしていただければと思います。

1 相続した不動産を売却するメリット

(1)バランスのよい遺産分割が可能になる

相続した不動産を売却することにより現金化されるので、それぞれの相続人がバランスよく公平に遺産を相続することができます。これが相続不動産を売却する最大のメリットといえます。

不動産は価格が高いため、売却せずに不動産のまま相続人の誰かひとりが相続すると、全体的にバランスの良い遺産分割をするのがなかなか大変です。相続財産に不動産相当額以上の十分な金融資産(預貯金)があればよいのですが、逆に金融資産の遺産が少ない場合には特に問題になります。不動産を相続した人だけが得をすることになりかねないからです。

また、たとえ金融資産が十分にあったとしても、不動産の評価方法で揉めるケースもあります(路線価にするのか、実勢価格にするのか、固定資産税評価額にするのかで、不動産の評価額は変わってきます)。

こうした場合に比べれば、現金であれば1円単位で柔軟に分けることができますから、不動産を売却し現金化することでバランスの良い相続が実現できることがお分かりいただけると思います。

なお、それなら不動産を共有名義にすればいいのではないか?とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的にはおすすめしません。詳細を説明すると長くなるのでここでは省きますが、共有状態が長く続くと揉めるケースが多いためです。

(2)3年10ヶ月以内の売却で譲渡所得税が安くなる特例が使える

相続税が課税された場合の話ですが、相続した不動産を3年10ヶ月以内に売却するなど一定の要件を満たした場合、譲渡所得税の計算にあたって、相続税を取得費に加算することができます。簡単に言うと、相続税を払った分、譲渡所得税が安くなるメリットがあるということです。

これを相続財産を譲渡した場合の取得費の特例といいますが、この特例を受けることができる要件は次のとおりです。

【取得費加算の特例を受ける要件】

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

(3)維持管理コストがかからなくなる

不動産を所有していると、固定資産税や管理費などの維持管理コストがかかります。これは毎年、毎月のことなので、長期間所有しているとその額はばかになりません。一方、不動産を売却すれば、こうした維持管理コストを払わなくてよくなり、経済的なメリットもあると言えます。

十分な維持管理がされていない不動産は、あっという間に劣化していきます。それはいざ売却しようとした場合の価格も減少することを意味しています。特にご実家など自宅用不動産で誰も住まない空き家状態になっている場合は、もし売却されるのであればお早めのご検討をおすすめします。

2 相続した不動産を売却するデメリット

(1)所有権を失ってしまう

当たり前のことですが、不動産を売却するとその不動産は他人のものになり、以後住んだり家賃収入を得られなくなってしまいます。

不動産は一点ものです。特に思い出のあるご自宅など、売却するかどうかは相続人の皆様でよく話し合ってご決断ください。

(2)譲渡所得税が課税されることがある

きわめて大雑把なご説明になりますが、売却価格から購入時の価格、取得費用などを差し引いて利益が出ている場合には、譲渡所得税がかかります(正確には次の数式で計算します)。

譲渡課税所得=売却価額-取得費+譲渡費用-特別控除額

税率は、多くの場合約20%です。もっとも、売却によって取得する金額以上に税金がかかることはありません。また、相続した不動産の売却の場合は、メリット(2)でご説明した取得費加算の特例が使えることも多いです。

具体的な計算方法については、税金の専門家である税理士にご相談いただきたいと思います(当事務所で、相続税など資産税に強い税理士をご紹介することも可能です)。

3 まとめ

相続した不動産を売却することのメリットとデメリットについてご説明しました。バランスよく遺産分割をすることの必要性、有効利用する予定があるかどうか、税金面でどの程度のインパクトがあるかなど、様々な観点からご検討いただければと思います。

最終的には相続人全員で話し合ってのご決断になるのですが、当事務所でも相続人の皆様のお話をお聞きしながら、売却する場合、しない場合のメリットとデメリットを具体的な数字を交えてお伝えすることも可能です(税理士と連携してシミュレーションを行います)。また、売却されるとなればそのサポートも行っておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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