遺言書で決められること

遺言書の内容は書く人が自由に決められるのですが、書いた内容のうち、法的効力が認められることは法律で決まっています。これを法定遺言事項といいます。

遺言書というと、「遺産を誰に相続させるか」という財産に関する内容に目が行きがちですが、財産に関すること以外に、認知など身分に関することを定めることもできます。

法定遺言事項

1 財産に関すること

(1)相続分の指定(民法第902条)

長男に3分の2、二男に3分の1など、遺産相続の割合を定めるものです。

(2)遺産分割方法の指定・指定の委託、遺産分割の禁止(民法第908条)

不動産は長男に、預金は二男になど、遺産分割の方法を財産ごとに具体的に定めるものです。5年以内の範囲で遺産分割を禁止するとの定めもできます。

(3)包括遺贈、特定遺贈(民法第964条)

主には、法定相続人以外の方に遺産を与える旨を定めるものです。

(4)遺留分侵害額請求方法の定め(民法第1034条)

遺贈を受けた人が複数いて、遺留分侵害をされた相続人がいる場合に、遺留分侵害額請求の順番を定めることができます。

(5)特別受益の持ち戻し免除(民法第908条)

生前贈与などの特別受益(生前に贈与された学費、家の購入費など)を、相続分算定にあたって考慮しない(持ち戻ししない)で計算することを定めるものです。

(6)相続人の廃除、廃除の取消し(民法第893条、民法第894条)

廃除とは、相続人から遺言者に対して虐待、重大を加えた、その他著しい非行があった場合に、その相続人から遺留分も含め一切の相続権を奪うものです。生前に行うこともできますが、遺言書ですることもできます。遺言書に廃除の定めがある場合、家庭裁判所への申立て手続きが必要です。

(7)共同相続人の担保責任の減免、加重(民法第914条)

相続人の担保責任に関する減免、加重をするものです。

(8)信託設定(信託法第3条)

信託法上の遺言信託です。遺言によって信託設定ができます。

2 身分に関すること

(1)子の認知(民法第781条)

非嫡出子について、父または母が「自分の子である」と認めることです。

(2)未成年後見人、未成年後見監督人の指定(民法第839条、民法第848条)

未成年者に対して親権を行うものがいなくなってしまう場合に、未成年後見人になる者を指定する定めです。遺言者が親権者の場合に、残された未成年の子のことを思って定めるようなケースです。

3 その他  

(1)遺言執行者の指定または指定の委託(民法第1006条)

遺言書の内容を実現する遺言執行者を誰にするかを指定できます。

遺言執行者の職務内容などは、「遺言執行者について」の記事で詳しくご説明しています。

(2)祖先の祭祀主催者の指定(民法第897条)

お墓や仏壇などを引き継ぎ、お墓を守っていく人(祭祀主催者)を定めるものです。

一周忌など法事を取り仕切るのも、一般的には祭祀主催者が行うことが多いでしょう。

(3)生命保険金受取人の指定、変更(保険法第44条)

保険金の受取人は保険契約で定めるものですが、遺言書でもその指定や変更をすることができます。

付言事項について

上記でご説明した法定遺言事項とは別に、遺言書には付言事項というものを記載することができます。

法定遺言事項ではないので法的効力はありませんが、このような内容の遺言書を書いた理由、家族への感謝の言葉などをしたためる方も多く、この付言事項があったことで相続人に納得感がうまれトラブルを防げたケースも数多くあります。

あくまでオプション的な位置づけですが、遺言事項では伝えきれないお気持ちを伝えるには付言事項が適していると言えます。

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