外国に住む相続人がいる場合の相続手続きの方法①

 転勤による海外勤務や、外国人との結婚、あるいは移住などによって、日本人の方が海外にお住いのケースがあります。最近、相続人の方が外国在住というご相談が立て続けにあり、日本と異なる制度に戸惑う方が多くいらっしゃいました。当事務所ではよく取り扱うケースなのですが、通常の相続手続きと少し異なる点があるため、まとめてご説明したいと思います。

ほとんどの国には「印鑑証明書」の制度はない

 一般的な相続手続きでは、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が「実印」を捺印します。また、不動産の相続登記や銀行・証券会社などさまざまな相続手続きにおいて、相続人の「印鑑証明書」を提出する必要があります。

 ところが、一部の国を除いて、外国では基本的に「実印」という概念はないし、「印鑑証明書」という書類も存在しません。印鑑の文化というのは、日本特有のものとも言えます。

日本領事館などで署名証明書を取得する

 印鑑証明書に代わるものとして、「署名証明書(サイン証明書)」という制度があります。日本人であれば、現地にある日本領事館、あるいは公証役場などに行って、「このサインは本人のものに間違いありません」という証明書を発行してもらうことができます。

 外国はサイン文化ですから、言われてみればそうかな、という気がしますよね。
 参考までに、アメリカのロサンゼルス日本領事館の例を以下にリンクを張っておきますが、お住まいの地域の日本領事館のホームページを見ると、同様の情報が得られると思います。 申請書の記入例や必要書類、手数料などについても書かれています。

 署名(および拇印)証明(在ロサンゼルス日本国総領事館HPより)

署名証明書には2種類ある

 ここからは、ちょっと混み入った話をします(詳しいことは、ご相談いただく際に説明しますので、よく分からなければ読み飛ばしてください)。

 上記のLA日本領事館のホームページにも書いてありますが、サイン証明書には、いわゆる「貼付型」と「単独型」の2種類があります。

1 貼付型

 遺産分割協議書など、署名証明が必要な書類を領事館等に持参します。

 その書類に、領事館等の職員がいる目の前で署名拇印します。

 すると、その書類(遺産分割協議書など)と署名証明書の2通をホッチキス留めし、領事館の公印で本人の署名であることの証明書として発行してもらえます。

2 単独型

 日本の印鑑証明書に近いイメージです。印鑑の代わりに本人の署名がされ、その署名について「本人がサインに間違いない」旨の領事館の証明がなされます。

 きわめて大雑把な言い方になりますが、印鑑証明書の印影の部分が、署名(サイン)になっている、と思ってください(実際の様式はちょっと違いますが)。

 「単独型」を利用する場合、役所や銀行には署名証明書と遺産分割協議書の合計2通の書類を提出し、遺産分割協議書などの筆跡と、署名証明書の筆跡が同一人のものであるかどうかを審査することになります。

 遺産分割協議書などに署名する際には、署名証明書の筆跡となるべく似せて署名する必要があるので、ちょっと注意が必要になります。 印鑑の場合と違って、人間がするサインというのは、毎回毎回おなじように書けるわけではありませんよね。体調や、丁寧に書くか雑に書くか、などの事情で、筆跡が多少変わってきます。もし同一人が書いたサインでも、あまりに筆跡が違うとなると、「この遺産分割協議書のサイン、他人がなりすまして書いたんじゃないの?」という疑義が生じることになりかねません。 なので、「単独型」の場合には、なるべくでいいので、筆跡をサイン証明書のものと似せて書いてください。

まとめ

 相続人が外国に住んでいる場合の相続手続きについてご説明してきました。

 ・印鑑証明書の代わりに「署名証明書」を取得する
 ・署名証明書は、現地の領事館や公証役場で取得できる
 ・署名証明書には単独型と貼付型の2種類がある。単独型の場合は筆跡に注意

 これまで署名証明書を取得されたお客様のお話を聞くと、領事館が遠方にしかなくて片道2時間かかったなど、取得するには一苦労のようです。日本のようにコンビニで印鑑証明書を取得できることを考えると、少し不便、また取得するのに時間がかかるかもしれません。

 当事務所では、このようなケースも多く経験しておりますので、ご自身の状況にあてはまる方がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所の無料相談をご利用いただければと思います。

 

 

 

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