未登記建物の相続登記|手続きの流れと必要書類を専門家が解説

ご実家が未登記?ご安心ください、解決への道筋を解説します

「親の相続手続きを進めていたら、実家が登記されていない『未登記建物』だとわかった…」
「税金はちゃんと払っていたはずなのに、どうして?」
「これから一体どうすればいいんだろう…」

大切なご家族を亡くされ、ただでさえ大変な相続手続きの最中に、このような想定外の事実に直面し、途方に暮れていらっしゃるのではないでしょうか。専門用語も多く、何から手をつけて良いのか分からず、不安と焦りを感じてしまうのは当然のことです。

でも、ご安心ください。あなたと同じように、相続をきっかけに建物が未登記だと知り、お困りになる方は決して少なくありません。

この記事では、相続問題に日々向き合っている専門家として、未登記建物の相続手続きという複雑な問題を一つひとつ丁寧に解きほぐしていきます。この記事を最後までお読みいただければ、手続きの全体像と具体的な流れがすっきりと理解でき、「次に何をすべきか」が明確になるはずです。

私たち専門家と一緒に、一歩ずつ着実に解決への道筋を歩んでいきましょう。

「未登記建物」とは?なぜ登記されていないケースがあるのか

まず、「未登記建物」とは、その名の通り「法務局に登記記録が存在しない建物」のことを指します。建物が完成すると、本来は「建物表題登記」という手続きで、その建物の所在地や構造、床面積といった物理的な情報を法務局に登録しなければなりません。

「でも、毎年ちゃんと固定資産税は払っていたのに…?」と疑問に思われるかもしれませんね。実は、固定資産税は市区町村が管理する「固定資産課税台帳」に基づいて課税されており、法務局が管理する「登記簿」とは別のものなのです。そのため、税金を支払っていても、法務局に登記がされていないという状況は起こり得るのです。

未登記になる主な理由としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 住宅ローンを組まず、自己資金で建築した: 金融機関から融資を受ける際は、担保設定(抵当権設定登記)のために建物の登記が必須となります。しかし、自己資金で建てた場合、登記をしなくても特に不都合がなかったため、そのままになっているケースが非常に多いです。
  • 昔の法律で登記が任意だった時代に建てられた: 建築時期によっては、登記が今ほど厳格に義務付けられていなかったことも影響しています。
  • 建築後に増改築をしたが、その部分の登記をしていない: この場合も、建物の一部または全部が未登記の状態となります。

ご実家の登記状況を確認する具体的な方法

ご実家が本当に未登記かどうかを正確に確認するには、以下の2つの方法があります。

  1. 固定資産税の「納税通知書」を確認する
    毎年春ごろに市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書には、「課税明細書」が同封されています。この明細書の家屋の欄に「家屋番号」という記載があるか確認してみてください。家屋番号は登記されている建物にしか付与されないため、この欄が空欄であれば、未登記である可能性が非常に高いです。
  2. 法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得してみる
    建物の所在地を管轄する法務局へ行き、登記事項証明書の取得を試みます。もし窓口で「その地番上には建物が登記されていません」といった回答があれば、未登記であることが確定します。オンラインでの請求も可能ですが、まずは納税通知書の確認が手軽で分かりやすいでしょう。

未登記のまま放置する3つの大きなリスク

「手続きが面倒だし、このままにしておけないだろうか…」と思われるかもしれませんが、未登記建物を放置することには、大きなリスクが伴います。

  1. 売却したり、ローンを組んだりできない
    登記がなければ、その建物の所有権を第三者に法的に主張することができません。そのため、不動産として売買の対象にしたり、その建物を担保にお金を借りたり(抵当権設定)することが一切できなくなってしまいます。
  2. 将来の相続でさらに手続きが複雑化する
    今回の相続で解決せずに放置してしまうと、次の世代、さらにその次の世代へと問題が先送りされます。相続人が増えれば増えるほど、話し合い(遺産分割協議)はまとまりにくくなり、いざ登記しようとしたときには、必要書類の収集が困難を極めることになりかねません。
  3. 相続登記義務化により過料の対象となる可能性
    2024年4月1日から相続登記の義務化とは?罰則(過料)や期限を専門家が解説が始まりました。未登記建物もこの対象外ではなく、登記を怠った場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。未登記建物の場合は、まず建物の表題登記を申請する義務があり、こちらも怠ると10万円以下の過料の対象となります。
未登記建物を放置することのリスクを象徴する警告マークと不動産書類

未登記建物の相続登記、2つのステップで進める全体像

「リスクは分かったけれど、具体的に何をすればいいの?」という方のために、手続きの全体像をシンプルに示します。未登記建物を相続して自分の名義にするには、大きく分けて以下の2つのステップを踏む必要があります。

  1. ステップ1:建物表題登記(担当:土地家屋調査士)
    まず、この世に存在していなかった登記簿を新たに作成し、「どこに、どのような建物があるのか」という物理的な情報を登録します。
  2. ステップ2:所有権保存登記(担当:司法書士)
    次に、新しく作られた登記簿に、「この建物の所有者は誰なのか」という権利に関する情報を初めて登録します。

この2つの登記を完了させることで、初めてご自身の権利が法的に保護され、誰に対しても「この建物は私のものです」と主張できるようになるのです。それでは、各ステップを詳しく見ていきましょう。

ステップ1:建物の存在を公的に登録する「建物表題登記」

最初のステップは「建物表題登記(たてものひょうだいとうき)」です。これは、建物の物理的な現況(所在地番、家屋番号、種類、構造、床面積など)を調査・測量し、法務局に登記記録を新たに作成する手続きです。いわば、建物に「戸籍」を作ってあげるようなイメージです。

この登記は、不動産の物理的な状況を正確に把握する必要があるため、測量の専門家である「土地家屋調査士」が担当します。この表題登記が完了しなければ、次の所有権保存登記に進むことはできません。

表題登記の必要書類|古い建物で書類がない場合は?

表題登記を申請するには、その建物が確かに存在し、申請人が所有者であることを証明する書類が必要です。代表的なものには以下のような書類があります。

  • 建築確認済証・検査済証: 建物が建築基準法に則って建築されたことを証明する、最も重要な書類です。
  • 工事完了引渡証明書: 建築会社から建物が引き渡されたことを証明する書類です。
  • 工事請負契約書や工事代金の領収書: 建物の建築を発注し、代金を支払ったことを証明します。
  • 建物の図面(各階平面図、立面図など)
  • 相続関係を証明する戸籍謄本など

しかし、特に古い建物の場合、「そんな書類、どこにあるか分からない…」というケースがほとんどではないでしょうか。ご安心ください。これらの書類が見つからない場合でも、諦める必要はありません。

例えば、以下のような書類で代用したり、補ったりすることが可能です。

  • 固定資産税の納税通知書や評価証明書
  • 火災保険の証書
  • 電気・ガス・水道などの公共料金の領収書
  • 隣地の所有者など、第三者による証明書(上申書)

どのような書類で代替できるかはケースバイケースであり、法務局との協議も必要になるため、この書類集めの段階で専門家である土地家屋調査士の知識と経験が非常に重要になります。

誰が申請する?相続人名義で直接登記が可能です

「亡くなった父名義で一度登記してから、自分の名義に変える必要があるの?」という疑問もよくいただきます。ご安心ください。建物表題登記は、亡くなった被相続人名義を経由する必要はなく、建物を相続した相続人の名義で直接申請することができます。

これにより、登記を二度行う手間や費用を省くことができ、手続きを一度で済ませることが可能です。

ステップ2:あなたの権利を証明する「所有権保存登記」

土地家屋調査士による「建物表題登記」が完了し、建物の登記簿が作成されたら、次のステップに進みます。それが「所有権保存登記(しょゆうけんほぞんとうき)」です。

これは、新しく作られた登記簿の権利部(甲区)という欄に、「この建物の最初の所有者は〇〇です」と初めて名前を記録する手続きです。この登記をもって、あなたは第三者に対して正式に所有権を主張できる(法律用語で「対抗要件を備える」と言います)ようになります。

この権利に関する登記は、法律の専門家である「司法書士」が担当します。

司法書士が所有権保存登記の重要性について分かりやすく解説している様子

【専門家の視点】なぜ司法書士と土地家屋調査士の連携が鍵なのか

「固定資産税の課税明細書に建物の記載があるのに、登記簿が見当たらないんです。相続登記をお願いしたいのですが…」

このようなご相談は、私たち専門家のもとへ頻繁に寄せられます。お話を伺うと、ご自身で法務局や市役所を回られ、途方に暮れてしまったという方が少なくありません。この複雑な手続きをスムーズに進める上で、なぜ私たち専門家、特に司法書士と土地家屋調査士の連携がこれほどまでに重要なのでしょうか。

その答えは、これまで見てきた2つのステップにあります。

  • 「建物表題登記」は土地家屋調査士の独占業務
  • 「所有権保存登記」は司法書士の独占業務

つまり、未登記建物の相続手続きを完了させるには、必ずこの2つの異なる分野の専門家が関わる必要があるのです。

ご自身で手続きを進めようとすると、まず土地家屋調査士を探し、表題登記を依頼します。そして、それが完了したら、次に司法書士を探して所有権保存登記を依頼し、表題登記で使った書類や相続関係の書類を改めて司法書士に渡す…という流れになります。これには大変な手間と時間がかかり、専門家とのやり取りの中で情報の伝達ミスが起こるリスクもあります。

しかし、当事務所のように、日頃から連携している土地家屋調査士がいる司法書士事務所にご依頼いただければ、このプロセスがより円滑に進みます。

ご相談いただければ、まず私たちが全体の手続きの流れをご説明し、提携先の信頼できる土地家屋調査士に速やかに表題登記を依頼します。土地家屋調査士と私たちは、必要な書類(戸籍や遺産分割協議書など)を共有し、無駄なやり取りをなくして手続きを進めます。そして、表題登記が完了したという連絡を受け次第、間髪入れずに私たちが所有権保存登記を申請します。

このように、窓口を一つに絞り、専門家同士が裏側で緊密に連携することで、お客様はあちこちの事務所に連絡する手間から解放され、迅速かつ正確に、そして安心して手続きの完了を待つことができるのです。これは、ワンストップサービスがもたらす大きな利点の一つです。

もし、未登記建物のことでお困りでしたら、ぜひ一度私たちにご相談ください。複雑に絡み合った糸を解きほぐし、円満な解決までしっかりとサポートいたします。
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未登記建物の相続手続きをワンストップで進める司法書士と土地家屋調査士の連携

未登記建物の相続に関するよくあるご質問

最後に、未登記建物の相続に関してよく寄せられるご質問にお答えします。

Q. 登記手続きには、どれくらいの費用がかかりますか?

A. 費用は大きく分けて「専門家への報酬」と「実費(税金など)」に分かれます。建物の規模や評価額、書類の収集状況によって変動しますが、一般的な目安は以下の通りです。

  • 土地家屋調査士への報酬(建物表題登記): 10万円~15万円程度
  • 司法書士への報酬(所有権保存登記): 5万円~10万円程度
  • 登録免許税(所有権保存登記): 建物の固定資産評価額 × 0.4% (相続人が居住用家屋として利用する場合など、一定の要件を満たせば軽減措置あり)
  • その他実費: 戸籍謄本や住民票などの取得費用、交通費など

正確な費用については、個別にお見積りいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 相続した未登記の建物を解体する予定ですが、登記は必要ですか?

A. 解体することが決まっているのであれば、原則として費用と時間をかけて建物表題登記や所有権保存登記を行う必要はありません。

ただし、市区町村役場へ「家屋滅失届」を提出することが重要です。これを忘れると、存在しない建物に対して固定資産税が課税され続けてしまうため、必ず手続きを行いましょう。

まとめ:複雑な未登記建物の相続は、まず専門家にご相談を

今回は、未登記建物の相続手続きについて、その全体像から具体的なステップ、専門家の役割まで詳しく解説しました。

最後に、大切なポイントをもう一度振り返ります。

  • 未登記建物の相続は「建物表題登記(土地家屋調査士)」「所有権保存登記(司法書士)」の2ステップで進める。
  • 放置すると、売却できない、将来の相続でトラブルになる、過料の対象となるなどの大きなリスクがある。
  • 古い建物で建築時の書類がなくても、代替書類で登記できる可能性がある。
  • 手続きをスムーズに進めるには、司法書士と土地家屋調査士の連携が不可欠。

相続手続きの途中でご実家が未登記だと判明すると、誰もが不安になるものです。しかし、正しい手順を踏むことで解決に至る可能性が高まります。ご自身だけで抱え込まず、まずは専門家の力を頼ってください。

いがり綜合事務所では、相続に関するお悩みに親身に寄り添い、最適な解決策をご提案しています。提携する土地家屋調査士と連携し、複雑な未登記建物の相続手続きもワンストップでサポートいたします。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。
【事務所情報】
司法書士・行政書士・社会保険労務士 いがり綜合事務所
代表司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)
神奈川県司法書士会 所属
〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号

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