相続は司法書士?行政書士?二度手間を防ぐ専門家の選び方

相続で不動産があるのに、行政書士に頼んで後悔したAさんの話

「まさか、こんなことになるなんて…」
川崎市にお住まいのAさんは、お父様を亡くされ、相続手続きを進める中で思わぬ壁にぶつかりました。

遺産は、ご実家の土地建物、預貯金が数百万円、そして少額の株式。相続人であるAさんは、手続きを専門家に任せようと考えました。
「費用も抑えたいし、まずは行政書士さんに相談してみよう」
そう考えたAさんは、市内の行政書士事務所を訪ね、戸籍の収集と遺産分割協議書の作成を依頼しました。
手続きは順調に進んでいるように見えました。しかし、すべての書類が揃い、いよいよ大詰めという段階で、行政書士からこう告げられたのです。

「不動産の名義変更(相続登記)は、私たちの業務範囲外ですので、司法書士の先生に別途ご依頼ください」

結局、Aさんは当事務所に改めてご相談に来られました。
集めてもらった戸籍一式をもう一度当事務所へ持ち込み、これまで行政書士に話した内容を、ゼロから司法書士に説明し直すことになったのです。
さらに、作成してもらった遺産分割協議書も、法務局の登記申請で使うには一部修正が必要な形式でした。結果的に、費用も時間も余分にかかってしまいました。

「最初から司法書士さんにお願いしていれば、こんな二度手間はなかったんですね…」

Aさんのこの一言は、不動産を含む相続手続きにおける、専門家選びの難しさと重要性を物語っています。良かれと思って選んだ選択が、なぜ裏目に出てしまったのでしょうか。この記事では、Aさんのような後悔をしないための、賢い専門家の選び方を徹底的に解説していきます。

相続手続きの書類を前に頭を抱える男性。司法書士と行政書士の選択に悩んでいる様子。

【比較表】司法書士と行政書士、相続で「できること」の違い

なぜ、Aさんのような「二度手間」が発生してしまったのでしょうか。その根本的な原因は、司法書士と行政書士の「法律で定められた業務範囲」の違いにあります。相続手続き全体像については、相続手続きの全体像と費用相場で体系的に解説しています。

どちらも国家資格を持つ法律の専門家ですが、得意とする分野が全く異なるのです。まずは、下の比較表で全体像を掴んでみましょう。

手続き内容司法書士行政書士ポイント
戸籍謄本の収集相続人を確定させるための基本業務
遺産分割協議書の作成誰がどの財産を相続するかを決める重要書類
不動産の相続登記(名義変更)◎ (独占業務)×原則として司法書士の専門業務(※他の法律に別段の定めがある場合を除く)
預貯金・株式等の名義変更金融機関での手続き
自動車の名義変更×行政書士の専門分野
相続放棄の申述書作成×家庭裁判所に提出する書類
遺言書の検認申立書作成×家庭裁判所に提出する書類
相続トラブルの代理交渉××弁護士の業務範囲
司法書士と行政書士の相続における業務範囲

司法書士の専門分野:不動産登記と裁判所手続きのプロ

司法書士は、「登記」と「裁判所関連業務」の専門家です。相続において最も重要な役割は、不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」の手続きを代理すること。これは司法書士法で定められた独占業務(※他の法律に別段の定めがある場合を除きます)であり、行政書士や税理士は登記申請の代理はできません。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく手続きを怠ると過料が科される可能性も出てきました。この法改正により、不動産相続における司法書士の役割はますます重要になっています。

また、借金が多い場合に家庭裁判所で行う相続放棄の手続きや、自筆証書遺言が見つかった際の検認申立てなど、裁判所に提出する書類作成も司法書士の専門分野です。法的な正確性が求められる手続きにおいて、頼れる存在といえるでしょう。

参照:司法書士法

行政書士の専門分野:許認可と書類作成のプロ

一方、行政書士は「官公庁に提出する書類作成」の専門家です。その範囲は非常に広く、建設業の許可申請や飲食店の営業許可など、数千種類にものぼると言われています。

相続の分野では、相続人を確定させるための戸籍収集や、相続人全員の合意内容をまとめる遺産分割協議書の作成、自動車の名義変更手続きなどを得意としています。

ただし、重要なのは、行政書士の業務はここまでであるということです。彼らが作成した遺産分割協議書を持って、法務局へ相続登記の申請代理をすることはできません。これが、Aさんのケースで「二度手間」が生まれた最大の理由なのです。

参照:行政書士法

不動産があるのに、なぜ行政書士に頼むと「二度手間」になるのか?

「でも、登記以外は行政書士にやってもらって、登記だけ司法書士に頼めばいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、その考え方には大きな落とし穴があります。不動産がある相続で行政書士に依頼すると、状況によっては、時間・労力・費用の面で追加の負担が生じることがあります。

具体的にどのような「二度手間」が発生するのか、その恐ろしさをステップで見ていきましょう。

不動産相続で行政書士に依頼した場合の二度手間の流れを示す図解。司法書士に直接依頼する方が効率的であることを示している。
  1. 行政書士への依頼と支払い:まず行政書士に戸籍収集や遺産分割協議書作成を依頼し、報酬を支払います。
  2. 「登記はできない」と判明:書類が揃った段階で、不動産登記は司法書士に依頼する必要があることを告げられます。
  3. 司法書士を探し直す:ここから、また一から信頼できる司法書士を探し始めなければなりません。
  4. 再度の説明と書類提出:新しい司法書士に、これまでの経緯や家族関係をゼロから説明し、集めた書類一式を再度提出します。
  5. 司法書士への支払い:当然、司法書士にも登記申請の報酬を支払うことになります。

このように、窓口が二つになることで、時間的にも金銭的にも大きなロスが生まれてしまうのです。より詳しい相続登記を司法書士に依頼するメリットについても、ぜひご一読ください。

時間と労力の損失:専門家を探し直す手間と再説明のストレス

相続手続きは、ただでさえ精神的な負担が大きいものです。大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、慣れない手続きを進めなければなりません。

そんな状況で、専門家を探し直し、同じ話を何度も繰り返すのは、想像以上のストレスがかかります。「この司法書士さんは信頼できるだろうか」「また一から説明しないといけないのか…」といった不安や手間は、心労が重なっている時期には避けたいものでしょう。貴重な時間を無駄にしないためにも、最初の専門家選びが極めて重要なのです。

費用の損失:二重に発生する報酬と無駄になる作成費用

金銭的な損失も深刻です。行政書士と司法書士、それぞれに報酬を支払うことになるため、単純に費用が二重にかかってしまいます。

さらに注意が必要なのは、行政書士が作成した遺産分割協議書が、そのまま相続登記に使えないケースがあることです。登記手続きでは、不動産の情報を登記簿通りに正確に記載するなど、特有のルールがあります。もし、そのルールを満たしていない場合、司法書士が内容を修正したり、最悪の場合は作り直したりする必要が出てきます。

そうなると、行政書士に支払った遺産分割協議書の作成費用が、丸々無駄になってしまう可能性すらあるのです。「費用を抑えようとした結果、かえって高くついてしまった」という、まさに「安物買いの銭失い」に陥ってしまうわけです。

不動産相続なら「最初から司法書士」が最も賢い選択である理由

では、どうすればAさんのような失敗を避けられるのでしょうか。答えはシンプルです。

ご遺産に不動産が含まれているなら、迷わず「最初から司法書士」に相談すること。

これが、時間・費用・手間を抑えて相続手続きを進めるための、有力な選択肢の一つです。その理由を具体的に解説します。

ワンストップで完結:窓口一つで時間も手間も最小限に

司法書士に依頼すれば、相続の入り口である戸籍収集から、中間の遺産分割協議書作成、そして最終ゴールである不動産の相続登記まで、すべての手続きを一つの窓口で完結させることができます。

あちこちの専門家を探し回ったり、同じ説明を何度も繰り返したりする負担を減らしやすくなります。すべての進捗を一つの窓口で把握できるため、精神的な負担も大幅に軽減されます。

ちなみに、当事務所の代表は司法書士と行政書士の両方の資格を保有しています。そのため、不動産登記はもちろん、行政書士の専門分野である自動車の名義変更なども含め、本当の意味でのワンストップ対応が可能です。どのような信頼できる司法書士を探すべきか迷われている方も、ぜひ一度ご相談ください。

費用対効果で選ぶ:トータルコストを抑える最適な選択

目先の報酬額だけを見て専門家を選ぶと、結果的に損をしてしまうことがあります。重要なのは、手続き完了までにかかる「トータルコスト」で判断することです。

最初から司法書士に依頼すれば、二重払いはもちろん発生しませんし、登記まで見据えた法的に完璧な遺産分割協議書を作成するため、登記まで見据えた形で書類を整えやすく、結果として追加の修正対応が生じにくくなります。一時的な出費はあったとしても、最終的に最も経済的で合理的な選択となるのです。

司法書士への依頼は単なる「出費」ではありません。それは、将来にわたる無用なトラブルを防ぎ、ご自身の貴重な時間と心の平穏を守るための、最も賢明な「投資」と言えるでしょう。

司法書士への相続手続き依頼、費用の目安は?

「司法書士に頼むのが良いのは分かったけれど、実際いくらかかるの?」と、費用面が気になる方も多いと思います。

司法書士の費用は、大きく「報酬」と「実費」に分かれます。

  • 報酬:司法書士への手数料です。手続きの複雑さや財産の額によって変動します。
  • 実費:戸籍謄本の発行手数料や、登記申請時に法務局へ納める登録免許税など、手続きに必ずかかる費用のことです。

ご依頼いただく内容によって費用は異なりますが、報酬は、相続関係の複雑さや不動産の数・管轄、必要書類の量などによって大きく変動します。

ご依頼のパターン司法書士報酬の目安備考
相続登記のみ数万円~(事案により変動)戸籍や遺産分割協議書はご自身で準備する場合
戸籍収集+遺産分割協議書作成+相続登記10万円台~(事案により変動)不動産を含む相続手続きを一式依頼する場合
上記+預貯金等の解約・名義変更事案により変動金融機関の数や手続きの複雑さによる
司法書士への依頼内容と報酬の目安

※上記はあくまで一般的な目安であり、不動産の評価額や相続人の数など、個別の事情によって変動します。正確な費用については、必ず事前に見積もりを取って確認するようにしましょう。より詳細な遺産承継業務の費用については、別の記事で詳しく解説しています。

まとめ:相続の二度手間を防ぐ鍵は「最初の専門家選び」です

今回は、不動産を含む相続手続きにおいて、司法書士と行政書士のどちらに依頼すべきか、そしてその選び方を間違えるとどのような「二度手間」が生じるのかを解説しました。

ポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 遺産に不動産が含まれる場合、相続登記は司法書士の独占業務です。
  • 行政書士に依頼すると、登記ができず、改めて司法書士を探し直す「二度手間」が発生します。
  • 二度手間は、時間・費用・精神的な負担を増大させ、「安物買いの銭失い」になりかねません。
  • 不動産相続は、最初から司法書士に相談することが、最も確実で、結果的にコストを抑える賢い選択です。

相続手続きは、多くの方にとって初めての経験で、不安なことばかりだと思います。「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と躊躇されるかもしれません。しかし、最初の専門家選びというボタンを掛け違えてしまうと、後から修正するのは本当に大変です。

当事務所の代表司法書士は、年間100件以上の相続案件を手がけ、司法書士向けの専門書執筆や研修講師も務める相続のプロフェッショナルです。何よりも、ご相談に来られた方の不安に寄り添い、安心をお届けすることを第一に考えています。

まずは、あなたのお話をじっくりお聞かせください。何から手をつけていいか分からない、という段階でも全く問題ありません。一緒に解決への道筋を考えていきましょう。

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