相続登記の司法書士費用は誰が払う?遺産からの支払いや負担割合を解説

相続登記の司法書士費用、誰が払うか決まっていますか?

ご家族が亡くなり、不動産の相続登記を進めようとするとき、多くの方が「司法書士への費用は、いったい誰が払うんだろう?」という疑問に直面します。特に相続人が複数いる場合、この費用負担の問題は、思わぬトラブルの火種になりかねません。

結論からお伝えすると、相続登記にかかる司法書士費用を誰が負担すべきかについて、法律上の明確なルールはありません。

「決まりがない」と聞くと、かえって不安に思われるかもしれません。しかし、だからこそ相続人全員で事前にしっかりと話し合い、合意しておくことが何よりも大切になるのです。

この記事では、相続手続きを数多く手がけてきた司法書士の視点から、費用負担で揉めないための具体的なパターンや、最も安心できる「遺産から支払う方法」、そしてトラブルを未然に防ぐ遺産分割協議書への記載例まで、分かりやすく解説していきます。

この記事を最後までお読みいただければ、費用に関するあなたの不安は解消され、他の相続人とも円満に話し合いを進めるための知識が身につくはずです。相続手続きの全体像については、「相続登記を司法書士に依頼するメリットは?自分でやる場合との違い」で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

誰が払う?司法書士費用の3つの負担パターンと注意点

法律に定めがない以上、相続登記の費用負担は相続人間の話し合いで自由に決めることができます。実務上、よく見られるのは以下の3つのパターンです。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に最も合う方法を検討しましょう。

相続登記の司法書士費用の3つの負担パターンを比較した図解。不動産取得者が負担、相続人全員で負担、遺産から支払う、という3つの選択肢のメリット・デメリットを示している。

パターン1:不動産を取得する相続人が全額負担する

最も一般的で、多くの方が納得しやすいのがこのパターンです。不動産という大きな利益を得る人が、その手続きにかかる費用も負担するという考え方で、非常に合理的と言えるでしょう。

例えば、「実家は長男が相続するから、登記費用も長男が支払う」といったケースは、多くの場合スムーズに合意に至ります。

【注意点】
ただし、この方法が常に公平とは限りません。例えば、長男が不動産を相続し、次男が現金を多く相続するようなケースではどうでしょうか。不動産はすぐに現金化できるわけではないため、不動産を相続した長男が手元の資金から費用を支払うことに不公平感を抱く可能性もあります。事前にしっかりと話し合い、お互いの状況を理解し合うことが大切です。

パターン2:相続人全員で均等または相続分に応じて負担する

次に考えられるのが、相続人全員で費用を分担する方法です。これには2つのやり方があります。

  • 均等に負担する(割り勘):相続人の人数で費用を割ります。シンプルで分かりやすいのがメリットです。
  • 相続分に応じて負担する:法定相続分や遺産分割協議で決めた取得割合に応じて負担額を計算します。より公平感のある方法と言えます。

この方法は、例えば不動産を相続人全員の共有名義にする場合や、相続財産が不動産のみで、全員が公平に負担したいと考える場合に適しています。

【注意点】
このパターンの難しい点は、精算の手間です。誰か一人が代表して費用を立て替え、後から他の相続人に請求することになりますが、その際に「聞いていない」「金額が高い」といったトラブルが起きる可能性があります。また、少額であっても支払いを拒む相続人が一人でもいると、話がこじれてしまうリスクも抱えています。

パターン3:被相続人の遺産(相続財産)から支払う

相続人の誰もが自己資金を出す負担を抑えやすく、費用精算の考え方も整理しやすいため、実務上よく選ばれる方法の一つです。相続登記の費用を、いわば「故人の残した財産から支払う経費」として扱う考え方です。

この方法であれば、特定の相続人に負担が偏ることもなく、手持ちの資金がない方でも安心して手続きを進められます。

【注意点】
ただし、一つだけ大きなハードルがあります。それは、一般に金融機関へ死亡の連絡が入ると、故人名義の預金口座が凍結(取引停止)されることです。そのため、遺産分割が終わるまで預金を自由に引き出すことは原則としてできません。もっとも、一定の範囲で払戻しを受けられる「預貯金の仮払い制度(民法909条の2)」などを利用できる場合もあります。この問題をどうクリアするかがポイントになりますが、その具体的な方法は次の章で詳しく解説します。

【一番安心】司法書士費用を遺産から支払う具体的な方法

「遺産から支払うのが一番良さそうだけど、口座が凍結されているならどうすれば?」という疑問にお答えします。この方法を実現するには、正しい手順を踏むことが重要です。以下の3つのステップで進めれば、スムーズに費用を精算できます。

ステップ1:遺産分割協議で費用負担について合意する

何よりもまず、相続人全員での合意形成が必要です。遺産をどう分けるかを話し合う「遺産分割協議」の場で、「相続登記にかかる司法書士費用や税金などの手続き費用は、すべて故人の遺産から支払いましょう」ということを議題に上げ、全員の同意を得てください。

この最初の合意が、後のトラブルを防ぐための最も重要な防波堤となります。

ステップ2:合意内容を遺産分割協議書に明記する

口約束だけでは、後になって「そんな話は聞いていない」と言われてしまう可能性があります。ステップ1で合意した内容は、必ず「遺産分割協議書」という正式な書面に残しましょう。

この書類に費用負担について明記しておくことで、相続人全員の正式な合意があったことの証明となり、金融機関での手続きもスムーズに進みます。具体的な記載例については、後ほど詳しくご紹介します。

ステップ3:預貯金解約後に費用を精算する

相続人全員の合意が記された遺産分割協議書が完成すれば、金融機関で凍結された口座の解約手続きを進めることができます。そして、解約されて払い戻された預貯金の中から、司法書士費用を支払います。

この一連の手続きを司法書士に依頼した場合、金融機関や事案によっては、委任状等により司法書士が預貯金の解約・払戻し手続きを代行できることもあります。その場合、払い戻された預金はいったん司法書士の預かり金口座に入金され、そこから報酬や実費を差し引いた残額が、相続人の皆様に分配される流れとなります。

つまり、状況によっては、相続人の方が費用を一時的に立て替えずに進められる場合もあり、お手元の資金負担を抑えて手続きを進められることがあります。

実際に、当事務所にご相談いただく際も、相続手続きの費用についてご心配される方は少なくありません。特に、相続財産の種類や相続人の人数によっては、費用がやや高額になることもあります。

しかし、私たちは基本的に着手金をいただくことはありません。遺産の中に預貯金があり、その解約手続きもご依頼いただく場合は、解約後の預金の中からすべての費用を精算し、残金をお渡しする形をとっています。ご依頼者様からは「自分のお財布からお金を出さなくていいと聞いて、とても安心しました」というお声をいただくことが非常に多いです。このような遺産承継業務としてまとめてご依頼いただくことで、相続人の皆様のご負担を大きく軽減できるのです。

【トラブル防止の要】遺産分割協議書への費用負担の記載例

相続人間の無用な争いを防ぐため、遺産分割協議書に費用負担の条項を設けることは極めて有効です。司法書士や税理士に支払う費用は、厳密には法律上の「相続債務」ではないため、本来は遺産分割協議の対象外です。しかし、相続人間の合意として費用負担について定めておくことは法的に有効であり、後のトラブル防止に絶大な効果を発揮します。

実際に、相続人同士の関係があまり良好でないケースでは、「後で揉めないように、費用の計算方法までしっかり書いてほしい」というご要望をいただくことも少なくありません。ここでは、状況に応じた3つの具体的な記載例をご紹介します。

司法書士から遺産分割協議書の説明を受け、安心した表情を浮かべる夫婦。専門家への相談がトラブル防止につながることを示唆している。

記載例1:遺産全体から支払う場合

最も推奨されるパターンです。この一文を入れておくだけで、後の精算が非常にスムーズになります。

【記載例】
本遺産分割協議の対象となる被相続人名義の相続財産の中から、相続手続き(不動産の名義変更、預貯金の解約等)に要する登録免許税、司法書士報酬、その他必要書類の取得実費等の一切の費用を支払うものとする。

記載例2:特定の相続人が負担する場合

不動産を取得する相続人が明確に決まっている場合などに用います。これにより、他の相続人は費用を請求される心配がなくなります。

【記載例】
相続人〇〇 〇〇(氏名)が取得する下記不動産の相続登記に関する一切の費用は、同人の負担とする。

記載例3:相続分に応じて按分する場合

公平を期すために、取得する財産の割合に応じて負担する場合の記載例です。

【記載例】
相続手続きに関する一切の費用は、各相続人が本協議によって定めた相続財産の取得割合に応じて負担するものとする。

どのパターンを選ぶかは、ご家族の状況によって異なりますが、実務上は遺産の取得割合に応じて負担するケースが多い印象です。なお、遺産分割協議書に不備があると、後から協議のやり直しが必要になるケースもあるため、専門家への相談をおすすめします。

そもそも相続登記の司法書士費用はいくらかかる?

費用負担を話し合う上で、そもそも総額がいくらくらいかかるのかを知っておくことは非常に重要です。相続登記の費用は、大きく分けて「実費」と「司法書士報酬」の2つで構成されます。具体的な相続登記の費用を把握しておきましょう。

必ずかかる実費(登録免許税・書類取得費)

これは、ご自身で手続きをしても、専門家に依頼しても必ず発生する費用です。

  • 登録免許税:登記申請の際に国に納める税金です。最も大きな割合を占めることが多く、「不動産の固定資産評価額 × 0.4%」で計算されます。例えば、評価額が2,000万円の土地と家屋であれば、8万円の登録免許税がかかります。詳しい計算方法は「相続登記の登録免許税|課税明細書の読み方と計算方法を解説」をご覧ください。
  • 書類取得費など:被相続人や相続人の戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書などの取得費用です。通常は数千円から1万円程度が目安です。

司法書士への報酬(専門家への手数料)

戸籍の収集、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成・提出などを司法書士に依頼した場合に支払う手数料です。報酬額は事務所によって異なりますが、一般的な相続登記であれば7万円~15万円程度が相場とされています。

ただし、相続人の数が多い、不動産の数が複数ある、数次相続が発生しているなど、手続きが複雑になる場合は報酬が加算されることがあります。当事務所の詳しい料金一覧はこちらでご確認いただけますが、最終的な金額は事案によって異なりますので、必ず事前に見積もりを取得して確認することが大切です。

(参考)相続登記の登録免許税の免税措置について – 法務局

費用負担で揉めてしまったら…司法書士に相談するメリット

ここまで様々なパターンや対策を解説してきましたが、それでも「相続人間で話し合いがまとまらない」「感情的になってしまい、冷静に話ができない」という状況に陥ってしまうことも少なくありません。

そんなときこそ、私たち司法書士のような専門家にご相談ください。

専門家が第三者として間に入ることで、以下のようなメリットがあります。

  • 感情的な対立を避けられる:当事者同士だと感情的になりがちな話し合いも、専門家が法的な観点から公平な選択肢を示すことで、冷静に進めることができます。
  • 法的に適切な解決策が見つかる:それぞれの負担パターンのメリット・デメリットを客観的に説明し、ご家族の状況にとって最も円満な解決策を一緒に考えます。
  • 面倒な連絡や調整を任せられる:疎遠な相続人や、話しにくい相手との連絡・調整も代行することが可能です。

相続は時として「争続」になってしまいます。費用負担という金銭の問題は、そのきっかけになりやすいデリケートな問題です。少しでも不安を感じたら、手遅れになる前に、ぜひ一度専門家の意見を聞いてみてください。信頼できる司法書士を見つけることが、円満相続への第一歩です。

当事務所では、相続に関する初回のご相談は無料で承っております。まずはお気軽にご状況をお聞かせください。あなたにとって最善の解決策を一緒に見つけていきましょう。

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