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【ご相談事例】韓国籍の方の相続、こんなお悩みありませんか?
大切なご家族が亡くなられ、深い悲しみの中、相続の手続きを進めなければならない状況、心中お察しいたします。
ただでさえ大変な相続手続きですが、亡くなった方が韓国籍だった場合、普段聞き慣れない言葉や手続きが出てきて、多くの方が戸惑われます。
- 亡くなった親が韓国籍。日本にある不動産の名義変更はどうすればいいの?
- 「韓国の戸籍が必要」と言われたけど、どうやって取得するんだろう…?
- 集めた書類は全部、日本語に翻訳しないといけないって本当?
- 手続きが複雑そうだけど、専門家に頼むと費用はどのくらいかかるの?
- そもそも、日本の法律と韓国の法律、どっちが適用されるの?
もし、このようなお悩みや不安を一つでも抱えていらっしゃるなら、ご安心ください。この記事では、韓国籍の方の相続手続き、特に日本にある不動産の名義変更(相続登記)について、専門家が一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めば、手続きの全体像と、あなたが次に何をすべきかが明確になるはずです。
要注意!韓国籍の方の相続が日本人より複雑になる3つの理由
「どうして日本人の相続と比べて、こんなに手続きが複雑なの?」多くの方がそう思われることでしょう。その理由は、大きく分けて3つあります。まずはこの「なぜ大変なのか」を知ることで、落ち着いて準備を進めることができます。

理由1:適用される法律が「韓国法」と「日本法」に分かれる
相続手続きでどの国の法律を使うか、という問題を「準拠法(じゅんきょほう)」といいます。これが最初のポイントです。
日本の法律(法の適用に関する通則法)では、「相続は、被相続人(亡くなった方)の本国法による」と定められています。つまり、亡くなった方が韓国籍の場合、誰が相続人になるか、それぞれの相続分(財産をもらう割合)がどうなるか、といったことは「韓国の民法」に基づいて決まります。
一方で、日本にある不動産の名義を変更する手続き(相続登記)は、その不動産がある日本の法律、つまり「日本の不動産登記法」に従って進めなければなりません。
このように、相続のルールは「韓国法」、不動産登記のルールは「日本法」と、2つの国の法律が関わってくるため、手続きが複雑になるのです。
理由2:相続人の確定に「韓国の戸籍」の収集が必須
相続手続きの第一歩は、「誰が相続人なのか」を公的な書類で証明することです。日本人の場合は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本を市区町村役場で集めます。
これに対し、韓国籍の方の場合は、韓国の戸籍制度に基づいた書類を集めなければなりません。具体的には、2008年1月1日より前に亡くなった方は「除籍謄本」、それ以降に亡くなった方は、以下の5種類の「家族関係登録事項別証明書」と「除籍謄本」の両方が必要になることが一般的です。
- 家族関係証明書
- 基本証明書
- 婚姻関係証明書
- 入養関係証明書
- 親養子入養関係証明書
これらの書類を、亡くなった方の出生まで遡ってすべて集める必要があります。しかし、本籍地(登録基準地)が分からない、何度も転籍しているといったケースでは、調査が非常に難しく、手続きが止まってしまう大きな原因となります。
理由3:取得した韓国の書類はすべて「日本語への翻訳」が必要
苦労して韓国の戸籍関連書類を集めても、そのままでは日本の法務局や金融機関に提出することはできません。なぜなら、書類はすべて韓国語(ハングル)で書かれているからです。
そのため、提出するすべての書類について、日本語への翻訳文を作成する必要があります。翻訳は誰が行ってもよいとされていますが、翻訳者の氏名と住所を記載し、押印しなければなりません。もし翻訳内容に誤りがあれば、手続きは受け付けてもらえず、やり直しになってしまいます。
このように、書類の収集だけでなく、正確な翻訳作業というハードルも越えなければならないのです。
手続きを放置するとどうなる?起こりうる最悪のシナリオ
「手続きが複雑で大変そうだから、少し落ち着いてから…」と、つい後回しにしたくなるお気持ちはよく分かります。しかし、相続手続きを放置してしまうと、時間とともにもっと深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 不動産を売ったり、担保に入れたりできない
不動産の名義が亡くなった方のままでは、その不動産を売却することはできません。また、不動産を担保にして金融機関から融資を受けることも不可能です。いざという時に、大切な資産を活用できなくなってしまいます。 - 相続人が増えて、話し合いがまとまらなくなる
手続きをしないうちに相続人の誰かが亡くなってしまうと、その方の相続人(例えば、亡くなった方の配偶者や子など)が新たに権利を引き継ぎます(これを「数次相続」といいます)。会ったこともない親戚が相続人に加わるなど、関係者がどんどん増えていき、遺産分割の話し合い(遺産分割協議)が非常に困難になるケースは少なくありません。 - 手続きがさらに複雑になり、費用も余計にかかる
数次相続が発生すると、集めなければならない戸籍書類の量も膨大になり、手続きはさらに複雑化します。それに伴い、専門家に依頼する際の費用も高くなってしまう可能性があります。
先延ばしにしても、良いことは一つもありません。問題が小さいうちに、できるだけ早く手続きに着手することが、ご家族全員にとって最も賢明な選択です。
韓国籍の方の相続手続きの基本的な流れと必要書類
それでは、実際に日本の不動産を相続する際の手続きは、どのような流れで進むのでしょうか。ここでは、基本的なステップと、各段階で必要となる主な書類について解説します。手続きの全体像を把握しておきましょう。
Step1:韓国の戸籍等を取得し、相続人を確定する
まず最初に行うのは、亡くなった方の韓国の戸籍(除籍謄本や家族関係登録事項別証明書など)を集め、法律上の相続人が誰なのかを確定させる作業です。
これらの書類は、駐日韓国大使館や総領事館で請求することができます。請求できるのは、本人、配偶者、直系血族(親子や祖父母・孫)とその代理人です。郵送での請求も可能ですが、必要書類の準備や申請書の記入など、慣れない方には少し分かりにくいかもしれません。地域の「民団(在日本大韓民国民団)」を通じて取得を代行してもらうこともできます。
もし亡くなった方が日本に帰化している場合は、日本人としての戸籍謄本だけでなく、帰化する前の韓国の戸籍(除籍謄本)も必要になります。なぜなら、帰化前の韓国籍のときに生まれたお子さんがいないかなどを確認する必要があるからです。このように、ケースごとに集めるべき書類が変わる点も、手続きを難しくする一因です。

Step2:相続人全員で遺産分割協議書を作成する
相続人が確定したら、相続人全員で遺産の分け方について話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。
話し合いがまとまったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」という書類を作成します。この書類には、相続人全員が署名し、実印を押印します。そして、それぞれの印鑑が本物であることを証明する「印鑑証明書」を添付します。
相続人の中に日本に住民登録がない方(海外在住の方など)がいる場合は、日本の印鑑証明書が取得できないため、代わりに現地の公証人が作成した「サイン証明書」などが必要となり、手続きがさらに煩雑になります。
Step3:法務局へ相続登記(不動産の名義変更)を申請する
必要な書類がすべて揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に、不動産の名義変更(相続登記)の申請を行います。申請書に、これまで集めてきた韓国の戸籍関連書類とその翻訳文、遺産分割協議書、日本の役所で取得した書類などをすべて添付して提出します。
- 司法書士の現場から:川崎での実例から見る登記のポイント
以前、当事務所がある川崎市にお住まいだった韓国籍の方の相続登記をお手伝いしたことがあります。川崎にはコリアンタウンもあり、多くの韓国にルーツを持つ方々が暮らしています。そのご依頼も、まさに「日本の不動産をどうすれば…」というご相談から始まりました。
日本人の相続であれば市区町村役場を回って戸籍を集めますが、今回は韓国の戸籍が必要です。駐日韓国大使館へ直接請求する方法もありますが、お急ぎでなければ、地域の「民団(在日本大韓民国民団)」を通じて取得を代行してもらうこともできます。今回はその方法を利用し、戸籍の取得から日本語への翻訳までスムーズに進めることができました。
登記申請の際、一つ注意点があります。外国籍の方のお名前を登記簿に記載する場合、漢字やカタカナ表記のほかに、ローマ字(アルファベット)表記も併記する必要があります。幸い、今回のご相続人様の住民票には漢字氏名とローマ字氏名の両方が記載されていたため、そのまま登記することができました。もし住民票にローマ字表記がない場合は、どのような表記にするかご本人に確認し、私たちが作成することもあります。こうした細やかな実務上の知識と経験が、手続きを円滑に進める上で非常に重要になります。
複雑な手続きは専門家へ。司法書士に依頼するメリットと費用
ここまでお読みいただき、韓国籍の方の相続手続きがいかに専門的で手間のかかるものか、お分かりいただけたかと思います。もちろん、ご自身で手続きを進めることも不可能ではありません。しかし、時間と労力、そして何より精神的な負担を考えると、相続の専門家である司法書士に依頼することも有効な選択肢の一つです。
司法書士に任せれば、面倒な手続きから解放されます
司法書士にご依頼いただく最大のメリットは、煩雑で複雑な手続きのほぼすべてを任せられることです。具体的には、以下のような作業をすべて代行いたします。
- 韓国の戸籍(除籍謄本・家族関係証明書など)の収集
- 収集したすべての書類の日本語への翻訳
- 日本の役所で必要となる書類(住民票、固定資産評価証明書など)の取得
- 法的に有効な遺産分割協議書の作成サポート
- 法務局への相続登記申請
- 金融機関での預貯金の解約・名義変更手続き
平日の昼間に役所や法務局、金融機関へ何度も足を運ぶ必要はありません。慣れない書類の作成に頭を悩ませることもありません。あなたは専門家からの報告を待つだけで、正確かつスムーズに手続きが完了します。大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、少しでも心穏やかに過ごすためにも、専門家の力をぜひご活用ください。
韓国籍の方の相続手続きにかかる費用の目安
専門家に依頼するとなると、やはり費用が気になることでしょう。韓国籍の方の相続手続きを司法書士に依頼した場合の費用は、大きく「司法書士報酬」と「実費」の2つに分かれます。
【司法書士報酬の目安】
不動産の名義変更(相続登記)を含む基本的な手続きで、15万円~が一つの目安となります。ただし、相続人の数、不動産の数や評価額、韓国戸籍の収集・翻訳の難易度などによって変動します。
【実費】
実費とは、手続きに必ずかかる費用のことです。主なものに以下の費用があります。
- 登録免許税:不動産の名義変更時に法務局へ納める税金です。(不動産の固定資産税評価額 × 0.4%)
- 書類取得費用:韓国の戸籍や日本の住民票などを取得する際の手数料です。
- 交通費、郵送費など
当事務所では、ご相談いただいた際に、お客様の状況を詳しくお伺いした上で、通常は事前に見積りを提示します。事情により追加の実費や調査費用が発生する場合がありますので、その際は都度ご説明します。内訳も丁寧にご説明し、ご納得いただいてから手続きを進めますので、どうぞご安心ください。
川崎・横浜でのご相談なら、いがり円満相続相談室へ
韓国籍の方の相続手続きは、法律の知識だけでなく、特殊な書類の取り扱いや実務上のノウハウが求められる専門的な分野です。どの専門家に相談するかで、手続きのスムーズさやご自身の負担は大きく変わってきます。
いがり円満相続相談室(いがり綜合事務所)は、神奈川県川崎市・横浜市を中心に、年間多数の相続手続きをサポートする相続専門の司法書士事務所です。
当事務所の強みは、司法書士である代表の猪狩が、最初のご相談から手続き完了まで、責任をもって一貫して対応させていただくことです。流れ作業のように大量の案件を処理するのではなく、お一人おひとりのご事情や不安な気持ちに寄り添い、最も良い解決策をご提案いたします。(代表:司法書士 猪狩 佳亮/神奈川県司法書士会所属/事務所所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号)
また、お仕事でお忙しい方でもご相談しやすいよう、平日夜間(19時、20時開始)や土日祝日のご相談にも柔軟に対応しております。
「何から手をつけていいか分からない」「自分の場合はどうなるのか詳しく知りたい」
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まずは、お気軽にお問い合わせください。初回のご相談(事務所でのご面談・60分まで)は無料です。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
