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川崎市の実家が空き家に…他人事ではない放置のリスク
「実家を相続したけれど、自分は別の場所に家があるし、とりあえずそのままにしている」
川崎市内にお住まいの方、あるいは市内にご実家がある方で、このように考えている方は少なくないかもしれません。しかし、その「とりあえず」が、思いもよらない深刻な事態を引き起こす可能性があることをご存知でしょうか。
先日、当事務所にも川崎市にお住まいの方から、切実なご相談が寄せられました。
2年前にお母様を亡くされ、ご実家は空き家のまま。相続人はご相談者と県外にお住まいの妹様の2人ですが、「私は戻る予定はないから、お兄ちゃんに任せる」という状況で、具体的な対策は先送りになっていました。固定資産税だけは支払い、年に1回草むしりをするという、いわば“なんとなくの維持”を続けていたそうです。
しかし、ある日を境に状況は一変します。ご近所の方から、「庭木が道路にはみ出しています」「この前の台風で瓦が落ちかけていました」といった連絡が相次いで入ったのです。
慌てて状況を詳しく調べてみると、
- そもそも相続登記が未了だった
- 建物は昭和50年代の建築で、老朽化が進んでいる
- このままでは、行政から「特定空家」に指定される可能性がある
といった問題が次々と明らかになりました。ご相談者様は、漠然とした不安が現実のリスクとして目の前に突きつけられたのです。
このケースは、決して特別な話ではありません。川崎市内で空き家をお持ちの、すべての方に起こりうることです。この記事では、司法書士・行政書士の視点から、空き家を放置することの具体的なリスクと、川崎市で利用できる助成金制度などの解決策を分かりやすく解説していきます。あなたの「とりあえず」を、「具体的な一歩」に変えるためのお手伝いができれば幸いです。
空き家を放置する3つの深刻なリスク【専門家が解説】
空き家を放置することのリスクは、単に「もったいない」というレベルの話ではありません。経済的、法的、そして物理的な側面から、所有者に深刻な負担を強いる可能性があります。ここでは、専門家の視点から3つのリスクを体系的に解説します。

【経済的リスク】固定資産税の増額と資産価値の低下
多くの方が最も気になるのが、お金の問題ではないでしょうか。空き家を放置すると、2つの大きな経済的ダメージを受ける可能性があります。
一つは、固定資産税の増額です。通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。しかし、倒壊の恐れがあるなど、著しく保安上危険となる状態の「特定空家等」に行政から指定・勧告されると、この特例が解除されてしまいます。結果として、住宅用地の特例(課税標準の軽減)が外れ、固定資産税等の負担が大きく増える可能性があるのです。
もう一つは、資産価値の低下です。人が住まなくなった家は、換気が行われず湿気がこもるため、驚くほど速いスピードで劣化が進みます。柱が腐食したり、雨漏りが発生したりと、いざ売却しよう、あるいは貸そうと思ったときには、大規模な修繕が必要となり、資産価値が大きく目減りしてしまうケースが少なくありません。
ただ所有しているだけで、税金の負担は増え、資産の価値は下がっていく。これが空き家放置の経済的な現実です。相続財産には、相続税の申告が必要になる場合もあり、放置は百害あって一利なしと言えるでしょう。この措置については、国土交通省の資料でも詳しく解説されていますので、ご参照ください。固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置。
【法的リスク】相続登記の義務化と所有者責任
司法書士として特に警鐘を鳴らしたいのが、法的なリスクです。2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。これは、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、法務局に登記申請をしなければならないという制度です。正当な理由なくこの義務を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
この法改正の背景には、所有者不明の土地や空き家問題があります。登記がされないまま放置されると、誰が現在の所有者か分からなくなり、地域の再開発や災害復旧の妨げとなってしまうのです。冒頭の事例のように、相続した空き家の登記を先延ばしにしている方は、今すぐ手続きを進める必要があります。
さらに、忘れてはならないのが所有者としての責任(工作物責任)です。もし、管理不全な空き家が原因で第三者に損害を与えてしまった場合、その所有者は損害賠償責任を負わなければなりません。例えば、「強風で屋根瓦が飛んで隣の家の車を傷つけた」「老朽化したブロック塀が倒れて通行人が怪我をした」といったケースでは、所有者が多額の賠償金を請求される可能性があります。
より詳しい手順については、相続登記の義務化とは?罰則(過料)や期限を専門家が解説をご覧ください。
【物理的リスク】倒壊・火災・衛生環境の悪化
空き家は、その存在自体が周辺環境へのリスクとなります。特に深刻なのが、以下の3点です。
- 倒壊・破損の危険:老朽化した建物は、地震や台風などの自然災害で倒壊する恐れがあります。また、外壁や屋根の一部が剥がれ落ち、通行人や近隣の建物に被害を及ぼす危険性も常に付きまといます。
- 防犯上の問題:人の出入りがない空き家は、不審者の侵入や不法投棄のターゲットになりやすい傾向があります。最悪の場合、放火されるといった重大な犯罪につながるケースも報告されています。
- 衛生環境の悪化:庭の雑草が伸び放題になると、害虫や害獣が発生し、近隣住民の生活環境を脅かします。また、ゴミの不法投棄がさらなる不法投棄を呼び、地域の景観を損なう原因にもなります。
これらの物理的リスクは、近隣トラブルに直結します。冒頭の事例のように、最初は小さな苦情だったものが、対応を怠ることで大きな問題に発展し、地域社会との関係を悪化させてしまうのです。所有者には、空き家を適切に管理する社会的な責任があることを、強く認識する必要があります。
どうする?川崎市で利用できる空き家対策の選択肢
空き家を放置するリスクをご理解いただけたでしょうか。では、具体的にどのような対策を取ればよいのでしょう。ここからは、川崎市で利用できる制度を中心に、「解体」「活用」「売却」という3つの選択肢をご紹介します。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を検討してみてください。
このテーマの全体像については、相続における不動産売却の流れで体系的に解説しています。
選択肢①:解体して更地にする【市の助成金制度を活用】
建物が著しく老朽化している場合や、土地として活用・売却したい場合には、「解体」が有効な選択肢となります。しかし、解体には費用がかかるため、躊躇される方も多いでしょう。
そこで活用したいのが、川崎市の「住宅等不燃化推進事業」です。これは、地震時の火災延焼の危険性が高い「不燃化重点対策地区」内にある老朽建築物を解体(除却)する際に、費用の一部を補助してくれる制度です。
| 対象エリア | 川崎市が指定する「不燃化重点対策地区」 |
|---|---|
| 対象となる建物 | 旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に工事着手されたもの)など、一定の要件を満たす建築物 |
| 補助金額 | 実費(工事請負契約額)等に補助率を乗じて算定した額などのうち最も低い金額(上限100万円) |
ご自身の実家が対象エリアに含まれるか、また建物の条件を満たすかなど、詳細な要件については川崎市のホームページで確認が必要です。この事業は令和7年度末までの時限的な制度とされていますので、解体を検討している方は早めに情報を収集し、準備を進めることをお勧めします。
解体して更地にすれば、倒壊や火災のリスクはなくなりますし、土地の売却や駐車場としての活用など、次のステップに進みやすくなります。ただし、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなる点には注意が必要です。価値のない負動産となってしまうリスクも考慮し、計画的に進めましょう。

選択肢②:活用する【市の空家マッチング制度とは?】
「解体や売却はまだ考えられないけれど、管理の手間は減らしたい」という方には、川崎市の「空家マッチング制度」が選択肢の一つになります。
これは、空き家の所有者と、その空き家を地域貢献活動(地域交流の場、子育て支援、福祉施設など)に利用したい団体とを市が仲介(マッチング)する制度です。いわゆる一般的な「空き家バンク」が移住定住を主な目的としているのに対し、川崎市の制度は地域コミュニティの活性化に重点を置いているのが特徴です。
【所有者のメリット】
- 管理負担の軽減:利用団体が建物の維持管理を行ってくれる場合があります。
- 社会貢献:思い出のある実家を、地域のために役立てることができます。
- 賃料収入の可能性:契約内容によっては、賃料収入を得ることも可能です。
ただし、市はあくまで情報の提供や紹介を行うのみで、契約交渉には直接関与しません。契約条件などの交渉は、所有者と利用団体が直接行う必要があります。すぐに売却する予定はないけれど、空き家を有効に活用してほしい、という思いがある方にとっては、検討する価値のある制度と言えるでしょう。
選択肢③:そのまま売却する【専門家を通すメリット】
管理の手間や固定資産税の負担から解放されたい、あるいはまとまった資金が必要、という場合には、「売却」が最も現実的な解決策となります。
建物がまだ十分に使える状態であれば、解体せずに中古戸建としてそのまま売却する方が、解体費用がかからない分、手元に残るお金が多くなる可能性があります。
ここで一つ、実務家としてのアドバイスがあります。空き家の売却を考えたとき、多くの方はまず不動産会社に査定を依頼するでしょう。しかし、複数の会社に直接連絡すると、その後、各社から頻繁に営業の電話がかかってきて対応に追われてしまう、というデメリットがあります。
そこでお勧めしたいのが、司法書士などの専門家を窓口にする方法です。私たちのような事務所にご相談いただければ、提携している複数の不動産会社へ、こちらから査定を依頼することが可能です。各社からの連絡はすべて当事務所が受けますので、お客様は煩わしい営業電話に悩まされることなく、査定結果を比較検討し、冷静に判断することができます。
特に、相続した不動産の売却は、相続人同士での調整が必要になるなど、通常の不動産売却とは異なる難しさがあります。専門家を間に挟むことで、手続きをスムーズに進めることができるのです。
助成金申請から相続登記まで、専門家ができること
川崎市内の空き家問題は、相続、法律、税金、不動産といった様々な分野の知識が絡み合う、非常に複雑な問題です。この記事を読んで、「何から手をつければいいのか分からない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時こそ、私たち司法書士・行政書士にご相談ください。当事務所では、以下のようなサポートをワンストップで提供することが可能です。
- 相続登記の代行:義務化された相続登記を、戸籍の収集から法務局への申請まで一括で代行します。
- 助成金申請のサポート:川崎市の「住宅等不燃化推進事業」など、各種助成金制度の利用に向けた書類作成や手続きのサポートを行います。
- 売却査定の手配:提携する不動産会社への査定依頼を代行し、お客様の窓口を一本化します。
- 遺産分割協議書の作成:相続人間での話し合いがまとまった際に、法的に有効な書類を作成します。
空き家問題の解決には、まず現状を正確に把握し、ご自身の状況に合った選択肢を検討することが第一歩です。一人で悩まず、まずは専門家の意見を聞いてみませんか。川崎市内の空き家に関する無料相談も実施しておりますので、川崎市内の空き家でお困りの方は、どうぞお気軽にご連絡ください。あなたの不安を安心に変えるお手伝いをいたします。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
