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原野商法の土地を相続…負動産の対処法を専門家が解説

2025-12-17

もしかして「負動産」?親が遺した謎の土地に悩んでいませんか

「親の遺品を整理していたら、見たこともない土地の権利証が出てきた…」
「住所を調べてみたら、北海道や栃木県の山林。Googleマップで見ても、ただの森にしか見えない…」
「もしかして、昔流行ったという『原野商法』なのだろうか…」

突然現れた謎の土地の存在に、どう対処すればよいか分からず、途方に暮れてはいませんか?

価値があるのかどうかも分からない土地のために、手続きを進めるのは気が重いですよね。固定資産税や管理費がかかるなら、むしろマイナスの財産、いわゆる「負動産」かもしれません。ご自身の代で何とかしたい、子どもたちにこの厄介な問題を残したくない、と考えるのは当然のことです。

ご安心ください。この記事では、相続を専門とする司法書士が、あなたと同じように悩む多くの方々からご相談を受けてきた経験をもとに、原野商法の土地をはじめとする「負動産」を相続してしまった場合の対処法を、順を追って分かりやすく解説します。

この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の状況を正しく理解し、これから何をすべきか、具体的な解決策の選択肢を知ることができます。一人で抱え込まず、まずは一緒に問題解決への第一歩を踏み出しましょう。

まず落ち着いて現状把握を。その土地はどんな土地ですか?

漠然とした不安を解消するためには、まずご自身が相続した土地がどのようなものなのかを客観的に把握することが大切です。よく耳にする「原野商法」とは一体何なのか、そしてそれ以外に「負動産」と呼ばれるものにはどんな種類があるのかを見ていきましょう。

原野商法の仕組みを解説する図解。悪徳業者から価値のない土地を買わされ、数十年後に相続人が困る様子が描かれている。

「原野商法」とは?なぜ今、問題になっているのか

原野商法とは、「将来必ず値上がりする」「ここに道路やリゾート施設ができる計画がある」といった、将来性を期待させる巧みなセールストークで、実際にはほとんど資産価値のない山林や原野を高値で売りつける悪質な商法のことです。

1970年代から80年代の高度経済成長期に流行しましたが、当時はインターネットもなく、現地を確認せずに契約してしまう方が多くいました。そして数十年が経ち、当時土地を購入した世代の方々が亡くなり、相続が発生することで、その子ども世代である私たちが「価値のない土地」という形で問題に直面しているのです。

さらに注意が必要なのは、二次被害です。一度原野商法の被害に遭った方の名簿が出回っており、「あなたの土地を高値で買いたい人がいる」などと別の業者が連絡してきて、測量費用やコンサルティング料といった名目で新たにお金をだまし取ろうとするケースもあります。うまい話には十分にご注意ください。

原野だけじゃない。「負動産」と呼ばれる不動産の例

「負動産」とは、持っていても利益を生まず、むしろ固定資産税や管理費などの維持費がかかるだけで、売ることも貸すことも難しい、お荷物になってしまった不動産の総称です。原野商法の土地以外にも、以下のようなものが該当します。

  • 管理費がかかるリゾートマンションや別荘地の土地:バブル期に開発されたものの、今では利用価値が低く、買い手がつかない。しかし、管理費や修繕積立金の負担だけが重くのしかかります。軽井沢などの有名避暑地でも、場所によってはこうした物件が見られます。
  • 再建築が難しい土地:建築基準法の道路に接していない(接道義務を満たさない)土地や、市街化調整区域内の土地など、新たな建物を建てることが制限されているため、買い手がほとんど現れません。
  • 買い手がつかない地方の空き家:人口減少や過疎化が進む地域にある空き家は、たとえ建物がしっかりしていても、需要がなく売却が困難なケースが多くあります。

このように、「資産」だと思っていた不動産が、時代の変化とともに「負債」に変わってしまう可能性があるのです。

相続登記は必須!負動産でも名義変更が必要な理由

「価値がないどころか、マイナスになるかもしれない土地なのに、わざわざ費用をかけてまで自分の名義に変更しないといけないの?」

これは、ご相談者様から最も多く寄せられる疑問の一つです。お気持ちは非常によく分かります。しかし、専門家として明確にお伝えしなければなりません。たとえ負動産であっても、相続登記(相続による名義変更)は必ず行う必要があります。

2024年4月1日から相続登記の義務化とは?罰則(過料)や期限を専門家が解説で詳しく解説している通り、不動産を相続したことを知った日から3年以内に正当な理由なく相続登記を行わない場合、法務局の手続に基づき10万円以下の過料の対象となる可能性があります(個別の事情により過料が科されない場合もあります)。

しかし、理由はそれだけではありません。最も重要なのは、「相続登記をしなければ、次の一歩に全く進めない」という事実です。

例えば、後ほど解説する「国に土地を引き取ってもらう制度」の利用や、「専門業者に引き取ってもらう」といった処分を検討するにしても、その土地の登記上の所有者が亡くなった方のままでは、誰も手続きに応じてくれません。相続登記を完了させ、ご自身が正式な所有者になって初めて、その土地を手放すためのスタートラインに立てるのです。

面倒に感じるかもしれませんが、相続登記は避けて通れない、問題解決のための最初のステップだとご理解ください。

参考:【法務省/相続登記の義務化】不動産を相続したらかならず相続登記をしましょう!

司法書士に負動産相続の相談をしている夫婦のイメージ。専門家のアドバイスで安心している様子。

【司法書士の相談事例】父が遺した北海道の土地、どうすれば?

ここで、当事務所に実際に寄せられたご相談の中から、多くの方が共感できる事例を一つご紹介します。これは、あなたの悩みを解決するヒントになるかもしれません。

【ご相談者様の状況】
「父が亡くなり、自宅の相続手続きを進めていたところ、全く知らなかった北海道の土地を所有していることが登記簿で判明しました。母に聞いてみると、『昔、将来値上がりすると言われて買わされた土地だ』と…。Googleマップで見てみましたが、一面の森林で、今後開発される見込みもなさそうです。父が騙された原野商法の土地のようです。」

【ご相談者様の悩み】
「このままでは、この価値のない土地を私たちが引き継ぐことになります。相続登記は義務だと聞きましたが、名義変更したとして、その後どうにかして手放す方法はないのでしょうか?国が引き取ってくれる制度(国庫帰属制度)があると聞いたのですが、この土地でも使えるのでしょうか?」

このご相談は、まさに原野商法の土地を相続した方の典型的なお悩みです。私はまず、ご相談者様の不安な気持ちに寄り添い、状況を整理することから始めました。

そして、専門家として以下のようにお答えしました。

【司法書士からのアドバイス】

  1. まず、相続登記は必ず必要です。これを済ませないと、手放すための選択肢を検討することさえできません。
  2. ご期待の国庫帰属制度ですが、お話を伺う限り、樹木が生い茂っている状況とのこと。残念ながら、国が管理に手間がかかると判断する土地は引き取ってもらえないため、この土地で制度を利用するのは難しい可能性が高いです。
  3. しかし、諦める必要はありません。費用はかかりますが、こうした土地を専門に引き取ってくれる民間業者も存在します。もしご希望があれば、当事務所で提携しているわけではありませんが、過去の実績等から参考として業者に関する情報を提供することは可能です。ただし、契約はお客様ご自身の判断と責任でお願いいたします。
  4. この土地は固定資産税がかかっていないようですので、急いで処分せず、ひとまずそのまま保有するという選択肢もあります。ただし、場所によっては管理費がかかるケースもあるため、その点は確認が必要です。

まずは相続登記を済ませ、その上でどの選択肢がご家族にとって最善か、一緒に考えていきましょう。

このように、専門家が介入することで、漠然とした不安が具体的な選択肢に変わります。「どうしようもない」と諦める前に、まずは現状を整理し、どのような道筋があるのかを知ることが何よりも大切なのです。

負動産を手放すための4つの選択肢を徹底比較

相続登記を終えた後、具体的にどのような選択肢があるのでしょうか。ここでは、考えられる4つの方法について、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら解説します。ご自身の状況に合った最適な方法を見つけるための参考にしてください。

負動産を手放すための4つの選択肢(相続放棄、国庫帰属制度、引き取り業者、寄付・売却)のメリット・デメリットを比較した図解。

①相続放棄:他の財産もすべて手放す覚悟が必要

相続放棄とは、家庭裁判所に申し立てることで、初めから相続人ではなかったことになる手続きです。負動産を引き継がなくて済むという強力な効果がありますが、最大の注意点は「特定の財産だけを選んで放棄することはできない」という点です。

つまり、原野商法の土地だけを放棄し、預貯金やご実家といったプラスの財産だけを受け継ぐことはできません。相続放棄をする場合は、すべての財産を手放すことになります。また、原則として「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」という期限があります。

他にめぼしい財産がなく、借金などマイナスの財産の方が多い場合に有効な選択肢ですが、慎重な判断が必要です。詳しくは「相続放棄について」のページもご覧ください。

②相続土地国庫帰属制度:原野商法の土地では難しい現実

相続土地国庫帰属制度は、一定の要件を満たす土地を、国に引き取ってもらう制度です。まさに夢のような制度に聞こえますが、利用するためのハードルは非常に高いのが現実です。

国は、管理しやすい「きれいな土地」しか引き取ってくれません。法律では、以下のような土地は却下または不承認となる可能性があると定められています。

  • 建物や工作物が存在する土地
  • 担保権などが設定されている土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 崖や擁壁があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 樹木が生い茂っているなど、通常の管理を妨げるものが存在する土地

残念ながら、原野商法の対象となる山林や原野の多くは、最後の「樹木が生い茂っている土地」に該当するため、この制度の利用は極めて難しいと言わざるを得ません。また、承認された場合、申請手数料や10年分の土地管理費相当額などの負担金を国に納める必要があります。負担金の額は土地の状況に応じて算定されるため、具体的な金額については法務局の窓口で確認が必要です。

参考:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の類型について

③引き取り業者への依頼:現実的な選択肢だが注意が必要

国庫帰属制度の利用が難しい場合に、最も現実的な選択肢となるのが、費用を支払って負動産を引き取ってもらう専門業者への依頼です。

メリットは、国のような厳しい条件がなく、スピーディーに手放すことができる点です。手続きも業者が代行してくれることが多く、手間がかかりません。

一方、デメリットは費用がかかることと、中には悪徳業者が存在することです。費用は土地の場所や状況によって大きく異なりますが、数十万円から百万円以上かかるケースも珍しくありません。複数の業者から見積もりを取り、慎重に検討することが重要です。

④寄付・売却:可能性は低いが検討の価値あり

最後の選択肢として、寄付や売却も考えられます。例えば、隣の土地の所有者が「自分の土地と一体で利用したい」と考えていれば、安価で買い取ってくれる可能性があります。また、自治体や近隣の法人が何らかの目的で土地を探していれば、寄付を受け付けてくれるかもしれません。

しかし、これはあくまで可能性の話です。資産価値の低い原野商法の土地の場合、買い手や寄付先を見つけるのは極めて困難であり、現実的な解決策になりにくいことを正直に伝えておいた方がよいでしょう。

悪徳業者に注意!信頼できる引き取り業者の見分け方

引き取り業者への依頼を検討する際、最も気をつけたいのが悪徳業者の存在です。せっかくお金を払って手放したつもりが、後でトラブルに巻き込まれては元も子もありません。信頼できる業者を見分けるために、以下の点を必ずチェックしましょう。

信頼できる負動産引き取り業者を見分けるためのチェックリストを図解したもの。
  • 契約内容を書面で明確に示してくれるか?
    費用やサービス内容、引き渡し後の責任の所在など、契約内容を曖昧にせず、きちんと書面(契約書)で交付してくれる業者を選びましょう。
  • 「高値で売れる」など、うまい話をしてこないか?
    「この土地は実は価値がある」「売却できる可能性がある」などと期待を持たせ、測量費や広告費といった名目で高額な費用を請求してくるのは、二次被害を狙った悪徳業者の典型的な手口です。
  • 不動産の取引形態と許認可を確認する
    不動産の売買を仲介(媒介)する場合には、宅地建物取引業の免許が必要です。仲介を依頼する際は、業者が免許を持っているか確認しましょう。一方で、業者が自ら買主となって直接土地を買い取る場合は、宅建業の免許は必須ではありません。取引の形態をよく確認することが大切です。
  • 登記手続きまで責任を持って行ってくれるか?
    「引き取る」と言いながら、名義変更の登記手続きをせず、固定資産税の納税義務があなたの元に残り続けるという最悪のケースもあります。契約内容に、所有権移転登記までを責任を持って行うことが明記されているかを確認しましょう。

どの業者が信頼できるか判断がつかない場合は、私たちのような相続の専門家にご相談ください。過去の実績などから、信頼できる業者をご紹介することも可能です。

まとめ:一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください

親御さんが遺した、価値の分からない土地。その存在は、あなたの心に大きな不安と負担をもたらしていることでしょう。しかし、この記事を読んで、決して「打つ手がない」わけではないことをご理解いただけたのではないでしょうか。

負動産の問題を解決するためのステップを、最後にもう一度確認しましょう。

  1. まずは相続登記を必ず済ませる。これが問題解決のスタートラインです。
  2. 土地の状況を把握し、手放すための選択肢を検討する。(相続放棄、国庫帰属、業者への依頼など)
  3. それぞれのメリット・デメリットを比較し、ご自身の状況に最適な方法を選択する。

どの選択肢がベストなのかは、土地の状況はもちろん、他の相続財産の状況や、ご家族の意向によっても大きく異なります。「自分たちの場合はどうすればいいのだろう?」「手続きが複雑で、何から手をつければいいか分からない」と感じたら、どうか一人で悩みを抱え込まないでください。

私たち、いがり円満相続相談室(司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所)は、相続分野に注力している司法書士事務所です。あなたの状況を丁寧にお伺いし、専門家の視点から最適な解決策を一緒に考え、煩雑な手続きを代行することで、あなたの不安を「安心」に変えるお手伝いをいたします。

まずは、お気軽にご相談ください。あなたのその一歩が、問題解決の大きな前進に繋がります。


【事務所情報】
名称: 司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所(屋号:いがり円満相続相談室)
代表者: 司法書士 猪狩 佳亮(神奈川県司法書士会所属)
所在地: 〒210-0012 神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号

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2022-04-23

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代表司法書士 猪狩佳亮

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