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相続登記の費用が不安ですか?まず課税明細書で概算を把握しましょう
大切なご家族が亡くなられ、相続手続きを進める中で、「相続登記には一体いくらかかるのだろう?」という費用に関するご不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。ご自身で手続きをされる場合でも、専門家である司法書士にご依頼いただく場合でも、費用が不透明なままでは、なかなか次の一歩を踏み出しにくいものです。
実際、多くのご相談者が初回面談で費用についてご質問されます。相続登記にかかる費用は、主に私たち司法書士にお支払いいただく「報酬」と、法務局に納める税金である「登録免許税」の2つに分けられます。
このうち、ご自身で概算を把握しやすいのが「登録免許税」です。そして、その計算の鍵を握るのが、毎年4月から6月頃にご自宅へ送られてくる「固定資産税の課税明細書」なのです。
司法書士による初回相談の舞台裏:なぜ課税明細書が重要なのか
私たち、いがり綜合事務所では、初回の無料相談の際に「固定資産税の課税明細書があればぜひお持ちください」とお願いしています。なぜなら、この書類さえあれば、その場で登録免許税を計算し、司法書士報酬を含めたお見積りの概算額をすぐにお伝えできるからです。
課税明細書に記載されている不動産の「評価額」という数字がわかれば、登録免許税は原則としてその合計額から算出した課税標準額に0.4%を乗じて算出しますが、後述する免税措置の対象となる場合など、例外もあります。戸建てであれば比較的シンプルですが、マンションの場合は敷地の評価額を按分計算する必要があるなど、少し複雑になります。
しかし、ご安心ください。この記事では、その計算方法と課税明細書の読み方を、専門家が分かりやすく解説します。読み終える頃には、ご自身で費用の概算を把握できるようになり、漠然とした不安が解消されているはずです。まずはご自身で費用感を掴んでいただき、その上で安心して専門家にご相談いただければ幸いです。
【見本で解説】相続登記の登録免許税計算は課税明細書の「価格」欄を見る
登録免許税を計算するために、まずお手元の固定資産税課税明細書をご用意ください。自治体によって書式は異なりますが、必ず「価格」または「評価額」と記載された欄があります。この数字が計算の基礎となります。
例えば、東京都や川崎市の課税明細書では、「価格」という名称で記載されています。土地と家屋、それぞれについてこの欄の金額を確認しましょう。
ステップ1:不動産の「価格」または「評価額」を合計する
最初に、課税明細書に記載されているすべての不動産の「価格(評価額)」を合計します。土地が複数あればすべて足し、建物があればその価格も加えます。
- 土地Aの価格:10,123,456円
- 土地Bの価格: 2,000,000円
- 建物の価格: 5,234,567円
合計額: 10,123,456円 + 2,000,000円 + 5,234,567円 = 17,358,023円
ステップ2:合計額の1,000円未満を切り捨て「課税標準額」を出す
次に、ステップ1で算出した合計額の1,000円未満の端数を切り捨てます。この切り捨て後の金額が、法律上の「課税標準額」となります(国税通則法第118条)。なお、計算の結果、課税標準額が1,000円未満となる場合は1,000円として扱います。
例:17,358,023円 → 1,000円未満を切り捨て → 17,358,000円(これが課税標準額)
ステップ3:課税標準額に税率0.4%を掛けて登録免許税を計算する
最後に、ステップ2で算出した課税標準額に、相続登記の税率である0.4%(1000分の4)を掛け合わせます。これで登録免許税が算出されます。
計算式:17,358,000円 × 0.4% = 69,432円
計算して出た金額に100円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てます(国税通則法第119条)。この例では端数がないため、納付する登録免許税は69,400円となります。(※計算結果の100円未満は切り捨てるルールのため、69,432円の場合は69,400円となります)
【ケース別】間違いやすい不動産の登録免許税計算方法
基本的な計算方法は上記のとおりですが、不動産の種類によっては少し注意が必要です。ここでは、特にご質問の多い「マンション」「共有持分」「私道」のケースについて解説します。

マンション:専有部分と敷地権の評価額を合算する
マンションの場合、お部屋である「専有部分」と、そのマンションが建っている土地の権利である「敷地権」の2つの評価額を合算して計算します。
- 専有部分の評価額:課税明細書に記載されている「家屋」の価格をそのまま使います。
- 敷地権の評価額:課税明細書には「敷地全体の評価額」が記載されています。この金額に、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている「敷地権の割合」を掛け合わせて算出します。
【計算例】
- 専有部分の価格:8,000,000円
- 敷地全体の価格:500,000,000円
- 敷地権の割合:10000分の50
敷地権の評価額:500,000,000円 × (50 / 10000) = 2,500,000円
不動産の評価額合計:8,000,000円 + 2,500,000円 = 10,500,000円
この合計額10,500,000円を基に、前述のステップ2、ステップ3の計算を進めます。
共有持分:不動産全体の評価額に持分割合を掛ける
不動産を複数人で共有している場合、亡くなった方(被相続人)が所有していた「持分」のみが相続の対象となります。そのため、登録免許税の計算もその持分に応じて行います。
計算手順は、まず不動産全体の評価額を算出し、それに被相続人の持分割合を掛けて、持分相当額を算出します。その金額を基に登録免許税を計算します。
【計算例】
- 土地全体の評価額:20,000,000円
- 被相続人の持分:2分の1
持分相当の評価額:20,000,000円 × 1/2 = 10,000,000円
この10,000,000円を課税標準額として、税率0.4%を掛けて登録免許税(40,000円)を算出します。
私道(公衆用道路):課税明細書にない場合の評価額算出方法
ご自宅の前の道路が私道で、その持分を所有しているケースは少なくありません。しかし、その私道が「公衆用道路」として利用されている場合、固定資産税が非課税となっていることが多く、課税明細書に記載されていないことがあります。
これは相続登記で最も見落としやすいポイントの一つです。課税明細書に記載がないからといって私道の登記を忘れてしまうと、将来その不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりする際に、大きなトラブルの原因となります。
課税明細書に記載がない私道の評価額は、法務局に確認の上、以下の方法で算出するのが一般的です。
- 路線価の確認:役所で固定資産税路線価図を取得し、私道が接する道路の路線価を調べます。
- 評価額の算出:「路線価 × 私道の面積 × 0.3」という式で評価額を計算します。(※自治体や状況により異なる場合があります)
この計算は専門的な知識を要するため、ご自身での判断が難しい場合もございます。私道の存在が疑われる場合は、専門家である司法書士にご相談ください。

知っておきたい登録免許税の免税措置
一定の要件を満たす場合、相続登記の登録免許税が免税となる制度があります。代表的なものを2つご紹介します。
1. 数次相続における免税措置
相続登記をしないうちに相続人が亡くなってしまい、次の相続が開始した場合(数次相続)において、最初の相続の相続人が不動産を取得する登記については、登録免許税が免税となります。この措置は、法改正により適用期限が延長され、令和9年(2027年)3月31日までとされています。
2. 土地の価額が100万円以下の場合の免税措置
相続によって取得した土地の価額(評価額)が100万円以下の場合、その土地の相続登記にかかる登録免許税は免税となります。この措置は、法改正により適用期限が延長され、令和10年(2028年)3月31日までとされています。
これらの免税措置には細かい適用要件がありますので、該当する可能性がある場合は、専門家にご確認いただくことをお勧めします。
計算が複雑?費用が不安?専門家への相談で解決のお手伝いをします
ここまで登録免許税の計算方法について解説してきましたが、「マンションの計算が複雑だ」「私道があるかどうかわからない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。また、ご自身で計算してみたものの、その金額が本当に正しいのか、不安に思われることもあるでしょう。そのようなご不安をお持ちの場合、専門家である私たち司法書士にご相談いただくことで、お悩みの解消に向けたサポートが可能です。
相続登記は、単に税金を計算して申請すれば終わり、という単純な手続きではありません。戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、そして今回解説した私道のような「隠れた不動産」の調査など、専門的な知識と経験が不可欠です。
もし少しでもご不安があれば、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。費用に関する漠然とした不安を解消し、安心して手続きを進めるためのお手伝いをさせていただきます。
当事務所の無料相談でできること:概算費用の即時提示
当事務所の無料相談に固定資産税の課税明細書をお持ちいただければ、その場で司法書士報酬と登録免許税を含めた総額の概算見積もりを提示いたします。
事前に費用が明確になることで、安心してご依頼いただけます。もちろん、ご相談いただいたからといって、無理に依頼を勧めることは一切ございません。平日夜間や土日のご相談にも対応しておりますので、お仕事でお忙しい方も、まずはお気軽にお問い合わせください。
ただし、前述の私道のように課税明細書に記載されていない不動産が後から判明する場合もございますので、お示しする費用はあくまで概算となります点はご了承ください。
まずは、無料相談で相続登記の費用を確認することから始めてみませんか。ご相談は、下記表示の司法書士事務所にて承ります。
ご相談から相続登記完了までの流れ
実際に当事務所にご依頼いただいた場合の、一般的な手続きの流れは以下の通りです。
- 無料相談・お見積りのご提示:お客様の状況を丁寧にお伺いし、手続きの流れと費用について分かりやすくご説明します。
- ご依頼・必要書類のご案内:正式にご依頼いただいた後、手続きに必要な書類をご案内いたします。
- 書類収集・遺産分割協議書作成:当事務所が戸籍謄本等の必要書類を代行取得し、相続人様全員の合意内容に基づき遺産分割協議書を作成します。
- 登記申請:作成した書類に相続人の皆様から署名・押印をいただき、当事務所が法務局へ相続登記を申請します。
- 登記完了・書類のご返却:登記が完了しましたら、登記識別情報通知(権利証)やその他お預かりした書類一式をご返却し、手続きは終了です。
相続に関する煩雑な手続きはすべて専門家にお任せいただき、お客様のお手を煩わせることはありません。円満な相続の実現に向け、私たちが全力でサポートいたします。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
