同性パートナー・事実婚の相続|愛する人に財産と住まいを残す方法

Two men sit facing each other in a warm living room, holding hands and smiling as sunlight pours through a window; Japanese text overlays the image at the top.

同性パートナー・事実婚の相続対策は法律上どう扱われるか

長年連れ添い、人生の喜怒哀楽を分かち合ってきたパートナー。そのかけがえのない存在に、もしものことがあった時、二人の愛と生活は法的に守られるのでしょうか。

残念ながら、現在の日本の法律では、同性パートナーや事実婚といった法律上の婚姻関係にないお二人の間に「相続権」は認められていません。どれだけ深く愛し合い、事実上の家族として暮らしていても、法的には「他人」と見なされてしまう。これが、私たちが直面している厳しい現実です。

しかし、絶望する必要はありません。法律上の婚姻関係がない場合は、遺言書や契約などにより、ご自身の意思を法的に残す準備が重要です。

この記事では、パートナーの生活を守るために検討できる実務上の対策を整理します。このテーマの全体像については、生前対策の全体像と手順で体系的に解説しています。

対策をしていなかった場合に起こり得るAさんの事例

「こんなことになるなんて、思ってもみませんでした…」
そう言ってうつむくAさんの顔は、深い絶望と後悔に満ちていました。これは、私たちが実際に受けたご相談を基にした、決して他人事ではないお話です。

Aさんには、20年以上連れ添った同性のパートナーBさんがいました。二人の生活の基盤は、Bさん名義のマンション。共に働き、共に笑い、穏やかな日々を過ごしていました。将来への漠然とした不安はありつつも、「まだ先のこと」と具体的な対策は後回しにしていたのです。

その「まさか」は、突然訪れました。Bさんが急逝されたのです。その後、AさんはBさんのご兄弟から、マンションの退去を求める通知を受けました。

「このマンションは私たちが相続しました。つきましては、速やかに退去してください」

法律上、Bさんの財産を相続する権利は、ご兄弟にありました。AさんとBさんがどれだけ長く愛し合っていても、法の前ではAさんは「赤の他人」。思い出の詰まった住まいも、二人で築いた預貯金も、すべてBさんのご兄弟のものになってしまったのです。

「せめて、遺言書さえあれば…」

Aさんの涙は、法的な準備を怠ったことへの痛切な悔恨の表れでした。Bさんが「Aに全財産を遺す」という一文を遺してくれていれば、Bさんのご兄弟には遺留分(最低限の相続割合を主張する権利)がないため、Aさんは住み慣れた家を失うことはなかったのです。遺言書の有無が、パートナーの居住や財産承継に大きく影響する場合があります。遺言書作成が必要になりやすいケースは、まさにAさんのような状況を指します。

法的な書類を前にして不安な表情を浮かべる同性カップル

なぜパートナーに相続権がないのか?知っておくべき法の大原則

Aさんのような悲劇は、なぜ起きてしまうのでしょうか。それは、日本の相続制度が「戸籍」をベースに作られているからです。

民法では、亡くなった方の財産を相続できる人(法定相続人)の範囲と順位が厳格に定められています。配偶者は常に相続人となり(民法第890条)、それに加えて子、親、兄弟姉妹という順で相続権が移っていきます。

ここで重要なのは、法律上の「配偶者」とは、婚姻届を提出し、戸籍に記載されている人を指すという点です。そのため、同性パートナーや事実婚の相手は、この「配偶者」には含まれません。これが、パートナーに相続権がない根本的な理由なのです。

近年、多くの自治体で導入されている「パートナーシップ制度」は、お二人の関係を公的に証明し、行政サービスなどで便宜を図る素晴らしい制度です。しかし、これはあくまで自治体レベルの条例や要綱に基づくもので、法律上の婚姻とは異なります。したがって、パートナーシップ制度を利用していても、相続権が発生することはありません。この法的な限界を正しく理解しておくことが、対策を考える上での第一歩となります。相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、法律上の相続人を確定させる作業が不可欠なのです。

事実婚の相手の相続権が争われた裁判例でも、最高裁判所は相続権を認めていません。

パートナーの生活を守るために検討したい3つの法的対策

では、どうすれば法的な壁を乗り越え、パートナーの未来を守れるのでしょうか。ここでは、私たちが専門家として強く推奨する3つの法的防衛策をご紹介します。これらは、「財産」「住まい」「尊厳」という3つの側面から、あなたの想いを形にするための重要なツールです。遺言書で決められることは多岐にわたりますが、それだけでは不十分なケースもあります。

パートナーを守るための3つの法的対策(公正証書遺言、死後事務委任、その他の選択肢)を図解したインフォグラフィック

①財産と住まいを遺すために有効な「公正証書遺言」

パートナーに財産を遺すための最も基本的かつ強力な方法が「遺言書」の作成です。特に私たちが推奨するのは、公証役場で作成する「公正証書遺言」です。

自筆で書く遺言書と違い、公正証書遺言には以下のような絶大なメリットがあります。

  • 無効になるリスクが極めて低い:法律の専門家である公証人が内容を確認し、作成に関与するため、形式の不備によって無効になるリスクを抑えやすくなります。
  • 家庭裁判所の検認が不要:パートナーが遺言書を見つけても、すぐに相続手続きを開始できます。自筆証書遺言の場合、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していないときは、家庭裁判所の「検認」という手続きが必要です。
  • 原本が公証役場に保管される:紛失、盗難、改ざんのリスクがなく、安全性の高い方法で遺言の内容を保管できます。

遺言書には、「誰に(パートナーに)」「どの財産を(自宅マンションと預貯金のすべてを)」「どれだけ(全部)遺す」といった内容を明確に記載します。さらに、手続きをスムーズに進めるための「遺言執行者」をパートナーに指定しておくことも極めて重要です。

また、遺言書には法的な効力を持つ事項以外に、ご自身の想いを綴る付言事項という欄があります。ここに、なぜパートナーに財産を遺すのか、感謝の気持ちなどを記すことで、他の相続人との無用なトラブルを防ぐ心理的な効果も期待できるでしょう。

②もしもの時の手続きを託す「死後事務委任契約」

遺言書は「財産」を遺すためのものですが、それだけでは万全ではありません。人が亡くなった直後には、葬儀、埋葬、役所への届出、遺品整理など、膨大な手続きが発生します。しかし、法律上の親族でないパートナーは、これらの手続きを行う権限がありません。

「ご親族の方でないと…」と病院で遺体の引き取りを拒否されたり、手続きの場面で親族関係の確認を求められたり、といった悲しい事態が実際に起こり得るのです。

こうした事態を防ぎ、パートナーが故人の尊厳を守る手続きを滞りなく行えるようにするのが「死後事務委任契約」です。これは、生前のうちに「自分の死後の手続きをパートナーに託す」という内容の契約を公証役場などで結んでおくものです。

遺言書は主に財産の承継を定めるものですが、死後事務委任契約は葬儀・埋葬・行政手続きなど、死後の事務を誰に任せるかを定めるものです。この二つをセットで準備することで、初めてパートナーの未来を包括的に守ることができるのです。死後事務委任のメリットも確認しておくとよいでしょう。

③その他の選択肢:死因贈与・養子縁組・生命保険

遺言書以外にも、パートナーに財産を遺す方法はいくつかあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合わせて検討することが大切です。

  • 死因贈与契約:「私が死んだら、この不動産をあなたにあげます」という内容の契約を生前に結んでおく方法です。遺言と似ていますが、契約なので双方の合意が必要です。不動産を渡す場合は、死因贈与を原因とする所有権移転登記の手続きも検討する必要があります。
  • 養子縁組:パートナーと養子縁組をすれば、法律上の親子関係となり、子は法定相続人として相続権を得られます。非常に強力な方法ですが、名字の変更や、お二人の関係性が親子になることへの心理的な側面も考慮する必要があります。
  • 生命保険:生命保険の受取人をパートナーに指定しておく方法です。保険金は受取人固有の財産とみなされるため、相続人の介入なくスムーズに現金を受け取れます。ただし、遺せるのは現金のみで、不動産などの財産は対象外です。

どの方法が最適かは、お二人の関係性や財産状況、ご親族との関係によって異なります。安易に判断せず、専門家と一緒に最適な組み合わせを考えることが重要です。

遺言書作成で注意すべき「遺留分」という権利

「遺言書さえ書けば、すべて解決する」と考えるのは少し危険です。専門家として、注意すべき「遺留分」という権利についてお伝えしなければなりません。

遺留分とは、亡くなった方の兄弟姉妹を除く法定相続人(子や親など)に法律上保障された、最低限の遺産の取り分のことです。もし、あなたに子やご両親がいる場合、遺言書で「全財産をパートナーに遺す」と書いても、その相続人たちは「遺留分」に相当する金銭をパートナーに請求する権利(遺留分侵害額請求権)を持っています。

この権利を無視した遺言書は、かえってトラブルの火種になりかねません。

一方で、非常に重要なポイントがあります。それは、亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分がないということです。冒頭のAさんの事例のように、法定相続人が兄弟姉妹だけの場合は、遺言書で全財産をパートナーに遺す旨を記せば、兄弟姉妹から後で何かを請求される心配はありません。

ご自身の法定相続人が誰になるのか、そしてその相続人に遺留分があるのかを正確に把握した上で、将来の紛争リスクを踏まえた遺言書を作成することが重要です。場合によっては、遺贈という形で財産を遺すことも選択肢の一つとなります。

司法書士に相談し、安心した表情を浮かべる同性カップル

専門家に相談して相続対策を具体化する方法

ここまで様々な法的対策について解説してきましたが、「自分たちだけで適切に進められるだろうか」と不安に思われたかもしれません。その不安は、当然のものです。

法的な対策は、一つでも不備があれば、あなたの想いを実現するどころか、かえってパートナーを苦しめる結果になりかねません。お二人の財産状況、家族関係、そして何よりも「パートナーにどのような未来を遺したいか」という想いを丁寧にヒアリングし、最適な法的対策をオーダーメイドで設計すること。それが、私たち専門家の役割です。

相談することは、単に手続きを依頼することではありません。あなたの胸の内にある漠然とした不安を、「これで安心だ」という確かな手応えのある形に変えるための第一歩なのです。信頼できる専門家を見極めるためには、司法書士の評判だけでなく、その専門性や相性を確認することが大切です。

まずはお気軽にお問い合わせください。

司法書士があなたの想いを法的な形にします

私たち司法書士は、法律の専門家として、あなたの想いを法的に有効な形に整えるお手伝いをします。具体的には、以下のようなサポートが可能です。

  • お二人の状況を伺い、最適な対策(公正証書遺言、死後事務委任など)を組み合わせたプランをご提案します。
  • 遺言書に記載すべき財産を正確に調査し、法的に不備のない文案を作成します。
  • 複雑な公証役場とのやり取りや、必要書類の収集について、委任を受けられる範囲でサポートします。
  • ご親族との関係も考慮し、将来のトラブルを未然に防ぐためのアドバイスを行います。

私たちは、単なる手続き代行者ではありません。ご事情を丁寧に伺い、パートナーとの生活を守るために必要な手続きを継続的に支援します。特に相続においては、不動産の名義変更(相続登記)まで見据えると、ワンストップで対応できる司法書士に相談するメリットは大きいと言えるでしょう。

川崎市で相続遺言を取り扱う「司法書士いがり綜合事務所」へ

当事務所は、年間100件以上の相続案件を取り扱い、専門書の執筆や研修講師も務めるなど、相続・遺言分野に豊富な経験と実績があります。私たちは、多様な家族の形を尊重し、お一人お一人の想いに真摯に向き合うことをお約束します。

愛するパートナーとの未来を守るための第一歩は、正しい知識を得て、行動を起こすことです。早めに準備を始めることで、お二人の生活を守るための選択肢を検討しやすくなります。

まずは無料相談から、あなたとパートナーの未来について、私たちにお話をお聞かせください。川崎市で相続遺言をとり扱う司法書士いがり綜合事務所へご相談ください。

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