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親の住宅ローン、どうなる?団信手続きから抵当権抹消までの全手順
大切なご家族を亡くされ、深い悲しみと慌ただしい日々のなか、お気持ちの整理もつかないまま、さまざまな手続きに追われていることと存じます。
そんななか、「親が残した家の住宅ローンはどうなるのだろう?」という大きな不安が頭をよぎる方は少なくありません。
実際に、当事務所にもこのようなご相談が寄せられます。
川崎市にお住まいのご相談者Aさんは、同居していた父を突然亡くしました。葬儀や役所手続きに追われるなか、ふと気になったのが実家の住宅ローンでした。通帳を確認すると、毎月きちんと引き落としが続いています。「団信に入っていると聞いたことはあるけれど、本当にローンはなくなるのだろうか。もし違ったら、私が払うことになるのか…」と不安がよぎります。銀行へすぐ連絡すべきか、それとも相続登記を先に進めるべきか判断がつかず、契約書を探してみても団信の詳細は分かりません。抵当権が残ったままだと将来売却もできないと知り、焦りを感じたAさんは、「まず何から始めればいいのか教えてほしい」と当事務所に相談に来られました。
Aさんのように、何から手をつければ良いのか分からず、一人で悩みを抱えてしまうケースは非常に多いのです。
でもご安心ください。この記事では、相続手続きを専門とする司法書士が、団体信用生命保険(団信)を利用した住宅ローンの完済手続きから、不動産の抵当権を抹消するまでの一連の流れを、実践的なステップに沿って分かりやすく解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、次に取るべき具体的な行動が明確になり、不安を安心に変えるための一歩を踏み出せるはずです。相続手続きの全体像については、相続手続きの全体像(費用相場・専門家選び)で体系的に解説しています。
慌てて銀行に連絡する前に!まず確認すべき3つのこと
親が亡くなったと知ると、「一刻も早く銀行に連絡しなければ」と焦るお気持ちはよく分かります。しかし、その前に少しだけ立ち止まってください。段取りよく準備をすることで、その後の金融機関とのやり取りが格段にスムーズになります。専門家として、まずご自宅で確認していただきたい3つのポイントをお伝えします。

1. 住宅ローン契約関連の書類を探す
まず、故人の遺品の中から、住宅ローンに関する書類を探しましょう。これらの書類は、いわば手続きの「地図」となるものです。
- 金銭消費貸借契約書(住宅ローン契約書):借入先の金融機関、契約日、借入額などが分かります。
- 返済予定表(償還予定表):ローン残高や毎月の返済額が記載されています。
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)や権利証:不動産の正確な情報や、どの金融機関が「抵当権者」として登記されているかが確認できます。
もし書類が見つからなくても、慌てる必要はありません。金融機関から定期的に送られてくる残高証明書などの郵便物や、故人の通帳の引き落とし履歴からも、借入先の金融機関を特定する手がかりが見つかるはずです。
2. 団体信用生命保険(団信)加入の有無を確認
次に、相続人にとって最も重要な「団信」に加入していたかを確認します。通常、住宅ローン契約書と一緒に「団体信用生命保険申込書兼告知書」の控えが保管されていることが多いです。生命保険証券のようなものが別途発行されている場合もあります。
とはいえ、現在、民間の金融機関で住宅ローンを組む場合、団信への加入が融資条件となっているケースが多いです(商品・金融機関によって取扱いは異なります)。そのため、書類が見つからなくても過度に心配し過ぎる必要はありません。最終的には金融機関に問い合わせれば確実に確認できます。
3. 死亡の事実を証明する書類を準備する
金融機関との手続きでは、契約者が亡くなられたことを公的に証明する書類が必ず必要になります。事前に準備しておくと、連絡後にすぐ手続きを進めることができます。
- 死亡診断書(または死体検案書)のコピー:医師が発行する書類です。何枚かコピーを取っておくと良いでしょう。
- 死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本):故人の最後の本籍地があった市区町村役場で取得できます。
これらの準備が整っているだけで、金融機関の担当者も「この方はきちんと準備されているな」と感じ、その後のコミュニケーションが円滑に進むことが多いのです。
【完全ガイド】団信の申請から抵当権抹消までの4ステップ
事前準備が整ったら、いよいよ具体的な手続きに入ります。ここからは、団信の保険金請求から、不動産に設定された抵当権を抹消するまでの全体の流れを4つのステップで解説します。一つひとつ着実に進めていきましょう。

ステップ1:金融機関へ連絡し、団信の請求手続きを行う
準備した書類を手元に置き、住宅ローンを借り入れていた金融機関の窓口に連絡します。電話で「住宅ローン契約者の〇〇(故人の氏名)が亡くなったため、団信の手続きを進めたい」と伝えましょう。相続人であるご自身の氏名と故人との関係も伝えます。
連絡後、金融機関から団信の保険金請求に必要な書類一式が送られてきます。主な書類は以下の通りです。
- 保険金・共済金請求書(団信弁済届など)
- 死亡の事実を証明する書類(死亡診断書や戸籍謄本など)
- 相続関係を証明する書類(請求者が相続人であることを示す戸籍謄本など)
書類に必要事項を記入し、準備した証明書類と共に金融機関に提出します。
ここで非常に重要な注意点があります。団信を含む保険金等の請求には、原則として(支払事由が生じた日の翌日から)3年とされる消滅時効が問題になることがあります。期間を過ぎると請求できなくなる可能性があるため、手続きは先延ばしにせず、速やかに行うことが大切です。
ステップ2:保険審査と住宅ローンの完済
書類を提出すると、引受保険会社による審査が始まります。審査では、主に後述する「告知義務違反」がなかったかなどが確認されます。審査期間は数週間〜数か月程度となることがあります。
この審査期間中も、口座からのローン返済の引き落としが続く場合があります。審査が承認されてローンが完済となった場合、引き落とし済み分が精算(返金)されることがあります(返金の有無・方法・返金先は金融機関の取扱いによります)。
審査が承認されると、保険会社から金融機関へ直接保険金が支払われ、住宅ローンの残債務はすべて完済となります。相続人が直接保険金を受け取るわけではありません。
ステップ3:金融機関から抵当権抹消書類を受け取る
住宅ローンが完済されると、金融機関は不動産に設定していた「抵当権」を抹消するための書類一式を相続人宛てに送付してきます。これは「ローンを完済したので、担保を解除します」という証明書のようなものです。非常に重要な書類なので、届いたら絶対に紛失しないよう大切に保管してください。
主な書類は以下の通りです。
- 登記識別情報(または登記済証):いわゆる抵当権の「権利証」のことです。
- 解除証書(または弁済証書):ローンが完済したことを証明する書類です。
- 委任状:金融機関から抵当権抹消手続きを委任されたことを示す書類です。
ステップ4:法務局で相続登記と抵当権抹消登記を行う
金融機関から書類を受け取ったら、最後の手続きとして、管轄の法務局で登記申請を行います。ここが最後の、そして非常に重要な関門です。
必要な登記は2つあります。
- 相続登記:不動産の名義を、亡くなった親から相続人(あなた)へ変更する登記。
- 抵当権抹消登記:住宅ローンの担保として設定されていた抵当権を登記簿から消す登記。
重要なポイントは、抵当権抹消登記を行う前提として、必ず相続登記を先に(または同時に)申請しなければならないという点です。登記簿上の所有者が故人のままでは、抵当権を抹消することはできません。
これらの登記手続きは、必要書類の収集や申請書の作成など、専門的な知識と手間がかかるため、一般の方がご自身で行うのは非常に大変です。そのため、不動産登記の専門家である司法書士に依頼するのが最も確実でスムーズな方法と言えるでしょう。
要注意!団信の保険金が下りない3つの落とし穴
「団信に入っているから、万が一のことがあっても安心」と多くの方が考えています。しかし、残念ながら、保険金が支払われず、ローンがそのまま相続人に引き継がれてしまうケースも存在します。ここでは、知っておくべき3つの「落とし穴」について解説します。

ケース1:告知義務違反が発覚した場合
団信に加入する際、契約者は自身の健康状態を保険会社に正しく申告する「告知義務」があります。もし、この時に持病などを隠して虚偽の告知をしていたことが、死亡後の保険会社の調査で発覚した場合、「告知義務違反」として保険金は支払われません。
例えば、「高血圧で治療中だったにもかかわらず、『良好』と申告していた」といったケースが該当します。保険会社はプロですから、病院の診療記録などを調査すれば、虚偽の告知は発覚する可能性が高いのです。
「加入から2年経てば大丈夫」といった話を聞いたことがあるかもしれませんが、悪質なケースでは2年を過ぎても契約が取り消される可能性があり、非常にリスクが高い行為と言えます。
ケース2:保険金の支払対象外(免責事由)に該当した場合
団信の契約(保険約款)には、保険金が支払われないケースとして「免責事由」が定められています。亡くなった原因がこの免責事由に該当する場合、保険金は下りません。
代表的な免責事由には、以下のようなものがあります。
- 保障が開始されてから一定期間内(例:1年以内)の自殺
- 契約者や保険金受取人の故意による死亡
- 戦争やその他の変乱による死亡
これらは契約によって内容が異なるため、約款の確認が必要になります。
ケース3:保険料の未払いで契約が失効していた場合
住宅ローンの返済を長期間滞納していると、団信の保険料も未払いとなり、保険契約そのものが失効してしまっている可能性があります。この場合、当然ながら保険金は支払われません。
特に、住宅金融支援機構の「フラット35」で、団信の特約料をローン返済とは別に年払いにしているケースでは、うっかり支払いを忘れて契約が失効していることも考えられます。
これらのケースに該当してしまうと、住宅ローンはマイナスの財産として相続人が返済義務を負うことになります。返済が困難な場合は、家を手放したり、相続放棄を検討したりする必要が出てきます。
抵当権抹消を放置は危険!相続後に起こりうる深刻な問題
無事に団信でローンが完済されると、多くの方が「これで一安心」と思ってしまいがちです。しかし、法務局での「抵当権抹消登記」を忘れてはいけません。この手続きを放置すると、将来、深刻な問題を引き起こす可能性があります。
不動産を売却できない
最も大きなデメリットは、その不動産を売却できなくなることです。登記簿に抵当権が残ったままでは、買主から見れば「いつ金融機関に差し押さえられるか分からない不動産」ということになります。当然、そんなリスクのある物件を購入する人はいません。将来、実家が空き家になり、いざ売却して現金化しようと思っても、この登記が終わっていなければ話が進まないのです。
新たなローンを組む際の担保にできない
相続した家を担保に、リフォームローンや事業資金の融資を受けたいと考えることもあるかもしれません。しかし、抵当権が残っていると、他の金融機関は二番手以降の担保評価しかできず、融資の審査が通らない可能性が非常に高くなります。将来の資産活用の道が閉ざされてしまうのです。
時間が経つほど手続きが複雑化し、費用もかさむ
放置する最大のリスクは、時間が経つほど手続きがどんどん面倒になることです。
- 書類の紛失:金融機関から受け取った大切な抹消書類をなくしてしまう。
- 金融機関の変更:銀行が合併や名称変更を繰り返し、書類の再発行手続きが煩雑になる。
- 相続の発生:相続人であるあなた自身に万が一のことがあれば、さらに次の世代が手続きを背負うことになり、関係者が増えて解決が困難になる。
何十年も前に完済したはずの古い抵当権を消すために、多大な時間と費用がかかるケースは決して珍しくありません。「ローンが終わったらすぐ抹消登記」を徹底しましょう。
団信と抵当権抹消は司法書士へ!任せるべき3つの理由
ここまでお読みいただき、一連の手続きが思った以上に複雑で、正確さが求められることをご理解いただけたかと思います。故人を亡くした悲しみのなか、これらの手続きをご自身で進めるのは、精神的にも時間的にも大きな負担となります。そこで、私たち司法書士のような専門家にご依頼いただくことをお勧めします。その理由は3つあります。
理由1:面倒な銀行とのやり取りから解放される
相続人の方が最もストレスを感じるのが、金融機関とのやり取りです。平日の昼間に何度も電話をしたり、窓口に足を運んだり、専門用語の多い書類を読み解いたりするのは大変な労力です。司法書士にご依頼いただければ、委任の範囲内で、金融機関との連絡や必要書類の準備・提出などの手続きをサポートします。ご状況によってはご本人のご対応が必要な場面もありますが、手続き負担を大きく軽減できます。
理由2:相続登記から抵当権抹消まで一気通貫で完了できる
司法書士は不動産登記の専門家です。司法書士に依頼するメリットは、団信の手続きサポート、前提となる相続登記、抵当権抹消登記までを一体として整理しやすく、手続きの負担軽減やスケジュールの短縮が期待できる点にあります。特に、相続した不動産の売却を控えている場合は、早めに権利関係を整えることが重要です。
理由3:万が一のトラブルにも的確に対応できる
「団信の書類を紛失してしまった」「金融機関が合併していて、どこに連絡すればいいか分からない」「相続人が複数いて、連絡調整が難しい」など、相続手続きには予期せぬトラブルがつきものです。一般の方では対応に窮してしまうような複雑なケースでも、私たち専門家は豊富な実務経験に基づき、冷静に最適な解決策を導き出します。不動産が関わる手続きは、司法書士の専門分野です。安心してすべてをお任せください。
ご不安な方は、まずはお気軽にご相談ください。
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まとめ|親が遺した大切な家のために、今すぐ専門家へ相談を
今回は、親が亡くなった後の住宅ローンと団信、そして抵当権抹消登記についての一連の流れを解説しました。
この手続きは、単に書類を提出すれば終わりという簡単なものではなく、金融機関とのやり取り、保険会社による審査、そして法務局での専門的な登記申請と、いくつものステップを正確に進める必要があります。
手続きを放置すれば、不動産が売却できないなど将来の大きな足かせになりかねません。何より、ご家族を亡くされたばかりの時期に、不慣れな手続きで心労を重ねるべきではないと私たちは考えています。
親が大切に住み、遺してくれた家。その価値をしっかりと次世代に繋ぐためにも、できるだけ早く専門家にご相談ください。私たち、いがり綜合事務所は、川崎市・横浜市を中心に相続案件に対応してまいりました。豊富な経験を踏まえ、あなたの状況に合わせて、手続きの見通しと段取りを整理しながらサポートいたします。まずは無料相談で、あなたの不安をお聞かせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
