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「実家が遠方だけど相続登記はできる?」お悩みではありませんか?
「親が亡くなって、実家を相続したけれど、自宅からかなり遠い…」
「仕事が忙しくて、手続きのために何度も現地へ足を運ぶのは難しい」
「そもそも、遠く離れた不動産の名義変更なんて、どうやったらいいんだろう?」
このようにお悩みではないでしょうか。
こんにちは。司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮です。ここ川崎の事務所でも、「実家が九州なのですが、先生のところで相続登記をお願いできますか?」といったご相談を数多くいただきます。慣れない相続手続きの上に、不動産が遠方にあるとなると、不安はさらに大きくなりますよね。
特に、令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく申請を怠った場合は法務省の運用方針により10万円以下の過料の対象となる可能性があります。そのため、遠方にある不動産だからといって、手続きを後回しにはできない状況です。
この記事では、遠方にある不動産の相続登記について、ご自身で郵送手続きを行う場合の手順や注意点、そして専門家である司法書士に依頼するメリットを、分かりやすく解説していきます。最後までお読みいただければ、あなたの状況に合った最善の方法がきっと見つかるはずです。
遠方の不動産の相続登記、手続きの3つの選択肢
遠方にある不動産の相続登記を行うには、大きく分けて3つの方法が考えられます。まずはそれぞれの選択肢の概要と、メリット・デメリットを見ていきましょう。

①不動産所在地の法務局へ直接行く【現実的ではない】
一つ目は、不動産を管轄する法務局の窓口へ直接出向いて申請する方法です。しかし、この方法は多くの方にとって現実的とは言えません。
例えば、川崎にお住まいの方が北海道にあるご実家を相続した場合、申請のためだけに飛行機で現地へ向かう必要があります。もし書類に不備(これを「補正」といいます)が見つかれば、再度現地へ行かなければならない可能性も。交通費や宿泊費、そして仕事を休む時間的なコストを考えると、非常に負担の大きい方法です。
②郵送で申請する【手間とリスクが大きい】
二つ目は、必要書類を揃えて管轄の法務局へ郵送で申請する方法です。現地へ行かずに手続きを進められるため、一見すると良さそうに思えるかもしれません。
しかし、この方法も簡単ではありません。戸籍謄本などの膨大な書類を漏れなく集め、専門的な内容の申請書を間違いなく作成する必要があります。もし書類に不備があれば、法務局から電話で連絡が来ますが、専門用語で説明されるため内容を理解するのも一苦労です。結局、何度もやり取りが必要になり、かえって時間と精神的なストレスがかかってしまうケースが少なくありません。
③司法書士に依頼する【最も確実で安心な方法】
三つ目は、相続登記の専門家である司法書士に手続きを依頼する方法です。多くの場合、専門家に依頼することで手間や不備のリスクを減らせるため、負担が軽減されることが期待できます。
司法書士は、法務局のオンライン申請システムを利用して多くの場合で全国どこの不動産の登記申請を行うことができます。そのため、お住まいの近くにいる、相談しやすい司法書士に依頼すれば、面倒な書類集めから申請、法務局とのやり取りまで、すべてを任せることができます。時間や手間をかけずに、正確に手続きを完了させたい方にとっては最適な選択肢と言えるでしょう。
【実践編】遠方の相続登記を郵送で申請する全手順と注意点
「それでも、まずは自分で挑戦してみたい」という方のために、郵送で相続登記を申請する具体的な手順と、つまずきやすいポイントを詳しく解説します。この手順をご覧いただくだけでも、手続きの全体像と大変さがリアルに感じられるはずです。

ステップ1:不動産の管轄法務局を調べる
相続登記は、どの法務局でも申請できるわけではありません。不動産の所在地を管轄する法務局に申請する必要があります。例えば、札幌市にある不動産なら札幌法務局、福岡市にある不動産なら福岡法務局といった具合です。
管轄の法務局は、法務省のウェブサイトで調べることができます。市区町村名から検索できますので、まずは申請先を正確に特定しましょう。もし管轄を間違えて郵送してしまうと、書類は受け付けてもらえず返送されてしまいます。
詳しくは、管轄のご案内 – 法務局 – 法務省をご確認ください。
ステップ2:必要書類を集める
次に、相続登記に必要な書類を集めます。これは非常に骨の折れる作業です。一般的に、以下のような書類が必要となります。
- 被相続人(亡くなった方)に関する書類
- 出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員に関する書類
- 現在の戸籍謄本
- 印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した方)
- 不動産を相続する方に関する書類
- 住民票
- その他
- 遺産分割協議書
- 相続関係説明図(作成すると戸籍謄本等の原本を返してもらえます)
- 不動産の固定資産評価証明書
特に「出生から死亡までの戸籍謄本」を集めるのは大変です。人は結婚や転籍で戸籍が何度も変わることがあり、古い戸籍は本籍地があった市区町村役場に一つひとつ請求しなければなりません。遠方の役所とのやり取りは、時間も手間もかかります。
ステップ3:登記申請書を作成する
書類がすべて集まったら、登記申請書を作成します。申請書には、不動産の情報を正確に記載する必要があります。この情報は、登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産評価証明書に書かれている通り、一字一句間違えずに書き写さなければなりません。
また、申請書には登録免許税という税金を納めるための収入印紙を貼り付けます。税額は「固定資産評価額 × 0.4%」で計算しますが、計算を間違えたり、貼り忘れたりすると、やはり補正の対象となります。
参考:不動産登記及び商業・法人登記の申請書様式一覧 – 法務局
ステップ4:書類一式を正しく郵送する
作成した申請書と集めた書類一式を、管轄の法務局へ郵送します。この際にも、いくつか守るべきルールがあります。
- 書留郵便で送る(普通郵便は不可)。
- 封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と赤字で記載する。
- 登記完了後に返送してもらう書類(登記識別情報通知書など)のための返信用封筒を同封する。
- 返信用封筒には、自分の住所・氏名を記載し、「本人限定受取郵便」で送ってもらうための切手を貼っておく。
これらの細かなルールの一つでも漏れていると、手続きがスムーズに進まない原因となります。
ステップ5:法務局からの補正連絡に対応する【最難関】
郵送申請で最も大変で、多くの方が挫折してしまうのが、この「補正対応」です。
申請書類に少しでも不備や不明な点があると、法務局の登記官から電話で連絡が入ります。しかし、その指示は「〇〇の書類のこの部分が違うので、正しいものに差し替えてください」「申請書のここの文言をこう訂正してください」といったように、専門用語が飛び交い、電話口で一度聞いただけで正確に理解するのは非常に困難です。
「電話で言われた通りに直したつもりなのに、また違うと指摘された…」
「何度も電話がかかってきて、仕事に集中できないし、本当にイライラする…」
このような状況に陥ってしまう方は少なくありません。場合によっては、「郵送での訂正は難しいので、一度法務局まで来てください」と言われてしまうことさえあります。そうなると、結局現地へ行かなければならず、郵送申請を選んだ意味がなくなってしまいます。
なぜ司法書士なら遠方の不動産でもスムーズなのか?
ここまで読んで、「自分でやるのは、思った以上に大変そうだ…」と感じられたのではないでしょうか。では、なぜ司法書士に依頼すると、遠方の不動産でもスムーズに手続きが進むのでしょうか。その理由を具体的に解説します。

全国対応のオンライン申請システムを利用
私たち司法書士は、法務局が整備した専用のオンラインシステムを利用して登記申請を行います。このシステムと司法書士専用の電子署名を使えば、事務所にいながら日本全国どこの法務局に対しても電子的に申請が可能です。北海道から沖縄まで、物理的な距離は一切関係ありません。
実は、このオンライン申請が普及する平成18年頃までは、遠方の不動産登記は現地の司法書士に協力してもらって申請していました。しかし今では、技術の進歩により、お客様はお住まいの近くの司法書士に相談するだけで、全国の不動産手続きを完結できるようになったのです。
面倒な書類収集から申請まで全て代行
司法書士にご依頼いただければ、先ほどご説明した煩雑な手続きのほとんどすべてをお任せいただけます。
- 全国の役所からの戸籍謄本収集
- 法律的に有効な遺産分割協議書の作成
- 専門知識が必要な登記申請書の作成
- 法務局への登記申請
これらの作業をすべて専門家が代行しますので、お客様にご負担いただくのは、当事務所で作成した書類に署名・押印をいただくことくらいです。貴重な時間を、面倒な手続きに費やす必要はもうありません。
経験豊富な司法書士が作成・対応することで、補正となるリスクを低減できます。
お客様が最も不安に感じるであろう「法務局からの補正連絡」。司法書士に依頼すれば、この心配はほぼゼロになります。
私たちは、日々登記業務に携わる専門家として、法務局の審査基準を熟知した上で正確な書類を作成します。そのため、そもそも補正になること自体が稀です。通常は司法書士が法務局とのやり取りを行いますが、署名押印等でお客様の対応が必要となる場面が生じることがあります。
原則としてオンライン申請により出張を要しないため、一般的には追加の交通費は発生しません。出張が必要な場合は別途費用がかかる旨を事前にご案内します。
「不動産がある現地の司法書士に頼むべき?」という疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、その必要はありません。前述の通り、オンラインで申請するため、お住まいの近くで相談しやすい司法書士を選ぶことは、依頼後の連絡や打ち合わせの面で利点があります。
もちろん、司法書士が現地へ出張する必要はないため、交通費や日当といった余計な費用が発生することもありません。安心してご相談ください。
相続登記を司法書士に依頼した場合の費用
専門家に依頼するとなると、やはり費用が気になるかと思います。相続登記にかかる費用は、大きく分けて「①登録免許税(実費)」と「②司法書士報酬」の2つです。
①登録免許税(ご自身で手続きしてもかかる税金)
登録免許税は、不動産の名義変更をする際に国に納める税金です。これは、ご自身で手続きをしても、司法書士に依頼しても、必ず発生する費用(実費)です。
税額は、以下の計算式で算出します。
登録免許税=固定資産評価額×0.4%。計算にあたっては固定資産評価額の1,000円未満切り捨て、登録免許税は100円未満切り捨てのルールがあります。また、一部の土地については免税措置が適用される場合があります。
例えば、固定資産評価額が1,000万円の土地と500万円の建物を相続した場合、(概算)固定資産評価額合計1,500万円×0.4%=60,000円。ただし実際の計算では固定資産評価額は1,000円未満切り捨て、登録免許税は100円未満切り捨てで計算されます。この税金の計算方法や納税手続きについても、詳しくは相続登記の登録免許税|課税明細書の読み方と計算方法を解説の記事で解説しています。
②司法書士報酬(事務所への手数料)
司法書士報酬は、手続きを代行する専門家への手数料です。当事務所で扱う一般的な単純な相続登記の目安は7万円~15万円程度ですが、相続人の数や戸籍収集、遺産分割協議の有無などで増減します。正式な費用は事前見積もりでご案内します。
この報酬額は、不動産の数、相続人の人数、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成を含むかどうかなど、ご依頼いただく業務の範囲によって変動します。
当事務所(所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号、代表:司法書士 猪狩 佳亮、所属:神奈川県司法書士会)は、お客様に安心してご依頼いただけるよう、明確な料金体系をご用意しております。ご相談の際に、必ず事前にお見積もりを提示し、ご納得いただいた上で手続きを進めますので、どうぞご安心ください。
まとめ|遠方の相続登記は専門家への相談が近道です
今回は、遠方にある不動産の相続登記について解説しました。
ご自身で郵送申請に挑戦することも不可能ではありませんが、そのためには多くの時間と手間、そして専門的な知識が必要です。特に、法務局との補正対応は、慣れない方にとっては非常に大きな精神的ストレスとなるでしょう。
一方で、お近くの司法書士に依頼すれば、全国どこの不動産であっても、あなたはほとんど手間をかけることなく、スムーズかつ確実に手続きを完了させることができます。時間的・精神的な負担を考えれば、専門家への依頼は、結果的に最も賢明でコストパフォーマンスの高い選択と言えるのではないでしょうか。
当事務所は遠方不動産の相続手続の対応経験があります。具体的な実績や事例は面談でご説明します。「何から手をつけていいかわからない」「費用がどれくらいかかるか知りたい」といった些細なことでも構いません。まずは、お気軽にお問い合わせください。
当事務所では、初回のご相談(60分)は無料で承っております。また、お仕事でお忙しい方のために、平日夜間や土日祝日のご相談にも事前予約制で対応可能です。あなたの不安な心に「安心」を届けられるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
