相続関係説明図の書き方|法務局の補正指示を防ぐ作成術【図解】

相続関係説明図とは?相続登記で求められる理由

相続関係説明図とは、亡くなられた方(被相続人)と、その財産を受け継ぐ相続人が誰であるかを一覧で分かりやすくまとめた家系図のような書類です。相続登記(不動産の名義変更)を法務局に申請する際に、戸籍謄本一式とあわせて提出します。

この書類を提出する最大の目的は、山のような戸籍謄本の束を提出しなくても、その「原本」を返してもらえる(原本還付)点にあります。相続手続きでは、不動産の名義変更だけでなく、銀行預金の解約など他の手続きでも戸籍謄本が必要になるため、原本が手元に戻ってくるメリットは非常に大きいのです。

この記事では、法務局からの補正指示を受けにくくし、相続登記をよりスムーズに進めるための相続関係説明図の書き方を、図解を交えながら専門家が分かりやすく解説します。

なお、相続登記の全体像については、「不動産の名義変更(相続登記)」で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

相続登記をスムーズに進めるための「翻訳図」

相続人を確定させるためには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、相続人全員の現在の戸籍謄本など、膨大な量の書類が必要になります。

法務局の登記官は、これらの戸籍を一枚一枚読み解き、誰が正当な相続人なのかを判断します。しかし、戸籍は何度も作り直されていたり(改製)、本籍地が転々と変わっていたりして、読み解くには専門的な知識と時間が必要です。

そこで役立つのが相続関係説明図です。これは、いわば「大量の戸籍から読み取れる複雑な相続関係を、登記官のために分かりやすく翻訳した要約図」と言えます。登記官はこの図と戸籍謄本を照らし合わせることで、相続関係を迅速かつ正確に把握でき、登記手続きがスムーズに進むのです。

「法定相続情報一覧図」との違いと使い分け

相続関係説明図とよく似た書類に「法定相続情報一覧図」があります。どちらも相続関係を証明する書類ですが、目的や効力に違いがあります。

項目相続関係説明図法定相続情報一覧図
目的主に相続登記申請時の戸籍謄本等の原本還付各種相続手続き(登記、預金解約、相続税申告等)の簡略化
作成・提出先自分で作成し、相続登記先の法務局に提出自分で作成し、登記所に「申出」をして認証を受ける
効力提出した登記申請でのみ有効認証後は公的な証明書として各種手続で利用でき、一覧図は5年間(申出日の翌年から起算)保存されるため、その間は写しの再交付を受けられる
特徴比較的自由に記載できる(遺産分割内容など)記載ルールが厳格に決まっている
相続関係説明図と法定相続情報一覧図の比較

どちらを作成すべきか迷ったときは、以下のように判断するとよいでしょう。

  • 相続関係説明図がおすすめな人:手続き先が相続登記のみ、または数カ所程度で、遺産分割の内容などを図に書き込みたい方
  • 法定相続情報一覧図がおすすめな人:不動産以外に銀行や証券会社など、手続き先が多数ある方

法定相続情報一覧図を自分で作る方法については、別の記事で詳しく解説しています。

【相談事例】法務局の補正指示で登記が止まった…

ここで、相続関係説明図の重要性がよくわかる、当事務所に実際に寄せられたご相談を紹介します。

「父の相続登記を自分で進めていたのですが、法務局から電話があって…」

お父様を亡くされたご長男のAさんは、ご自身で戸籍謄本一式をそろえ、法務局に相続登記を申請しました。これで一安心、と思っていた矢先、法務局の担当者から一本の電話が入ります。

「提出された戸籍だけでは相続関係が分かりにくいため、相続関係説明図を追加で提出してください」

これは「補正指示」と呼ばれるもので、書類に不備があるため手続きがストップしてしまった状態です。Aさんは、慣れない書類をまた一から作らなければならないことに途方に暮れ、「もう自分では無理かもしれない」と不安に感じ、当事務所にご相談に来られました。

お話を伺い、私たちが戸籍を精査して正確な相続関係説明図を作成し、法務局に提出したところ、止まっていた登記手続きは無事に完了しました。Aさんからは「最初から専門家にお願いすればよかった」と安堵の言葉をいただきました。

この事例のように、相続関係が少しでも複雑な場合、戸籍謄本をただ提出するだけでは登記官が判断に迷い、補正指示の対象となることがあります。そうならないためにも、正確な相続関係説明図の作成が不可欠なのです。

法務局の補正指示を防ぐ!相続関係説明図の基本の書き方

それでは、具体的に相続関係説明図の書き方を見ていきましょう。登記官が一目で理解できる、分かりやすい図を作成することが目標です。

【準備】まずは戸籍謄本など必要書類を集める

相続関係説明図は、戸籍謄本などの公的な書類に基づいて作成する必要があります。まずは、以下の書類を正確に集めましょう。

  • 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票(不動産を取得する人は必須)
  • (遺産分割協議をした場合)遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書

特に、被相続人の出生まで遡る戸籍の収集は、本籍地の役所を転々と辿っていく必要があり、非常に手間のかかる作業です。2024年3月から始まった戸籍謄本の広域交付制度により以前よりは集めやすくなりましたが、それでも読み解きには専門知識が求められます。

【図解】基本構成と記載すべき8つの項目

書類がそろったら、いよいよ作成です。以下のサンプル図と解説を参考に、必要な情報を漏れなく記載していきましょう。

相続関係説明図の基本構成を図解したインフォグラフィック。タイトル、被相続人の情報、相続人の情報、関係線、不動産の取得関係など8つの必須項目が示されている。
  1. タイトル:「被相続人 〇〇〇〇 相続関係説明図」と、誰の相続に関する書類か明確に記載します。
  2. 被相続人の情報:最後の住所、最後の本籍、登記上の住所(不動産登記簿の情報)、生年月日、死亡年月日を戸籍や住民票の通りに正確に記載します。
  3. 相続人の情報:相続人全員の住所、氏名、生年月日を記載します。氏名の横に続柄(妻、長男など)も書きましょう。
  4. 続柄:被相続人との関係性が分かるように記載します。(例:妻、長男、長女)
  5. 関係線:夫婦は二重線、親子は単線で結びます。離婚した元配偶者や、すでに亡くなっている相続人との関係も線で示します。
  6. 不動産の取得関係:遺産分割協議などの結果、不動産を取得する人の氏名の横に「(相続)」や「(分割)」と記載します。不動産を取得しない人には何も記載しません。
  7. 作成日:この図を作成した年月日を記載します。
  8. 作成者:作成者の住所と氏名を記載し、押印します(認印で可)。

Word・Excelテンプレートの無料ダウンロード(法務局ウエブサイト)

 法務局のウェブサイトでは、法定相続情報一覧図の様式として様々なケースの記載例が公開されており、相続関係説明図を作成する上でも参考になります。
参照:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例 – 法務局

【ケース別】複雑な相続関係の書き方と記載例

相続は、必ずしも基本的なケースばかりではありません。ここでは、ご自身で作成する際につまずきやすい、複雑なケースの書き方を解説します。

数次相続が発生しているケース

数次相続とは、遺産分割協議が終わらないうちに相続人の一人が亡くなり、次の相続が開始してしまう状況です。例えば、祖父が亡くなり(一次相続)、その遺産分割をしないうちに父が亡くなる(二次相続)といったケースです。

この場合、亡くなった相続人(父)の相続人(母や子)が、その地位を引き継ぎます。図には、一次相続と二次相続の両方の関係者が登場するため、誰がどの立場で相続人なのかが分かるように記載する必要があります。

数次相続が発生したケースの相続関係説明図。祖父(一次相続)の相続人である父が亡くなり、その妻と子が父の相続権を引き継ぐ(二次相続)関係性が示されている。

ポイントは、亡くなった相続人(二次相続の被相続人)の情報(死亡年月日など)をしっかり記載し、その人の相続人が誰であるかを明確に示すことです。このような状況では、相次ぐ相続に備えた遺言書の重要性も高まります。

代襲相続が発生しているケース

代襲相続とは、本来相続人となるはずの子どもが、被相続人より先に亡くなっている場合に、その子(被相続人から見て孫)が代わりに相続人になる制度です。

図には、先に亡くなった子(被代襲者)と、その代わりに相続する孫(代襲者)の両方を記載します。誰がどの立場で相続するのかが一目で分かるように、「(被代襲者)」と「(代襲者)」と明記するのがポイントです。

代襲相続が発生したケースの相続関係説明図。被相続人より先に亡くなった長男(被代襲者)に代わり、その子である孫が相続人(代襲者)となる関係性が示されている。

被代襲者の死亡年月日を正確に記載し、被相続人より前に亡くなっていることを証明する必要があります。なお、相続放棄した人の子は代襲相続できないなど、混同しやすいルールもあるため注意が必要です。

相続放棄した人がいるケース

相続人の中に財産も借金も一切引き継がない「相続放棄」をした人がいる場合でも、その人を省略せずに図に記載します。そして、氏名の横に「(相続放棄)」と明記します。

なぜなら、その人が存在したことを示した上で放棄したことを証明しないと、「他に相続人がいるのではないか?」と登記官が疑問に思う可能性があるからです。例えば、子ども全員が相続放棄をすると、次の順位である親や兄弟姉妹が相続人になります。相続関係を正確に示すために、放棄した人も必ず記載しましょう。

離婚歴や養子縁組があるケース

被相続人に離婚歴があり、前の配偶者との間に子がいる場合、その子も相続人になります。離婚した元配偶者は相続人にはなりませんが、関係性を示すために図に記載することがあります。その際は、離婚した年月日を記載し、相続人ではないことが分かるようにしておきましょう。

また、養子縁組をしている場合、養子は実子と全く同じ相続権を持ちます。図には実子と同じように記載し、続柄を「養子(養女)」とします。誰が相続人になるのかを正確に反映させることが重要です。

失敗しないための最終チェックリストと注意点

完成した書類を法務局に提出する前に、ご自身で最終確認を行いましょう。以下の点をチェックするだけで、補正指示のリスクを大幅に減らすことができます。

戸籍謄本の情報と一字一句合っているか

最も基本的で、最も補正指示を受けやすいのが、戸籍情報との不一致です。氏名の漢字(旧字体・異体字)、生年月日、住所、本籍地など、すべての情報が戸籍謄本や住民票の記載と「一字一句違わず」同じであるか、何度も確認してください。

  • 「渡邉」と「渡辺」、「齋藤」と「斎藤」などの異体字
  • 「一丁目2番3号」と「一丁目二番地三」といった住所表記の揺れ

こうしたわずかな違いでも、登記官は本人であると断定できず、補正の対象となります。提出する相続登記の書類は、すべて公的書類と完全に一致させるのが鉄則です。

手書き?パソコン?作成方法と押印の要否

相続関係説明図は、手書きでもパソコン(WordやExcel)で作成しても、どちらでも構いません。ただし、誰が読んでも分かりやすく、修正も簡単なため、パソコンでの作成をおすすめします。

また、相続関係説明図自体に実印を押す必要はありません。作成者として記名すれば足り、押印は必須ではありません。(ただし、一緒に提出する遺産分割協議書には、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。)

誰が不動産を取得するかが明記されているか

相続登記のために提出するのですから、「この登記によって、誰が不動産を取得するのか」を明確に示す必要があります。遺産分割協議の結果、不動産を相続する人の名前の横に「(相続)」や「(分割)」など、取得関係が分かる記載を漏れなく入れましょう。

この記載がないと、登記官が誰の名義にすべきか判断しづらくなり、補正指示の対象となる可能性があります。もし遺産分割協議書を作成している場合は、その内容と一致しているかどうかも必ず確認しましょう。

自力作成は危険?専門家への依頼を検討すべきケース

ここまで相続関係説明図の書き方を解説してきましたが、中にはご自身で作成するのが難しい、あるいはリスクが伴うケースもあります。以下のような状況に当てはまる方は、無理せず専門家への相談をご検討ください。

相続関係が複雑で、どう書いていいか分からない

この記事で紹介した以外にも、相続人の一人が行方不明、認知した子がいる、前妻の子と後妻の子がいるなど、相続関係は千差万別です。数次相続や代襲相続が何重にも発生しているようなケースでは、戸籍を正確に読み解き、図に落とし込むのは至難の業です。

万が一、誤った相続関係説明図を作成してしまうと、相続人ではない人に財産を渡してしまったり、本来もらえるはずの人がもらえなかったりといった、深刻なトラブルに発展しかねません。

戸籍の収集や読み解きに時間がかかっている

そもそも、相続関係説明図を作成する前段階である「戸籍の収集」でつまずいてしまう方も少なくありません。古い戸籍は手書きで達筆なため、文字が判読できなかったり、法律の知識がないと関係性が読み取れなかったりします。

相続人の中には、財産調査に非協力的な方がいるケースもあり、手続きが思うように進まないこともあります。戸籍収集の段階から専門家にご依頼いただければ、時間と労力を大幅に節約でき、その後の手続きもすべてスムーズに進みます。

平日に法務局へ行く時間がない・手続きが面倒

法務局や市役所の窓口は、平日の日中しか開いていません。お仕事をされている方にとって、手続きのために時間を確保するのは大きな負担です。万が一、補正指示を受ければ、何度も法務局に足を運んだり、電話でやり取りしたりする必要が出てきます。

こうした時間的なコストや精神的なストレスを考えれば、最初から専門家に任せてしまう方が、結果的に効率的で安心な場合も多いのです。当事務所では、忙しい方の相続手続きを丸ごと代行するサービスも提供しております。

相続関係説明図の作成や相続登記でお困りの際は、一人で悩まず、まずは一度、当事務所の無料相談をご利用ください。あなたの状況に合わせた最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。

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