相続登記のオンライン申請|自分でできる?できない?を解説

相続登記のオンライン申請は可能。でも大きな落とし穴が…

「相続した実家が遠方にある」「平日は仕事で法務局に行く時間がない」——。そんなお悩みから、相続登記をオンラインで済ませられないかと考えている方も多いのではないでしょうか。確かに、自宅のパソコンから申請できるオンライン申請は、一見すると非常に便利で魅力的に思えますよね。

しかし、残念ながら、一般の方がご自身で相続登記のオンライン申請を行うには、想像以上に高いハードルがいくつも存在します。「オンライン」という言葉のイメージとは裏腹に、手続きがすべてネットで完結するわけではなく、専門的な知識や特別な準備も必要になるのが現実です。

この記事では、なぜ相続登記のオンライン申請が「言うは易く行うは難し」なのか、その具体的な理由と、多くの方がつまずいてしまう「落とし穴」について、専門家の視点から詳しく解説していきます。このテーマの全体像については、不動産の名義変更(相続登記)で体系的に解説しています。

自分で相続登記をオンライン申請する際の5つの高いハードル

「オンラインなら簡単で安く済むはず」という期待は、残念ながら、手続きを進めるうちに打ち砕かれてしまうことがほとんどです。ここでは、ご自身でオンライン申請に挑戦しようとした方が直面する、代表的な5つのハードルを具体的に見ていきましょう。

自分で相続登記をオンライン申請する際に直面する5つの高いハードルを示した図解。専用機器の準備、電子署名の難しさ、手続きが完結しない点、申請不可物件の存在、補正リスクについて解説。

【ハードル1】専用機器の準備と設定が必須

まず最初の関門が、物理的な準備です。オンライン申請には、パソコンの他に「マイナンバーカード」と、それを読み込むための「ICカードリーダライタ」が必須となります。

ICカードリーダライタは、数千円程度で購入できますが、多くの方にとっては、この相続登記のためだけに購入する機器となるでしょう。さらに、購入した機器をご自身のパソコンで使えるように、ドライバのインストールや設定を行う手間もかかります。パソコンの操作に不慣れな方にとっては、この初期設定だけでも大きなストレスになりかねません。

この機器の購入費用や設定にかかる時間を考えると、「最初から専門家に依頼した方が結果的にコストパフォーマンスが良かった」と感じる方も少なくないのです。

【ハードル2】難関の「電子署名」と専用ソフトの操作

オンライン申請の最大の関門といえるのが「電子署名」です。申請データが間違いなく本人によって作成されたことを証明するために、マイナンバーカードを使ってデータに電子的な署名を行う必要があります。

この電子署名を行うには、法務局が提供する「登記・供託オンライン申請システム」の専用ソフト(申請用総合ソフト)をパソコンにインストールし、操作しなければなりません。このソフトは、お世辞にも直感的で分かりやすいとは言えず、ITに不慣れな方にとっては、どこに何を入力し、どのボタンを押せばよいのか、マニュアルを片手に悪戦苦闘することになるでしょう。

私たち司法書士は、業務用の電子証明書を使い、日常的にこのシステムで電子署名を行っています。しかし、一般の方が初めてこの複雑な操作を行うには、多くの時間と学習コストがかかることを覚悟しなければなりません。

参照:登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

【ハードル3】結局、すべての手続きはオンラインで完結しない

多くの方が誤解されている点ですが、相続登記のオンライン申請は、すべての手続きがインターネット上だけで完結するわけではありません。

申請情報や一部の添付書類データはオンラインで送信できますが、遺産分割協議書や印鑑証明書、亡くなった方の出生から死亡までの一連の戸籍謄本といった、相続登記に不可欠な公的書類の原本は、別途、法務局へ郵送または持参して提出する必要があります。しかも、オンライン申請で添付書面を郵送(又は持参)する場合、不動産登記については「申請日を除く2日以内に登記所に到達」させる必要があります。

結局のところ、法務局との物理的な書類のやり取りは避けられないのです。この事実を知ると、「オンライン申請のメリットは限定的だった」と感じる方がほとんどです。

【ハードル4】そもそもオンライン申請できない不動産がある

これは専門家でなければ気づきにくい、非常に重要なポイントです。実は、不動産によっては物理的にオンライン申請ができないケースが存在します。

それは「改製不適合物件」と呼ばれる、登記簿がコンピュータ化される以前の古い不動産です。いわゆる「和紙の登記簿」で管理されているような物件(改製不適合物件など)の場合、オンライン申請に対応していないことがあり、書面での申請が必要となるケースがあります。

ご自身の不動産がこれに該当するかどうかを事前に調査するのは、一般の方には非常に困難です。もし知らずにオンライン申請の準備を進めてしまい、後から発覚した場合、それまで費やした時間と労力がすべて無駄になってしまうリスクがあります。

相続登記の複雑な手続きに悩み、法務局の窓口で頭を抱えるスーツ姿の男性。自分で申請する際の困難さを象徴している。

【ハードル5】不備があれば法務局へ出頭も。時間と労力が水の泡に

ご自身で申請した場合、最も起こりがちなのが申請内容の不備、いわゆる「補正」です。登記申請は非常に厳格な手続きであり、申請情報や添付書類にわずかなミスや記載漏れがあっただけでも、法務局から補正の指示が入ります。

この補正の対応がまた厄介で、電話やオンラインで済むこともあれば、内容によっては「平日の日中に法務局へ来て説明してください」と、出頭を求められるケースも少なくありません。多忙な中で相続登記にかかる期間がさらに延びてしまいます。

「時間を節約したかったからオンライン申請を選んだのに、かえって手間と時間がかかってしまった…」という事態になりかねません。最悪の場合、申請そのものが却下されてしまう可能性もあり、慣れない手続きによる失敗は高くつくのです。

【実例】オンライン申請に挫折…司法書士への依頼で解決したケース

先日、当事務所にご相談に来られたあるご長男のケースは、まさにオンライン申請の難しさを象徴するものでした。

お母様から相続した不動産の名義変更のため、ご自身で手続きを進めようと決意されたそうです。お仕事が忙しく、平日に休みを取って法務局へ行くのが難しかったため、「オンライン申請なら自宅でできる」と考えたのがきっかけでした。

法務局のウェブサイトを読み込み、なんとか申請書の入力まではたどり着いたものの、そこから先で完全に手が止まってしまったといいます。

  • 「集めた戸籍謄本は、PDFにして添付すればいいのだろうか?」
  • 「そもそも、どの書類が原本提出で、どれがデータでいいのか分からない…」
  • 「電子署名が必要らしいけど、具体的にどう操作すればいいんだ?」

困り果ててコールセンターに電話をかけても、なかなかつながらない。ようやくつながっても、専門用語が飛び交う電話口での説明だけでは、状況は一向に改善しませんでした。

「これ以上は自分では無理だ」と判断され、当事務所の扉を叩いてくださったのです。

幸い、遺産分割協議書や戸籍謄本などの必要書類はきちんと揃えられていたため、私たちがオンライン申請を引き継ぎ、手続きはスピーディーに完了しました。このケースでの当事務所への報酬は5万円程度(登録免許税などの実費は別途)。

手続き完了後、お客様からいただいた「最初からお願いすればよかった…」という一言が、すべてを物語っていました。

司法書士に依頼すればオンライン申請はスムーズに進めやすい

これまで見てきた数々の高いハードルも、相続登記の専門家である司法書士にご依頼いただければ、すべてスムーズにクリアすることが可能です。なぜなら、司法書士にはオンライン申請を迅速かつ正確に行うための専門的な環境と知識が備わっているからです。

司法書士は専用の電子証明書でスピーディーに対応

私たち司法書士は、日常の登記業務で使用する「専用の電子証明書」を保有しています。これは、いわば登記申請のプロフェッショナルであることを証明する電子的な身分証明書のようなものです。もちろん、法務局のオンラインシステムにも精通しています。

そのため、一般の方が直面するようなICカードリーダライタの準備や専用ソフトの複雑な操作といったハードルは一切ありません。お客様にしていただくことは、必要書類への署名・押印に加え、状況に応じた事実関係の確認や追加資料のご準備などです。申請手続は私たちが対応し、できる限り迅速に進めます。

司法書士が相談者夫婦に親身に説明し、夫婦が安心した表情を浮かべている様子。専門家に相談することのメリットを表している。

全国どこでも対応可能。遠方の不動産もお任せください

オンライン申請の最大のメリットは、場所を選ばずに申請できる点です。これは、司法書士に依頼する場合にこそ、その真価を発揮します。

例えば、ご自身は川崎にお住まいで、相続したご実家が北海道にある、といったケースでも全く問題ありません。オンライン申請に対応している司法書士であれば、日本全国どこの法務局に対しても申請が可能です。お客様が遠方の不動産のためにわざわざ現地へ出向いたり、現地の司法書士を探したりする必要はなく、お近くの事務所で相談するだけで、すべての手続きを完結させることができます。

費用はどれくらい?自分でやる場合との比較

「でも、専門家に頼むと費用が高いのでは?」とご心配されるかもしれません。確かに、司法書士に依頼すれば報酬が発生します。相続登記の司法書士報酬は、事務所や事案の難易度(不動産の数、戸籍収集の範囲、遺産分割の内容など)によって幅があります。

しかし、ご自身で挑戦する場合の「隠れたコスト」も考えてみてください。

  • ICカードリーダライタの購入費用(数千円)
  • 複雑な手続きを調べるための膨大な時間と労力
  • 慣れない作業による精神的なストレス
  • 申請に不備があった場合の追加的な手間や交通費
  • 最悪の場合、申請が却下され、すべてが水の泡になるリスク

これらの目に見えないコストを総合的に考えると、最初から専門家に任せてしまう方が、時間的にも精神的にも、そして結果的には金銭的にも合理的であるケースは非常に多いのです。具体的な相続登記の費用については、事例を交えて解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ|相続登記のオンライン申請は専門家にご相談を

相続登記のオンライン申請は、制度としては存在しますが、一般の方がご自身でスムーズに完了させるには、あまりにも多くのハードルが待ち構えています。時間と労力を節約するつもりが、かえって大きな負担になってしまう可能性が高いのが実情です。

煩雑でミスの許されない相続手続きは、その道のプロである司法書士に任せるのが、結果として最も安心で、最も効率的な選択肢と言えるでしょう。司法書士に依頼するメリットは、単に手続きを代行するだけではありません。お客様の大切な時間と心の平穏を守ることにも繋がります。

当事務所では、相続に関する豊富な経験とオンライン申請の実績を活かし、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なサポートをご提供しています。「自分でやるのは難しそうだ」「まずは話だけでも聞いてみたい」と感じられた方は、どうぞお気軽に当事務所の無料相談をご利用ください。あなたのお悩みを解決する第一歩を、私たちが全力でお手伝いします。

まずはお気軽にお問い合わせください。

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