孫に家を遺す方法|遺贈と代襲相続の税金・手続きの違い

子が存命中に孫へ家を継がせたい場合は「遺言書(遺贈)」が有力な選択肢です

「自分の子どもではなく、かわいい孫にこの家を直接遺してあげたい」

そう願うお気持ち、とてもよく分かります。お子様がご健在であるにもかかわらず、お孫さんへ財産を直接渡したいと考える背景には、ご家庭ごとに様々な事情があることでしょう。例えば、お子様の浪費癖が心配だったり、お子様の配偶者との関係に思うところがあったり…一言では言い表せない複雑な想いを抱えていらっしゃるのかもしれません。

しかし、その切なる願いを法的に実現するためには、一つだけ、絶対に欠かせない手続きがあります。それが「遺言書」の作成です。

なぜなら、法律上のルールでは、お子様がご存命の場合、お孫さんは「法定相続人」ではないからです。もし遺言書がなければ、遺産は原則として法律で定められた法定相続人(多くのケースではお子様)へ承継されます。その結果、お孫さんが遺産を受け取れないことがあります。

つまり、お子様がご健在な状況でお孫さんに家を引き継がせたい場合、代表的な方法の一つが、「遺言書を作成して、特定の不動産をお孫さんに遺す(遺贈する)」という方法です。この記事では、その具体的な方法と、知っておくべき重要な注意点について、専門家の視点から詳しく解説していきます。

衝撃の事実!孫への遺贈は登録免許税が5倍も高い

「遺言書さえ書けば、孫に家を遺せるんだな。よかった」と安心されたかもしれません。しかし、ここで一つ、多くの方が見落としがちな、そして非常に重要な事実をお伝えしなければなりません。

それは、お子様がご存命の状況でお孫さんに家を遺贈した場合、不動産の名義変更(登記)にかかる「登録免許税」が、通常の相続に比べて5倍も高くなってしまうという事実です。

孫への不動産の名義変更にかかる登録免許税の比較図。相続の場合は税率0.4%で8万円、遺贈の場合は税率2.0%で40万円となり、5倍の差があることを示している。

なぜ、これほどまでに税率が違うのでしょうか。それは、法律が「相続」と「遺贈」を異なる性質のものとして捉えているからです。

  • 相続(税率0.4%):法定相続人が財産を引き継ぐこと。これは、亡くなった方の権利や義務を包括的に「承継」する行為と見なされます。
  • 遺贈(原則として税率2.0%):法定相続人以外の人へ遺言によって不動産を渡すこと。登録免許税は、国税庁の税額表にある「相続(1,000分の4)」と「その他(贈与・交換・収用・競売等)(1,000分の20)」等の区分に基づき計算され、法定相続人以外への遺贈は、実務上「その他(1,000分の20)」として扱われるのが一般的です。

この違いを、具体的なケースで比較してみましょう。

ケース1:子が先に亡くなっている場合(代襲相続)の税金

まず、比較のために「代襲相続」のケースを見てみましょう。代襲相続とは、本来相続人となるはずだった子(Bさんの長女)が、親であるBさんより先に亡くなっている場合に、その子の子(Bさんの孫)が代わりに相続人になる制度です。

このケースでは、お孫さん(YさんとZさん)は「法定相続人」として財産を引き継ぎます。そのため、登録免許税の税率は0.4%が適用されます。

【Bさんの事例】

Bさんには長女が一人いましたが、Bさんより先に亡くなってしまいました。その長女には、YさんとZさんという二人の子ども(Bさんにとってのお孫さん)がいました。

その後、Bさんが亡くなり、お孫さんであるYさんとZさんが法定相続人として遺産分割協議を行い、不動産の名義変更を行いました。

<登録免許税の計算>
不動産の評価額が2,000万円の場合
2,000万円 × 0.4%8万円

ケース2:子が存命中に孫へ遺す場合(遺贈)の税金

次に、この記事の本題である「お子様がご存命の状況で、お孫さんに家を遺す」ケースです。以前、私がお手伝いしたAさんの事例が非常に参考になります。

【Aさんの事例】

Aさんは、ご自身の長男の子であるお孫さんXさん(当時5歳)に、どうしても自宅の不動産を継がせたいと強く願っていました。もちろん長男はご健在です。そのため、XさんはAさんの法定相続人ではありません。

ご相談を受けた私は、Aさんの願いを叶えるには遺言書を作成し「遺贈」する方法しかないこと、そしてその場合は登録免許税が高くなるなどのデメリットがあることを丁寧にご説明しました。それでもAさんの「孫に遺したい」というお気持ちは揺らぎませんでした。

そこで、Aさんの想いを形にするため、法的に有効な遺言書を作成。後日、Aさんがお亡くなりになった後、その遺言書に基づき、無事にお孫さんのXさんへ不動産の名義変更(所有権移転登記)を完了させることができました。

このAさんのケースでは、お孫さんは「法定相続人以外の人」として財産を受け取るため、登録免許税率は2.0%となります。

<登録免許税の計算>
不動産の評価額が2,000万円の場合
2,000万円 × 2.0%40万円

代襲相続のケースと比較すると、実に32万円もの差額が生じることがお分かりいただけるでしょう。

さらに、遺贈の場合は登録免許税以外にも注意すべき税金があります。

  • 不動産取得税:相続(包括遺贈や相続人に対する遺贈を含む)による取得は非課税とされています。一方で、法定相続人以外の人が遺贈を受ける場合など、取得の形によっては課税対象となることがあります。
  • 相続税の2割加算:お孫さんは一親等の血族ではないため、相続税がかかる場合、その税額が2割増しになります。

これらの税金面のデメリットは、決して無視できない大きなポイントです。

参照:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

税金が高くても「遺贈」を選ぶべき3つの理由

「登録免許税が5倍もするなんて…」「他にも税金がかかるなら、孫に遺すのはやめた方がいいのだろうか…」

そう不安に思われたかもしれません。確かに、金銭的な負担だけを考えれば、遺贈はデメリットが大きいように見えます。しかし、それでもなお、多くの方が「遺贈」という選択をされるのには、コスト以上の価値があるからです。

  1. 自分の意思を最も確実に反映できる
    遺言書は、ご自身の最終的な意思を法的に実現するための最も強力なツールです。「誰に、どの財産を、どれだけ渡すか」を明確に指定することで、法定相続のルールに縛られることなく、ご自身の想いをそのまま形にできます。お孫さんに特定の不動産を確実に渡したい、という願いを叶える唯一の方法なのです。
  2. 特定の子の事情を回避できる
    お子様の浪費癖が心配な場合や、将来の離婚によって財産が散逸するリスクを避けたい場合など、お子様に直接財産を渡したくない明確な理由があるケースは少なくありません。遺贈は、こうしたご家庭ごとのデリケートな事情を乗り越え、大切な財産を守るための有効な手段となり得ます。
  3. 将来の二次相続トラブルを防げる
    もしお子様に財産を相続させ、その後そのお子様が亡くなった場合(二次相続)、その財産はお子様の配偶者やお孫さんたちへと引き継がれます。その過程で、家族間の意見が対立し、思わぬトラブルに発展することも考えられます。最初からお孫さんに直接財産を渡すことで、こうした将来の争いの火種を未然に防ぐ効果も期待できるのです。

税金の負担は確かに大きいですが、それはお孫さんに財産を確実に、そして円満に引き継がせるための「必要経費」と捉えることもできます。遺言書を作成したほうが良いケースは数多くあり、遺贈はその中でも特に強い意思を反映させるための選択と言えるでしょう。

要注意!孫への遺贈で起こりうる3大トラブルと回避策

「よし、税金は覚悟の上で、孫のために遺言書を書こう!」と決意された方へ。その前に、もう一つだけ知っておいていただきたいことがあります。それは、お孫さんへの遺贈が、時として深刻な家族トラブルを引き起こす可能性があるという点です。しかし、ご安心ください。これらのトラブルは、事前の対策で十分に回避することが可能です。

リビングで相続トラブルを抱える家族。遺言書を前にして、祖父母と孫が険しい表情で向かい合っている。
  1. トラブル1:他の相続人からの「遺留分」請求
    お子様など、本来の法定相続人には「遺留分」という、最低限の遺産を受け取る権利が法律で保障されています。お孫さんに財産の大部分を遺贈した結果、この遺留分を侵害してしまうと、後からお子様にお孫さんが金銭の支払いを請求される可能性があります。これでは、せっかくの想いが争いの原因になってしまいます。
    【回避策】遺言書を作成する段階で、他の相続人の遺留分に配慮した財産配分を設計することが極めて重要です。専門家が財産全体を評価し、将来のトラブルを見越したバランスの良い内容をご提案します。
  2. トラブル2:遺言書の不備による無効
    せっかく遺言書を作成しても、法律で定められた形式を守れていないと、その遺言書自体が無効になってしまいます。日付が抜けている、署名がない、など、ほんの些細なミスが命取りになるのです。無効になれば、お孫さんに家を遺すという最大の目的が果たせなくなってしまいます。
    【回避策】最も確実なのは、公証役場で作成する「公正証書遺言」を利用することです。公証人が内容を確認しながら作成するため、形式不備で無効になる心配がありません。私たち司法書士が、その文案作成から公証人とのやり取りまで、すべてサポートいたします。
  3. トラブル3:手続きの煩雑さと協力が得られないリスク
    遺言の内容を実現するためには、不動産の名義変更をはじめ、様々な手続きが必要です。この手続きを行う遺言執行者を指定しておかないと、相続人全員の協力(実印や印鑑証明書など)が必要になる場合があります。もし、遺贈に納得していない相続人が一人でもいれば、手続きがストップしてしまう恐れがあります。
    【回避策】遺言書の中で、信頼できる専門家(司法書士など)を「遺言執行者」に指定しておくことを強くお勧めします。遺言執行者には法的な権限が与えられるため、他の相続人の協力を得ずとも、単独でスムーズに手続きを進めることが可能です。

「孫への想い」を法的に実現するなら、司法書士にご相談ください

ここまでお読みいただき、お孫さんに家を遺すということが、決して簡単な道のりではないことをご理解いただけたかと思います。

  • 通常の5倍にもなる登録免許税
  • 遺留分など、他の相続人への配慮
  • 法的に不備のない遺言書の作成
  • 死後の煩雑な名義変更手続き

これらすべての課題をクリアし、お孫さんへの大切な想いを確実に、そして円満に形にするためには、相続の専門家である司法書士のサポートが不可欠です。

私たちにご相談いただければ、単に司法書士に依頼するメリットとして手続きを代行するだけでなく、あなたのご家庭の状況や財産全体を深く理解した上で、税金面のリスクや将来起こりうる家族トラブルまで見据えた、最適な遺言書プランをご提案いたします。

何より、煩雑な手続きやご家族間の調整役といった精神的なご負担から、あなたを解放することができます。お孫さんへの純粋な想いを、法的な不安や心配事で曇らせてしまうのは、あまりにもったいないことです。

あなたの「孫を想う心」を、法的に完璧な形で未来へ繋ぐお手伝いをさせていただけませんか。まずはお気軽にお話をお聞かせください。

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