不動産名義が旧姓のまま相続発生!相続登記と氏名変更を専門家が解説

不動産の名義が旧姓のまま…相続時に問題になる?

「親から相続した実家の名義を見たら、結婚前の旧姓のままだった」「自分も共有で持っている土地があるけれど、そういえば名義は旧姓のままだ…」
相続の手続きを進める中で、このような事実に気づき、ご不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、不動産の名義が旧姓のままになっている場合、そのまま放置しておくことはおすすめできません。特に、法改正によって2026年4月1日からは氏名や住所の変更登記が義務化され、罰則も設けられることになりました。この義務化は、法改正の施行前に氏名や住所の変更が生じていた場合も対象となり、施行日から3年以内に登記を申請する必要があります。相続というタイミングは、こうした長年の懸案事項を整理する絶好の機会です。まずは、なぜ今すぐ対応すべきなのか、その理由から見ていきましょう。

2026年4月から氏名・住所変更登記が義務化!放置はNG

これまで任意だった不動産所有者の氏名や住所の変更登記ですが、不動産登記法の改正により、2026年4月1日から義務化されることになりました。

結婚や離婚などで氏名が変わったり、引っ越しで住所が変わったりした場合、その変更があった日から2年以内に変更登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限内に申請しない場合、5万円以下の過料が科される可能性があります(過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰である罰金とは異なります)。

2024年4月1日から始まった相続登記の義務化とあわせて、不動産の登記情報は常に最新の状態にしておくことが、法律上のルールとなったのです。ご自身の不動産だけでなく、ご家族が所有する不動産の名義についても、この機会に一度確認しておくことが大切です。

参考:住所等変更登記の義務化特設ページ

旧姓のまま放置する具体的なデメリットとは?

過料という直接的な罰則以外にも、不動産の名義を旧姓のままにしておくことには、実務上のデメリットがあります。

  • 将来の売却や担保設定がスムーズに進まない
    不動産を売却したり、住宅ローンを組むために金融機関から融資を受け、不動産を担保に入れたりする際には、必ず前提として氏名変更登記が必要になります。いざという時に手続きが滞り、売却のタイミングを逃したり、融資の実行が遅れたりする可能性があります。

こうしたデメリットを避けるためにも、相続を機にきちんと名義を整理しておくことが、将来のご自身やご家族のためになるのです。

司法書士に旧姓不動産の相続について相談し、安心した表情を浮かべる女性。

【ケース別】旧姓不動産の相続登記、誰の名義でどう手続きする?

「旧姓のままの不動産」といっても、その名義人が誰なのかによって、手続きの進め方は少し異なります。ここでは、代表的な2つのケースに分けて、それぞれどのような手続きが必要になるのかを分かりやすく解説します。

ケース1:亡くなった親(被相続人)の名義が旧姓の場合

亡くなられたお父様やお母様(被相続人)の名義が、婚姻前の旧姓のままになっているケースです。

この場合、原則として、亡くなった方の氏名変更登記を省略して、直接相続人への相続登記を申請することができます。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の中で、登記簿上の氏名(旧姓)から死亡時の氏名までの変遷を証明することが可能です。

ケース2:相続人である自分自身の名義が旧姓の場合

ご自身が相続人であり、かつ、その不動産の一部を以前から所有していて、ご自身の名義が旧姓のままになっているケースです。例えば、親子で共有名義にしていた不動産で、親が亡くなった場合などがこれにあたります。

この場合、まず亡くなった親の持分をご自身に相続する「相続登記」を行います。そして、それと同時に、ご自身の名義を旧姓から現在の姓に変更する「氏名変更登記」を申請することをお勧めします。

この2つの登記は、別々に行うこともできますが、「同時申請(連件申請)」することで、手間や費用を大きく削減できます。次の章で詳しく見ていきましょう。(なお、建物が登記されていないケースについては、未登記建物の相続登記|手続きの流れと必要書類を専門家が解説の記事もご参照ください。)

相続登記と氏名変更登記の同時申請と個別申請のメリット・デメリットを比較した図解。

相続登記と氏名変更登記は「同時申請」で費用と手間を削減!

相続登記と氏名変更登記は、それぞれ別の手続きですが、法務局にまとめて申請する「同時申請(連件申請)」が可能です。相続を機に名義を整理する場合、この同時申請を活用することで、時間・費用・労力のすべてを節約することができます。

なぜ同時申請がお得?別々に手続きした場合との比較

同時申請のメリットは、あらゆる手続きが「一度」で済む点に集約されます。別々に申請した場合と比べて、どれだけ効率的かを見てみましょう。

項目同時申請(連件申請)の場合別々に申請した場合
司法書士への依頼1回で済む2回依頼が必要(費用が割高に)
必要書類の取得1回でまとめて取得できる2回に分けて取得する手間がかかる
法務局への申請1回の申請で完了2回出向く必要がある
登録免許税それぞれ必要(※税額は変わらない)それぞれ必要
相続登記と氏名変更登記の手続き比較

特に司法書士に依頼する場合、別々のタイミングで依頼すると、その都度相談料や基本報酬が発生し、費用が割高になってしまう可能性があります。同時申請であれば、一連の手続きとしてまとめて依頼できるため、報酬を抑えることにつながります。

また、将来その不動産を売却する際にも、名義が現在の氏名にきちんと整理されていれば、売却手続きもスムーズに進みます。まさに「一石二鳥」の方法と言えるでしょう。

相続を機に行う氏名変更登記の必要書類リスト

氏名変更登記を申請する際に、一般的に必要となる書類は以下の通りです。

  1. 登記申請書
  2. 氏名の変更経緯がわかる戸籍謄本
    登記簿に記載されている旧姓から、現在の姓までのつながりを証明するために必要です。例えば、婚姻によって姓が変わった場合は、婚姻の事実が記載されている戸籍謄本を提出します。
  3. 現在の氏名・住所が記載された住民票または戸籍の附票
    登記名義人(旧姓のあなた)と、今回申請する人(現在のあなた)が、間違いなく同一人物であることを証明するために必要です。同姓同名の方との混同を防ぐ目的があります。
  4. 登録免許税
    不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります(印紙税ではありません)。例えば、土地1筆と建物1棟であれば、合計2,000円です。

なお、氏名変更登記の申請自体には、権利証(登記識別情報)は原則として不要です。しかし、次に解説するような複雑なケースでは、権利証が非常に重要な役割を果たすことがあります。

氏名変更登記に必要な書類の一覧を図解したもの。登記申請書、戸籍謄本、住民票、登録免許税がリストアップされている。

【要注意】戸籍の附票や権利証がない場合のリスクと対処法

氏名変更登記の手続きは、必要書類がスムーズに揃えばそれほど難しくありません。しかし、時として「書類が取得できない」という壁にぶつかることがあります。特に注意が必要なのが「戸籍の附票」と「権利証」です。

戸籍の附票が取得できない!どうやって証明する?

「戸籍の附票(こせきのふひょう)」とは、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴が記録された書類です。氏名変更登記では、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを証明するために重要な役割を果たします。

しかし、この戸籍の附票は、市区町村の統廃合や戸籍のコンピュータ化などによって作り替えられることがあります。また、法改正前の保存期間は5年だったため、古い戸籍の附票はすでに廃棄されていて取得できないケースが少なくありません。

もし戸籍の附票が取得できず、住所の変遷を証明できない場合、手続きは一気に複雑になります。具体的には、以下のような複数の書類を組み合わせて、登記名義人と申請人が同一人物であることを法務局に対して証明していく必要があります。

  • 不在籍証明書、不在住証明書
  • 権利証(登記識別情報)
  • 固定資産税の納税通知書
  • 実印と印鑑証明書
  • 上申書(事情を説明する書類) など

これらの書類をどのように組み合わせれば証明できるかはケースバイケースであり、高度な専門知識が求められます。ご自身で判断して進めるのは非常に困難なため、このような場合は速やかに専門家である司法書士にご相談ください。

相談事例:権利証の活用でスムーズに解決できたケース

ここで、当事務所で実際にあったご相談を、個人が特定されないよう一般化した形で紹介します。まさに、戸籍の附票が取得できずにお困りだったケースですが、あるものが決め手となって無事に解決できました。

【ご相談の概要】
ご相談者は、数十年前に親御様と共有名義で不動産を取得しましたが、当時は未婚だったため、登記名義は旧姓のままでした。先日、親御様が亡くなり、相続の手続きを進めようとしたところ、ご自身の名義が旧姓のままになっていることに気づき、どうすればよいかとご相談にいらっしゃいました。

自宅で書類を整理中、紛失したと思っていた不動産の権利証を見つけて安心する女性。

【当事務所からのご提案と結果】
お話を伺い、亡くなった親御様の持分をご相談者が相続する「相続登記」と、ご相談者ご自身の名義を旧姓から現在の姓へ変更する「氏名変更登記」を同時に進めることをご提案しました。

手続きを進める中で、やはり懸念していた事態が起こりました。氏名変更登記に必要な、ご相談者の旧姓当時の住所が記載された戸籍の附票や住民票が、保存期間の経過によりすでに役所で廃棄されていたのです。

住所のつながりを公的な書類で証明できない状況に、ご相談者も大変ご不安そうでした。しかし、私たちは諦めませんでした。ご相談者にご自宅の書類を丁寧に見直していただいたところ、購入当時に発行された「権利証」を大切に保管されていることが分かりました。

この権利証(登記識別情報)は、不動産の所有者が通常大切に保管する重要な書類であり、これを法務局に提出することで、登記名義人と申請者が同一人物であることの有力な証明手段となります。

結果として、この権利証を添付することで法務局の審査も無事に通り、相続登記と氏名変更登記を一度の手続きで完了させることができました。ご相談者からは「もうダメかと思ったけれど、無事に手続きが終わって本当に安心しました」と、安堵の言葉をいただくことができました。

このように、公的な証明書が取得できない場合でも、権利証のような別の書類で代替できることがあります。ご自身で「もう無理だ」と諦めてしまう前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談いただければと思います。

補足:旧姓のまま登記できる?「旧姓併記制度」とは

「結婚しても、仕事で使っている旧姓のまま登記できないの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

実は、令和6年(2024年)4月1日から、不動産登記簿に現在の氏名とあわせて旧姓を記録できる「旧姓併記制度」が始まりました。これは、戸籍上の氏(現在の姓)のあとに、カッコ書きで旧姓を併記するものです。

例:登記名義人 川崎 花子(旧姓:鈴木)

この制度を利用することで、旧姓での取引関係などを登記簿上で確認できるようになり、本人確認等が円滑に進むといったメリットが期待できます。ただし、これはあくまで現在の氏名に「付け加える」制度です。この記事で解説してきた、登記名義そのものが古い姓のままになっている状態を解消する「氏名変更登記」とは目的が異なりますので、混同しないように注意しましょう。

旧姓不動産の相続登記は、専門家である司法書士にご相談ください

ここまで見てきたように、不動産の名義が旧姓のままになっている場合、相続を機に相続登記と氏名変更登記を同時に行うのが最も合理的です。しかし、特に戸籍の附票が取得できないなど、書類が不足しているケースでは、手続きが非常に複雑になり、専門的な知識と経験が不可欠です。

「自分で戸籍を集めてみたけれど、つながりが分からなくなってしまった」
「平日は仕事で役所や法務局に行く時間がない」
「そもそも、何から手をつけていいか分からない」

このようなお悩みを抱えていらっしゃる方は、どうぞお一人で抱え込まず、私たち「いがり円満相続相談室」にご相談ください。相続と登記の専門家である司法書士が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、適切な解決策をご提案いたします。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの不安な心に「安心」を届け、円満な相続が実現できるよう、サポートいたします。

旧姓不動産の相続登記問題を無事に解決し、司法書士に感謝して握手する相談者。

当事務所が選ばれる理由:初回から司法書士が直接対応

司法書士・行政書士・社会保険労務士 いがり綜合事務所(屋号:いがり円満相続相談室)は、神奈川県川崎市・横浜市を中心に、相続手続きを専門とする司法書士事務所です。年間100件を超えるご相談・ご依頼をいただいております(2023年実績)。
【事務所概要】
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号
代表者:司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)
所属会:神奈川県司法書士会

当事務所では、大量の案件を事務的に処理するのではなく、原則として、司法書士である代表の猪狩が、最初のご相談から手続き完了まで丁寧に対応いたします。お客様一人ひとりのお話にじっくりと耳を傾け、ご不安な点やご不明な点を一つひとつ解消しながら、正確・迅速に手続きを進めます。

また、お忙しい現役世代の方にもご相談いただきやすいよう、平日夜間(19時、20時開始)や土日祝日のご相談にも柔軟に対応(要事前予約)しております。旧姓不動産の相続という複雑な手続きも、安心してお任せください。

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