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「財産は100万円のはずが…」通帳から数百万の保険金が判明した事例
相続財産の調査において、通帳の取引履歴を精査することは非常に重要です。実際にあったご相談で、当初は預金のみが財産だと思われていたケースでも、通帳の定期的な引き落とし記録から、ご遺族も知らなかった生命保険契約の存在が判明したことがあります。
記帳されていない期間の取引履歴を確認したところ、毎月決まった日に保険会社と思われる宛先への引き落としが続いていました。そこで、保険会社に照会を行った結果、ご遺族が受取人となる死亡保険金や、故人が受け取るはずだった医療保険金(入院給付金)が残されていることがわかったのです。
入院給付金などの請求権は、被保険者本人が亡くなった場合、その相続人に引き継がれます。このケースでは、最終的に数百万円もの保険金が見つかり、ご遺族は故人が遺してくれた想いを改めて感じることができました。
この事例のように、故人様が遺してくれた大切な想いが、気づかれないまま眠っているケースは決して珍しくありません。この記事では、そんな「隠れた財産」を見つけ出し、後悔のない相続を実現するための方法を、私たち専門家の視点から具体的にお伝えします。
故人の隠れた財産、まず何から手をつけるべき?
ご家族が亡くなられた直後は、悲しみに暮れる中でさまざまな手続きに追われ、財産の全体像まで正確に把握するのは本当に難しいことです。「何がどれだけあるのかわからない…」という不安は、多くのご遺族が抱える共通の悩みです。
しかし、焦る必要はありません。まずは落ち着いて、故人様が遺した「お金の足跡」を探すことから始めましょう。その最も重要な手がかりが、ご自宅に残された書類なのです。

ステップ1:故人の部屋から「お金の足跡」を探す
財産調査の第一歩は、故人様のご自宅を丁寧に確認することです。遺品整理というと感傷的になりがちですが、ここでは「宝探し」のような気持ちで、お金に関わる書類やヒントを探してみましょう。
特に、以下のような場所や物を重点的に確認してみてください。
- 机の引き出し、本棚、金庫、仏壇など:通帳、印鑑、権利証、保険証券といった重要書類が保管されていることが多い場所です。
- 郵便物:銀行、証券会社、保険会社、カード会社からの封筒はすべて手がかりになります。固定資産税の納税通知書や、確定申告書の控えも重要な情報源です。
- カレンダーや手帳:金融機関名が入った粗品(カレンダー、タオルなど)や、保険料の支払日などのメモ書きが見つかることもあります。
- 財布やカードケース:キャッシュカード、クレジットカード、ポイントカードなどから取引のある金融機関が判明します。
一見関係なさそうな物でも、思わぬヒントに繋がることがあります。すぐに処分せず、一度は目を通すようにしましょう。
ステップ2:見つけた通帳、司法書士は「ココ」を見る
数ある手がかりの中でも、私たちが特に重視するのが「通帳」です。しかし、ただ最終残高を見るだけでは不十分。本当の宝は、その「取引履歴」に隠されています。
当事務所では、預金の相続手続きをご依頼いただいた際、最低でも過去3年分の取引履歴を丁寧に確認し、隠れた財産がないかチェックするよう心がけています。
具体的に、プロが注目するポイントは以下の通りです。
- 定期的な引き落とし:「〇〇セイメイ」「〇〇キョウサイ」「〇〇ホケン」といった記載があれば、生命保険や共済に加入していた可能性が非常に高いです。金額や引き落とし日から、保険の種類を推測できることもあります。
- 定額の自動送金:毎月決まった日に決まった金額がどこかに送金されていれば、それは家賃収入の管理会社への送金かもしれませんし、あるいは別の銀行にある本人名義の口座への積立かもしれません。
- 見慣れない会社からの入金:「〇〇ショウケン」からの入金は株の配当金、「〇〇(会社名)」からの定期的な入金は、個人で契約していた不動産の賃料収入などの可能性があります。
- クレジットカードの引き落とし:カードの利用明細を取り寄せれば、ネット証券やネット保険の契約が判明することがあります。
もし記帳がしばらくされていない通帳が見つかったら、まずはATMで記帳してみてください。冒頭の事例のように、そこからすべてが始まることもあるのです。

【財産別】自分でできる!隠れた財産の探し方ガイド
手元の資料から手がかりが見つかったら、次はその情報を元に具体的な調査を進めていきます。ここでは、財産の種類別に、ご自身でできる調査方法の基本を解説します。
預貯金:取引銀行の特定と残高証明書の取得方法
通帳やキャッシュカードから取引のあった金融機関が判明したら、その金融機関の窓口で相続手続きをしたい旨を伝えます。まずは、亡くなった日時点での残高を正確に証明する「残高証明書」や、過去の「取引履歴」を取得しましょう。
手続きには、通常以下の書類が必要となります。
- 被相続人(故人)の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍謄本)
- 請求者が相続人であることがわかる戸籍謄本
- 請求者の本人確認書類(運転免許証など)と印鑑
ゆうちょ銀行やネット銀行なども基本的な流れは同じですが、必要な書類や手続き方法が異なる場合があるため、事前に各金融機関のウェブサイトや電話で確認しておくとスムーズです。
生命保険:保険証券がなくても諦めない「生命保険契約照会制度」
保険証券が見つからない、でも通帳の引き落としから保険に入っていたはず…。そんな時に非常に有効なのが「生命保険契約照会制度」です。
これは、生命保険協会に加盟している全ての保険会社に対し、故人が契約者または被保険者となっている保険契約がないかを一括で調査してもらえる制度です。法定相続人であれば、1照会あたり3,000円(税込)の手数料で利用できます。
これにより、故人が契約していた保険の有無はもちろん、どの保険会社と契約していたかまで判明します。契約の存在がわかれば、あとはその保険会社に直接連絡を取り、保険金請求の手続きを進めることができます。諦める前に、ぜひ活用を検討してみてください。
不動産:「名寄帳」で故人の所有不動産を一覧化する
「自宅以外にも不動産を持っていたかもしれない」という場合は、「名寄帳(なよせちょう)」を取得することで解決できる可能性があります。
名寄帳とは、ある特定の市区町村内において、同一人物が所有している不動産を一覧にしたものです。固定資産税の納税通知書が見当たらない場合でも、市区町村役場の資産税課などで相続人であることを証明すれば取得できます。
これにより、その市区町村内での故人の所有不動産をすべて把握できます。もし不動産の存在が判明したら、次は法務局で「登記事項証明書」を取得し、正確な情報を確認します。その後の不動産の名義変更(相続登記)手続きも、私たち司法書士の専門分野です。
借金・ローン:マイナスの財産も見落とさないために
財産調査では、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどの「マイナスの財産」も見落とさないことが極めて重要です。
もし、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合は、家庭裁判所で相続放棄についての手続きを検討する必要があります。この手続きは、原則として相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行わなければなりません。
借金の有無を調べるには、信用情報機関(JICC、CIC、KSC)に情報開示請求を行うのが最も確実な方法です。故人宛の督促状や、通帳からのローン返済の引き落としなども重要な手がかりとなります。少しでも心当たりがあれば、早急に調査に着手しましょう。
調査が難しい…そんな時は司法書士への代行依頼が近道です
ここまでご自身でできる調査方法をご紹介してきましたが、「平日は仕事で役所や銀行に行く時間がない」「必要な書類が複雑でよくわからない」「そもそも、何から手をつけていいか途方に暮れている」と感じる方も少なくないでしょう。
そんな時は、一人で抱え込まずに専門家に頼ることで、手続きがよりスムーズに進む場合があります。私たち司法書士は、相続に関する手続きのプロフェッショナルです。

司法書士に依頼できる「遺産承継業務」とは?
司法書士と聞くと、「不動産の名義変更(相続登記)の専門家」というイメージが強いかもしれません。しかし、私たちの仕事はそれだけではありません。
「遺産承継業務」として、相続人の皆様の代理人となり、以下のような煩雑な相続手続きをまとめて代行することが可能です。
- 相続人確定のための戸籍謄本の収集
- 相続財産(預貯金、不動産、有価証券など)の調査・特定
- 遺産分割協議書の作成
- 金融機関での預貯金の解約・払戻し手続き
- 保険会社への死亡保険金の請求手続き
- 不動産の名義変更(相続登記)
つまり、財産調査から各種名義変更、現金化まで、相続に関する一連の手続きをワンストップでお任せいただけるのです。これにより、皆様の心身のご負担を大幅に軽減することができます。
弁護士との違いは?司法書士を選ぶメリット
「相続の相談は弁護士にするべきでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。もちろん弁護士も相続の専門家ですが、役割には少し違いがあります。
弁護士の最も得意とする分野は、相続人間で争い(紛争)が起きてしまった場合の交渉や裁判です。一方、司法書士は、争いのない円満な相続における「手続き」のプロフェッショナルです。
もし、ご親族間で特に揉めているわけではなく、煩雑な手続きを正確かつスムーズに進めたいという状況であれば、司法書士への依頼が非常に適しています。費用面でも、一般的に弁護士に依頼するよりも抑えられる傾向にあります。
私たち「いがり円満相続相談室」(司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所/所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号、代表司法書士:猪狩 佳亮、所属:神奈川県司法書士会)は、その名の通り、ご家族が円満に相続を乗り越えられるよう、手続き面から全力でサポートすることを使命としています。
まとめ:通帳の再確認と専門家への相談で、後悔のない相続を
故人様の遺した財産がわからないという不安は、とても辛いものです。しかし、諦めてしまう前に、できることはまだあります。
まずは、この記事を参考にして、もう一度故人様の通帳の取引履歴を丁寧に確認してみてください。そこには、思いがけない「宝物」が眠っているかもしれません。
そして、もし少しでも「自分だけでは難しい」「何から手をつけていいかわからない」と感じたら、どうか一人で悩まないでください。私たち専門家は、あなたの不安に寄り添い、複雑な手続きを代行するために存在します。
当事務所では、相続に関する初回のご相談は無料でお受けしています。川崎市・横浜市を中心に、平日夜間や土日祝のご相談にも柔軟に対応しております。故人様が遺してくれた大切な想いをしっかりと受け継ぐために、私たちが全力でサポートいたします。どうぞ、お気軽にご連絡ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
