相続人の中に未成年者がいる場合

未成年者は遺産分割協議に参加できるか?

 上のイラストを見てください。
 お父さんが若くして亡くなってしまい、遺されたのは妻と子ども、というケースです。この場合、法定相続人となるのは配偶者であるお母さん(故人の妻)と、ひとり息子の2人ですね。

 さて、今回のケースでは遺言書がありませんでした。遺言書がない場合、相続人全員の遺産分割協議によって財産の分け方を決めます。そうすると、このケースでは、お母さん(妻)と息子が協議をして財産の分け方を決めることになりそうです。

 ただ、相続人の息子は12才、すなわち未成年です。実は、法律では、未成年者は、単独で法律行為(遺産分割協議など)ができない ことになっています。民法という法律では、未成年者が法律行為をするには、原則として、法定代理人(一般的には、親権者である親)が代理して行うことになっています。

 そうすると、「お母さんと息子が協議」と言っても、親権者であるお母さんが、息子の代理人として遺産分割協議をする(つまり、結果的に、お母さん1人だけで遺産分割協議をする)ことになりそうですが、それでいいのでしょうか?

 実は、この場合、お母さんが子どもを代理することができません。 なぜかと言うと、この遺産分割協議について、お母さんが公平になれないからです(このことを、利益相反といいます)。

相続人が未成年の場合の遺産分割協議の方法

 相続人の中に未成年者がいる場合、家庭裁判所で「特別代理人」を選任することになります。特別代理人とは、未成年者(ひとり息子)の代理人になる人です。

 お母さんが公平になれないのだから、公平な立場でお母さんと協議ができる第三者を、家庭裁判所が代理人として選びます。 とはいっても、おじさんやおばさん、おじいちゃんやおばあちゃんなど、相続人でない、利害関係のない親戚であれば、この「特別代理人」になることが可能です。実務的にもそのようなケースが多いです。もちろん、我々のような専門家が特別代理人になることもあります。

家庭裁判所への申立てのポイント

 特別代理人を選任してもらうには、家庭裁判所に申立書を提出します。
 申立書には遺産分割協議書の文案(署名捺印していないもの)を添付し、その内容が不公平で無いことを裁判所に確認してもらいます。

 そして、原則として、未成年者に法定相続分(上のケースでは、2分の1)以上の財産を相続する内容ないと、受理されません。これが柔軟な相続という観点からは、すこし厄介です。

 申立から特別代理人の選任までは、通常2週間~1か月ほどかかります。裁判所から調査のアンケートが送られてきて回答しなければならないなど、結構面倒です。

遺言書があれば、家庭裁判所の手続きは不要

 相続人に未成年者がいる場合でも、遺言書があれば、上記のような家庭裁判所での手続きは不要です。それは、遺言書がある場合は、遺言書の内容どおりに遺産を分けるからです。遺産分割協議をしないのですから、協議をするための特別代理人はいらないのです。時間もかからないし、裁判所との面倒なやり取りをする必要もありません。未成年者が相続人になることが見込まれる場合、遺言書を作成しておくことが有効な対策になります。
 実務的に多いのは、相続対策として、未成年の孫と祖父・祖母が養子縁組するケースです。この場合、養子も法定相続人になります。相続対策が必要なケースですから、相続税の申告期限(10ヶ月)のことを考えると、少しでも早く手続きを進めたいはずです。遺言書作成が、スムーズかつスピーディな相続手続きを実現してくれることでしょう。

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