成年後見人の報酬は一生払う?費用を抑えるリレー型後見とは

Four people (two seniors and a younger couple) sit on a living room sofa around a coffee table with documents, tea, and cookies, smiling and talking.

「成年後見人の報酬は一生続く?」その不安、解消できます

「親の認知症が進んできたので、実家を売却して施設に入る費用にあてたい」
「でも、そのためには成年後見制度を利用しないといけないらしい…」

そうお考えになったとき、多くの方がインターネットで情報を検索されることでしょう。そして、こんな言葉を目にして不安になっていませんか?

  • 「専門家が後見人になると、報酬が高額になる」
  • 「一度始まったら、本人が亡くなるまで報酬を“一生”払い続けなければならない」
  • 「年間30万円以上かかることもあり、10年、20年と続けば数百万円にもなる…」

大切なご家族のためとはいえ、これほど大きな経済的負担が長期間続くかもしれないと考えると、制度の利用をためらってしまうのも無理はありません。しかし、どうかご安心ください。ネットの断片的な情報だけでは見えてこない、専門家への報酬負担を賢く軽減できる具体的な方法が存在します。

この記事では、相続と成年後見を専門とする司法書士が、成年後見人の報酬に関する皆様の不安を一つひとつ丁寧に解消していきます。そして、特に不動産の売却が関わるケースで有効な「リレー型後見」という解決策について、実際の事例を交えながら分かりやすく解説します。

最後までお読みいただければ、「成年後見制度=高額な費用が一生続く」というイメージが覆り、安心して次の一歩を踏み出すための知識が身についているはずです。成年後見制度の全体像については、成年後見をご検討中の方へで体系的に解説しています。

まず知っておきたい成年後見人報酬の決まり方

漠然とした不安を解消するためには、まず成年後見人の報酬が「どのように決まるのか」という基本的な仕組みを正しく理解することが大切です。報酬は後見人が勝手に決めるものではなく、家庭裁判所が、後見人等からの報酬付与の申立てを受け、後見事務の内容や管理する財産の額、ご本人の資力などを考慮して決定します。

成年後見人の報酬の仕組みを図解したインフォグラフィック。総報酬が、日常業務に対する「基本報酬」と、不動産売却などの特別な業務に対する「付加報酬」で構成されていることが示されている。

報酬の相場は月額2万~6万円が目安【基本報酬】

成年後見人の報酬の中心となるのが、日常的な財産管理や身上保護(生活や健康への配慮)に対して支払われる「基本報酬」です。裁判所が公表している目安によると、預貯金・有価証券等の流動資産の合計額に応じて、月額2万円から6万円程度が目安とされています。

流動資産額基本報酬額のめやす
1,000万円以下2万円
1,000万円を超え5,000万円以下3万円~4万円
5,000万円を超える場合5万円~6万円
成年後見人等の基本報酬額のめやす(月額)

例えば、預貯金・有価証券等の流動資産が1,000万円以下の場合、基本報酬は月額2万円が目安とされています。ただし、不動産売却など特別な事務を行った場合には、別途付加報酬が認められることがあります。これが、制度を利用する上で継続的に発生するコストの基準となります。

不動産売却など特別な業務で上乗せされる【付加報酬】

「基本報酬」に加えて、通常の後見業務の範囲を超えるような特別な行為を行った場合には、その労力に応じて「付加報酬」が上乗せされます。これが、報酬総額が大きく変動する要因です。

付加報酬が発生する典型的なケースが、不動産の売却です。

ご本人のご自宅などを売却するには、家庭裁判所から「居住用不動産処分許可」を得る必要があります。この許可申立てや、不動産業者とのやり取り、売買契約の締結、登記手続きなど、一連の複雑な手続きを後見人が行います。こうした特別な業務に対して、基本報酬とは別に付加報酬が認められるのです。相続における不動産売却の流れも複雑ですが、後見人が関わる売却も同様に専門的な知識が求められます。

その他にも、遺産分割協議や保険金の請求、訴訟対応などを行った場合にも付加報酬が発生する可能性があります。

報酬はいつまで、誰が払う?

「報酬は一生払い続けるの?」というご質問に対しては、「原則として、後見が終了するまで続く」というのが答えになります。そして、後見が終了するのは、多くの場合ご本人が亡くなられたときです。

報酬は、家庭裁判所の決定に基づき、ご本人の財産から支払われます。後見人は年に一度、家庭裁判所に財産管理の状況を報告し、その際に報酬付与の申立てを行います。そして、裁判所が決定した報酬額を、ご本人の預貯金から受け取ることになります。ご家族がご自身の生活費から直接負担するわけではない、という点はぜひ覚えておいてください。

ただし、近年では目的が達成された場合に後見を終了できる「終われる後見」への法改正も進んでおり、制度のあり方も少しずつ変化しています。

より詳しい報酬の目安については、裁判所が公開している資料も参考になります。
参照:成年後見人等の報酬額のめやす(大阪家庭裁判所)

【解決策】専門家への報酬を一時的にする「リレー型後見」とは

「報酬が本人の財産から支払われるのは分かった。でも、大切な親の財産が報酬でどんどん減っていくのはやっぱり避けたい…」

そう思われるのは当然のことです。特に、不動産売却のような大きな目的がある場合、その目的が達成された後も専門家への報酬がずっと続くことに疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。

そこで私たちがご提案しているのが、「リレー型後見」という手法です。これは、専門家への報酬支払いを必要な期間だけに限定し、その後の負担を大幅に軽減できる、非常に有効な選択肢です。成年後見人を誰に頼むか迷っている方にとって、知っておくべき重要な考え方と言えます。

リレー型後見の流れを4ステップで解説した図解。専門家が不動産売却などの業務を行い、財産管理の仕組みを作った後、親族に後見人を交代する流れが示されている。

専門業務は司法書士、日常管理は家族へ。役割分担の流れ

リレー型後見とは、その名の通り、後見人の役割をリレーのように引き継ぐ方法です。具体的には、まず不動産の売却といった専門的な知識や手続きが必要な期間だけ、司法書士などの専門家が後見人に就任します。そして、売却手続きや代金の管理体制の構築といった最も重要なミッションが完了した時点で、後見人の役割をご家族(親族)にバトンタッチするのです。

一般的な流れは以下のようになります。

  1. 後見開始の申立て:司法書士などの専門家を後見人候補者として、家庭裁判所に申立てを行います。
  2. 専門家による後見業務:選任された専門家が、家庭裁判所の許可を得て不動産を売却します。
  3. 財産管理の仕組みづくり:売却で得た大きなお金を安全に管理するため、信託銀行などを活用する「後見制度支援信託」といった仕組みを利用します。これは日常的に使うお金以外は信託銀行等が管理するため、親族後見人の方の負担が減り、財産の安全性も高まります。
  4. 親族後見人へ交代:専門家が行うべき業務が完了した段階で、専門家は家庭裁判所の許可を得て後見人を辞任し、あらかじめ候補者としていたご家族(子など)に後見人を交代します。

このように、専門家が関わる期間を限定することで、報酬の支払いを短期化できる可能性があるのです。後見開始の申立てには様々な書類が必要ですが、より具体的な手順については、後見開始申立ての必要書類をご覧ください。また、後見制度支援信託・預貯金の仕組みは、国も利用を促進しています。

【実例で解説】リレー型後見で報酬負担を数百万円単位で軽減

「本当にそんなにうまくいくの?」と感じるかもしれません。そこで、当事務所で実際にあったご相談を基に、リレー型後見がいかに効果的かをご紹介します(※プライバシー保護のため、内容は一部変更しています)。

ある日、娘さんから切羽詰まったご様子でお電話がありました。
「母の認知症が進み、実家を売却して施設に入居させたいんです。でもネットを見ると、司法書士さんが後見人になったら、母が亡くなるまでずっと報酬を払い続けなければいけないと…。年間36万円だとしたら、10年で360万円、20年なら720万円…?そんな大金を払い続けられるか不安で…」

ご相談内容からは、お母様の生活を支えたいお気持ちと、将来の経済的負担への不安がうかがえました。

このお話をお聞きし、私はこうご提案しました。
「お気持ちはよく分かります。ですが、ご安心ください。ずっと専門家が後見人を続ける必要はありません。今回のように『不動産を売却する』という明確な目的がある場合、その専門的な手続きが終われば、後見人をお母様のことを一番よく分かっている娘さんにバトンタッチする『リレー型後見』という方法があります。専門家への報酬は、不動産売却が終わるまでの一時的なものになりますから、総額を大きく抑えられますよ」

このご提案により、娘さんには費用負担を抑えられる可能性について具体的にご理解いただけました。

ご依頼後、私たちは迅速に手続きを進めました。

  1. 当事務所の司法書士を後見人候補者として申立て、無事に選任。
  2. 複数の不動産業者から見積もりを取り、最高額を提示した業者と契約し、実家を売却。
  3. 売却代金を安全に管理するため「後見制度支援信託」を設定。
  4. 生活に必要な資金(約200万円)を普通口座に残し、司法書士は後見人を辞任。娘さんへ後見人を引き継ぐ申立てを行い、無事にバトンタッチが完了しました。

最終的に、家庭裁判所が決定した当事務所への報酬(付加報酬を含む)は約80万円でした。この金額だけを見ると高く感じられるかもしれませんが、これは不動産売却という大きな業務に対する一度きりの報酬です。もし専門家が後見人を続けた場合の360万円や720万円といった将来の負担と比較すれば、負担額には大きな差があります

最も大変な手続きを専門家に任せ、その後の財産管理はご家族の手に戻ったことで、娘さんには大変ご安心いただくことができました。このように、不要な契約の整理など、特定の目的がある場合にも応用できる考え方です。

司法書士事務所で、成年後見制度について相談する女性。専門家からの説明に安心した表情を浮かべている。

リレー型後見を検討する際の注意点とQ&A

リレー型後見は非常に有効な方法ですが、検討する際にはいくつか知っておくべき注意点があります。ここでは、よくあるご質問にお答えします。また、認知症対策としては家族信託という選択肢もあり、状況によって最適な方法は異なります。

Q. 親族が後見人になるための条件はありますか?

A. 特別な資格は必要ありませんが、誰でもなれるわけではありません。最終的には家庭裁判所が、その人が後見人としてふさわしいかを判断します。

具体的には、以下のような点が考慮されます。

  • 過去に本人と金銭的なトラブルがないか
  • 他の親族から同意を得られているか
  • ご自身の生活状況が安定しており、財産管理を適切に行えるか
  • ご本人の財産を不正に利用するおそれがないか

後見人に選ばれると、家庭裁判所への定期的な報告義務など、重い責任を負うことになります。その点を十分に理解した上で引き受けることが重要です。より詳しい条件や手続きについては、親族が成年後見人になるための条件や手続きをご覧ください。

Q. 専門家から親族への交代は必ず認められますか?

A. 必ず認められるとは限りません。後見人の交代(専門家の辞任と親族の選任)は、家庭裁判所の許可が必要です。

リレー型後見を実現するためには、最初の申立ての段階から「不動産売却という目的が完了した後は、親族に後見人を引き継ぎたい」という計画を家庭裁判所にしっかりと伝えることが重要です。専門的な業務が完了し、後見制度支援信託などで財産の安全性が確保されているといった合理的な理由を示すことで、交代が認められやすくなります。この計画的な申立てこそ、専門家に相談する大きなメリットの一つです。

Q. そもそも報酬が払えない場合はどうすればいいですか?

A. ご本人の財産が少なく、専門家への報酬を支払うことが難しい場合には、市区町村が費用を助成してくれる「成年後見制度利用支援事業」という制度があります。

助成の対象となる条件は自治体によって異なりますが、一般的に生活保護を受給している方や、世帯全員の住民税が非課税である方などが対象となります。経済的な理由だけで制度の利用を諦める必要はありませんので、まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談してみましょう。

国もこの制度の利用を推進しています。
参照:成年後見制度利用促進(厚生労働省)

まとめ:後見人の報酬は工夫次第。最適な方法を専門家と一緒に考えましょう

今回は、多くの方が不安に感じる成年後見人の報酬について、その仕組みと費用を抑えるための具体的な方法「リレー型後見」を解説しました。

この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 成年後見人の報酬は家庭裁判所が決定し、基本報酬は月額2~6万円が目安。
  • 報酬は原則として本人が亡くなるまで、本人の財産から支払われる。
  • 不動産売却など特別な業務には「付加報酬」が上乗せされる。
  • 不動産売却が目的の場合、「リレー型後見」で専門家への報酬支払いを一時的なものにできる。
  • 経済的に困難な場合は、公的な助成制度を利用できる可能性がある。

インターネット上の情報には、正確なものと不正確なものが混在しています。「報酬が一生続く」という一面的な情報に惑わされず、ご自身の状況に合わせた最適なプランを立てることが何より重要です。特に、不動産の売却が関わるようなケースでは、必要な業務が終わればご家族にバトンタッチするという考え方は、ご本人のためにも、ご家族の経済的・精神的な負担を軽くするためにも、非常に合理的だと私たちは考えています。

当事務所では、相続・後見案件を取り扱う司法書士が、ご家族ごとのお悩みや状況に合わせて対応方法をご提案します。もし、あなたが成年後見制度の利用や費用について少しでも不安や疑問をお持ちでしたら、一人で悩まずに、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。あなたとご家族が安心して未来へ進むためのお手伝いをさせていただきます。

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