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相続の預金手続き、銀行が教えない口座凍結と引出しの裏側
【相談事例】父が亡くなりました。銀行にはすぐ連絡すべき?
大切なご家族が亡くなられた直後、悲しみに暮れる間もなく、様々な手続きに追われることになります。中でも、故人の預貯金に関する手続きは、多くの方が最初に直面する大きな壁ではないでしょうか。
先日、当事務所にも、お父様を亡くされた奥様が不安な面持ちで相談に来られました。
「主人が亡くなったのですが、銀行口座はすぐに凍結されてしまうのでしょうか? 葬儀費用やお寺へのお布施、四十九日の費用など、支払わなければならないものがたくさんあるのに、お金の管理は全部主人がしていました。手元に現金があまりなく、口座が凍結されたら支払いができません。どうしたらいいのでしょうか…」
この切実なお悩みに対し、私はまず、こうお伝えしました。
「お気持ちお察しいたします。実は、銀行にすぐ連絡するのは少し待った方が良いかもしれません。銀行は、口座の名義人が亡くなったという事実を知った時点ではじめて口座を凍結します。こちらから連絡しない限り、新聞のお悔やみ欄に載せたりしていなければ、すぐに凍結されることはほとんどないのです。」
このアドバイスには、多くの方が驚かれます。しかし、慌てて行動することで、かえってご自身を追い詰めてしまうケースが後を絶ちません。この記事では、相続を専門とする司法書士が、銀行が教えてくれない口座凍結の裏側と、知らずに行うと後で大きなトラブルになりかねない預金引き出しのリスク、そしてそれらを回避するための正しい知識を分かりやすく解説します。
銀行口座はいつ凍結される?知られざる「裏側」の仕組み
まず、最も重要な「口座はいつ凍結されるのか?」という疑問にお答えします。結論から言うと、口座が凍結されるのは「銀行が口座名義人の死亡の事実を知った時点」です。
多くの方が「役所に死亡届を出したら、自動的に銀行に連絡がいくのでは?」と誤解されていますが、現状、役所から金融機関へ死亡情報が自動連携される仕組みはありません。では、銀行はどのようにして死亡の事実を知るのでしょうか。主なきっかけは以下の通りです。
- 相続人(ご家族)から電話や窓口で連絡があった
- 新聞のお悔やみ欄に掲載されていたのを見た
- 近所の方や会社の関係者など、第三者からの情報提供があった
これらのケースの中でも、圧倒的に多いのが「相続人からの連絡」です。つまり、ご家族が行動を起こさない限り、口座がすぐに凍結されることはほとんどない、というのが実態なのです。
凍結の合図は「相続人からの連絡」がほとんど
最も典型的な失敗例は、相続手続きの進め方を聞こうと銀行に電話した際に、うっかり「父が亡くなったのですが…」と伝えてしまうケースです。この一言で、銀行は口座を不正な出金から守るため、その場で利用停止(凍結)の手続きを取ります。
その結果、電話を切った後にはもうATMでお金をおろすことができなくなり、「葬儀代が払えない!」とパニックに陥ってしまうのです。善意からの行動が、かえって状況を悪化させてしまう。これが、預貯金相続の最初に待ち受けている大きな落とし穴と言えるでしょう。
口座が凍結されると何が起きるのか
口座が凍結されると、具体的にどのような影響があるのでしょうか。単に預金が引き出せなくなるだけではありません。
- 預金の入出金が一切できなくなる
- 公共料金やクレジットカードの引き落としが停止する
- 家賃や住宅ローンの支払いが滞る
- 年金や給付金などが振り込まれても、凍結解除まで引き出し等ができない(または振込が差し戻される)可能性がある
このように、口座凍結は日常生活に直接的な影響を及ぼします。特に、家計のメイン口座だった場合、生活が立ち行かなくなる可能性もあるため、計画的な対応が不可欠です。故人が契約していた公共料金や各種契約の整理も、早めに行動に移す必要があります。
凍結前の引き出しは可能?専門家が警告する3つの重大リスク
「凍結される前なら、キャッシュカードで引き出してしまえばいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。物理的には、ATMで現金を引き出すことは可能です。しかし、その安易な行動には、あなたの将来を左右しかねない、3つの重大なリスクが潜んでいます。
リスク1:借金も相続する「単純承認」とみなされる
故人の預金を引き出して、葬儀費用など明確な目的以外に使う行為は、民法上「相続財産の処分」とみなされる可能性があります。そうなると、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)もすべて受け継ぐ「単純承認」が成立してしまいます。
もし後から故人に多額の借金が発見された場合、「預金はもらうが、借金は放棄します」という都合の良い主張は認められません。本来であれば相続放棄の手続きをすれば借金を背負わずに済んだはずが、軽い気持ちで預金を引き出したばかりに、故人の借金まで全て相続しなければならなくなるのです。これは最も避けなければならない最悪のシナリオです。
リスク2:「使い込み」を疑われ、相続が泥沼の争いに発展
他の相続人に無断で預金を引き出す行為は、たとえ葬儀費用などの正当な目的であったとしても、非常に危険です。他の兄弟姉妹などから見れば、それは「財産の使い込み」と疑われても仕方ありません。
「なぜ黙ってお金をおろしたんだ」「本当に葬儀代に使ったのか証拠を見せろ」「自分の懐に入れたんじゃないか」
一度生まれた不信感は、簡単には拭えません。これがきっかけで相続人同士の関係が悪化し、本来スムーズに進むはずだった遺産分割協議が紛糾し、「争続」に発展するケースは数多くあります。特に、疎遠な兄弟がいる場合は、より慎重な対応が求められます。
リスク3:税務署に「財産隠し」を指摘される可能性
税務署は、亡くなる直前の口座の動きを厳しくチェックしています。特に、亡くなる直前に多額の現金が引き出されている場合、「これは相続税を逃れるための財産隠しではないか?」あるいは「生前に贈与されたものではないか?」と疑いの目を向けられる可能性があります。
もし引き出した現金を相続財産として正しく申告しなければ、後日の税務調査で指摘され、本来の相続税に加えて重いペナルティ(過少申告加算税や延滞税)が課されることになりかねません。税務の観点からも、安易な引き出しは絶対に避けるべきです。
【時系列】死亡直後からやるべき事・やってはいけない事リスト
ご家族が亡くなられた直後は、誰もが動揺し、冷静な判断が難しくなります。そこで、いつ、何をすべきか、そして何をしてはいけないのかを時系列で整理しました。このリストを参考に、落ち着いて行動してください。
| 時期 | やるべき事 | やってはいけない事 |
|---|---|---|
| 直後~数日 | ・死亡診断書(死体検案書)の受け取り・近親者への連絡・葬儀社の手配と打ち合わせ・(必要であれば)預金引き出しの相談を相続人全員で行う・役所へ死亡届を提出(7日以内) | ・自己判断で銀行に死亡の連絡をする ・他の相続人に無断で預金を引き出す ・故人の財産を勝手に処分する |
| ~1週間 | ・公共料金等の契約者変更・解約手続きの検討・故人のクレジットカードの解約連絡・未支給年金の請求手続きの確認・世帯主変更届の提出(必要な場合) | ・遺言書を勝手に開封する(検認が必要な場合) ・高額な生命保険金をすぐに使い込む |
| ~1ヶ月 | ・生命保険金の請求・故人が貸金庫を契約していたか調査・相続手続きの専門家(司法書士など)への相談 | ・相続放棄の期限(3ヶ月)を忘れる ・安易に遺産分割協議書にサインする |
【引き出しに関するアドバイス】
どうしても葬儀費用などで現金が必要な場合は、必ず以下の2点を守ってください。
- 他の相続人全員から事前に「何のためにいくら引き出すか」を伝え、同意を得る。
- 引き出したお金の使い道を証明できるよう、全ての領収書を必ず保管しておく。
この2つを守ることで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。例えば、ATMの限度額いっぱいまで毎日引き出しているご家庭も少なくありませんが、その場合でも必ず使途を明確にしておくことが重要です。
口座凍結後でも大丈夫!お金を引き出す2つの正式な方法
「すでに銀行に連絡して口座が凍結されてしまった…」という方も、ご安心ください。正しい手順を踏めば、預金の相続手続きを進めることができます。ここからは、凍結された口座からお金を引き出すための、国が認めた正式な方法を2つご紹介します。
緊急時に活用できる「預貯金の仮払い制度」
遺産分割協議がまとまる前でも、葬儀費用の支払いや当面の生活費に充てるため、一定額の預金を引き出せる制度があります。これが2019年の民法改正で創設された「預貯金の仮払い制度」です。
この制度の大きなメリットは、他の相続人全員の同意がなくても、相続人の一人が単独で手続きできる点です。引き出せる金額には上限がありますが(計算式:相続開始時の預金額 × 1/3 × 仮払いを受ける相続人の法定相続分。ただし一つの金融機関からは150万円まで)、緊急時には非常に心強い制度です。
ただし、手続きには戸籍謄本など複数の書類が必要となり、あくまで一時的な措置です。最終的には、次の遺産分割協議による正式な手続きが必要になります。
参照:法務省「相続された預貯金債権の払戻しを認める制度について」
基本となる「遺産分割協議後の解約・名義変更」
相続手続きの王道は、相続人全員で遺産の分け方を話し合い(遺産分割協議)、その合意内容に基づいて預金を解約・名義変更する方法です。
- 銀行に相続が発生したことを連絡し、手続き書類を入手する。
- 故人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書などを収集する。
- 相続人全員で遺産分割協議書を作成し、署名・実印を押印する。
- すべての書類を銀行に提出する。
この方法が最も確実ですが、戸籍の収集や相続人全員の協力に時間と手間がかかるのが現実です。特に相続人が多い場合や遠方に住んでいる場合は、手続きが非常に煩雑になります。
預貯金の相続手続きで司法書士に相談するメリット
ここまでお読みになり、「思ったより手続きが大変そうだ…」と感じられた方も多いのではないでしょうか。故人を亡くした悲しみの中で、不慣れな手続きをご自身で進めるのは、心身ともに大きな負担となります。そんな時こそ、私たち相続の専門家である司法書士にご相談ください。
専門家に依頼することは、単に「楽ができる」以上の大きなメリットがあります。当事務所の遺産承継業務は、ご遺族に寄り添い、円満な相続を実現するためのお手伝いです。
面倒な戸籍収集から銀行とのやり取りまで全て代行
相続手続きで最も時間と手間がかかるのが、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集める作業です。本籍地が何度も変わっている場合は、全国の役所に請求しなければならず、大変な労力を要します。司法書士にご依頼いただければ、この膨大な戸籍収集を含め、金融機関ごとの相続手続きの多くを代行し、ご遺族のご負担を軽減できます。
中立な専門家が相続人間の「争続」を防ぐクッションに
相続手続きを特定の相続人が一人で進めると、「本当に正しくやっているのか?」「自分に不利に進められていないか?」といった疑念や不満が他の相続人から出てくることがあります。司法書士が中立な専門家として間に入ることで、全ての手続きを法律に則って公平に進めることができます。財産調査を行い、財産目録を作成し、全員に透明性をもって状況を報告することで、相続人間の無用な対立を防ぎ、円満な相続の実現をサポートします。
当事務所の預貯金解約代行サービスと費用
当事務所では、ご遺族のご負担を少しでも軽くするため、預貯金の解約手続きを代行するサービスをご提供しています。料金体系も分かりやすく設定しており、ご依頼いただく前に必ず詳細なお見積もりを提示いたしますのでご安心ください。事務所の料金一覧も公開しております。
- 預貯金解約代行サービス:1銀行あたり 66,000円(税込)~
※上記は基本的な手続きの報酬です。戸籍収集や郵送費等の実費は別途必要となります。詳細は無料相談にてご説明いたします。
不動産の名義変更(相続登記)や相続放棄など、他の相続手続きもまとめてご依頼いただくことが可能です。相続に関するお悩みは、ワンストップで対応できる当事務所にお問い合わせください。
まとめ|預貯金の相続は専門家への相談で円満・確実に
ご家族が亡くなられた後の預貯金手続きには、口座凍結のタイミングや、安易な引き出しによるトラブルなど、多くの落とし穴が潜んでいます。正しい知識がないまま行動してしまうと、後々、ご家族の関係にまで影響を及ぼしかねません。
大切なのは、慌てて自己判断で動く前に、まずは専門家に相談することです。相続のプロである司法書士に任せることで、法的なリスクを回避し、煩雑な手続きから解放され、何よりもご家族間の円満な関係を守ることができます。
当事務所では、相続に関する無料相談を承っております。あなたの不安を「安心」に変えるお手伝いをさせていただきますので、まずはお気軽にご連絡ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
相続税申告は必要?司法書士ができる判断と税理士連携の重要性
相続税申告、自分で判断は危険?まずは司法書士にご相談ください
「親が亡くなったけれど、うちの場合は相続税の申告が必要なのだろうか…」
「遺産に不動産があるから、税金が心配…」
大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、相続手続きを進めるだけでも大変な中、さらに「相続税」という大きな不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。
一般的に「相続手続きや不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、税金のことは税理士」というイメージがあるかもしれません。しかし、実際には「そもそも相続税申告が必要なのかどうか」という最初の判断で迷われる方が非常に多いのが現実です。
遺産の総額はいくらなのか、不動産の価値はどう評価するのか、使える特例はあるのか…など、判断材料が複雑に絡み合うため、ご自身だけで結論を出すのはとても危険です。判断を誤ると、後から追徴課税などのペナルティを受けてしまう可能性もあります。
この記事では、相続を専門とする司法書士の視点から、
- 相続税申告が必要になるかの基本的な判断基準
- その判断過程で司法書士が果たす重要な役割
- なぜ「相続に強い税理士」との連携が不可欠なのか
といった点を、分かりやすく解説していきます。この記事を最後までお読みいただければ、相続税に関する漠然とした不安が解消され、「まず何をすべきか」が明確になるはずです。どうぞご安心ください。

相続税申告が必要になるかの判断基準【基本を解説】
相続税申告が必要かどうかを判断するための、最初のステップとなる基本的な知識についてご説明します。複雑な税金のルールも、ポイントさえ押さえれば、ご自身の状況を大まかに把握することができます。
遺産総額が「基礎控除額」を超えるかどうかが第一の分岐点
相続税がかかるかどうかを判断する最も重要な基準が「基礎控除額」です。遺産の総額がこの基礎控除額よりも少なければ、原則として相続税はかからず、申告も不要です。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例えば、法定相続人が「配偶者と子ども2人」の合計3人だった場合、基礎控除額は以下のようになります。
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
このケースでは、亡くなった方の遺産総額(預貯金、不動産、有価証券などを合計した金額から、借金などの債務を差し引いたもの)が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。まずはご自身のケースで、法定相続人が何人になるかを確認し、基礎控除額を計算してみることが第一歩です。
【注意】特例利用で税額0円でも「申告義務」は残るケース
多くの方が誤解しやすい、非常に重要なポイントがあります。それは、特例を適用した結果、納める相続税が0円になったとしても、その特例の適用を受けるために「相続税申告そのものは必要」なケースがあるということです。
代表的な特例として、以下の2つが挙げられます。
- 小規模宅地等の特例:亡くなった方が住んでいた土地などを相続する場合、一定の要件を満たせば土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
- 配偶者の税額軽減:配偶者が相続する遺産額が法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までであれば、相続税がかからない制度です。
これらの特例は非常に強力で、適用できれば納税額を大幅に減らしたり、0円にしたりすることが可能です。しかし、小規模宅地等の特例等は相続税の申告書への記載および必要書類の添付(例:計算の明細書、遺産分割協議書の写し等)が必要です(国税庁参照)。
つまり、「特例を使えばうちは税金が0円になるから、何もしなくていい」と自己判断してしまうと、特例自体が使えなくなり、本来払わなくてよかったはずの多額の税金が発生してしまうリスクがあるのです。これは絶対に避けなければなりません。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

司法書士の役割は「相続税申告の要否」を見極める最初の水先案内人
「相続税のことは税理士に相談するもの」と思われているかもしれませんが、実は、相続手続きの専門家である司法書士が、その入口で非常に重要な役割を果たします。
もちろん、司法書士は税理士ではないため、具体的な税額計算や税務申告書の作成はできません。しかし、相続手続きを進める中で遺産全体を把握し、「このケースは相続税申告が必要そうだ」「特例の適用に注意が必要だ」といった初期判断を行い、適切な専門家へ繋ぐ「水先案内人」としての役割を担うことができるのです。
相続登記に必須の「財産調査」で課税ラインをチェック
ご自宅などの不動産を相続した場合、法務局で名義変更の手続き(相続登記)が必要になります。この相続登記をご依頼いただいた場合、司法書士はまず、戸籍を収集して相続人を確定させると同時に、亡くなった方の財産を調査します。
- 不動産の固定資産税評価証明書を取得し、価値を把握する
- 預貯金の残高証明書を各金融機関から取り寄せる
- 有価証券や生命保険など、その他の財産についてもお話を伺う
これらの財産調査を通じて作成する「財産目録」は、遺産分割協議の土台となるだけでなく、集計した財産の概算額が基礎控除額を超えるかどうかのチェックにも直結します。つまり、相続登記という手続きを進める過程で、自然と相続税申告の必要性が見えてくるのです。最初に司法書士へご相談いただくことで、税務判断の第一歩をスムーズに踏み出すことができます。
不動産の評価が鍵!司法書士が見るべきポイント
相続財産に不動産が含まれる場合、その評価が相続税額を大きく左右します。特に、単純な土地や建物だけでなく、以下のような複雑なケースでは注意が必要です。
- 他人の土地に建てた家の権利(借地権)
- 複数人で所有している不動産(共有不動産)
- 形が歪な土地(不整形地)
- 私道に面している土地
こうした不動産は、固定資産税評価額だけでは正確な価値を判断できず、専門的な評価が必要になることがあります。司法書士は不動産登記の専門家として、こうした複雑な権利関係を正確に把握し、整理することができます。そして、その情報を正確に税理士へ引き継ぐことで、適切な財産評価と税額計算の橋渡し役を担うのです。
当事務所の初回相談でのヒアリングと税理士連携の実例
当事務所では、相続登記のご相談でいらっしゃった方に対しても、必ずご遺産の全体像について大まかにお話を伺うようにしています(もちろん、お話しにくい場合は無理にお聞きすることはありません)。これは、私たちの責務が単に登記手続きを代行するだけでなく、お客様が抱える相続全体の課題を解決することにあると考えているからです。
実際に、お話を伺う中で、「相続税はかからないと思っていたけれど、概算してみると基礎控除を超えそうだ」「特例が使えるから大丈夫だと思っていたが、申告自体は必要なケースだった」「見落としていた借地権の評価額を加えると、課税対象になる可能性が高い」といったことが判明するケースは決して少なくありません。
そのような場合、当事務所ではすぐに提携している相続専門の税理士にお繋ぎし、スムーズに次のステップに進めるようサポートしています。初期段階でリスクを検知し、適切な専門家へ橋渡しをすること。これも、私たち相続専門司法書士の重要な役割なのです。
相続税申告は税理士の独占業務!司法書士との連携が重要な理由
ここまで司法書士の役割についてお話ししてきましたが、最終的な相続税の計算と申告書の作成・提出は、法律で定められた税理士の独占業務です。司法書士がこれらの業務を行うことはできません(税理士法第2条、第52条)。
だからこそ、相続手続きをスムーズに進め、お客様に余計な手間や心配をおかけしないためには、司法書士と税理士の緊密な連携が不可欠となります。
「相続に強い税理士」でなければならない本当の理由
ここで非常に大切なのは、「どの税理士でも同じではない」ということです。お医者さんに外科、内科、眼科といった専門分野があるように、税理士にもそれぞれ得意分野があります。
多くの税理士は、企業の顧問として法人税務をメインに扱っています。もちろん相続税申告に対応できる先生もいますが、相続税は土地の評価や特例適用の判断など、非常に専門的で複雑な知識と経験が求められる分野です。年に数件しか扱わない税理士と、日常的に相続案件を扱っている税理士とでは、そのノウハウの蓄積に大きな差が生まれます。
経験豊富な「相続に強い税理士」に依頼することで、適用できる特例を見逃さず、不動産評価を適切に行い、結果として納税額を適正に抑えることができる可能性が高まります。これは、お客様の財産を守る上で極めて重要なポイントです。
当事務所が提携する「相続専門税理士」の強み
「相続に強い税理士を自分で探すのは大変…」と感じられるのも無理はありません。そこで、当事務所の強みが活きてきます。
いがり綜合事務所では、相続を専門的に扱う経験豊富な税理士と提携しており、税務面の連携が可能です。
ご自身で一から税理士を探す手間が省けるだけでなく、専門外の税理士に依頼してしまうリスクを回避し、「相続のプロ」による質の高いサービスを確実に受けていただける安心感をご提供できます。
司法書士経由で税理士に依頼する3つのメリット
当事務所のような窓口に相続手続きと税務申告をまとめてご相談いただくことには、お客様にとって大きなメリットがあります。
- 情報の抜け漏れがなく安心:司法書士が財産調査で収集した資料や情報を税理士と共有するため、お客様が何度も同じ説明をする手間が省けます。情報が一元管理されることで、財産の申告漏れなどのミスを防ぎます。
- 手続きがスピーディーに進む:司法書士が作成した正確な財産目録や相続関係説明図を税理士が活用できるため、税理士はゼロから情報を集める必要がなく、税務申告の準備にスムーズに着手できます。
- 質の高い専門家を探す手間とリスクを回避:前述の通り、「相続に強い」専門家を確実に見つけられます。お客様は専門家探しに時間を費やすことなく、安心して手続き全体をお任せいただけます。

相続税で損しないために。まずはお早めにご相談を
相続税の申告と納税には、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限が定められています。この期限はあっという間に過ぎてしまいます。
また、遺産をどのように分けるか(遺産分割協議)によって、適用できる特例や各相続人の納税額が変わってくるため、申告期限までに遺産分割協議を終えておくのが理想です。不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約など、相続手続きには時間がかかるものが多いため、判断に迷ったら一日でも早く専門家に相談することが重要です。
「うちは相続税がかかるのか?」「何から手をつければいいのかわからない」
そのような不安をお持ちでしたら、まずは私たち、いがり綜合事務所にご相談ください。
相続手続きの専門家として、そして相続税申告への適切な橋渡し役として、お客様一人ひとりの状況に寄り添い、円満な相続を実現するため全力でサポートいたします。初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
事務所名:司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所
代表司法書士:猪狩 佳亮
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号
所属:神奈川県司法書士会

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
孤独死した叔父の相続|多数の相続人と連絡を取り預金解約した事例
突然の孤独死…疎遠な叔父の相続、9名の相続人と連絡を取り預金解約を終えた事例
「役所から連絡があり、疎遠だった叔父が自宅で亡くなっているのが見つかった、と…」
ある日、一本のお電話からご相談は始まりました。お電話口の女性は、突然の訃報に動揺しながらも、ご自身がやらなければならないという責任感から、必死に状況を説明してくださいました。
警察の現場検証後、お部屋に入ると、汚れてしまった現金約40万円と、濡れて判読が難しい通帳が数冊見つかったそうです。通帳の最後の記載などから、預金は2,000万円ほどあるかもしれない、とのことでした。
叔父様には配偶者もお子様もいらっしゃらなかったため、相続人はご自身の親を含む兄弟姉妹、そしてすでに亡くなっている兄弟姉妹の子どもである甥や姪たち。ほとんどの方が北関東や四国、九州にお住まいで、長年顔も合わせていないとのことでした。
「これだけの人数に、私が一人で連絡を取って事情を説明し、手続きを進めるのは精神的にも物理的にも無理だと感じています。先生の方から、専門家として皆様に連絡を取ってもらえないでしょうか…」
その切実な思いを受け、当事務所でお手伝いさせていただくことになりました。
まず、私の方で戸籍謄本を全国の役所から取り寄せ、相続人様が9名であることを正式に確定させました。そして、お一人おひとりに、突然のご連絡で驚かれないよう配慮しながら、事情を説明するお手紙をお送りしました。
幸い、遺産額が明確で多額であったこともあり、相続人の皆様全員から「手続きに協力します」と前向きなお返事をいただくことができました。相談者様が最も心配されていた「連絡が取れない」「協力してもらえない」という壁を、まず乗り越えることができたのです。
見つかった現金については銀行に持ち込みましたが、数枚は汚れがひどく、日本銀行での鑑定が必要となりました。これも当事務所が代理人として銀行に依頼し、無事に交換手続きを終えました。通帳も損傷していましたが、相続手続きは通帳がなくても進められます。残高証明書と取引履歴を取得し、解約・払戻しの手続きを代行しました。
最終的に、遺産の分け方は相続人の皆様で均等に、という形で穏やかに話がまとまりました。当事務所で作成した遺産分割協議書にご署名と実印をいただき、無事に各相続人様の口座へのお振込みまで完了させることができました。
相続人同士が疎遠であればあるほど、かえって感情的なしがらみがなく、法律に則った分け方(法定相続分や均等割)でスムーズに合意できるケースは少なくありません。
「相続人が全国に散らばっていて、どうなることかと本当に不安でした。先生が間に入ってくれたおかげで、自分では到底できなかったことがスムーズに進み、本当に感謝しています」
最後にいただいた相談者様の安堵の表情が、何よりの励みとなった案件です。
孤独死の相続でまず直面する「3つの困難」とは?
突然の孤独死の知らせは、ご遺族にとって精神的なショックが大きいだけでなく、その後の相続手続きにおいても特有の難しさが伴います。一般的な相続と比べて、なぜこれほどまでに大変なのでしょうか。多くの方が直面する「3つの困難」について解説します。もしかしたら、あなた様が今抱えている不安も、この中のどれかに当てはまるかもしれません。

困難1:相続人が誰で、どこにいるか分からない
孤独死の場合、故人との関係が疎遠であることが多く、「相続人が誰なのか」「全部で何人いるのか」「どこに住んでいるのか」すら正確に把握できていないケースがほとんどです。
特に、亡くなった方に配偶者や子どもがいない場合、相続人は親、あるいは兄弟姉妹や甥・姪になります。兄弟姉妹や甥・姪が相続人となるケースでは、関係性が希薄になっていることが多く、連絡先を知らないどころか、お名前すら分からないということも珍しくありません。
法的に相続手続きを進めるには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて集め、法的な相続人全員を確定させる必要があります。この戸籍収集は、本籍地が各地に点在していることも多く、非常に手間と時間がかかる作業です。この最初のステップでつまずいてしまう方が非常に多いのが実情です。
困難2:財産も借金も、何がどれだけあるか不明
故人と生前の交流が少なかったため、どのような財産を持っていたのか、あるいは借金を抱えていたのか、全く見当がつかないというのも大きな困難です。
預貯金、不動産、株式といったプラスの財産だけでなく、カードローンや消費者金融からの借入、未払いの税金や家賃といったマイナスの財産が存在する可能性も十分にあります。これらの情報は、遺品整理を進める中で見つかる通帳や郵便物、督促状などから一つひとつ探していくしかありません。
もしプラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合は、家庭裁判所で「相続放棄について」の手続きを検討する必要があります。この手続きは原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」という期限があるため、迅速な財産調査が極めて重要になります。
困難3:面識のない相続人への連絡と協力依頼
戸籍調査によって相続人全員が判明したとしても、次なる大きな壁が待っています。それは、「会ったこともない、あるいは何十年も連絡を取っていない親族」に、突然連絡をして相続の話を切り出さなければならないという、精神的なハードルです。
「いきなり電話して、お金の話なんてできるだろうか…」
「怪しまれて、話も聞いてもらえないかもしれない…」
「協力してほしいと頼んだら、かえって関係がこじれないだろうか…」
このような不安を感じるのは、当然のことです。実際に、相続人の中には協力を拒否する方や、非現実的な要求をされる方がいらっしゃる可能性もゼロではありません。当事者同士で直接やり取りをすることで、かえって感情的な対立を生んでしまうリスクもあります。
このような場合、司法書士という国家資格を持つ第三者が、中立的な立場から丁寧な手紙で事情をご説明することで、相手方も冷静に話を聞き入れやすくなります。専門家が介在することが、円満な話し合いへの第一歩となるのです。
司法書士が一つずつ解決へ導きます|孤独死相続の具体的な手続きの流れ
複雑に絡み合った孤独死の相続問題も、一つひとつ手順を踏んで解きほぐしていくことで、解決の道筋が見えることがあります。ここでは、当事務所にご依頼いただいた場合に、どのような流れで手続きを進めていくのかを具体的にご紹介します。

STEP1:戸籍収集による相続人の確定調査
まず、ご依頼者様から委任状をいただき、当事務所が代理人として、亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を全国の市区町村役場から取り寄せます。これにより、法的に相続権を持つ方を一人も漏れなく確定させます。
収集した戸籍情報をもとに、誰が相続人であるかを一覧にした「相続関係説明図」を作成します。この書類によって、相続関係が誰の目にも明らかになり、後の金融機関や法務局での手続きがスムーズに進みます。
ご自身でやろうとすると非常に煩雑なこの作業も、専門家にお任せいただくことで、正確かつスピーディーに完了させることができます。
STEP2:財産・負債の調査と相続放棄の検討
相続人調査と並行して、故人の財産調査を進めます。遺品の中から見つかった通帳やキャッシュカードを手がかりに、各金融機関へ残高証明書の発行を請求します。不動産については、役所で名寄帳や評価証明書を取得して所有状況を確認します。
同時に、信用情報機関への情報開示請求などを通じて、借入金などのマイナスの財産がないかも徹底的に調査します。すべての財産状況が明らかになった段階で、財産目録を作成し、相続人の皆様にご報告します。その内容に基づき、相続手続きを進めるか、あるいは相続放棄を選択するかを、3ヶ月の期限を意識しながら慎重に検討していきます。
STEP3:全相続人への連絡と遺産分割協議の調整
相続人と財産が確定したら、いよいよ相続人の皆様へご連絡します。当事務所がご依頼者様の代理人として、お一人おひとりに宛ててお手紙を作成し、郵送します。お手紙には、以下の内容を分かりやすく記載します。
- 亡くなられた方のこと、ご自身が相続人であること
- 判明した相続財産の内容
- 今後の手続きの流れについてのご説明
- 遺産の分け方についてのご意向の確認
突然のことで驚かれないよう、また、怪しい手紙だと思われないよう、司法書士の職印を押印した正式な書面としてお送りします。その後、お電話や郵送でのやり取りを通じて、全員が納得できる遺産の分け方について合意形成を目指します。当事務所が間に入ることで、当事者の負担軽減に寄与することがあります。
STEP4:遺産分割協議書の作成と各種名義変更・解約手続き
相続人全員の合意が得られたら、その内容を法的に有効な書面にするため、当事務所が「遺産分割協議書」を作成します。この協議書に、相続人全員が署名し、実印を押印していただくことで、遺産分割協議が正式に成立します。
その後は、完成した遺産分割協議書とその他の必要書類(戸籍謄本、印鑑証明書など)を用いて、金融機関での預貯金の解約・払戻し手続きや、不動産の名義変更(相続登記)を、すべて当事務所が代行します。事例のように汚損した現金や通帳の対応なども、専門家として適切に対処いたします。最終的に、各相続人様の指定口座へのお振込みまで、手続きの完了まで代理で対応いたします。
孤独死の相続でよくあるご質問(Q&A)
孤独死の相続に関して、ご相談者様からよく寄せられるご質問にお答えします。

Q. 遺品整理や特殊清掃もお願いできますか?
A. はい、対応可能です。
当事務所は司法書士事務所ですので、遺品整理や特殊清掃を直接行うことはできません。しかし、私たちが信頼できる専門業者と連携しておりますので、ワンストップで手配することが可能です。特に、相続人様が遠方にお住まいで現場の立ち会いが難しい場合でも、当事務所が窓口となって業者とやり取りを進めますので、安心してお任せいただけます。
また、これらの費用については、相続財産(故人の預貯金など)の中から清算することも可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
Q. 相続人である親が高齢(または認知症)なのですが…
A. そのようなケースにも対応しておりますので、ご安心ください。
例えば、「孤独死した兄の相続人は、高齢で施設に入所している母」といったご相談は少なくありません。お母様がご自身で判断したり、書類に署名したりすることが難しい場合、法的な手続きを進めることができません。
このような場合、お母様のために「成年後見人」を選任する手続きを家庭裁判所で行う必要があります。当事務所では、成年後見をご検討中の方へのサポートも行っておりますので、相続手続きと並行して進めることが可能です。ご家族の状況に合わせて最適な方法をご提案いたします。
Q. 司法書士に依頼する費用はどのくらいかかりますか?
A. 当事務所では、分かりやすい料金体系をご用意しております。
相続手続きの代行については、相続財産の額にかかわらない定額の報酬プランをご用意しております。多くのケースでは、手続き完了後に故人の遺産の中から費用を清算いただくことが可能ですので、ご依頼時にまとまったお金をご用意いただく必要はございません。
初回のご相談は無料です。まずはお話をお伺いし、どのような手続きが必要で、費用が総額でいくらになるのかを明確にお見積りとしてご提示いたします。ご納得いただいた上でご依頼いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
一人で抱え込まず、まずはご相談ください

突然の孤独死の知らせを受け、相続人調査、財産調査、面識のない親族への連絡…と、次から次へと押し寄せる問題に、今、あなたは途方に暮れ、大きな不安の中にいらっしゃるかもしれません。
「何から手をつければいいのか分からない」
「自分一人で、本当に最後までやり遂げられるだろうか」
そのように感じるのは、決してあなただけではありません。今回ご紹介した事例のように、どんなに複雑に見える状況でも、専門家が介入し、一つひとつ問題を解きほぐしていくことで、解決に向けた道筋を提案します。
私たちの役目は、ただ手続きを代行するだけではありません。あなたの不安な心に寄り添い、「安心」をお届けし、円満な相続が実現するまで、最後まで伴走することです。
どうか、一人ですべてを抱え込まないでください。当事務所では、初回のご相談は無料で承っております。平日夜間や土日祝日のご相談にも対応しておりますので、まずはお気持ちが少し落ち着いたときに、あなたのお話をお聞かせください。ご連絡を心よりお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
生前対策は何から始める?専門家が教える全体像と手順
生前対策とは? なぜ今から始めるべきなのか
「自分にはまだ早い」「財産なんて大してないから関係ない」
ご自身の相続について考え始めたとき、多くの方がそう思われるかもしれません。しかし、生前対策は、決して特別な人だけのものではありません。むしろ、残される大切なご家族への「最後の贈り物」であり、愛情表現の一つだと私たちは考えています。
生前対策の最も重要な点は、ご自身の意思がはっきりしていて、元気なうちにしかできないということです。判断能力が低下すると新たに遺言書を書いたり贈与契約を締結したりすることは困難になります。したがって元気なうちに準備することが重要です。なお、既に有効に作成された遺言書は効力を持ち続けますし、判断能力低下後に備える制度(任意後見・家族信託等)もありますので、併せて検討してください。
対策を先延ばしにした結果、「もっと早く相談しておけば…」とご家族が大変な思いをされるケースを、私たちは専門家として数多く見てきました。この記事では、生前対策の全体像と、何から始めればよいのかを、分かりやすく丁寧にご説明します。まずは、なぜ今から始めるべきなのか、その理由から見ていきましょう。
残された家族を「争族」から守るために
生前対策の最大の目的は、ご家族間の無用な争い、いわゆる「争族」を防ぐことです。
「うちの家族は仲が良いから大丈夫」と思っていても、相続をきっかけに関係がこじれてしまうことは少なくありません。遺産分割で揉める原因は、財産の多い少ないではないのです。例えば、親の介護を一身に引き受けてきたお子様と、そうでないお子様との間で「貢献度」をめぐる意見が対立したり、分けにくい不動産が一つだけ残されてしまい、誰も住まないのに売却にも同意が得られず、固定資産税だけがかかり続ける…といったケースは、実によくある話です。
遺言書があることで多くのトラブルを防げますが、法的に保障された「遺留分」があるため、遺言の内容によっては遺留分侵害額請求が発生し得ます。遺留分の制度や注意点についても併せて確認してください。ご自身の想いを明確な形で残しておくことが、ご家族がこれからも仲良く暮らしていくための、何よりのお守りになるのです。
認知症など判断能力の低下に備えるために
高齢化が進む現代において、認知症は誰にとっても他人事ではありません。もし認知症などで判断能力が低下すると、ご本人の財産は事実上「凍結」されてしまいます。
- 預貯金の引き出しや解約ができない
- ご自宅の売却やリフォームができない
- 介護施設の入居金が支払えない
このような事態に陥ると、ご本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな支障が出てしまいます。そして、この「資産凍結」の問題は、残念ながら遺言書だけでは解決できません。判断能力が低下した後の財産管理や生活を守るためには、「任意後見」や「家族信託」といった、また別の対策が必要になります。元気なうちにご家族と話し合い、備えておくことが非常に重要です。
将来の相続税負担を軽減するために
生前対策には、将来の相続税の負担を軽くするという側面もあります。相続税には基礎控除額があり、すべての人にかかるわけではありませんが、ご自宅が都市部にあったり、ある程度の預貯金があったりする場合には、納税が必要になる可能性があります。
計画的に財産を贈与する「生前贈与」や、生命保険の非課税枠を活用するといった方法で、納税額を抑えたり、納税資金を準備したりすることが可能です。
ただし、私たちは常に「節税は、ご家族の円満という土台があってこそ意味がある」と考えています。税金の額だけにとらわれて、かえってご家族の関係を悪化させてしまっては本末転倒です。まずはご家族の幸せを第一に考え、その上で最適な方法を探っていくことが大切です。

生前対策の始め方|専門家が教える3つのステップ
「生前対策の重要性は分かったけれど、具体的に何から手をつければいいの?」
ここからは、そんな疑問にお答えするために、誰でも迷わず進められる具体的な3つのステップをご紹介します。ぜひ、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
ステップ1:財産と相続人の現状を把握する
すべての対策は、まず「現在地」を知ることから始まります。ご自身がどのような財産を持ち、誰がそれを受け継ぐことになるのかを正確に把握しましょう。
【財産の洗い出し】
預貯金、不動産(土地・建物)、有価証券(株・投資信託など)、生命保険といったプラスの財産はもちろん、住宅ローンや借入金などのマイナスの財産もすべてリストアップします。これが「財産目録」の基礎となります。何がどこにあるかをご家族がわかるようにまとめておくだけでも、残された方の負担は大きく軽減されます。より詳しい方法は財産目録の作成のページもご覧ください。
| 財産の種類 | 具体的な内容 | おおよその価額 |
|---|---|---|
| プラスの財産 | 〇〇銀行の預金、自宅の土地・建物、△△社の株式 | 約〇〇〇〇万円 |
| マイナスの財産 | 自宅の住宅ローン残債 | 約△△△万円 |
【相続人の確認】
法律で定められた相続人(法定相続人)が誰になるのかを、戸籍謄本を取り寄せて正確に確認します。ご自身の思い込みとは違う方が相続人になるケース(例えば、前妻との間にお子様がいた場合など)もありますので、専門家と一緒に確認することをお勧めします。
ステップ2:目的を明確にする(誰に・何を・どうしたいか)
現状が把握できたら、次はいよいよ「ご自身の想い」を整理するステップです。何のために生前対策をするのか、その目的をはっきりさせましょう。
ご自身の心に、次のように問いかけてみてください。
- 一番感謝の気持ちを伝えたいのは誰ですか?
- ご自身の亡き後、ご家族にどんな暮らしを送ってほしいですか?
- ご家族のことで、何か心配なことはありますか?
- ご自身の将来(介護や施設入所など)について、どんな希望がありますか?
これらの問いへの答えが、あなただけの生前対策の「軸」となります。
専門家コラム:生前対策は「想い」を形にするプロセスです
定年退職や、お子様の結婚、お孫様の誕生といった人生の節目に、「そろそろ考えないと…」と生前対策に関心を持たれる方は非常に多いです。そして、ほとんどの方が「何から手をつけていいか分からない」という同じスタートラインに立たれています。
そんな時、私たちはまず「何のために対策をしたいですか?」とお伺いします。それは、ご自身の希望によって、選ぶべき道筋が全く変わってくるからです。
- 「家族が揉めないように、遺産の分け方を決めておきたい」
→これが一番の目的なら、まずは「遺言書」の作成が基本になります。 - 「もし自分が認知症になったら…と不安。施設に入る時、家を売って費用にあてたい」
→将来の資産凍結に備えるなら、「家族信託」や「任意後見」が有効です。 - 「相続税がかかりそうだから、少しでも負担を減らしてあげたい」
→節税が目的なら、「生前贈与」や「資産の組み換え」を検討します。
財産の多い少ないにかかわらず、ご家族が揉めてしまうことはあります。だからこそ、私たちはいつも「一番大切なのは、税金のことよりも、ご家族がこれからも仲良く暮らしていくことではないでしょうか?」とお伝えしています。あなたの「想い」をしっかりとお伺いし、それを実現するための最適なプランを一緒に考えること。それが、私たち専門家の役割です。
ステップ3:目的に合った対策方法を選択する
目的がはっきりすれば、ゴールまでの道筋が見えてきます。ステップ2で明確になった目的に合わせて、具体的な対策方法を選んでいきましょう。
- 家族間のトラブルを防ぎたいなら → 遺言書
- 将来の認知症や資産凍結に備えたいなら → 家族信託、任意後見
- 相続税の負担を減らしたいなら → 生前贈与、資産の組み換え
- 特定の誰かに確実に財産を渡したいなら → 生前贈与、遺言書
もちろん、これらの目的は一つだけとは限りません。「遺言書で分け方を決めつつ、家族信託で認知症にも備える」というように、複数の対策を組み合わせることで、より盤石な準備が可能になります。次の章で、それぞれの対策の詳しい特徴を見ていきましょう。

【目的別】生前対策の主な種類と特徴を比較
ここからは、代表的な生前対策について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを目的別にご紹介します。ご自身の目的に合った方法がどれか、比較しながら確認してみてください。
※各制度のより詳しい内容については、それぞれの解説ページへのリンクをご参照ください。
| 対策方法 | 主な目的 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 遺言書 | 争族対策 | ・法定相続より優先される ・相続手続きがスムーズになる | ・書き方を間違えると無効になる恐れ・認知症対策にはならない |
| 生前贈与 | 相続税対策 | ・計画的に行えば節税効果が高い ・渡したい相手に確実に渡せる | ・贈与税がかかる場合がある ・やり直しがきかない |
| 家族信託 | 認知症対策 | ・判断能力低下後も柔軟な財産管理が可能 ・家族信託は、受益者の変更や二次承継の定めを設けることで次の承継先を想定できますが、税務・登記・契約設計の注意点が多いため、具体的な設計は専門家と詳細に検討してください。 | ・身上監護はできない ・専門的な知識が必要 |
| 任意後見 | 認知症対策 | ・財産管理と身上監護の両方を頼める ・任意後見では、判断能力低下後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任して監督が行われる。 | ・判断能力低下後にしか効力が発生しない ・積極的な資産活用は難しい |
①遺産分割トラブルを防ぐ基本の対策【遺言書】
遺言書は、ご自身の財産を「誰に」「何を」「どれくらい」遺すかを決めることができる、最も基本的で強力な生前対策です。遺言書があれば、法律で定められた相続分(法定相続)よりもご自身の意思が優先されるため、相続人間の争いを未然に防ぐ効果が非常に高いです。
遺言書には自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。法的な不備で無効になるリスクを避けるため、公正証書遺言は有効な選択肢の一つです。必要に応じて専門家と相談のうえ、公正証書遺言のメリット・デメリットを検討してください。遺言書の作成支援は、私たち司法書士の重要な業務の一つです。詳しくは「自筆証書遺言の注意点|無効になる書き方など専門家が解説」のページもご参照ください。
②相続税対策の代表的な方法【生前贈与】
生前贈与は、元気なうちにご自身の財産を家族などに分け与えておくことで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減する目的で行われます。特に、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない「暦年贈与」の仕組みを活用し、長い期間をかけて計画的に行うことで大きな節税効果が期待できます。
ただし、「言った・言わない」のトラブルを防ぐために贈与契約書を作成することや、相続開始前一定期間内の贈与は相続財産に持ち戻されるルールがあるなど、専門的な注意点も多く存在します。税金が関わる手続きですので、安易な自己判断は禁物です。当事務所では、相続案件の経験がある税理士と連携しており、必要に応じて税務相談を調整・紹介しています。生前の贈与で不動産の名義を変える場合は、相続登記と贈与登記の違いや、関連する税金・手続きを比較し、最適な選択をすることが重要です。
③認知症による資産凍結を防ぐ【家族信託・任意後見】
判断能力の低下による資産凍結への備えとして、近年注目されているのが「家族信託」と「任意後見」です。
- 家族信託:信頼できるご家族に財産を託し、ご自身の決めた目的に従って管理・運用してもらう制度です。判断能力が低下した後も、不動産の売却やアパート経営などをスムーズに行える柔軟性が魅力です。詳しくは「家族信託とは」をご覧ください。
- 任意後見:将来、判断能力が不十分になった場合に備え、あらかじめご自身で選んだ代理人(任意後見人)に、財産管理や身上監護(介護サービスの契約など)を任せる契約です。家庭裁判所が選任する監督人がつくため、公的な監督下で安心して財産を任せられます。
どちらも元気なうちにしか契約できず、ご自身の希望やご家族の状況によって最適な選択肢は異なります。司法書士は、これらの手続きの専門家として、制度設計から契約書の作成、登記手続きまで一貫してサポートします。
④納税資金の確保や資産整理に【資産の組み換え】
「資産の組み換え」とは、今ある財産の形を変えることで、相続に備える対策です。
例えば、相続人間で分けにくい不動産(実家など)を元気なうちに売却して現金化しておけば、遺産分割がスムーズになり、争いを防ぐことができます。逆に、金融資産が潤沢にあり相続税の課税が想定される場合、これを不動産に変えておくことで課税対象となる資産の圧縮ができることもあります。
また、現金を生命保険に変えておくことも有効です。死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があるため、相続税の対象となる財産を減らしつつ、相続人が納税資金や当面の生活費としてすぐに使える現金を確保することができます。
司法書士は不動産売却の登記手続きに、社会保険労務士は公的保険や年金の知識に精通しています。当事務所では、複数の資格を活かした多角的な視点から、最適な資産の組み換えをご提案することが可能です。

生前対策はいつから始めるべき?年代別のポイント
「いったい、何歳くらいから始めればいいのだろう?」という疑問を持つ方も多いでしょう。結論から言えば、生前対策を始めるのに「早すぎる」ということはありません。思い立ったが吉日であり、何よりもご自身の判断能力がはっきりしている元気なうちに取り組むことが大切です。
ここでは、年代ごとのライフイベントと、生前対策を考える上でのポイントをご紹介します。
50代:親の相続と自身の将来を考え始める時期
50代は、ご自身の親の相続を経験し、初めて相続を「自分ごと」として意識する方が多い年代です。まだ体力・気力ともに充実しているこの時期は、生前対策の準備を始めるのに絶好のタイミングと言えます。
まずは、ステップ1でご紹介した「財産の棚卸し」から始めてみましょう。また、ご自身の想いやご家族へのメッセージ、各種手続きに必要な情報を書き留めておく「エンディングノート」の作成から手をつけるのもお勧めです。長期的な視点で生命保険への加入を検討するなど、時間をかけた対策を始めやすい時期でもあります。
60代:定年退職を機に本格的に取り組む時期
60代になると、定年退職などを機にご自身の人生を振り返り、セカンドライフを考える時間的な余裕が生まれます。この時期は、生前対策に本格的に取り組むのに最適なタイミングです。
50代で整理した財産や想いをもとに、より具体的に「遺言書の作成」や「生前贈与の計画」などを進めていくと良いでしょう。長年連れ添った配偶者への感謝の気持ちや、お子様たちへの想いを法的な形で残すことは、ご自身の人生の集大成とも言える、非常に意義のある作業です。
70代以降:判断能力が確かなうちに急ぎたい時期
70代以降は、ご自身の健康状態にも変化が現れやすい年代です。もしもの時に備え、判断能力が確かであるうちに、必要な対策をできるだけ早く実行に移すことが重要になります。
特に、認知症による資産凍結に備える「家族信託」や「任意後見契約」の必要性は、この年代からぐっと高まります。また、以前に作成した遺言書がある場合でも、ご家族の状況や財産内容の変化に合わせて、内容を見直すことも検討しましょう。「まだ大丈夫」と思っているうちに、早めに専門家へ相談することをお勧めします。

生前対策の相談はどこにする?専門家の選び方
生前対策は多岐にわたるため、「誰に相談すればいいのか分からない」というのも当然の悩みです。ここでは、主な専門家の役割の違いをご説明します。
司法書士:遺言・後見・信託など手続きの専門家
私たち司法書士は、「手続き」と「権利関係」の専門家です。遺言書の作成支援、任意後見契約、家族信託契約の組成、そして相続発生後の不動産の名義変更(相続登記)まで、生前対策から相続完了までの一連の手続きを担う中心的な存在です。「争族対策」や「認知症対策」を軸に生前対策を考えたい場合、まず最初に相談するのに最も適した専門家と言えるでしょう。
税理士:相続税の計算・申告の専門家
税理士は、その名の通り「税金」の専門家です。相続財産が多く、相続税がどのくらいかかるか心配な方、具体的な節税対策を知りたいという方は、税理士への相談が不可欠です。当事務所では、相続案件の経験がある税理士と連携しており、必要に応じて税務相談を調整・紹介しています。
弁護士:相続トラブル・紛争解決の専門家
弁護士は、「紛争解決」の専門家です。すでにご家族の間で対立が起きてしまっている場合や、将来的に裁判などでの争いに発展する可能性が高い場合には、弁護士が頼りになります。生前対策は、そもそも紛争を「予防」するためのものですので、多くの場合は司法書士がご相談窓口となりますが、万が一の際には、当事務所から信頼できる弁護士をご紹介することも可能です。
まとめ|円満な相続は、元気なうちの準備から
今回は、生前対策の全体像と、何から始めるべきかについて解説しました。
生前対策は、決して難しいことばかりではありません。まずは、今回ご紹介した3つのステップに沿って、ご自身の財産と想いを整理することから始めてみてください。
- ステップ1:財産と相続人の現状を把握する
- ステップ2:目的を明確にする(誰に・何を・どうしたいか)
- ステップ3:目的に合った対策方法を選択する
そして何より大切なのは、お一人で悩まないことです。生前対策は、ご自身の人生の集大成であり、ご家族への最後の贈り物です。その大切な想いを、間違いのない最適な形で実現するためには、専門家のサポートが不可欠です。
私たち、いがり綜合事務所(所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号、代表司法書士:猪狩佳亮、所属:神奈川県司法書士会)は、川崎市・横浜市を中心に、これまで数多くのご家族の生前対策をお手伝いしてまいりました。司法書士・行政書士・社会保険労務士としての多角的な視点と、豊富な経験を活かし、あなたとあなたのご家族にとって最善のプランをご提案します。
「何から話せばいいか分からない」という方も、どうぞご安心ください。私たちが一つひとつ丁寧にお話を伺い、あなたの不安な心に「安心」をお届けします。まずは、お気軽にご相談ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
代償分割とは?不動産相続での公平な分け方と税金を解説
【相談事例】遺産は実家だけ…住み続けたい兄と、お金が欲しい弟
「母が亡くなったのですが、遺産は今、兄が一人で住んでいる母名義の実家だけ。預貯金はほとんどありません。兄はこれからも住み続けたいと言っていますが、家を継がない私としては、何ももらえないのは不公平だと感じてしまって…。兄弟仲は良いので、お金のことで揉めたくはないのですが、どうすれば円満に解決できるでしょうか?」
これは、当事務所に寄せられるご相談の中でも、特に多いケースの一つです。お母様が亡くなり、相続人は長男と二男のお二人。お母様は長年、長男様と同居されていました。二男様はすでに独立してご家庭を築いています。
お母様の遺産は、ご自宅の不動産がほとんど。長男様が今後もその家に住み続けることについては、兄弟間で特に異論はありませんでした。しかし、問題は「遺産の分け方」です。
このまま長男様が実家をすべて相続すると、二男様が受け取れる遺産はほとんどなくなってしまいます。二男様からすれば、「それはあまりにも不公平ではないか」と感じるのは当然のことです。かといって、大切な実家を売却して現金で分けるというのも、お母様やご先祖様に申し訳ない気持ちがする…。
このような、分けにくい不動産が遺産の中心である場合に、家族の想いを大切にしながら公平な分割を実現する解決策が「代償分割(だいしょうぶんかつ)」です。
この事例では、私たちは長男様から二男様へ、不動産の価値に見合った「代償金」を支払う方法をご提案しました。代償金の額は決して少なくありませんでしたが、分割で支払うことも可能であることをお伝えし、具体的な支払い計画を立てることで、最終的にはお二人ともご納得の上で円満に遺産分割協議を終えることができました。
この記事では、あなたと同じようなお悩みを抱える方のために、有力な選択肢の一つとしての「代償分割」について、その仕組みから税金の問題、資金が用意できない場合の対処法まで、専門家が分かりやすく解説します。
代償分割とは?不動産を公平に分けるための解決策
代償分割とは、特定の相続人が不動産や自社株といった分けにくい遺産を現物のまま相続する代わりに、その遺産をもらった人が、もらえなかった他の相続人に対して、自分の財産からお金(代償金)などを支払うことで、相続人間の公平を保つ遺産分割の方法です。
先ほどの事例でいえば、長男が実家(不動産)をすべて相続する代わりに、二男に対して不足分を補うためのお金(代償金)を支払う、という形になります。これにより、長男は家に住み続けることができ、二男もお金を受け取ることで、結果的に法定相続分に見合った公平な遺産分割が実現できるのです。
他の分け方(現物分割・換価分割)との違いは?
遺産の分け方には、代償分割の他に「現物分割」と「換価分割」があります。それぞれの特徴と、代償分割との違いを理解しておきましょう。
遺産分割の3つの方法
| 分割方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 現物分割(げんぶつぶんかつ) | 遺産そのものを物理的に分ける方法。「土地Aは長男に、預貯金は二男に」というように、財産ごとに相続人を決めます。 | 遺産に不動産、預貯金、有価証券など種類が豊富にあり、各相続人の相続分に応じて組み合わせられる場合。 |
| 代償分割(だいしょうぶんかつ) | 特定の相続人が不動産などを相続する代わりに、他の相続人へお金(代償金)を支払う方法。 | 遺産の大部分が不動産で、相続人の一人がその不動産に住み続けたい・事業で使い続けたい場合。 |
| 換価分割(かんかぶんかつ) | 不動産などの遺産を売却して現金に換え、その現金を相続人間で分ける方法。詳しくは「換価分割の手続きと流れ|税金・社会保険料への影響も解説」でも解説しています。 | 誰もその不動産に住む予定がなく、相続人全員が現金での分配を希望している場合。 |
一番の違いは、代償分割が「不動産を残す」ことを目的とするのに対し、換価分割は「不動産を売却する」ことを前提とする点です。思い出の詰まった実家を残したい、事業で使っている土地を手放したくない、という場合には、代償分割が最適な選択肢となります。
どんなときに代償分割が選ばれるのか?
代償分割は、特に以下のようなケースで有効な解決策となります。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
- 相続人の一人が実家(被相続人の家)に住み続けたい場合
まさに冒頭の事例のような、最も典型的なケースです。同居していた相続人が、そのまま生活の拠点を維持したいと希望する場合に選ばれます。 - 事業用の土地や建物を後継者が引き継ぐ場合
家業を継ぐ相続人が、事業に必要な工場や店舗、農地などを一括して相続したい場合に活用されます。事業の継続性を保ちながら、他の相続人との公平性も確保できます。 - 遺産が分けにくい不動産や自社株しかない場合
遺産に現金や預貯金がほとんどなく、物理的に分割することが難しい財産しかない場合に、代償分割は唯一の解決策となることがあります。
代償分割のメリット・デメリットを専門家が解説
代償分割は多くのメリットがある一方、注意すべきデメリットも存在します。両方を正しく理解し、ご自身の状況に合った方法か冷静に判断することが大切です。
メリット:大切な不動産を残し、円満な解決を目指せる
- 不動産を売却せずに済む
最大のメリットは、故人との思い出が詰まった家や、先祖代々の土地、事業の基盤となる不動産などを手放さずに済む点です。 - 公平な遺産分割が実現できる
代償金を支払うことで、不動産を取得しない相続人との不公平感をなくし、法定相続分に基づいた実質的に平等な分割が可能になります。 - 共有名義のリスクを避けられる
不動産を複数の相続人の共有名義にすると、将来の売却や建て替えの際に全員の同意が必要になるなど、権利関係が複雑になりがちです。代償分割で単独名義にすることで、将来のトラブルの芽を摘むことができます。 - 相続税の特例が使える可能性がある
一定の要件を満たせば、自宅の土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」を適用できる可能性があります。
デメリット:お金と評価額の問題が大きな壁に
- 不動産を取得する人に代償金を支払う資力が必要
最も大きなハードルです。不動産の価値が高額であるほど、支払う代償金も高額になります。現金や預貯金がなければ、代償金の準備が困難になる場合があります。 - 不動産の評価額で揉めやすい
代償金の額を決める基準となる不動産の評価方法には、相続税路線価、固定資産税評価額、時価(実勢価格)など複数の基準があります。どの基準を使うかで評価額が大きく変わるため、相続人間で意見が対立し、トラブルの原因になりやすい点です。 - 代償金の支払いが滞るリスクがある
分割払いにした場合、支払いが途中で滞ってしまうリスクがあります。合意内容を遺産分割協議書にきちんと記載し、場合によっては公正証書を作成するなどの対策が必要です。
【重要】代償分割と税金の問題|贈与税はかかる?
「代償金を支払うと、贈与税がかかるのでは?」と心配される方が非常に多くいらっしゃいます。ここでは、代償分割にまつわる税金の重要なポイントを解説します。
代償金は贈与税の対象外。ただし遺産分割協議書が必須
結論から言うと、遺産分割協議に基づいて支払われる代償金は、原則として贈与税の対象にはなりません。
なぜなら、代償金の支払いは、あくまで遺産分割を公平に行うための一環であり、無償で財産を与える「贈与」とは根本的に性質が異なるからです。
ただし、税務署に贈与とみなされないためには、必ず「遺産分割協議書」を作成し、その中に以下の内容を明確に記載することが絶対条件です。
- 誰がどの不動産を代償分割により取得したか
- 不動産を取得した人が、他の相続人に対して代償金を支払う義務を負うこと
- 代償金の具体的な金額、支払期日、支払方法
もし、口約束だけでお金のやり取りをしてしまったり、遺産分割協議書の記載が不十分だったりすると、後から税務署に「これは個人的な贈与ですね」と指摘され、高額な贈与税が課されてしまうリスクがあります。専門家として、この点は特に強く注意を促したいポイントです。
相続税はどう計算する?代償金の支払いで税額は変わる
代償分割を行った場合、相続税の計算は以下のようになります。
- 代償金を支払った人(不動産を取得した人)
相続した財産の価額 − 支払った代償金の額 = 課税価格 - 代償金を受け取った人
相続した財産の価額 + 受け取った代償金の額 = 課税価格
つまり、支払った人はその分だけ課税対象額が減り、受け取った人はその分だけ増える、という非常にシンプルな仕組みです。これにより、相続人間の税負担も公平になります。
売却するなら換価分割より税金が安くなることも
「最終的には家を売るかもしれない」と考えている場合でも、代償分割が有利になるケースがあります。
例えば、実家を相続人2人の共有名義にしてから売却する「換価分割」の場合、売却益(譲渡所得)に対して、2人それぞれに譲渡所得税がかかります。
一方、「代償分割」で長男が一人で実家を相続し、その後、長男が実家を売却したとします。この場合、長男が一定の要件を満たせば、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除などの特例を使える可能性があります。この特例が使えれば、譲渡所得税を大幅に抑えることができるのです。
将来的な売却の可能性も視野に入れるなら、どちらの方法が税金面で有利になるか、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
参考:No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
代償金が払えない…現金がない場合の4つの解決策
「代償分割がベストなのは分かるけど、支払うためのお金がない…」これは、多くの方が直面する最も切実な問題です。しかし、すぐに諦める必要はありません。いくつか解決策があります。

解決策①:他の相続人と交渉し「分割払い」にしてもらう
最も現実的で、よく利用される方法です。冒頭の事例のように、他の相続人の理解を得て、数年間にわたる分割払いにしてもらう交渉をします。
この場合、後々のトラブルを防ぐため、遺産分割協議書に以下の項目を詳細に定めておくことが極めて重要です。
- 分割払いの総額
- 毎月の支払額
- 支払期間(いつからいつまで)
- 支払いが遅れた場合のペナルティ(遅延損害金など)
さらに、作成した遺産分割協議書を「公正証書」にしておけば、万が一支払いが滞った場合に、裁判を起こさなくても相手の財産を差し押さえる(強制執行)ことが可能になり、お金を受け取る側も安心できます。
解決策②:不動産を担保に金融機関から融資(ローン)を受ける
一括での支払いを求められている場合には、相続した不動産を担保にして、金融機関から融資(不動産担保ローンなど)を受ける方法があります。
メリットは、まとまった資金をすぐに用意でき、相続問題をスピーディーに解決できる点です。一方、デメリットとしては、金利の負担が発生することや、金融機関による審査が必要になる点が挙げられます。
解決策③:生命保険金や死亡退職金を代償金の原資にする
被相続人がかけていた生命保険金や、会社から支払われる死亡退職金は、原則として「受取人固有の財産」とされ、遺産分割の対象にはなりません。
もし、不動産を相続する人がこれらの受取人になっていれば、それを代償金の支払いに充てることができます。見落としがちな資金源ですが、有効な手段となり得ます。
解決策④:最終手段として「換価分割」も視野に入れる
あらゆる方法を検討しても、どうしても代償金の準備が難しい場合は、代償分割に固執せず、不動産を売却して現金で分ける「換価分割」に切り替えることも、円満解決のための一つの選択肢です。
大切なのは、相続人全員が納得できる着地点を見つけることです。一つの方法にこだわりすぎず、柔軟に考えることも時には必要です。
代償分割を円満に進めるための手続きと注意点
代償分割をスムーズに進め、トラブルを避けるためには、正しい手順を踏むことが大切です。ここでは、具体的な流れと各ステップでの注意点を解説します。
ステップ1:相続人全員で話し合い、合意形成を目指す
何よりもまず、相続人全員で集まり、遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」を行います。感情的にならず、お互いの希望や状況を尊重しながら、冷静に話し合うことが重要です。
この段階で、
- 誰が不動産を取得するのか
- 「代償分割」という方法で進めることについて全員が同意しているか
を明確に合意することが、すべてのスタートラインとなります。
ステップ2:代償金の基準となる不動産の評価額を決める
トラブルの最大の原因となりうるのが、不動産の評価額です。代償金の金額は、この評価額を基に算出されるため、全員が納得できる基準で決めなければなりません。
主な評価方法には以下のようなものがあります。
- 相続税路線価:相続税や贈与税の計算に用いられる土地の価格。
- 固定資産税評価額:固定資産税の計算に用いられる価格。
- 公示価格:国が示す土地取引の目安となる価格。
- 時価(実勢価格):実際に市場で売買されると見込まれる価格。
どの方法を選ぶべきか決まりはありませんが、相続人間の公平を期すためには、実際に売れる価格に近い「時価」を基準にすることが多いです。複数の不動産会社に査定を依頼し、その平均額を参考にしたり、より正確性を求めるなら不動産鑑定士に鑑定を依頼したりする方法が客観的でおすすめです。
ステップ3:合意内容を「遺産分割協議書」に正しく記載する
相続人全員の合意内容が固まったら、その内容を法的に有効な書面である「遺産分割協議書」にまとめます。この書類は、後の不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きにも必要となる非常に重要なものです。
代償分割を行う場合、特に以下の項目を正確に記載する必要があります。
【遺産分割協議書への記載必須項目(代償分割の場合)】
- 相続人の一人である「〇〇(氏名)」が、以下の不動産を相続する。
- 不動産を相続する代償として、相続人「〇〇(氏名)」は、他の相続人「△△(氏名)」に対し、金〇〇円を支払う。
- 支払期日は、令和〇年〇月〇日までとする。
- 支払方法は、「△△」名義の下記預金口座に振り込む方法により支払う。
繰り返しになりますが、この記載に不備があると、贈与税の問題が発生したり、代償金の支払いをめぐるトラブルに発展したりする可能性があります。作成には細心の注意が必要です。
まとめ:代償分割は専門家に相談することで解決の助けとなることが多く、適切な助言が円滑な協議の助けになります。
遺産が不動産ばかりで分け方に困っている場合、代償分割は、ケースによっては家族の想いを守りつつ公平な解決に寄与する手段となり得ます。
しかし、その一方で、
- 不動産の評価額をどう決めるか
- 代償金の支払いをどうするか
- 贈与税などの税務リスクをどう回避するか
- 法的に不備のない遺産分割協議書を作成できるか
など、クリアすべき課題が多く、専門的な知識がなければ思わぬトラブルに発展しかねない、難しい手続きでもあります。
特に、相続人間の話し合いがこじれてしまうと、本来は円満に解決できたはずの問題が、取り返しのつかない「争続」になってしまうことも少なくありません。
私たち、いがり円満相続相談室は、司法書士・行政書士として、不動産相続や代償分割の相談に対応しています。法律や税金の話を分かりやすくご説明することはもちろん、何よりも皆様のお気持ちに寄り添い、全員がご納得いただける最善の解決策を一緒に見つけ出すことを大切にしています。
「うちのケースでも代償分割は使える?」「何から手をつければいいか分からない」
どんな些細なことでも構いません。一人で悩まず、まずは私たち専門家にご相談ください。あなたの不安な心に「安心」を届け、解決に向けて支援いたします。
司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所
(屋号:いがり円満相続相談室)
代表司法書士:猪狩 佳亮(神奈川県司法書士会所属)
所在地:〒210-0012 神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
相続登記で発覚!昔の抵当権の消し方【書類がなくても解決】
【ご安心ください】相続登記で昔の抵当権が見つかっても解決できます
「親が亡くなって、実家の相続登記を進めようと登記簿謄本を取得したら、何十年も前に完済したはずの住宅ローンの抵当権が残っていた…」
このような状況に、大変驚かれ、どうすればよいのかご不安に思われていることでしょう。「完済したのになぜ?」「当時の書類なんて、どこにも見当たらない…」「このままでは、不動産を相続できないのでは?」と、次々に心配事が浮かんでくるかもしれません。
でも、どうぞご安心ください。実は、このようなケースは決して珍しいことではないのです。
金融機関でローンを完済しても、登記簿上の抵当権は自動的に消えるわけではありません。ご自身で「抵当権抹消登記」という手続きを法務局で行わない限り、登記上は残り続けてしまいます。昔は手続きを忘れてしまう方も少なくなかったため、相続のタイミングで発覚することがよくあるのです。
当事務所では、書類が見つからない場合でも登記手続きや代替手段を尽力して検討し、抵当権抹消が可能な場合が多いですが、最終的な可否は個別の事情により異なります。まずはご相談ください。
この記事では、相続手続きの専門家である司法書士が、書類のない古い抵当権を抹消するための具体的な手順や解決策を、分かりやすく解説していきます。この記事を最後までお読みいただければ、ご不安が解消され、何をすべきかが明確になるはずです。
【実例】相続登記とセットで解決!書類がない抵当権抹消の相談事例
まずは、当事務所で実際に解決したご相談事例をご紹介します。きっと「うちと全く同じ状況だ」と感じていただけるはずです。
ご相談者様の状況:突然見つかった古い抵当権への戸惑い
「先日父が亡くなり、川崎市にある実家の相続登記を進めようとしていました。登記簿を確認したところ、平成10年代に完済したはずの住宅ローンの抵当権が登記されたままになっていることに気づきました。父はきっちりした性格だったので、まさか手続きが残っているとは思わず、本当に驚きました。」
「もちろん、完済当時に銀行から受け取ったはずの抵当権解除証書などの書類は、探しても見つかりません。相続登記と一緒に、この抵当権も消してしまいたいのですが、どうしたら良いでしょうか…」
当事務所からのご提案と解決までの道のり
ご不安な気持ちでご相談に来られたお客様に、私たちはまず「ご安心ください。書類がなくても、相続登記とセットでしっかり解決できます」とお伝えし、具体的な手続きの流れをご説明しました。
- まず相続登記を行います。不動産の名義が亡きお父様のままでは抵当権抹消手続きの当事者になれないため、先に相続人様へ名義変更します。
- 次に、銀行へ連絡します。相続登記が完了し、名義が新しくなった登記簿をもって、銀行に抵当権抹消に必要な書類の再発行を依頼します。
- 最後に、抵当権抹消登記を申請します。ただし、抵当権の「登記済証」だけは絶対に再発行できません。そのため、「事前通知」という特別な手続きを利用しますが、これも司法書士にお任せいただければ全く問題ありません。
結果:煩雑な手続きから解放され、無事に解決
最終的に、相続登記と抵当権抹消登記をセットでご依頼いただきました。さらに、お客様の手を煩わせないよう、銀行への書類再発行の連絡や手続きもすべて当事務所で代行いたしました。結果、お客様はほとんど何もすることなく、無事に実家の名義変更を終え、長年残っていた抵当権もきれいに抹消することができました。「肩の荷が下りました」と安堵された表情が、今でも心に残っています。

相続登記と抵当権抹消、手続きの正しい順番と流れ
さて、ここからは具体的な手続きの流れを詳しく見ていきましょう。相続登記と抵当権抹消登記は、正しい順番で進めることが非常に重要です。結論から言うと、原則として相続登記を先に行う必要がある場合が多い(ただし事案により手続きの順序や対応が異なることがある)ので、個別にご相談ください。必要があります。
ステップ1:相続登記で不動産の名義を相続人へ変更する
なぜ、先に相続登記が必要なのでしょうか。それは、抵当権抹消登記を申請できるのは、その不動産の「現在の所有者」と「抵当権者(金融機関など)」だからです。
亡くなった方(被相続人)は、すでにこの世におらず、法律上の「人」ではないため、登記申請の当事者になることができません。そのため、まずは相続登記を行い、不動産の名義を相続人の方へ変更することで、新しい所有者として抵当権抹消登記を申請できるようになるのです。
ちなみに、2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を申請することが法律上の義務となりました。抵当権の問題とは別に、相続登記は必ず行わなければならない手続きであることも覚えておきましょう。
ステップ2:金融機関へ連絡し、抹消書類の再発行を依頼する
無事に相続登記が完了し、不動産の名義がご自身に変わったら、次はいよいよ抵当権者である金融機関へ連絡します。連絡する際は、以下の点を伝えましょう。
- 亡くなった親が組んでいた住宅ローンを完済していること
- 相続により不動産の名義が自分に変わったこと
- 抵当権抹消登記をしたいので、必要な書類を再発行してほしいこと
ここで重要なポイントがあります。金融機関から再発行してもらえる書類と、絶対に再発行できない書類があるのです。
【再発行できる書類の例】
- 抵当権解除証書(または弁済証書)
- 金融機関の委任状
- 金融機関の資格証明書(代表者事項証明書など)
【絶対に再発行できない書類】
- 登記済証(いわゆる「権利証」)または登記識別情報
この「登記済証」がないことが、今回の手続きの核心部分になります。これがなくても大丈夫ですので、安心してください。代替手段については、次のステップで詳しく解説します。
なお、ローンを組んだ金融機関が合併や統合で名前が変わっていたり、すでに存在しなかったりする場合もあります。その際は、現在の権利を引き継いでいる金融機関を探し出して連絡する必要がありますが、これも司法書士にご相談いただければ調査が可能です。
ステップ3:法務局へ抵当権抹消登記を申請する
金融機関から書類の再発行を受けたら、いよいよ法務局へ抵当権抹消登記を申請します。しかし、前述の通り、最も重要な「登記済証(登記識別情報)」が手元にありません。
このような場合、原則として「事前通知制度」という方法を利用して手続きを進めることになります。
これは、登記申請後に法務局から金融機関(登記義務者)宛に「本当に抵当権を抹消して良いですか?」という確認の通知書が送付される制度です。金融機関がその通知書に署名・押印して法務局へ返送し、内容に問題がなければ、登記が実行される仕組みです。
この制度を利用すれば、登記済証がなくても抵当権を抹消できます。ただし、通知の送付や返送に時間がかかるため、通常の登記申請よりも少し日数がかかる点は留意しておきましょう。司法書士に依頼すれば、こうした一連の複雑な手続きもすべて任せることができます。
参考:○登記済証(権利証)を紛失したのですが,どうしたらよいので …
書類がない場合の抵当権抹消|2つの代替手続き
「登記済証(権利証)」や「登記識別情報」がない場合に抵当権を抹消するための代替手続きについて、もう少し詳しく見ていきましょう。主な方法は「事前通知制度」と「本人確認情報作成制度」の2つです。
原則は「事前通知制度」を利用
先ほども触れましたが、最も一般的な方法がこの「事前通知制度」です。追加の費用がかからず、法務局の正規の手続きとして定められているため、多くの場合でこの方法が選択されます。
手続きの流れを簡単にまとめると以下のようになります。
- 登記済証(登記識別情報)を添付せずに、法務局へ抵当権抹消登記を申請する。
- 法務局が登記義務者に対して通知を送付する(法務局の定める送達方法による)。詳細は法務局の案内や司法書士にご確認ください。
- 金融機関が通知を受領後、所定の手続きを経て返送する(通常一定の処理期間を要するため時間を要する場合があります)。具体的な日数については、法務局の最新の案内を参照するか、司法書士にご確認ください。
- 法務局が返送された通知書を確認し、問題がなければ登記手続きを実行する。
特に手続きを急ぐ理由がなければ、この方法で着実に抵当権を抹消することができます。
お急ぎの場合は司法書士の「本人確認情報」を活用
一方で、まれに事前通知に対応していない金融機関があります。
あるいは、「相続した不動産をすぐに売却する予定がある」など、抵当権抹消を急ぐ必要があるケースも存在します。事前通知制度は、郵便のやり取りに時間がかかるため、売買の決済日に間に合わない可能性があります。
そのような場合に活用できるのが、司法書士が作成する「本人確認情報」を法務局に提供する方法です。
これは、司法書士が登記義務者(この場合は金融機関の担当者)と面談し、運転免許証などの本人確認資料の確認や、登記申請の意思確認を行った上で、「この登記申請は、間違いなく本人の意思に基づくものです」という内容の証明書を作成し、登記申請書に添付するものです。
この本人確認情報を添付すれば、法務局からの事前通知を省略できるため、スピーディーに登記を完了させることができます。ただし、司法書士が専門家としての責任を負って作成する書類のため、別途費用がかかります。
どちらの方法が最適かは状況によって異なりますので、司法書士と相談しながら進めるのが良いでしょう。

相続登記と抵当権抹消を司法書士に依頼するメリットと費用
ここまで読んで、「手続きが思ったより複雑そうだ…」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。相続登記と古い抵当権の抹消は、セットで司法書士に依頼することで、多くのメリットがあります。
複雑な手続きや金融機関とのやり取りもすべてお任せ
司法書士に依頼する最大のメリットは、時間的・精神的な負担から解放されることです。
- 相続人の調査(戸籍収集)や遺産分割協議書の作成
- 法務局への相続登記申請
- 金融機関への連絡、抹消書類の再発行依頼
- 登記済証がない場合の特別な登記申請(事前通知など)
これら一連の煩雑な手続きを、すべて専門家が窓口となって代行します。特に、金融機関とのやり取りは、担当部署を探したり、必要書類を正確に伝えたりと、慣れていないと手間取ることも少なくありません。すべてを専門家に任せることで、あなたは安心して日常を過ごしながら、手続きが完了するのを待つだけです。

費用の目安は?(登録免許税+司法書士報酬)
司法書士に依頼する場合の費用は、大きく分けて「実費」と「司法書士報酬」の2つで構成されます。
【実費】
- 登録免許税(登記申請時に国に納める税金)
- 相続登記:不動産の固定資産税評価額 × 0.4%
- 抵当権抹消登記:不動産1個につき1,000円
- その他:戸籍謄本や住民票の取得費用、郵送費など
【司法書士報酬】
事務所によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 相続登記:7万円~15万円程度
- 抵当権抹消登記:1万5,000円~2万円程度
当事務所では、相続登記と抵当権抹消登記をセットでご依頼いただくことも多く、その場合は効率的に進められるため、費用面でもご納得いただけるご提案が可能です。詳しい料金については、当事務所の料金一覧をご覧ください。初回のご相談は無料ですので、まずはお見積りだけでもお気軽にお問い合わせください。
まとめ:まずは司法書士へ無料相談を
相続登記の際に発覚した、何十年も前の古い抵当権。書類もなく、どうすればよいかと途方に暮れてしまうお気持ちは、痛いほどよく分かります。
しかし、この記事でお伝えしてきたように、解決への道筋はきちんと用意されています。相続登記と抵当権抹消は手続きが複雑に絡み合いますが、一つひとつを専門家と一緒に整理していけば、必ずゴールにたどり着けます。
大切なのは、一人で抱え込まず、まずは専門家である司法書士に相談してみることです。それが、ご不安を「安心」に変えるための、最も確実で、最も早い第一歩となります。
いがり綜合事務所では、相続手続きや抵当権抹消に関するご相談を無料で承っております。平日夜間や土日祝のご相談にも柔軟に対応しておりますので、お仕事でお忙しい方も、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。あなたのお悩みに寄り添い、円満な解決まで全力でサポートいたします。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
遺言書で相続登記費用は安くなる?費用の仕組みと節約のコツを解説
「遺言書があれば相続登記費用が安くなる」は本当?
「遺言書があれば、相続登記の費用が安くなるって本当?」
ご親族が亡くなられ、相続手続きを前にした多くの方が抱く素朴な疑問です。結論から申し上げますと、一般的には遺言書があれば手続きが簡略化され、費用を抑えられる場合が多いとされています。ただし、遺言の種類や内容によっては費用や手続きが増えるケースもあります。
相続登記の費用は、大きく分けて「税金(登録免許税)」「書類取得などの実費」「専門家への報酬」の3つで構成されています。このうち、遺言書があることで特に大きく節約できる可能性があるのが「司法書士への報酬」の部分です。
遺言書は、単に財産の分け方を指定するだけでなく、残されたご家族のさまざまな負担を軽くしてくれる、大切な「道しるべ」となります。この記事では、なぜ遺言書があると費用を抑えられるのか、その具体的な仕組みと、知っておきたい注意点について、相続の専門家である司法書士が分かりやすく解説します。
相続登記にかかる費用の内訳を理解しよう
まず、相続登記にどのような費用がかかるのか、全体像を把握しておきましょう。主に以下の3つの費用から成り立っています。
①登録免許税:不動産の価値で決まる税金
登録免許税は、不動産の名義変更(登記)をする際に、法務局へ納める税金です。遺言書の有無にかかわらず、原則として支払う必要があります。
税額は、以下の計算式で算出されます。
登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 0.4%
例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地と建物を相続する場合、登録免許税は8万円(2,000万円 × 0.4%)となります。この税率は、原則として遺言書があってもなくても変わりません。ただし、後述しますが「遺贈」というケースでは税率が変わることがあるため注意が必要です。
②必要書類の取得費用:戸籍謄本などの実費
相続登記を申請するには、亡くなった方(被相続人)や相続人の戸籍謄本、住民票、不動産の固定資産評価証明書など、さまざまな公的書類が必要です。これらの書類を取得するための手数料がかかります。
相続人の人数や、亡くなった方の本籍地が何度も変わっている場合などは、集める戸籍の数が多くなり、費用もかさみます。一般的には、数千円から1万円を超える程度が目安となります。
実はこの部分も、遺言書があることで必要な戸籍の範囲が狭まり、結果的に費用を抑えられる可能性があります。
③司法書士への報酬:手続き代行の専門家費用
相続登記はご自身で行うことも可能ですが、手続きが複雑で専門的な知識を要するため、多くの方が司法書士に依頼されます。その際に発生するのが、手続きを代行する専門家への報酬です。
この司法書士への報酬は遺言書の有無で変わることが多く、報酬が費用構成に占める割合が大きい場合には影響が目立ちます(事案によります)。一般的な相続登記の司法書士報酬の目安は事務所や事案により幅がありますが(例えば7万円〜15万円程度とする参考情報もあります)、具体的な金額は個別のお見積もりでご確認ください。

なぜ遺言書があると相続登記費用を節約できるのか?
では、具体的に「なぜ」遺言書があると司法書士の報酬や実費を抑えることができるのでしょうか。その主な理由を3つのポイントから解説します。
理由1:遺産分割協議書の作成が不要になる
遺言書がない場合、相続人全員で「誰がどの財産を相続するのか」を話し合い、その合意内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成する必要があります。この書類には、相続人全員が署名し、実印を押さなければなりません。
相続人同士が遠方に住んでいたり、関係性が複雑だったりすると、この話し合いと書類の取りまとめは大変な時間と労力がかかります。司法書士が遺産分割協議書の作成をサポートする場合、通常、数万円の報酬が別途発生します。
しかし、有効な遺言書があれば、原則として遺産分割協議は不要です。遺言書の内容に従って手続きを進められるため、協議書作成にかかる司法書士報酬がまるごと節約できるのです。これは費用面だけでなく、相続人間の話し合いという精神的な負担を軽減する「見えないコスト」の削減にも繋がる、非常に大きなメリットです。
理由2:必要となる戸籍謄本の収集範囲が狭まる
遺言書がない場合、法律で定められた相続人(法定相続人)が誰なのかを確定させるため、亡くなった方の「出生から死亡までの一連の戸籍謄本すべて」を取り寄せる必要があります。これは、他に相続人がいないことを証明するために不可欠な手続きです。
一方、遺言書で不動産を相続する人が明確に指定されていれば、必要な戸籍謄本の範囲を限定できる場合があります。特に、後述する「公正証書遺言」であれば、手続きがより簡略化されます。
集める戸籍が少なくなれば、取得にかかる実費はもちろん、司法書士に戸籍収集を依頼した場合の代行費用も抑えることができます。
理由3:「遺言執行者」がいれば手続きが格段にスムーズに
少し専門的な話になりますが、遺言書で「遺言執行者」を指定しておくと、手続きはさらにスムーズになります。遺言執行者とは、その名の通り、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を与えられた人のことです。
遺言執行者がいれば、不動産の相続登記を、他の相続人の協力を得ることなく単独で申請できます。もし遺言執行者がおらず、かつ法定相続人でない方に遺言で不動産を譲る場合、不動産を取得する相続人と、それ以外の相続人全員が共同で登記申請(または委任状に署名押印)をしなければならないケースがあり、手続きが煩雑になる可能性があります。
手続きが迅速に進むということは、司法書士が費やす時間や工数も削減されるため、結果的に報酬の抑制に繋がるのです。
【相談事例】公正証書遺言で費用と手間を抑えられたケース
先日、ご相談にいらっしゃったAさんの事例をご紹介します。(※この事例は、内容を一般化・抽象化したものであり、特定の個人を識別できるものではありません。)Aさんはお父様を亡くされ、ご自宅不動産の相続登記について不安な面持ちで事務所のドアを叩かれました。
「父が亡くなったのですが、相続登記には一体どれくらいの費用がかかるのでしょうか…」
お話を伺うと、幸いにもAさんのお父様は生前に「自宅不動産は長男であるAに相続させる」という内容の公正証書遺言をきちんと作成されていました。この一点が、Aさんの負担を大きく軽減することになります。
私たちはAさんにこうご説明しました。
「お父様が公正証書遺言を残してくださったおかげで、手続きはとてもスムーズに進められますよ。まず、相続人の皆さんで話し合って『遺産分割協議書』を作る必要がありません。これだけで、司法書士の費用も数万円は抑えられますし、何よりご兄弟と書類のやり取りをする手間が省けます。必要な戸籍も少なくて済みますから、実費も時間も節約できます。」
Aさんは当初、何十万円もかかるのではないかと心配されていましたが、遺言書がない場合に比べて費用を抑えられること、そして手続きがシンプルになることをご理解いただくと、みるみる表情が和らいでいきました。
最終的に、私たちは遺言書の内容に沿ってスムーズに相続登記を完了させることができ、Aさんからは「父が遺言書を書いておいてくれて本当に良かった。安心しました。」と、心からの感謝の言葉をいただくことができました。この事例は、適切な遺言書が、残されたご家族にとってどれほど大きな「安心」に繋がるかを物語っています。
注意!遺言書があっても費用が高くなる・複雑化する3つのケース
ここまで遺言書のメリットをお伝えしてきましたが、「遺言書さえあれば万事OK」というわけではありません。遺言書の種類や内容によっては、かえって費用が高くなったり、手続きが複雑になったりするケースもあります。専門家として、そうしたリスクについても正直にお伝えします。
ケース1:自筆証書遺言の「検認」で手間と費用がかかる
ご自身で手書きする「自筆証書遺言」は、費用をかけずに手軽に作成できるのがメリットです。しかし、亡くなった後にその遺言書を使って手続きをするには、原則として家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きを経なければなりません。(※法務局の保管制度を利用した場合は不要)
検認手続きのためには、相続人全員の戸籍謄本などを集めて裁判所に申し立てる必要があり、数千円の実費と数ヶ月の時間がかかります。司法書士に依頼する場合はさらに数万円の報酬が上乗せされます。せっかく費用を抑えるために自筆で書いたのに、結果的に手間と実費がかさんでしまう可能性があるのです。
参考:遺言書の検認
ケース2:遺言書の文言が曖昧で登記に使えない
「自宅の土地建物を長男に相続させる」
一見、問題なさそうに見えるこの一文も、法務局の登記手続きでは通用しないことがあります。登記申請では、不動産を登記簿(登記事項証明書)に記載されている通りに、地番や家屋番号まで正確に特定して記載する必要があるからです。
もし遺言書の記載が不正確・不十分だと、その遺言書だけでは登記ができず、結局、相続人全員で遺産分割協議書を作成し直すことになりかねません。そうなれば、遺言書を作成した意味がなくなってしまいます。
ケース3:相続人以外への「遺贈」で登録免許税が5倍になる
「お世話になった知人に不動産を譲りたい」「孫に不動産を遺したい」といったケースです。法定相続人ではない人に遺言で財産を譲ることを「遺贈(いぞう)」と言います。
この遺贈によって不動産の名義変更をする場合、登録免許税の税率が、相続の場合の0.4%から2.0%へと5倍に跳ね上がります。
例えば、評価額2,000万円の不動産の場合、相続なら8万円の登録免許税が、遺贈だと40万円にもなってしまうのです。良かれと思ってしたことが、かえって高額な税負担を強いる結果になる可能性があるため、十分な注意が必要です。
最も確実な節約方法は「登記を見据えた公正証書遺言」です
では、どうすれば将来の相続登記費用と手間を、最も確実かつ効果的に節約できるのでしょうか。
その答えは、「将来の登記手続きまで見据えて、専門家が関与して作成する公正証書遺言」を備えておくことです。
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成に関与するため、法的な不備や内容の曖昧さがなく、無効になるリスクが極めて低いのが特徴です。
- 家庭裁判所での検認手続きが不要で、すぐに手続きに入れる。
- 不動産の表示など、登記に使える正確な記載が担保される。
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない。
作成時に費用はかかりますが、自筆証書遺言で起こりうる様々なリスクや、将来相続人が負担するであろう費用・手間・精神的ストレスを考えれば、結果的に最も安く、そして安心な方法と言えるでしょう。当事務所でも、ご状況に応じた遺言書作成業務についてサポートを行っております。(事務所名:司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所、所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号、司法書士:猪狩 佳亮、所属:神奈川県司法書士会)
相続登記の費用でお悩みなら、いがり綜合事務所へご相談ください
この記事では、遺言書と相続登記費用の関係について解説してきました。遺言書は、多くの場合で費用と手間の節約に繋がりますが、その内容や種類によっては意図しない結果を招くこともあります。
「自分の場合はどうなんだろう?」
「どの方法が一番良いのか分からない…」
そうお感じになるのは当然のことです。相続の形は、ご家族の数だけ存在します。
私たち、いがり綜合事務所(いがり円満相続相談室)は、川崎市・横浜市を中心に、これまで数多くの相続手続きをお手伝いしてまいりました。お金のことはもちろん皆様が気にされる大切な点です。だからこそ、私たちは一人ひとりのお話をじっくりと伺い、ご状況を正確に把握した上で、費用面にも配慮した最適な手続き案をご提案します。
初回のご相談は無料です。ご状況を丁寧に伺い、手続きや費用について分かりやすくご説明します。まずはお気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
相続放棄した人の子は相続できる?代襲相続との違いを解説
【結論】親が相続放棄しても、その子に相続権は移りません
ご親族が亡くなり、相続の手続きを進める中で「親が相続放棄をしたら、子どもである自分(孫)が借金を背負うことになるの?」と不安に感じていらっしゃるかもしれませんね。特に「代襲相続」という言葉を耳にして、ますます混乱されている方も多いのではないでしょうか。
まず、大切な結論からお伝えします。親が相続放棄をしても、その子ども(お孫さん)が代わりに相続人になることは一切ありません。
なぜなら、法律(民法939条)では、相続放棄をした人は「初めから相続人ではなかった」とみなされるからです。もともと相続人でなかったわけですから、その人の権利を誰かが代わりに引き継ぐ「代襲相続」は起こりようがないのです。どうぞご安心ください。
この記事では、多くの方が混同しがちな「相続放棄」と「代襲相続」の根本的な違いから、相続権が次に誰に移っていくのか、そして手続きにどう影響するのかまで、司法書士が具体的な事例を交えて分かりやすく解説していきます。
【相談事例】相続放棄と代襲相続を混同したAさんのケース
この問題は、決してあなただけの悩みではありません。先日、まさに同じことでお困りの方から、当事務所にご相談がありました。
ご相談に来られたのは、お父様(Aさん・80歳)を亡くされた二男のCさんでした。相続人は長男のBさんとCさんの2人です。ところが、Bさんはご自身の判断で、家庭裁判所で相続放棄の手続きを済ませていました。
Cさんは「これで相続人は自分一人になった」と考えていたそうですが、インターネットで「代襲相続」という言葉を目にして、急に強い不安に駆られたといいます。
「兄には子どもが2人(Aさんから見て孫)います。兄が相続放棄をしたことで、甥や姪が代わりに相続人になる『代襲相続』が発生するのではないでしょうか?もしそうなると、遺産分割協議書に彼らの署名や実印も必要になるのでしょうか…?」
もし甥や姪まで相続人となれば、手続きは格段に複雑になります。Cさんのご心配はもっともなことでした。
私はまずCさんに落ち着いていただき、このようにご説明しました。
「ご安心ください。お兄様がされたのは『相続放棄』ですね。先ほどお話しした通り、相続放棄をした方は『初めから相続人ではなかった』と扱われます。そのため、お子さんたちに相続権が移る代襲相続は発生しません。相続人はCさんお一人だけですよ。代襲相続が起こるのは、お父様より先にお兄様が亡くなっていた場合の話です。よく混同されがちですが、Cさんのケースは大丈夫です」
この説明により、Cさんの不安は解消されました。その後、正式にご依頼をいただき、Bさんの「相続放棄申述受理証明書」を家庭裁判所から取り寄せるなど、必要な手続きを一つひとつ進め、無事にCさん単独名義での相続登記を完了することができました。
このように、正しい知識があればスムーズに進む手続きも、少しの誤解が大きな不安や手間につながることがあります。より詳しい相続登記の必要書類については、別の記事で詳しく解説しています。
図解でわかる!相続放棄で相続人はこう変わる
相続放棄によって相続権がどのように移っていくのか、具体的な家族構成のパターン別に見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせながら確認してみてください。誰が法定相続人になるのか、その流れを理解することが重要です。

パターン1:子が全員相続放棄した場合 → 親(第2順位)が相続人に
最も基本的なケースです。第1順位の相続人である子どもが全員相続放棄をすると、相続権は第2順位である亡くなった方の親(直系尊属)に移ります。もし親もすでに亡くなっている場合は、さらに第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移ることになります。
亡くなった方に多額の借金がある場合、ご自身が相続放棄をすることで、意図せず親や兄弟に借金の返済義務が移ってしまう可能性があります。そのため、相続放棄した後の注意点として、次に相続人になる方へ事前に連絡を入れておくことが、親族間のトラブルを防ぐ上で非常に重要です。
パターン2:親も子も放棄した場合 → 兄弟姉妹(第3順位)が相続人に
第1順位(子)と第2順位(親)が全員相続放棄した、あるいはいずれも既に亡くなっているというケースでは、相続権は第3順位である亡くなった方の兄弟姉妹に移ります。
ここで注意したいのは、もし兄弟姉妹の中に既に亡くなっている人がいれば、その人の子ども(甥・姪)が代襲相続する可能性がある、という点です。このように、相続放棄が繰り返されることで相続関係が複雑化し、思わぬ人が相続人として登場することがあります。正確な相続関係説明図の作成が不可欠になります。
パターン3:兄弟姉妹の一人が放棄した場合 → 他の兄弟姉妹の相続分が増える
同じ順位の相続人が複数いる場合に、そのうちの一人だけが相続放棄した場合はどうなるでしょうか。例えば、相続人が兄弟3人だったとします。そのうち一人が相続放棄をすると、その人がもともと持っていた相続分は、他の2人に均等に分配されます。結果として、残りの2人の相続分が増えることになるのです。
このように、相続放棄は他の相続人の権利にも直接影響を与えます。何も伝えずに手続きを進めてしまうと、後々トラブルになりかねません。遺産を相続しない場合でも、親族間で事前にしっかりと話し合っておくことが円満な解決の鍵となります。
相続登記で見る「相続放棄」と「代襲相続」の決定的な違い
多くの方が混乱する「相続放棄」と「代襲相続」。この2つの違いを、私たち司法書士の専門分野である「相続登記」という具体的な手続きの観点から見ていくと、その違いがはっきりと分かります。
法律上の効果の違いが、不動産の名義変更手続きで求められる書類や申請内容にどう直結するのかを知ることで、理解がぐっと深まるはずです。
相続放棄:相続権が「次の順位の人」へ移る
相続放棄とは、家庭裁判所に申立てをすることで、プラスの財産(預貯金や不動産)もマイナスの財産(借金)も、すべて引き継がないという意思表示です。
この手続きが受理されると、その人は法的に「初めから相続人ではなかった」と扱われます。相続権そのものが消滅するため、相続権は同じ順位の他の相続人や、次の順位の相続人(故人の親や兄弟姉妹)へと移っていきます。
相続登記の実務では、この「相続人でないこと」を公的に証明する必要があります。そのために必要となるのが、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理証明書」なのです。
代襲相続:相続権が「下の世代」へ引き継がれる
一方、代襲相続は、本来の相続人が亡くなっているなどの理由で相続できない場合に、その人が持つはずだった相続権が「そのまま下の世代(子や孫)に引き継がれる」制度です。
相続放棄と違い、相続権は消滅しません。あくまで「承継」されるのです。そのため、相続登記の実務では、本来の相続人が亡くなっている事実と、代襲相続人との関係を証明しなければなりません。
具体的には、亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などが追加で必要となり、相続関係が複雑化します。
このように、相続権が「消えて次に移る」のか、「引き継がれる」のかという根本的な違いが、不動産の名義変更手続きにも大きく影響するのです。
参照:法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ」
要注意!相続放棄と代襲相続が絡む複雑なケース
ここからは、さらに一歩踏み込んで、実務上よくご相談いただく複雑なケースについて解説します。相続が複数回発生するような状況では、ルールがどう適用されるのかを知っておくことが重要です。
父の借金を放棄しても、祖父の財産は代襲相続できる?
「父が多額の借金を残して亡くなったので、父の相続は放棄しました。その後、祖父が亡くなったのですが、父の代わりに祖父の財産を代襲相続することはできるのでしょうか?」
これは非常によくあるご質問ですが、答えは「できます」です。
ポイントは、「父の相続」と「祖父の相続」は全く別の手続きであるという点です。相続放棄の効力は、あくまでその対象となった「特定の相続」にしか及びません。つまり、父の借金に対する相続を放棄したという事実が、将来発生する祖父の相続における代襲相続権を失わせることはないのです。それぞれの相続は、切り離して考える必要があります。ただし、相続放棄の判断をする前に、財産と債務の全体像を正確に把握することが大切です。
祖父の相続放棄を考えている間に父が亡くなったら?(再転相続)
では、次のようなケースはどうでしょうか。
「祖父が亡くなり、その相続人である父が、相続を承認するか放棄するかの判断をしないまま亡くなってしまった」
これは「再転相続」と呼ばれる特殊な状況です。この場合、子(孫)であるあなたは、「父自身の財産や借金に対する相続権」と、「父が持っていた“祖父の相続を承認または放棄する権利”」の両方を引き継ぐことになります。
この状況では、父の相続を承認したうえで、祖父の相続だけを放棄することは可能とされています。ただし、父の相続を放棄した場合には、父が持っていた祖父の相続についての承認・放棄の選択権も承継しないため、選択の順序と内容には注意が必要です。判断が非常に複雑になり、熟慮期間の起算点も特殊なものとなります。このような数次相続が絡むケースでは、自己判断だけで進めると誤った選択につながるおそれがあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
手続きの第一歩は「相続人調査」。自分で判断するのは危険です
ここまで見てきたように、相続放棄や代襲相続が関わると、誰が最終的な相続人になるのかを特定する作業は一気に複雑になります。
そして、この「誰が相続人なのか」を正確に確定させる「相続人調査」は、すべての相続手続きの土台となる最も重要な第一歩です。もし、相続人が一人でも漏れた状態で進めた遺産分割協議は、法的に無効になってしまいます。後から本当の相続人が現れた場合、すべての手続きをやり直す必要があり、大きなトラブルに発展しかねません。
この重要な手続きについて、詳しくは「相続人調査・戸籍謄本の取得代行」のページで解説しています。
なぜ戸籍の収集と読解は専門家に任せるべきなのか
相続人を法的に確定させるには、亡くなった方の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本など)をすべて集める必要があります。しかし、この作業には多くの手間と確認が必要です。
- 本籍地が何度も変わっている場合、全国の役所に請求が必要になる。
- 古い手書きの戸籍は達筆で読解が困難な場合がある。
- 前妻との間の子や認知した子など、家族も知らない相続人が見つかることがある。
2024年からは戸籍謄本の広域交付制度が始まり便利になりましたが、それでもすべてのケースで万能というわけではありません。「うちの家族はこうだから大丈夫」という思い込みで進めるのは非常に危険です。戸籍の収集と法的な観点からの正確な読解は、私たち司法書士のような専門家に相談することで、確認漏れや手続きのやり直しを防ぎやすくなります。

相続人の特定でお悩みなら、いがり円満相続相談室へご相談を
「結局、うちの場合は誰が相続人になるんだろう…」
「相続放棄した親族がいるけれど、手続きはどう進めればいいの?」
相続放棄や代襲相続が絡むケースでは、誰が相続人になるのかの判断が非常に難しく、不安に思われるのも当然です。一人で悩まず、必要に応じて、専門家への相談もご検討ください。
当事務所は、相続業務に特化した司法書士事務所です。年間100件以上の豊富な実績に基づき、あなたの状況を丁寧にお伺いし、複雑な相続関係を整理し、誰が本当の相続人なのかを正確に調査・確定いたします。その上で、今後の手続きの流れや、考えられるリスクについて分かりやすくご説明します。
初回のご相談は無料です。代表司法書士が一貫して対応し、あなたの不安に寄り添いながら、円満な相続手続きに向けて、必要な確認と手続きを丁寧に支援いたします。安心して次のステップに進むためにも、まずは相続に強い司法書士を見つける第一歩として、お気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
自筆証書遺言の注意点|無効になる書き方など専門家が解説
「費用をかけずに…」その自筆証書遺言、本当に大丈夫?
「大切な家族のために、きちんと遺言書を残しておきたい。でも、専門家に頼むと費用がかさむから、まずは自分で書いてみよう」
このように考えて、自筆証書遺言の作成を検討される方は少なくありません。ご自身の想いを形に残そうとするそのお気持ちは、本当に素晴らしいものです。
しかし、その一方で、費用を抑えたいという想いから安易に作成された遺言書が、法的な要件を満たさずに無効になってしまったり、内容が曖昧なためにかえってご家族の間で争いを引き起こしてしまったりするケースが後を絶たないのも、悲しい現実です。
良かれと思って残したはずの遺言書が、最愛の家族を苦しめる「争族」の火種になってしまう…。そんな、誰も望まない結末を迎えないために、何に気を付ければよいのでしょうか。
この記事では、相続の専門家である司法書士の視点から、自筆証書遺言を作成する際に絶対に知っておくべき注意点や、無効になってしまう典型的なケースを具体的に解説します。あなたの想いが詰まった大切な遺言書が、確実に家族の未来を守るものとなるよう、ぜひ最後までお読みください。
自筆証書遺言が無効になる6つの落とし穴
自筆証書遺言は、法律で厳格な書き方が定められています。一つでも要件を欠くと、遺言書全体が無効になってしまう可能性があります。ここでは、特に陥りやすい6つの「落とし穴」について、なぜそのルールが必要なのかという理由も踏まえて解説します。
1. 全文が自筆でない(財産目録を除く)
遺言書は、その名の通り「自筆」であることが大原則です。パソコンで作成した本文を印刷して署名・押印したり、手が不自由だからとご家族に代筆を頼んだりしたものは、残念ながら無効となります。これは、遺言者本人の真の意思に基づいて作成されたことを担保するための重要なルールです。
ただし、2019年の法改正により、相続財産を一覧にした「財産目録」については、パソコンでの作成や、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付することが認められるようになりました。
しかし、その場合でも財産目録のすべてのページに、遺言者本人が署名・押印する必要があります。この署名・押印を忘れがちなので、十分にご注意ください。
2. 日付が特定できない・記載がない
遺言書の作成日も、極めて重要な記載事項です。日付の記載がなかったり、「令和7年11月吉日」のように日付が特定できない書き方をしたりすると、その遺言書は無効になってしまいます。
なぜなら、もし遺言書が複数見つかった場合、法律上は最も日付の新しいものが有効とされるからです。また、遺言を作成した当時に、遺言者に十分な判断能力があったかどうかを判断する上でも、作成日は重要な意味を持ちます。必ず「令和7年11月8日」のように、誰が見ても一日を特定できる形で正確に記載してください。
3. 署名・押印がない
遺言書の末尾には、必ず遺言者本人が署名し、印鑑を押さなければなりません。署名・押印は、その遺言書を誰が作成したのかを最終的に証明するための、いわば「サイン」です。
押印は認印でも法律上は有効ですが、後のトラブルを防ぐためには、実印を使用し、印鑑登録証明書を一緒に保管しておくことを強くお勧めします。これにより、遺言書が本人の意思で作成されたことの証明力が高まります。
また、署名は戸籍上の氏名を正確に記載しましょう。普段使っている通称名などで署名すると、本人確認で問題が生じる可能性があります。
4. 修正方法が間違っている
一度書いた遺言書の内容を修正したい場合、修正テープで消したり、二重線を引いて書き加えたりするだけでは、その修正は認められません。遺言書の修正には、法律で定められた厳格なルールがあります。
具体的には、まず変更したい箇所を二重線などで示し、その近くに正しい文言を記載します。そして、その変更箇所に押印し、さらに遺言書の末尾などの余白に「〇行目、〇字削除、〇字加入」といったように、どこをどのように変更したかを付記して、そこにも署名する必要があります。
この手続きは非常に複雑で、一つでも間違えると修正が無効になるだけでなく、遺言書全体の有効性が争われる原因にもなりかねません。もし修正が必要になった場合は、安易に自分で直さず、全文を書き直すか、専門家に相談するのが安全です。
5. 財産の特定ができない
「自宅の土地と建物を長男に相続させる」といった書き方では、どの不動産を指すのかが曖昧で、法務局での名義変更(相続登記)手続きができない可能性があります。
相続手続きをスムーズに進めるためには、誰が見ても財産を一つに特定できるように記載する必要があります。
- 不動産の場合:登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている通りに、所在、地番、家屋番号などを正確に記載する。
- 預貯金の場合:「〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇」のように、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号まで正確に記載する。
財産目録を正確に作成することが、残されたご家族の手間を大きく減らすことに繋がります。
6. 夫婦など複数人で作成している
仲の良いご夫婦が、「私たちの財産は、このように分けます」と、一つの用紙に連名で遺言書を作成することがあります。これは「共同遺言」と呼ばれ、法律で明確に禁止されており、無効となります。
遺言は、あくまで個人の最終的な意思表示であり、他人の意思に影響されることなく、いつでも自由に撤回・変更できるべきものだからです。ご夫婦であっても、遺言書は必ず各自が一通ずつ、別々に作成しなければなりません。
良かれと思って書いた遺言書が「争族」の火種に…最悪のシナリオ
もし、上記のような落とし穴にはまってしまい、作成した自筆証書遺言が無効と判断されたら、一体どうなるのでしょうか。
その場合、遺言書は「初めから存在しなかった」ものとして扱われます。そうなると、相続人全員で「遺産分割協議」を開き、誰がどの財産を相続するのかを改めて話し合って決めなければなりません。
あなたの「長男に事業で使っている土地を継がせたい」「介護で世話になった長女に多く財産を残したい」といった特別な想いは、法的な効力を失ってしまいます。相続人全員の合意が得られなければ、法律で定められた法定相続分で分けることになります。
その結果、
- 遺産分割協議がまとまらず、相続人同士の関係が悪化し、裁判にまで発展する。
- 話し合いが長引き、預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続手続きが全く進まない。
- 家族間の信頼関係が完全に崩壊し、何年にもわたって憎しみ合う「争族」状態に陥る。
このような悲劇が、実際に多くのご家庭で起こっているのです。
費用を抑えるために自分で書いた遺言書が、結果的に家族に数十万、数百万円もの弁護士費用を負担させ、お金では解決できない深い溝を残してしまう…。これほど皮肉で、悲しいことはありません。
自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべき?費用と確実性を比較
では、どうすれば確実に想いを実現できるのでしょうか。遺言書には、自筆証書遺言のほかに「公正証書遺言」という方法があります。ここでは、両者を費用と確実性の観点から比較し、どちらを選ぶべきかを考えてみましょう。
費用だけで判断は危険!トータルコストで考える
多くの方が自筆証書遺言を選ぶ最大の理由は「費用がかからない」ことでしょう。確かに、紙とペンさえあれば作成できるため、初期費用はほぼ0円です。
一方、公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらうため、財産の価額に応じた手数料がかかります。数万円から十数万円程度かかるのが一般的です。
しかし、ここで考えていただきたいのが「トータルコスト」です。
自筆証書遺言は、相続が始まった後、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります(法務局保管制度を利用しない場合)。これには、戸籍謄本などの書類収集の手間と、数千円から1万円程度の実費がかかります。
もし遺言書が無効になったり、内容が原因で紛争になったりすれば、前述の通り、弁護士費用などで何十万円もの出費が発生する可能性があります。
公正証書遺言の作成費用は、こうした将来のリスクを軽減し、ご家族の負担を和らげるための「備え」と考えることができます。
法務局保管制度のメリットと限界
2020年から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、作成した自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度です。これにより、遺言書の紛失や改ざんのリスクがなくなり、面倒な家庭裁判所での「検認」手続きも不要になるという大きなメリットがあります。
これは非常に便利な制度ですが、一つだけ決定的な限界点があります。それは、法務局はあくまで遺言書を「保管」するだけで、その内容が法的に有効かどうかまではチェックしてくれないという点です。
つまり、日付や署名・押印といった外形的な要件は確認してくれますが、「財産の記載が曖昧で特定できない」「特定の相続人の遺留分を侵害していて、将来の紛争の種になる」といった内容面の問題点までは指摘してくれません。せっかく法務局に預けても、内容が原因でトラブルになるリスクは依然として残るのです。
確実性を高めたい場合の選択肢としての公正証書遺言
公正証書遺言は、相続に関するトラブルの可能性を減らし、ご自身の想いを実現するための一つの有力な方法です。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言者ご本人から直接内容を聞き取りながら作成します。その過程で、法律的な要件を満たしているかはもちろん、内容が不明確でないか、遺留分など将来トラブルになりそうな点はないかといったことまでチェックしてくれます。
完成した遺言書の原本は公証役場に厳重に保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。
特に、相続人同士の関係が少し複雑な場合や、特定の誰かに財産を多く残したいと考えている場合など、少しでも将来に不安要素があるのなら、公正証書遺言を作成しておくべきです。当事務所では、お客様の想いを形にする遺言書作成業務について、全面的にサポートしています。
費用を抑えたい…そんなお悩みこそ専門家にご相談ください
先日、当事務所にも「できるだけ費用をかけずに、自分で遺言書を作成したい」というお客様がご相談に来られました。
そのお客様は、インターネットや本で書き方を一生懸命に調べ、ご自身で下書きまで作成されていました。その熱意に、私も心から敬意を表しました。
私はまず、お客様が調べてこられた自筆証書遺言の基本的なルール(自署、日付、署名押印など)が正しいことを確認し、財産目録の作成方法や、法務局の保管制度についてもご説明しました。
その上で、正直にこうお伝えしたのです。
「お客様が書かれた内容は、基本的な要件は満たしています。しかし、このままですと、将来ご長男とご長女の間で揉めてしまう可能性が残っています。また、法務局に預けても、この内容面のリスクは解消されません。今、費用を節約することが、将来のご家族の負担になってしまうかもしれません」
そして、自筆証書遺言を相続開始後に家庭裁判所で検認する際の手間や費用、そして公正証書遺言を作成する費用を具体的にお示しし、長い目で見れば、確実性を手に入れるための費用は、決して高すぎるものではないことを丁寧にご説明しました。
お客様は深く頷かれ、「先生の話を聞いて、目先の費用だけにとらわれていたことに気づきました。家族が揉めないことが一番大事です。ぜひ、公正証書でお願いします」とおっしゃってくださいました。
私たちは、ただ手続きを代行するだけではありません。お客様の「費用を抑えたい」というお気持ちに寄り添いながら、何がご家族にとって本当に最善の選択なのかを一緒に考え、ご提案する。それが、私たちの使命だと考えています。
川崎・横浜で遺言書作成なら、いがり円満相続相談室へ
あなたの想いを、法的に有効なだけでなく、残されたご家族が円満に未来へ進むための「道しるべ」として残すお手伝いを、私たちにお任せいただけませんか。
司法書士である代表が直接・丁寧に対応
いがり円満相続相談室では、代表司法書士である猪狩佳亮が、最初のご相談から遺言書の完成まで、責任をもって一貫して対応いたします。司法書士・行政書士・社会保険労務士の3つの国家資格を持つ専門家が、お客様一人ひとりのお話にじっくりと耳を傾け、大量処理ではない、丁寧で温かみのあるサポートを心がけています。
「円満相続」の実現に向けた遺言内容をご提案
私たちは、単に法律の要件を満たすだけの遺言書を作成するわけではありません。遺留分をはじめとする将来の紛争リスクを検討し、ご家族が納得できる円満な相続の実現に向けた遺言内容をご提案するよう努めています。相続税が心配な場合には提携する税理士と、複雑な法律問題が絡む場合には弁護士と連携し、あらゆるお悩みにワンストップで対応できる体制を整えています。
平日夜間・土日祝も相談可能!初回相談は無料です
お仕事などで日中はお忙しいという方のために、当事務所では平日19時や20時開始の夜間相談や、土日祝日のご相談にも柔軟に対応しております。
「まずは何から始めればいいか分からない」「自分の場合はいくらくらい費用がかかるのか知りたい」そんな些細なことでも構いません。初回のご相談は無料です。あなたの不安な心に「安心」を届け、円満な未来を築くため、私たちが全力でサポートいたします。
事務所所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号
所属司法書士会:神奈川県司法書士会
まずは無料相談でお気軽にお問い合わせください。お電話またはお問い合わせフォームから、ご予約をお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
韓国籍の方の相続手続き|日本の不動産の名義変更を解説
【ご相談事例】韓国籍の方の相続、こんなお悩みありませんか?
大切なご家族が亡くなられ、深い悲しみの中、相続の手続きを進めなければならない状況、心中お察しいたします。
ただでさえ大変な相続手続きですが、亡くなった方が韓国籍だった場合、普段聞き慣れない言葉や手続きが出てきて、多くの方が戸惑われます。
- 亡くなった親が韓国籍。日本にある不動産の名義変更はどうすればいいの?
- 「韓国の戸籍が必要」と言われたけど、どうやって取得するんだろう…?
- 集めた書類は全部、日本語に翻訳しないといけないって本当?
- 手続きが複雑そうだけど、専門家に頼むと費用はどのくらいかかるの?
- そもそも、日本の法律と韓国の法律、どっちが適用されるの?
もし、このようなお悩みや不安を一つでも抱えていらっしゃるなら、ご安心ください。この記事では、韓国籍の方の相続手続き、特に日本にある不動産の名義変更(相続登記)について、専門家が一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めば、手続きの全体像と、あなたが次に何をすべきかが明確になるはずです。
要注意!韓国籍の方の相続が日本人より複雑になる3つの理由
「どうして日本人の相続と比べて、こんなに手続きが複雑なの?」多くの方がそう思われることでしょう。その理由は、大きく分けて3つあります。まずはこの「なぜ大変なのか」を知ることで、落ち着いて準備を進めることができます。

理由1:適用される法律が「韓国法」と「日本法」に分かれる
相続手続きでどの国の法律を使うか、という問題を「準拠法(じゅんきょほう)」といいます。これが最初のポイントです。
日本の法律(法の適用に関する通則法)では、「相続は、被相続人(亡くなった方)の本国法による」と定められています。つまり、亡くなった方が韓国籍の場合、誰が相続人になるか、それぞれの相続分(財産をもらう割合)がどうなるか、といったことは「韓国の民法」に基づいて決まります。
一方で、日本にある不動産の名義を変更する手続き(相続登記)は、その不動産がある日本の法律、つまり「日本の不動産登記法」に従って進めなければなりません。
このように、相続のルールは「韓国法」、不動産登記のルールは「日本法」と、2つの国の法律が関わってくるため、手続きが複雑になるのです。
理由2:相続人の確定に「韓国の戸籍」の収集が必須
相続手続きの第一歩は、「誰が相続人なのか」を公的な書類で証明することです。日本人の場合は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本を市区町村役場で集めます。
これに対し、韓国籍の方の場合は、韓国の戸籍制度に基づいた書類を集めなければなりません。具体的には、2008年1月1日より前に亡くなった方は「除籍謄本」、それ以降に亡くなった方は、以下の5種類の「家族関係登録事項別証明書」と「除籍謄本」の両方が必要になることが一般的です。
- 家族関係証明書
- 基本証明書
- 婚姻関係証明書
- 入養関係証明書
- 親養子入養関係証明書
これらの書類を、亡くなった方の出生まで遡ってすべて集める必要があります。しかし、本籍地(登録基準地)が分からない、何度も転籍しているといったケースでは、調査が非常に難しく、手続きが止まってしまう大きな原因となります。
理由3:取得した韓国の書類はすべて「日本語への翻訳」が必要
苦労して韓国の戸籍関連書類を集めても、そのままでは日本の法務局や金融機関に提出することはできません。なぜなら、書類はすべて韓国語(ハングル)で書かれているからです。
そのため、提出するすべての書類について、日本語への翻訳文を作成する必要があります。翻訳は誰が行ってもよいとされていますが、翻訳者の氏名と住所を記載し、押印しなければなりません。もし翻訳内容に誤りがあれば、手続きは受け付けてもらえず、やり直しになってしまいます。
このように、書類の収集だけでなく、正確な翻訳作業というハードルも越えなければならないのです。
手続きを放置するとどうなる?起こりうる最悪のシナリオ
「手続きが複雑で大変そうだから、少し落ち着いてから…」と、つい後回しにしたくなるお気持ちはよく分かります。しかし、相続手続きを放置してしまうと、時間とともにもっと深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 不動産を売ったり、担保に入れたりできない
不動産の名義が亡くなった方のままでは、その不動産を売却することはできません。また、不動産を担保にして金融機関から融資を受けることも不可能です。いざという時に、大切な資産を活用できなくなってしまいます。 - 相続人が増えて、話し合いがまとまらなくなる
手続きをしないうちに相続人の誰かが亡くなってしまうと、その方の相続人(例えば、亡くなった方の配偶者や子など)が新たに権利を引き継ぎます(これを「数次相続」といいます)。会ったこともない親戚が相続人に加わるなど、関係者がどんどん増えていき、遺産分割の話し合い(遺産分割協議)が非常に困難になるケースは少なくありません。 - 手続きがさらに複雑になり、費用も余計にかかる
数次相続が発生すると、集めなければならない戸籍書類の量も膨大になり、手続きはさらに複雑化します。それに伴い、専門家に依頼する際の費用も高くなってしまう可能性があります。
先延ばしにしても、良いことは一つもありません。問題が小さいうちに、できるだけ早く手続きに着手することが、ご家族全員にとって最も賢明な選択です。
韓国籍の方の相続手続きの基本的な流れと必要書類
それでは、実際に日本の不動産を相続する際の手続きは、どのような流れで進むのでしょうか。ここでは、基本的なステップと、各段階で必要となる主な書類について解説します。手続きの全体像を把握しておきましょう。
Step1:韓国の戸籍等を取得し、相続人を確定する
まず最初に行うのは、亡くなった方の韓国の戸籍(除籍謄本や家族関係登録事項別証明書など)を集め、法律上の相続人が誰なのかを確定させる作業です。
これらの書類は、駐日韓国大使館や総領事館で請求することができます。請求できるのは、本人、配偶者、直系血族(親子や祖父母・孫)とその代理人です。郵送での請求も可能ですが、必要書類の準備や申請書の記入など、慣れない方には少し分かりにくいかもしれません。地域の「民団(在日本大韓民国民団)」を通じて取得を代行してもらうこともできます。
もし亡くなった方が日本に帰化している場合は、日本人としての戸籍謄本だけでなく、帰化する前の韓国の戸籍(除籍謄本)も必要になります。なぜなら、帰化前の韓国籍のときに生まれたお子さんがいないかなどを確認する必要があるからです。このように、ケースごとに集めるべき書類が変わる点も、手続きを難しくする一因です。

Step2:相続人全員で遺産分割協議書を作成する
相続人が確定したら、相続人全員で遺産の分け方について話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。
話し合いがまとまったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」という書類を作成します。この書類には、相続人全員が署名し、実印を押印します。そして、それぞれの印鑑が本物であることを証明する「印鑑証明書」を添付します。
相続人の中に日本に住民登録がない方(海外在住の方など)がいる場合は、日本の印鑑証明書が取得できないため、代わりに現地の公証人が作成した「サイン証明書」などが必要となり、手続きがさらに煩雑になります。
Step3:法務局へ相続登記(不動産の名義変更)を申請する
必要な書類がすべて揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に、不動産の名義変更(相続登記)の申請を行います。申請書に、これまで集めてきた韓国の戸籍関連書類とその翻訳文、遺産分割協議書、日本の役所で取得した書類などをすべて添付して提出します。
- 司法書士の現場から:川崎での実例から見る登記のポイント
以前、当事務所がある川崎市にお住まいだった韓国籍の方の相続登記をお手伝いしたことがあります。川崎にはコリアンタウンもあり、多くの韓国にルーツを持つ方々が暮らしています。そのご依頼も、まさに「日本の不動産をどうすれば…」というご相談から始まりました。
日本人の相続であれば市区町村役場を回って戸籍を集めますが、今回は韓国の戸籍が必要です。駐日韓国大使館へ直接請求する方法もありますが、お急ぎでなければ、地域の「民団(在日本大韓民国民団)」を通じて取得を代行してもらうこともできます。今回はその方法を利用し、戸籍の取得から日本語への翻訳までスムーズに進めることができました。
登記申請の際、一つ注意点があります。外国籍の方のお名前を登記簿に記載する場合、漢字やカタカナ表記のほかに、ローマ字(アルファベット)表記も併記する必要があります。幸い、今回のご相続人様の住民票には漢字氏名とローマ字氏名の両方が記載されていたため、そのまま登記することができました。もし住民票にローマ字表記がない場合は、どのような表記にするかご本人に確認し、私たちが作成することもあります。こうした細やかな実務上の知識と経験が、手続きを円滑に進める上で非常に重要になります。
複雑な手続きは専門家へ。司法書士に依頼するメリットと費用
ここまでお読みいただき、韓国籍の方の相続手続きがいかに専門的で手間のかかるものか、お分かりいただけたかと思います。もちろん、ご自身で手続きを進めることも不可能ではありません。しかし、時間と労力、そして何より精神的な負担を考えると、相続の専門家である司法書士に依頼することも有効な選択肢の一つです。
司法書士に任せれば、面倒な手続きから解放されます
司法書士にご依頼いただく最大のメリットは、煩雑で複雑な手続きのほぼすべてを任せられることです。具体的には、以下のような作業をすべて代行いたします。
- 韓国の戸籍(除籍謄本・家族関係証明書など)の収集
- 収集したすべての書類の日本語への翻訳
- 日本の役所で必要となる書類(住民票、固定資産評価証明書など)の取得
- 法的に有効な遺産分割協議書の作成サポート
- 法務局への相続登記申請
- 金融機関での預貯金の解約・名義変更手続き
平日の昼間に役所や法務局、金融機関へ何度も足を運ぶ必要はありません。慣れない書類の作成に頭を悩ませることもありません。あなたは専門家からの報告を待つだけで、正確かつスムーズに手続きが完了します。大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、少しでも心穏やかに過ごすためにも、専門家の力をぜひご活用ください。
韓国籍の方の相続手続きにかかる費用の目安
専門家に依頼するとなると、やはり費用が気になることでしょう。韓国籍の方の相続手続きを司法書士に依頼した場合の費用は、大きく「司法書士報酬」と「実費」の2つに分かれます。
【司法書士報酬の目安】
不動産の名義変更(相続登記)を含む基本的な手続きで、15万円~が一つの目安となります。ただし、相続人の数、不動産の数や評価額、韓国戸籍の収集・翻訳の難易度などによって変動します。
【実費】
実費とは、手続きに必ずかかる費用のことです。主なものに以下の費用があります。
- 登録免許税:不動産の名義変更時に法務局へ納める税金です。(不動産の固定資産税評価額 × 0.4%)
- 書類取得費用:韓国の戸籍や日本の住民票などを取得する際の手数料です。
- 交通費、郵送費など
当事務所では、ご相談いただいた際に、お客様の状況を詳しくお伺いした上で、通常は事前に見積りを提示します。事情により追加の実費や調査費用が発生する場合がありますので、その際は都度ご説明します。内訳も丁寧にご説明し、ご納得いただいてから手続きを進めますので、どうぞご安心ください。
川崎・横浜でのご相談なら、いがり円満相続相談室へ
韓国籍の方の相続手続きは、法律の知識だけでなく、特殊な書類の取り扱いや実務上のノウハウが求められる専門的な分野です。どの専門家に相談するかで、手続きのスムーズさやご自身の負担は大きく変わってきます。
いがり円満相続相談室(いがり綜合事務所)は、神奈川県川崎市・横浜市を中心に、年間多数の相続手続きをサポートする相続専門の司法書士事務所です。
当事務所の強みは、司法書士である代表の猪狩が、最初のご相談から手続き完了まで、責任をもって一貫して対応させていただくことです。流れ作業のように大量の案件を処理するのではなく、お一人おひとりのご事情や不安な気持ちに寄り添い、最も良い解決策をご提案いたします。(代表:司法書士 猪狩 佳亮/神奈川県司法書士会所属/事務所所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号)
また、お仕事でお忙しい方でもご相談しやすいよう、平日夜間(19時、20時開始)や土日祝日のご相談にも柔軟に対応しております。
「何から手をつけていいか分からない」「自分の場合はどうなるのか詳しく知りたい」
そんな時は、どうぞお一人で悩まず、私たち専門家にお声がけください。あなたの不安な心に「安心」を届け、円満な相続が実現できるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。
まずは、お気軽にお問い合わせください。初回のご相談(事務所でのご面談・60分まで)は無料です。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
