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実家の持分贈与は暦年で!税金と注意点を専門家が事例解説
実家の持分、暦年贈与で移せます【司法書士が解説】
「親が住んでいる実家が、兄弟や親戚との共有名義になっている」「将来のことを考えると、名義を一本化しておきたいけれど、贈与税が高額になるのでは…」
ご親族の高齢化などをきっかけに、このようなお悩みでご相談に来られる方は少なくありません。共有名義の不動産は、将来の売却や相続の際に手続きが複雑になり、思わぬトラブルの原因になることもあります。
この問題を解決する方法の一つが、「暦年贈与(れきねんぞうよ)」を活用して、毎年少しずつ不動産の持分を移転していく方法です。贈与税の負担を抑えながら、計画的に名義を整理することができます。
この記事では、相続・贈与に注力する司法書士の視点から、実家の持分を暦年贈与で移すための具体的な方法、税務署に否認されないための重要な注意点、そして実際の解決事例まで、分かりやすく解説します。
この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の状況に合った最適な方法を見つけるための知識が身につき、具体的な第一歩を踏み出せるはずです。

【解決事例】父と叔父の共有名義だった実家。暦年贈与で解決
具体的なイメージを持っていただくために、まずは当事務所で実際に取り扱ったご相談事例を、ご相談者様の同意のもと、個人が特定されないよう内容を一部変更してご紹介します。
ご相談者様のお悩み
お父様と同居されている息子さんからのご相談でした。現在住んでいる実家の建物が、お父様と、遠方で暮らす叔父様(お父様の弟)の共有名義になっているとのこと。
もともとはお祖父様の名義でしたが、相続が発生した際に、特に深く考えず法定相続分で分割し、兄弟の共有名義にしてしまったそうです。
幸い、叔父様はすでに独立してご自身の家庭を築いており、実家を継ぐ意思はありませんでした。「兄さん(相談者のお父様)に持分を全部譲ってもいいよ」と快く協力してくれるとのこと。しかし、一度にすべての持分を贈与すると、建物の評価額から計算して高額な贈与税がかかってしまうことが判明し、お困りでした。
専門家としての解決策
当事務所では、まず提携している相続に強い税理士と連携し、税務面でのシミュレーションを行いました。その上で、ご相談者様親子と叔父様にご提案したのが、「複数年にわたる暦年贈与」です。
具体的には、贈与税の基礎控除(年間110万円)の範囲内に収まるように持分割合を計算し、複数年かけて叔父様の持分をすべてお父様へ移転する計画を立てました。
この計画で最も重要なのは、税務署から「これは実質的に一度の贈与を分割払いにしただけ(=連年贈与)」とみなされないようにすることです。そのために、私たちは以下の対策を徹底しました。
- 毎年、贈与契約書を新たに作成する
- 毎年、法務局で持分移転の登記手続きを行う
これらの手続きを毎年きちんと行うことで、「毎年、独立した贈与の意思があった」という客観的な証拠を残し、税務上のリスクを最大限に抑えました。結果として、ご家族は贈与税の負担なく、円満に実家の名義をお父様一人にまとめることができ、将来の不安を解消されました。
不動産の持分を暦年贈与する基本
先の事例のように、不動産の持分贈与でよく活用される「暦年贈与」。まずは、その基本的な仕組みについて確認しておきましょう。
年間110万円まで非課税になる「暦年贈与」とは
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に、一人の人が受け取った贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかからないという制度です。この110万円を「基礎控除額」といいます。
重要なポイントは、「贈与を受けた人(受贈者)」を基準に計算されるという点です。例えば、一人の人が父から100万円、母から100万円の贈与を受けた場合、合計で200万円の贈与を受けたことになり、110万円を超えた90万円に対して贈与税が課税されます。
この非課税枠を使って、不動産の評価額のうち110万円分に相当する持分を毎年少しずつ贈与していくのが、不動産の暦年贈与の基本的な考え方です。
不動産評価額から贈与する持分割合を計算する方法
現金と違って、不動産はそのまま「110万円分」を切り分けて渡すことはできません。そこで、不動産の「評価額」を基準に、贈与する持分の割合を計算します。
贈与税の計算で不動産の評価額を出す場合、一般的に土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」を基に計算しますが、ここでは分かりやすくするために、毎年市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」を使うと、おおよその目安を掴むことができます。
具体的な計算方法は以下の通りです。
- ステップ1:不動産の全体の評価額を確認する
固定資産税納税通知書や評価証明書で、贈与したい不動産(土地・建物)の評価額を確認します。 - ステップ2:贈与する持分割合を計算する
贈贈与したい金額(例:110万円)を、不動産全体の評価額で割ります。
【計算例】
実家(建物)の固定資産税評価額が1,000万円の場合
110万円 ÷ 1,000万円 = 0.11
この場合、1年間に建物の持分の「100分の11」(0.11)を贈与すれば、評価額が110万円となり、贈与税はかかりません。
この計算を毎年繰り返すことで、少しずつ持分を移転していくことができます。

一括贈与と暦年贈与、どちらを選ぶ?メリット・デメリット比較
実家の持分を移すにあたり、「時間をかけて暦年贈与にするか」「贈与税を払ってでも一括で贈与するか」は非常に悩ましい問題です。単に税金の安さだけでなく、時間や手間、ご家族の状況といった様々な角度から比較検討することが大切です。
先の事例でも、一括贈与と暦年贈与の両方の選択肢をご提示し、叔父様がまだお若いことなども考慮した上で、最終的にご家族に暦年贈与を選んでいただきました。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
暦年贈与(分割)のメリット・デメリット
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 税金 | 贈与税の負担をゼロか、それに近い金額に抑えられる可能性がある。 | 贈与の途中で贈与者が亡くなった場合、過去の贈与分が相続財産に加算され、相続税がかかる可能性がある(生前贈与加算)。 |
| 時間・手間 | 一度に大きな資金を用意する必要がない。 | ・すべての持分移転が完了するまで長期間かかる。・毎年、贈与契約書の作成と登記申請が必要で、手間と専門家費用がかかる。 |
| 確実性・リスク | 計画的に進められる。 | ・贈与の途中で贈与者が認知症などになると、手続きが中断するリスクがある。・税制改正(例:生前贈与加算の期間延長)の影響を受ける可能性がある。 |
最大のメリットは、やはり贈与税の負担を大きく軽減できる点です。一方で、完了までに時間がかかるため、贈与する方の年齢が高い場合には注意が必要です。2024年からの税制改正で、亡くなる前7年以内に行われた贈与が相続税の対象となる(生前贈与加算)ようになり、このデメリットは以前より大きくなっていると言えます。
一括贈与のメリット・デメリット
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 税金 | 将来、不動産の価値が大幅に上昇すると予想される場合、低い評価額のうちに贈与することで、結果的に税負担を抑えられる可能性がある。 | 一度に多額の贈与税がかかる可能性がある。 |
| 時間・手間 | 一度の手続き(契約書作成・登記)で完了するため、時間と手間がかからない。 | 贈与税の納税資金を準備する必要がある。 |
| 確実性・リスク | ・確実に所有権を移転でき、名義が確定する。・将来の相続トラブルの種を完全に取り除ける。・将来の税制改正の影響を受けない。 | – |
一括贈与の魅力は、一度の手続きでスピーディーかつ確実に名義を移せることです。将来の相続トラブルの心配がなくなり、気持ちの面でもスッキリするでしょう。デメリットは贈与税の負担ですが、「相続時精算課税制度」という別の制度を選択することで、負担を軽減できる場合もあります。
どちらが良いかは、ご家族の年齢、資産状況、そして「何を優先したいか」によって変わってきます。専門家と相談しながら、ご自身に合った方法を慎重に選ぶことが重要です。
税務署に否認されない!暦年贈与4つの鉄則
暦年贈与を行う上で最も気をつけなければならないのが、税務署から「定期贈与(または連年贈与)」とみなされてしまうリスクです。
これは、「毎年110万円ずつ贈与しているように見えるが、実態は最初から合計額(例えば1,100万円)を贈与する約束があり、それを分割で払っているだけだ」と判断されることです。もし定期贈与とみなされると、贈与を開始した年に合計額の贈与があったものとして、多額の贈与税が課されてしまう可能性があります。
そうならないために、「毎年、独立した贈与である」という客観的な証拠を残すことが不可欠です。ここでは、専門家が実践している4つの鉄則をご紹介します。
鉄則1:毎年「贈与契約書」を作成する
口約束での贈与は絶対に避けてください。「毎年、贈与者と受贈者の間で贈与の合意があった」ことを証明する最も重要な証拠が、贈与契約書です。
面倒でも必ず毎年作成し、以下の内容を明確に記載しましょう。
- 贈与契約を締結した日付
- 誰が(贈与者)、誰に(受贈者)
- 何を(どの不動産の持分を、どれだけ)
- いつ、どのように贈与するか
そして、贈与者と受贈者の双方が署名し、実印で押印した上で、大切に保管しておきましょう。私たち司法書士は、こうした契約書の作成もサポートしています。
鉄則2:毎年「所有権移転登記」を行う
不動産の贈与は、契約書を作成しただけでは完了しません。法務局で所有権移転登記(持分移転登記)を行って、初めて第三者にその権利を主張できます。
そして、この登記手続きを「毎年」行うことが、定期贈与とみなされないための強力な証拠となります。契約だけでなく、実際に公的な手続きを毎年行っているという事実は、それぞれの贈与が独立したものであることを客観的に示してくれます。
不動産登記は司法書士の専門分野です。毎年確実に手続きを行うためにも、専門家にご依頼いただくのが安心です。
鉄則3:贈与の時期や金額(持分)を毎年変える
より安全性を高めるための工夫として、贈与の内容を毎年少しずつ変えるという方法があります。例えば、
- 毎年1月15日に行っていた贈与を、ある年は3月10日にする
- ある年は110万円分の持分、次の年は105万円分の持分にする
このように、日付や金額(持分割合)が毎年全く同じだと、「あらかじめ決められた計画通りの分割払い」と見なされるリスクがわずかに高まります。少し変化をつけることで、「毎年、その都度話し合って決めた贈与である」という主張をしやすくなります。

鉄則4:【上級編】あえて111万円贈与し、少額の贈与税申告をする
これは、税務署に贈与の事実を公的に記録として残すための、非常に確実性の高い方法です。
あえて基礎控除額をわずかに超える111万円分の持分を贈与し、贈与税の申告と納税を行うのです。111万円の贈与にかかる贈与税は、計算式((111万円 – 110万円)× 10%)からわずか100円です。
数百円の税金を納める手間はかかりますが、これにより税務署に「〇〇年〇月〇日に、確かに贈与が行われた」という確定した記録が残ります。この記録は、将来の相続税調査などで過去の贈与について指摘された際に、非常に強力な反証となります。否認されるリスクを限りなくゼロに近づけたい場合に有効な方法です。
実家の持分贈与にかかる手続きと費用
実際に持分贈与を進める際の、具体的な手続きの流れと費用の全体像を把握しておきましょう。
手続きの流れ【5ステップ】
持分の暦年贈与は、一般的に以下のステップで進めます。
- 不動産の評価額調査
まずは贈与の対象となる不動産の評価額を正確に把握します。固定資産税評価証明書などを取得します。 - 贈与する持分割合の決定
評価額を基に、その年に贈与する持分の割合を決定します(例:110万円分など)。 - 贈与契約書の作成
贈与者と受贈者の間で、決定した内容に基づき贈与契約書を作成し、署名・押印します。 - 所有権移転登記の申請
必要書類(登記済権利証または登記識別情報、印鑑証明書など)を揃え、法務局に所有権移転登記を申請します。この手続きは司法書士が代理で行うのが一般的です。 - 贈与税の申告(必要な場合)
基礎控除額を超える贈与を行った場合は、翌年の2月1日から3月15日までの間に、税務署へ贈与税の申告と納税を行います。
暦年贈与の場合、このステップ2〜4(場合によっては5)を毎年繰り返すことになります。
贈与税以外にかかる2つの税金と専門家費用
不動産の贈与では、贈与税以外にも以下のような費用がかかります。特に暦年贈与の場合は、これらの費用が毎年発生することになるので注意が必要です。
1. 登録免許税
登記を申請する際に、法務局に納める税金です。贈与の場合の税率は、固定資産税評価額の2%(1000分の20)です。
(例:評価額1,000万円の不動産の100分の11(評価額110万円分)を贈与する場合、110万円 × 2% = 22,000円)
2. 不動産取得税
不動産を取得したことに対して、後日、都道府県から課税される税金です。税率は原則として固定資産税評価額の3%〜4%(土地・建物の種類や時期により軽減措置あり)です。
3. 専門家への報酬
贈与契約書の作成や登記申請を司法書士に依頼する場合の報酬です。また、税務申告を税理士に依頼する場合には別途報酬が必要になります。報酬額は事務所や案件の難易度によって異なります。
これらの費用総額も考慮した上で、贈与計画を立てることが大切です。
実家の持分贈与は専門家への相談が安心です
ここまで見てきたように、実家の持分を暦年贈与で移転する方法は、贈与税の負担を抑える上で非常に有効な手段です。しかし、その一方で、税務署に否認されないための専門的な知識や、毎年の煩雑な法務手続きが不可欠です。

もし、ご自身で手続きを進めた結果、後から「定期贈与」とみなされてしまっては、節税どころか思わぬ追徴課税を受けてしまうことになりかねません。
また、どのくらいの期間で、どのような方法で贈与を進めるのが最適なのかは、ご家族の状況や資産の全体像によって大きく異なります。自己判断で進めてしまう前に、一度専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。
司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所(いがり円満相続相談室)では、不動産登記の専門家である司法書士として、安全・確実な贈与契約書の作成から毎年の登記手続きまで、責任を持ってサポートいたします。また、必要に応じて相続に強い税理士と連携し、税務面も含めた最適なプランをご提案することも可能です。
【事務所情報】
代表司法書士:猪狩 佳亮(神奈川県司法書士会所属)
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号
「うちの場合、暦年贈与と一括贈与、どっちがいいんだろう?」「何から始めたらいいか分からない」といった漠然としたご不安でも構いません。初回のご相談は無料(60分まで)ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。あなたとご家族の「円満」な未来のために、私たちが全力でサポートいたします。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
兄が遺産を開示しない!自分で財産調査する具体的な方法
兄が遺産を開示しない…まず知るべき2つの事実
「父が亡くなった後、実家で同居していた兄が財産をすべて管理しているはずなのに、通帳すら見せてくれない。何を聞いてもはぐらかされ、急に距離ができた気がして…」
大切なご家族を亡くされた悲しみの中、信頼していたはずの兄弟との間に溝ができてしまうのは、本当にお辛いことだと思います。不信感が募り、「自分の権利は守られるのだろうか」と不安を感じている方もいるでしょう。
でも、少しだけ冷静になってみてください。実は、あなたと同じように、他の相続人が遺産を開示してくれずに悩んでいるケースは決して珍しくありません。そして、そのような状況でも、ご自身の正当な権利として遺産の内容を調べる方法はきちんと法律で認められています。
この記事では、相続人が遺産を開示してくれない状況で、ご自身で財産を調査するための具体的な方法を、手順を追って分かりやすく解説します。感情的にならず、客観的な事実を一つひとつ確認していきましょう。そうした疎遠な兄弟との遺産分割問題で感情的な対立を避けるためにも、まずは客観的な事実を明らかにすることが大切です。
なぜ教えてくれない?考えられる理由とあなたの正当な権利
「なぜ、兄は教えてくれないんだろう」と、相手の真意を測りかねているかもしれません。もちろん、「財産を独り占めしたい」という悪意のあるケースも考えられますが、実はそれ以外の理由も少なくないのです。
- 手続きが面倒で、単純に後回しにしている
- 親の財産は長男である自分が管理するのが当然だと思い込んでいる
- 本人も財産の全体像をまだ把握できておらず、聞かれても答えられない
- あなたに対して、何かしらの感情的なわだかまりがある
どのような理由であれ、忘れないでください。あなたには、亡くなった方の財産を正確に知る正当な権利があります。これは法律で認められた相続人としての当然の権利です。ですから、財産調査を始めることに、何のためらいも感じる必要はありません。
重要:相続財産に法的な「開示義務」はないという現実
ここで一つ、非常に重要な事実をお伝えします。それは、原則として、特定の相続人が他の相続人に対して、遺産のすべてを開示する法的な「義務」はないということです。
「権利はあるのに、義務はないの?」と矛盾しているように聞こえるかもしれません。これはつまり、お兄様に対して「財産をすべて見せなさい!」と強く迫っても、法的にそれを強制することは難しい、という現実を意味します。
そのため、相手方との話し合いだけで解決が難しい場合は、ご自身の権利に基づき、法的な手続きに沿って客観的な財産調査を行うことが有効です。
ただし例外として、遺言によって「遺言執行者」に指定されている人には、相続人に対して財産目録を作成し、交付する義務(民法1011条)があります。
自分でできる!相続財産調査の始め方【2ステップ】
「何から手をつければいいか分からない…」という方のために、ここからは財産調査の具体的な手順をシンプルな2ステップで解説します。この順番で進めれば、誰でも着実に調査を進めることができます。相続手続きの第一歩でもある財産調査は、相続人全員が故人の財産を誰も知らない、といった場合でも同様に重要なプロセスです。
- ステップ1:故人の遺品・郵便物から「手がかり」を探す
- ステップ2:相続人であることを証明する「戸籍謄本」を集める
ステップ1:故人の遺品・郵便物から「手がかり」を探す
財産調査の最も重要な初動は、故人の生活の痕跡からヒントを得ることです。たとえお兄様が協力的でなくても、故人のご自宅などで以下のような書類が見つかれば、それが調査の大きな足がかりとなります。

- 預金通帳、キャッシュカード:取引銀行や支店名がわかります。
- 金融機関からの郵便物:取引残高報告書や満期のお知らせなど。
- 固定資産税の納税通知書:毎年4月~6月頃に届き、所有不動産の情報が記載されています。
- 権利証(登記識別情報通知):不動産の登記手続で本人確認手段として用いられる重要書類です。所有者や権利関係は、登記事項証明書で確認します。
- 証券会社からの取引報告書:株式や投資信託の保有状況がわかります。
- 保険会社からのお知らせ:生命保険や火災保険の契約内容がわかります。
- 公共料金の領収書:引き落とし口座の手がかりになります。
たとえ古い情報でも構いません。金融機関名や証券会社名が一つでもわかれば、そこから調査の糸口を掴める可能性があります。詳しくは「故人の隠れた財産?通帳記録から死亡保険金を見つけた事例」も参考にしてください。
ステップ2:相続人であることを証明する「戸籍謄本」を集める
金融機関や法務局で財産調査の手続きをする際には、あなたが正当な相続人であることを証明する必要があります。そのために不可欠なのが、亡くなった方(被相続人)の「出生から死亡まで」の一連の戸籍謄本等です。
「なぜそんなに遡る必要があるの?」と疑問に思うかもしれません。これは、他に相続人がいないこと(例えば、ご自身の知らない間に親が認知した子や養子がいないこと)を公的に証明するために必要だからです。
戸籍は本籍地の市区町村役場で取得しますが、郵送での請求も可能です。また、2024年3月1日から始まった「戸籍の広域交付制度」を利用すれば、最寄りの役所の窓口でまとめて取得できる場合もあります。詳しくは戸籍証明書等の広域交付に関する法務省の解説もご確認ください。
【財産別】具体的な調査方法と必要書類を一覧解説
準備が整ったら、いよいよ財産の種類ごとに調査を進めていきます。ここでは、主な財産である「預貯金」「不動産」「株式・有価証券」、そして見落としがちな「借金」の調査方法を具体的に解説します。これらの調査結果は、後の相続税申告の要否を判断する上でも重要な資料となります。
預貯金の調べ方:残高証明書と取引履歴で全容を掴む
預貯金の調査は、故人が取引していた金融機関に対して行います。通帳や郵便物などの手がかりから金融機関が特定できたら、その窓口で手続きをしましょう。
- 調査先:銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行などの各金融機関
- 請求する書類:①亡くなった日時点の「残高証明書」、②過去の入出金がわかる「取引履歴」
- 主な必要書類:
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本一式
- ご自身の戸籍謄本
- ご自身の実印と印鑑証明書
- ご自身の本人確認書類(運転免許証など)
特に「取引履歴」は、亡くなる直前に不自然な出金がないか、定期的な引き落としから他の契約(保険など)が見つからないかなど、財産の使い込みや隠れた財産を発見する上で非常に重要です。手がかりが全くない場合は、故人の自宅や勤務先の近くにある金融機関に一つひとつ照会をかける「しらみつぶし」の方法もあります。詳しくは「銀行・証券口座の手続き」のページもご覧ください。
不動産の調べ方:名寄帳と新制度「所有不動産記録証明」を活用
故人が所有していた土地や建物を調べるには、二段構えの方法が有効です。
①名寄帳(なよせちょう)の取得
不動産があると思われる市区町村の役所(都税事務所など)で「名寄帳」の写しを取得します。これは、その市区町村内にある同一名義人の不動産を一覧にしたもので、固定資産税の納税通知書に載っていない私道などが見つかる可能性があります。ただし、調査できるのはその市区町村内に限られます。
②所有不動産記録証明制度の利用
2026年2月2日から始まった「所有不動産記録証明制度」は、全国の不動産を調査する際に活用できる制度です。法務局に申請すれば、氏名・住所などの検索条件に該当する全国の登記情報を検索し、該当する不動産を一覧で証明してもらえます。これにより、これまで発見が難しかった遠方の不動産なども把握しやすくなりました。
この新しい制度について、詳しくは法務省のウェブサイトもご確認ください。
参照:所有不動産記録証明制度について|法務省
株式・有価証券の調べ方:「ほふり」への開示請求が鍵
株式や投資信託などの有価証券は、どの証券会社で取引していたか分からないと調査が難しいと思われがちです。しかし、そのような場合に有効な調査方法の一つが「証券保管振替機構(しょうけんほかんふりかえきこう)」、通称「ほふり」への開示請求です。

- 調査先:証券保管振替機構(ほふり)
- 手続き:ウェブサイトから開示請求書を入手し、必要書類を添えて郵送で請求します。
- 結果:後日、「登録済加入者情報」が届き、故人が口座を持っていた証券会社名が一覧で判明します。
証券会社名が判明したら、各社に対して預貯金と同様に「残高証明書」を請求することで、具体的な保有銘柄や評価額がわかります。この方法は一般にはあまり知られていませんが、有価証券調査の切り札と言えるでしょう。詳しくは「株式・株券の名義変更(相続手続き)」のページもご参照ください。
借金の調べ方:信用情報機関への開示請求を忘れずに
プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産調査も重要です。万が一、財産よりも借金が多い場合は、相続放棄を検討する必要があるからです。
- 調査先:信用情報機関(CIC、JICC、KSCの3機関)
- 手続き:各機関のウェブサイト等で定められた方法(主に郵送)で、相続人として情報開示請求を行います。
- 結果:故人のクレジットカードの利用残高や、消費者金融からの借入状況などがわかります。
この手続きにより、予期せぬ負債を抱えるリスクを回避することができます。
調査で判明した書類の読み解き方【3つのポイント】
調査で様々な書類を手に入れても、どこを見ればよいか分からなければ意味がありません。ここでは、財産調査で必ず手にする3つの重要書類について、プロがチェックするポイントを解説します。
通帳の取引履歴:不自然な出金や定期的な引き落としに注目
通帳の取引履歴には、残高確認だけでは分からない重要な情報が含まれています。以下の点に注目してみましょう。
- 死亡日直前の高額な出金:誰が何のために引き出したのか、確認が必要な場合があります。
- 毎月定額の引き落とし:生命保険料やローン返済、賃貸物件の家賃などの可能性があります。知らない契約が見つかるかもしれません。
- 定期的な入金:給与や年金以外に、「配当金」などの記載があれば株式保有の、「家賃」などの記載があれば不動産賃貸の可能性があります。
これらの情報から、さらに調査すべき財産のヒントが見つかることがよくあります。詳しくは「故人の隠れた財産?通帳記録から死亡保険金を見つけた事例」で解説しています。
固定資産税納税通知書:課税明細書で所有不動産を一覧
毎年春に送られてくる固定資産税納税通知書には、「課税明細書」が同封されています。これは、その市区町村が課税している不動産の一覧表であり、優れた財産リストになります。

明細書に記載されている「所在」「地番」「家屋番号」といった情報をもとに、次のステップである登記事項証明書の取得ができます。名寄帳を取得する前の簡易チェックとして非常に役立ちます。詳しくは「相続登記の登録免許税|課税明細書の読み方と計算方法を解説」もご覧ください。
登記事項証明書:「権利部(甲区・乙区)」で権利関係を確認
不動産の公式な情報を証明するのが「登記事項証明書(登記簿謄本)」です。主に3つのパートで構成されています。
- 表題部:土地の地番や面積、建物の種類や構造など、不動産の物理的な状況が記載されています。
- 権利部(甲区):所有者に関する情報が記載されています。「いつ」「誰が」「どのような理由で」所有者になったかがわかります。
- 権利部(乙区):所有権以外の権利、主に抵当権(住宅ローンなど)に関する情報が記載されています。ここに記載があれば、まだ返済中の借金がある可能性を示唆します。
乙区の記載から、昔の抵当権が消されずに残っているケースも見つかることがあります。
財産調査が終わったら?円満な遺産分割と次の一手
調査が完了し、遺産の全体像が明らかになったら、いよいよ相続の本題である遺産の分け方を決めるステップに進みます。この相続手続きを円滑に進めるためのポイントを見ていきましょう。
客観的な「財産目録」をもとに遺産分割協議を行う
まず、調査で判明したすべてのプラス財産(預貯金、不動産など)とマイナス財産(借金など)を一覧にした「財産目録」を作成します。この客観的な資料があることで、感情的な言い争いではなく、事実に基づいた冷静な話し合い(遺産分割協議)が可能になります。
相続人全員で合意した内容は、法的な効力を持つ「遺産分割協議書」として書面に残すことが非常に重要です。この書類が、後の不動産の名義変更や預金の解約手続きで必要となります。
話し合いが困難な場合:家庭裁判所での「遺産分割調停」
残念ながら、当事者同士での話し合いがどうしてもまとまらない、あるいは感情的な対立が深すぎて話し合いにすらならない、というケースもあります。その場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるという選択肢があります。
調停は、裁判官と民間の有識者からなる調停委員が間に入り、中立的な立場で話し合いのとりまとめを手伝ってくれる手続きです。裁判のように勝ち負けを決める場ではなく、あくまで合意を目指す話し合いの場なので、過度に身構える必要はありません。疎遠な兄弟との遺産分割など、直接の対話が難しい場合に有効な手段です。
調査が難しいと感じたら…司法書士に依頼するメリットと費用
ここまでご自身で調査する方法を解説してきましたが、「戸籍集めが大変そう」「平日に役所や銀行に行く時間がない」「手続きが複雑で自信がない」と感じられたかもしれません。その場合は、無理せず専門家を頼ることを検討してください。
私たち司法書士は、相続手続きの専門家です。ご依頼に基づき、戸籍収集、各機関への財産照会、不動産の名義変更(相続登記)など、司法書士が対応できる範囲で手続きを支援することが可能です。専門的な知識に基づいて調査を進めることで、調査漏れのリスクを抑え、手続きにかかる時間的・精神的な負担を軽減できる場合があります。
司法書士に財産調査を依頼した場合の費用は、調査する財産の数や種類によって異なりますが、詳しい料金一覧をご参照ください。ご依頼いただく前には、必ず個別の状況に応じた明確なお見積もりを提示いたしますので、ご安心ください。
一人で抱え込まず、まずは専門家の力を借りるという選択肢があることを知っておいてください。相続財産調査に関する無料相談

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
不動産名義が旧姓のまま相続発生!相続登記と氏名変更を専門家が解説
不動産の名義が旧姓のまま…相続時に問題になる?
「親から相続した実家の名義を見たら、結婚前の旧姓のままだった」「自分も共有で持っている土地があるけれど、そういえば名義は旧姓のままだ…」
相続の手続きを進める中で、このような事実に気づき、ご不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、不動産の名義が旧姓のままになっている場合、そのまま放置しておくことはおすすめできません。特に、法改正によって2026年4月1日からは氏名や住所の変更登記が義務化され、罰則も設けられました。この義務化は、法改正の施行前に氏名や住所の変更が生じていた場合も対象となり、施行日から3年以内に登記を申請する必要があります。相続というタイミングは、こうした長年の懸案事項を整理する絶好の機会です。まずは、なぜ今すぐ対応すべきなのか、その理由から見ていきましょう。
2026年4月に氏名・住所変更登記が義務化!放置はNG
これまで任意だった不動産所有者の氏名や住所の変更登記ですが、不動産登記法の改正により、2026年4月1日から義務化されました。
結婚や離婚などで氏名が変わったり、引っ越しで住所が変わったりした場合、その変更があった日から2年以内に変更登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限内に申請しない場合、5万円以下の過料が科される可能性があります(過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰である罰金とは異なります)。
2024年4月1日から始まった相続登記の義務化とあわせて、不動産の登記情報は常に最新の状態にしておくことが、法律上のルールとなったのです。ご自身の不動産だけでなく、ご家族が所有する不動産の名義についても、この機会に一度確認しておくことが大切です。
旧姓のまま放置する具体的なデメリットとは?
過料という直接的な罰則以外にも、不動産の名義を旧姓のままにしておくことには、実務上のデメリットがあります。
- 将来の売却や担保設定がスムーズに進まない
不動産を売却したり、住宅ローンを組むために金融機関から融資を受け、不動産を担保に入れたりする際には、必ず前提として氏名変更登記が必要になります。いざという時に手続きが滞り、売却のタイミングを逃したり、融資の実行が遅れたりする可能性があります。
こうしたデメリットを避けるためにも、相続を機にきちんと名義を整理しておくことが、将来のご自身やご家族のためになるのです。

【ケース別】旧姓不動産の相続登記、誰の名義でどう手続きする?
「旧姓のままの不動産」といっても、その名義人が誰なのかによって、手続きの進め方は少し異なります。ここでは、代表的な2つのケースに分けて、それぞれどのような手続きが必要になるのかを分かりやすく解説します。
ケース1:亡くなった親(被相続人)の名義が旧姓の場合
亡くなられたお父様やお母様(被相続人)の名義が、婚姻前の旧姓のままになっているケースです。
この場合、原則として、亡くなった方の氏名変更登記を省略して、直接相続人への相続登記を申請することができます。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の中で、登記簿上の氏名(旧姓)から死亡時の氏名までの変遷を証明することが可能です。
ケース2:相続人である自分自身の名義が旧姓の場合
ご自身が相続人であり、かつ、その不動産の一部を以前から所有していて、ご自身の名義が旧姓のままになっているケースです。例えば、親子で共有名義にしていた不動産で、親が亡くなった場合などがこれにあたります。
この場合、まず亡くなった親の持分をご自身に相続する「相続登記」を行います。そして、それと同時に、ご自身の名義を旧姓から現在の姓に変更する「氏名変更登記」を申請することをお勧めします。
この2つの登記は、別々に行うこともできますが、「同時申請(連件申請)」することで、手間や費用を大きく削減できます。次の章で詳しく見ていきましょう。(なお、建物が登記されていないケースについては、未登記建物の相続登記|手続きの流れと必要書類を専門家が解説の記事もご参照ください。)

相続登記と氏名変更登記は「同時申請」で費用と手間を削減!
相続登記と氏名変更登記は、それぞれ別の手続きですが、法務局にまとめて申請する「同時申請(連件申請)」が可能です。相続を機に名義を整理する場合、この同時申請を活用することで、時間・費用・労力のすべてを節約することができます。
なぜ同時申請がお得?別々に手続きした場合との比較
同時申請のメリットは、あらゆる手続きが「一度」で済む点に集約されます。別々に申請した場合と比べて、どれだけ効率的かを見てみましょう。
| 項目 | 同時申請(連件申請)の場合 | 別々に申請した場合 |
|---|---|---|
| 司法書士への依頼 | 1回で済む | 2回依頼が必要(費用が割高に) |
| 必要書類の取得 | 1回でまとめて取得できる | 2回に分けて取得する手間がかかる |
| 法務局への申請 | 1回の申請で完了 | 2回出向く必要がある |
| 登録免許税 | それぞれ必要(※税額は変わらない) | それぞれ必要 |
特に司法書士に依頼する場合、別々のタイミングで依頼すると、その都度相談料や基本報酬が発生し、費用が割高になってしまう可能性があります。同時申請であれば、一連の手続きとしてまとめて依頼できるため、報酬を抑えることにつながります。
また、将来その不動産を売却する際にも、名義が現在の氏名にきちんと整理されていれば、売却手続きもスムーズに進みます。まさに「一石二鳥」の方法と言えるでしょう。
相続を機に行う氏名変更登記の必要書類リスト
氏名変更登記を申請する際に、一般的に必要となる書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 氏名の変更経緯がわかる戸籍謄本
登記簿に記載されている旧姓から、現在の姓までのつながりを証明するために必要です。例えば、婚姻によって姓が変わった場合は、婚姻の事実が記載されている戸籍謄本を提出します。 - 現在の氏名・住所が記載された住民票または戸籍の附票
登記名義人(旧姓のあなた)と、今回申請する人(現在のあなた)が、間違いなく同一人物であることを証明するために必要です。同姓同名の方との混同を防ぐ目的があります。 - 登録免許税
不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります(印紙税ではありません)。例えば、土地1筆と建物1棟であれば、合計2,000円です。
なお、氏名変更登記の申請自体には、権利証(登記識別情報)は原則として不要です。しかし、次に解説するような複雑なケースでは、権利証が非常に重要な役割を果たすことがあります。

【要注意】戸籍の附票や権利証がない場合のリスクと対処法
氏名変更登記の手続きは、必要書類がスムーズに揃えばそれほど難しくありません。しかし、時として「書類が取得できない」という壁にぶつかることがあります。特に注意が必要なのが「戸籍の附票」と「権利証」です。
戸籍の附票が取得できない!どうやって証明する?
「戸籍の附票(こせきのふひょう)」とは、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴が記録された書類です。氏名変更登記では、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを証明するために重要な役割を果たします。
しかし、この戸籍の附票は、市区町村の統廃合や戸籍のコンピュータ化などによって作り替えられることがあります。また、法改正前の保存期間は5年だったため、古い戸籍の附票はすでに廃棄されていて取得できないケースが少なくありません。
もし戸籍の附票が取得できず、住所の変遷を証明できない場合、手続きは一気に複雑になります。具体的には、以下のような複数の書類を組み合わせて、登記名義人と申請人が同一人物であることを法務局に対して証明していく必要があります。
- 不在籍証明書、不在住証明書
- 権利証(登記識別情報)
- 固定資産税の納税通知書
- 実印と印鑑証明書
- 上申書(事情を説明する書類) など
これらの書類をどのように組み合わせれば証明できるかはケースバイケースであり、高度な専門知識が求められます。ご自身で判断して進めるのは非常に困難なため、このような場合は速やかに専門家である司法書士にご相談ください。
相談事例:権利証の活用でスムーズに解決できたケース
ここで、当事務所で実際にあったご相談を、個人が特定されないよう一般化した形で紹介します。まさに、戸籍の附票が取得できずにお困りだったケースですが、あるものが決め手となって無事に解決できました。
【ご相談の概要】
ご相談者は、数十年前に親御様と共有名義で不動産を取得しましたが、当時は未婚だったため、登記名義は旧姓のままでした。先日、親御様が亡くなり、相続の手続きを進めようとしたところ、ご自身の名義が旧姓のままになっていることに気づき、どうすればよいかとご相談にいらっしゃいました。

【当事務所からのご提案と結果】
お話を伺い、亡くなった親御様の持分をご相談者が相続する「相続登記」と、ご相談者ご自身の名義を旧姓から現在の姓へ変更する「氏名変更登記」を同時に進めることをご提案しました。
手続きを進める中で、やはり懸念していた事態が起こりました。氏名変更登記に必要な、ご相談者の旧姓当時の住所が記載された戸籍の附票や住民票が、保存期間の経過によりすでに役所で廃棄されていたのです。
住所のつながりを公的な書類で証明できない状況に、ご相談者も大変ご不安そうでした。しかし、私たちは諦めませんでした。ご相談者にご自宅の書類を丁寧に見直していただいたところ、購入当時に発行された「権利証」を大切に保管されていることが分かりました。
この権利証(登記識別情報)は、不動産の所有者が通常大切に保管する重要な書類であり、これを法務局に提出することで、登記名義人と申請者が同一人物であることの有力な証明手段となります。
結果として、この権利証を添付することで法務局の審査も無事に通り、相続登記と氏名変更登記を一度の手続きで完了させることができました。ご相談者からは「もうダメかと思ったけれど、無事に手続きが終わって本当に安心しました」と、安堵の言葉をいただくことができました。
このように、公的な証明書が取得できない場合でも、権利証のような別の書類で代替できることがあります。ご自身で「もう無理だ」と諦めてしまう前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談いただければと思います。
補足:旧姓のまま登記できる?「旧姓併記制度」とは
「結婚しても、仕事で使っている旧姓のまま登記できないの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
実は、令和6年(2024年)4月1日から、不動産登記簿に現在の氏名とあわせて旧姓を記録できる「旧姓併記制度」が始まりました。これは、戸籍上の氏(現在の姓)のあとに、カッコ書きで旧姓を併記するものです。
例:登記名義人 川崎 花子(旧姓:鈴木)
この制度を利用することで、旧姓での取引関係などを登記簿上で確認できるようになり、本人確認等が円滑に進むといったメリットが期待できます。ただし、これはあくまで現在の氏名に「付け加える」制度です。この記事で解説してきた、登記名義そのものが古い姓のままになっている状態を解消する「氏名変更登記」とは目的が異なりますので、混同しないように注意しましょう。
旧姓不動産の相続登記は、専門家である司法書士にご相談ください
ここまで見てきたように、不動産の名義が旧姓のままになっている場合、相続を機に相続登記と氏名変更登記を同時に行うのが最も合理的です。しかし、特に戸籍の附票が取得できないなど、書類が不足しているケースでは、手続きが非常に複雑になり、専門的な知識と経験が不可欠です。
「自分で戸籍を集めてみたけれど、つながりが分からなくなってしまった」
「平日は仕事で役所や法務局に行く時間がない」
「そもそも、何から手をつけていいか分からない」
このようなお悩みを抱えていらっしゃる方は、どうぞお一人で抱え込まず、私たち「いがり円満相続相談室」にご相談ください。相続と登記の専門家である司法書士が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、適切な解決策をご提案いたします。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの不安な心に「安心」を届け、円満な相続が実現できるよう、サポートいたします。

当事務所が選ばれる理由:初回から司法書士が直接対応
司法書士・行政書士・社会保険労務士 いがり綜合事務所(屋号:いがり円満相続相談室)は、神奈川県川崎市・横浜市を中心に、相続手続きを専門とする司法書士事務所です。年間100件を超えるご相談・ご依頼をいただいております(2023年実績)。
【事務所概要】
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号
代表者:司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)
所属会:神奈川県司法書士会
当事務所では、大量の案件を事務的に処理するのではなく、原則として、司法書士である代表の猪狩が、最初のご相談から手続き完了まで丁寧に対応いたします。お客様一人ひとりのお話にじっくりと耳を傾け、ご不安な点やご不明な点を一つひとつ解消しながら、正確・迅速に手続きを進めます。
また、お忙しい現役世代の方にもご相談いただきやすいよう、平日夜間(19時、20時開始)や土日祝日のご相談にも柔軟に対応(要事前予約)しております。旧姓不動産の相続という複雑な手続きも、安心してお任せください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
自筆証書遺言で相続登記|検認手続きを経て相続登記を申請した解決事例
【司法書士の解決事例】父の遺品から自筆証書遺言が…相続人は疎遠な兄弟
「父が亡くなり、実家の遺品を整理していたら、便箋に書かれた遺言書らしきものが出てきたんです。どうすれば…」
先日、お父様を亡くされたご長男が、少し強張った表情でご相談にいらっしゃいました。
お母様はすでにお亡くなりになっており、相続人はご長男を含めた3人兄弟。お父様は実家で一人暮らしをされていました。ご相談者である長男と、同じ神奈川県内にお住まいの二男とは普段から交流があるものの、三男は九州で働いており、もう何年もほとんど連絡を取っていないとのこと。
発見された遺言書は封筒には入っておらず、誰にも知らされていなかったそうです。
「この遺言書を使って、実家の不動産の名義変更(相続登記)をしたいのですが、何から手をつければいいのか全く分かりません。特に、ほとんど付き合いのない弟に、どうやってこの話を切り出せばいいのか…」
突然見つかった遺言書と、疎遠なご兄弟の存在。手続きを進めたい気持ちと、どう動けばいいか分からない不安が入り混じっているご様子でした。
このようなケースは、決して珍しいことではありません。自筆証書遺言が見つかった場合、たとえご家族であっても、すぐに開封したり、手続きを進めたりすることはできません。法律で定められた正しい手順を踏む必要があります。
この記事では、このご相談事例のように、自宅で発見された自筆証書遺言を使って相続登記を進める手順と、多くの方がつまずきがちな「連絡が取れない相続人がいる」「遺言執行者がいない」といった壁の乗り越え方を、相続専門の司法書士が分かりやすく解説します。
まず落ち着いて!自筆証書遺言を発見したらやるべき最初の一歩
ご自宅などで自筆証書遺言を見つけたら、驚きや戸惑いから、すぐに中身を確認したくなるかもしれません。しかし、まず深呼吸をして、落ち着いて行動することが大切です。間違った対応をしてしまうと、後の手続きが複雑になったり、思わぬトラブルを招いたりする可能性があるからです。
注意:封筒入りの遺言書は、その場で開封しない
もし遺言書が封筒に入っていて、封がされている場合、絶対にその場で開封してはいけません。
法律(民法第1004条3項)では、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人らの立会いのもとでなければ開封できないと定められています。これは、誰かが遺言書を偽造したり、書き換えたりすることを防ぎ、遺言書の状態をそのまま保全するための大切なルールです。
もし、家庭裁判所以外で開封してしまうと、5万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。ただし、万が一開封してしまったとしても、それだけで遺言書が無効になるわけではありませんので、過度に心配せず、正直に専門家へご相談ください。
封筒に入っていない遺言書の場合も、発見時の状態を保つことが重要です。スマートフォンなどで写真を撮っておくと、後々の手続きで役立つことがあります。
最初の手続きは家庭裁判所での「検認」申立て
自筆証書遺言(法務局で保管されていなかったもの)を発見した場合、最初に行うべき法的な手続きが、家庭裁判所での「検認(けんにん)」です。
検認とは、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、日付、署名など、その時点での遺言書の状態を明確にして、偽造・変造を防ぐための手続きです。よく誤解されがちですが、検認は遺言の内容が有効か無効かを判断するものではありません。
この遺言書の検認手続きを経て、「検認済証明書」が付いた遺言書がなければ、不動産の相続登記や、預貯金の解約・名義変更など、ほとんどの相続手続きを進めることができません。つまり、検認は自筆証書遺言を使った相続手続きのスタートラインなのです。
申立ては、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
【3ステップ】遺言書検認から相続登記までの全手順
ここからは、実際に家庭裁判所での検認申立てから、不動産の名義変更(相続登記)が完了するまでの流れを、3つのステップに分けて具体的に解説します。
ステップ1:家庭裁判所へ検認の申立て【約1〜2ヶ月】
検認手続きは、必要書類を揃えて家庭裁判所に申し立てることから始まります。
【主な必要書類】
- 申立書
- 当事者目録(相続人全員のリスト)
- 遺言書のコピー(または原本)
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 収入印紙、郵便切手 など
特に大変なのが、被相続人の出生まで遡る戸籍謄本の収集です。本籍地を何度も変えている方の場合、複数の役所から取り寄せなければならず、非常に手間と時間がかかります。
申立てが受理されると、家庭裁判所から相続人全員に対して、検認を行う日時(検認期日)が記載された通知書が郵送されます。申立てから検認期日までは、おおよそ1ヶ月〜2ヶ月程度かかるのが一般的です。
検認期日当日、申立人は遺言書の原本を持参して家庭裁判所へ行きます。他の相続人は出席してもしなくても構いません。裁判官と書記官の立会いのもと、遺言書が開封され、状態が確認されます。手続き自体は15〜30分程度で終了します。
ステップ2:検認済みの遺言書で相続手続きを開始
検認が終わると、遺言書の原本に「検認済証明書」を付けて返却してもらえます。この証明書付きの遺言書が、相続手続きにおける公的な証明書となります。
しかし、ここで安心してはいけません。前述の通り、検認はあくまで遺言書の「状態」を確認したに過ぎず、その「内容」の有効性を保証するものではありません。
例えば、
- 財産の記載が曖昧で、どの不動産を指しているか特定できない
- 日付や署名、押印がないなど、法律上の要件を満たしていない
- 複数の解釈ができてしまうような表現が使われている
このような場合、せっかく検認を終えても、法務局での登記申請が通らなかったり、金融機関での手続きがストップしてしまったりする可能性があります。この段階で一度、相続の専門家である司法書士に遺言書の内容をチェックしてもらうことをお勧めします。
ステップ3:法務局へ相続登記を申請【約2〜3週間】
いよいよ最終目的である相続登記の申請です。不動産の所在地を管轄する法務局に、登記申請書と必要書類を提出します。
【主な必要書類(遺言書がある場合)】
- 登記申請書
- 検認済証明書付きの遺言書
- 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本、住民票の除票
- 不動産を取得する相続人の戸籍謄本、住民票
- 固定資産評価証明書
- (場合によって)遺言執行者の印鑑証明書や、相続人全員の戸籍謄本など
ここで重要なのが、遺言執行者が指定されているかどうか、そして遺言書の文言です。
遺言書に「長男に〇〇の土地建物を相続させる」と書かれている場合、不動産を取得する相続人が単独で登記申請できます。しかし、「第三者に〇〇の土地建物を遺贈する」と書かれている場合は、原則として他の相続人全員(または遺言執行者)の協力が必要となり、手続きが複雑になります。
なお、2024年4月1日から相続登記の義務化が始まっていますので、遺言書で不動産を取得した方は、原則として3年以内に登記申請を行う必要があります。
参考:相続登記の義務化とは?罰則(過料)や期限を専門家が解説

よくある2つの壁と司法書士による解決策
自筆証書遺言による相続手続きでは、多くの方が2つの大きな壁に直面します。それは「連絡が取れない相続人の存在」と「遺言執行者がいない」ことです。しかし、ご安心ください。どちらの壁も、専門家のサポートがあれば乗り越えることができます。
壁①:疎遠な相続人・連絡が取れない相続人がいる
冒頭の事例のように、相続人の中に疎遠な方や連絡先が分からない方がいると、「どうやって連絡すれば…」「協力してもらえなかったらどうしよう…」と大きな不安を感じると思います。
まず、検認手続きについては心配いりません。申立てに必要な戸籍謄本を収集する過程で、相続人全員の戸籍上の住所が判明します。そして、家庭裁判所がその住所宛に検認期日の通知書を発送してくれるため、申立人が直接連絡を取る必要はありません。相手が出席するかどうかにかかわらず、検認手続きは進められます。
問題は、検認後の手続きです。司法書士にご依頼いただければ、司法書士が専門家として、今後の手続きについて説明するお手紙を作成し、送付するサポートも行っています。
ご自身でいきなり連絡するよりも、専門家が間に入ることで、相手方も状況を冷静に理解し、スムーズに協力してくれるケースがほとんどです。連絡が取れない相続人がいてお悩みの方も、まずはご相談ください。
参考:連絡が取れない相続人がいる…相続登記義務化と相続人申告登記を解説
壁②:遺言書に遺言執行者の指定がない
自筆証書遺言では、遺言の内容を実現する「遺言執行者」が指定されていないことがよくあります。
「遺言執行者がいないと、手続きは進められないの?」と心配になるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
前述の通り、不動産について「相続させる」という内容の遺言であれば、財産を受け取る相続人が単独で登記申請できるため、遺言執行者は不要です。
一方で、「遺贈する」という内容の場合や、預貯金・株式などの手続きで金融機関から遺言執行者を立てるよう求められた場合は、対応が必要になります。この場合、選択肢は2つです。
- ①相続人全員で協力して手続きを行う
- ②家庭裁判所に「遺言執行者選任の申立て」を行う
相続人同士の関係が良好で、協力が得られるのであれば①の方法で進められます。しかし、疎遠な方がいる場合や、手続きが複雑な場合は、家庭裁判所に申立てを行い、司法書士などの専門家を遺言執行者の候補者として選任してもらう②の方法がスムーズです。
どちらの方法がご自身の状況にとって最適か、専門家が客観的な視点からアドバイスいたします。
【重要】遺言内容の通知は忘れずに!
手続きを進める上で、実務上とても大切でありながら、見落とされがちなことがあります。それは、遺言の内容を、財産をもらわない他の相続人にもきちんと知らせることです。
遺言執行者がいれば、その執行者が全相続人に通知する義務を負いますが、いない場合は、主に財産を取得する相続人がその役割を担うことになります。
「どうせ財産はもらえないのだから、知らせなくてもいいだろう」と考えて連絡を怠ると、後になってから「遺言書の存在を知らなかった」「自分の遺留分(最低限の相続分)が侵害されている」といった主張をされ、損害賠償請求などの思わぬトラブルに発展するリスクがあります。
トラブルを未然に防ぐためにも、遺言の内容や今後の手続きについて、誠意をもって通知しておくことが極めて重要です。どのような文面で、どのタイミングで通知すればよいかについても、専門家がしっかりとサポートしますのでご安心ください。
自筆証書遺言の相続登記、手続きは専門家に任せるべき?
ここまで読んで、「思ったより手続きが大変そうだ…」と感じた方も多いのではないでしょうか。「費用を抑えるために自分でできないか」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そこにはいくつかのリスクが伴います。

ご自身で手続きする際のリスクとは
ご自身で手続きを進めようとすると、以下のような壁にぶつかる可能性があります。
- 複雑な戸籍収集:出生まで遡る戸籍の取得は、慣れていないと非常に時間がかかり、途中で挫折してしまう方も少なくありません。
- 遺言書の有効性判断:法的な要件を満たしているかどうかの判断は難しく、不備に気づかないまま進めてしまい、後で手続きがやり直しになることも。
- 相続人とのやり取り:疎遠な相続人との連絡や交渉は、精神的に大きなストレスがかかります。
- 専門的な折衝:法務局や金融機関の担当者とのやり取りでは、専門用語が多く、話がスムーズに進まないことがあります。
- 手続きの長期化:書類の不備や確認作業で何度も役所や法務局に足を運ぶことになり、結果的に時間と労力を大きく消耗してしまいます。
司法書士に依頼するメリットと費用の目安
相続を専門とする司法書士に依頼することで、これらのリスクを回避し、多くのメリットを得ることができます。
- ワンストップで代行:面倒な戸籍収集から、検認申立書類の作成、法務局への登記申請まで、全ての手続きをまとめてお任せいただけます。
- 法的なチェック機能:遺言書の内容を事前に精査し、スムーズに登記が完了するよう、万全の準備を整えます。
- 精神的な負担の軽減:他の相続人への連絡なども、ご意向を伺いながらサポートしますので、精神的な負担が大幅に軽くなります。
- 時間の節約:専門家が正確かつ迅速に手続きを進めるため、ご自身の貴重な時間を本業やお気持ちの整理に充てることができます。
当事務所の遺言書を使った相続登記サポートは、45,000円(税込)~より承っております。もちろん、事案の複雑さによって費用は変動しますが、無料相談の際に、必ず明確なお見積りを提示いたしますのでご安心ください。
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司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所
代表司法書士 猪狩 佳亮
所属:神奈川県司法書士会
住所:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号
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まとめ:複雑な相続手続きは、まず専門家にご相談ください
今回は、ご自宅で発見された自筆証書遺言をもとに、相続登記を完了させるまでの道のりについて解説しました。
遺言書が見つかった場合、まずは慌てずに家庭裁判所の「検認」を受けることが第一歩です。そして、「連絡が取れない相続人がいる」「遺言執行者がいない」といった一見すると高いハードルも、司法書士のような専門家が介入することで、一つひとつ着実にクリアしていくことが可能です。
何より大切なのは、一人で抱え込まないことです。慣れない手続きや疎遠なご親族とのやり取りは、想像以上に心身に負担がかかるものです。
いがり綜合事務所では、代表である司法書士の猪狩が、あなたのお話をじっくりと伺い、不安な心に「安心」を届けられるよう、最適な解決策を一緒に考えます。平日夜間や土日祝のご相談にも対応しておりますので、お仕事でお忙しい方も、まずはお気軽にご連絡ください。
煩雑な手続きは私たち専門家にお任せいただき、あなたは故人を偲ぶ大切な時間をお過ごしください。円満な相続の実現に向けて、私たちが全力でサポートいたします。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
相続放棄したら生命保険金はもらえない?専門家が解説
【ご相談事例】相続放棄をしたいけど、母が遺してくれた生命保険金は受け取れますか?
先日、お母様を亡くされた長女の方から、このようなご相談がありました。
「母が亡くなりました。母には借金こそありませんが、財産もそれほど多くありません。それに、正直なところ兄とあまり折り合いが良くなく、遺産分割の話し合いをするのが精神的に辛いので、相続放棄を考えています。
ただ、一つだけ気がかりなことがあります。母が、私のために生命保険をかけてくれていたようなのです。もし私が相続放棄をしてしまったら、この死亡保険金も受け取れなくなってしまうのでしょうか…?」
お兄様との関係や将来のことを考え、相続という手続き自体を避けたいというお気持ち。その一方で、お母様が遺してくれた最後の愛情ともいえる生命保険金は、何とか受け取りたい…。その切実な想いがひしひしと伝わってきました。
このようなご心配を抱えている方は、決して少なくありません。そして、このご相談に対する私の答えは、明確です。
ご安心ください。相続放棄をしても、お母様があなたを受取人に指定してくれていた生命保険金は、問題なく受け取ることができます。
ただし、注意すべき点もあります。特に、お母様が入院されていた場合に受け取れる「医療保険の給付金」などは、安易に受け取ってしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。
この記事では、相続放棄をしても生命保険金を受け取れる理由から、注意すべき保険金の種類、税金の問題まで、相続の専門家である司法書士が分かりやすく解説します。あなたの不安が少しでも軽くなるよう、丁寧にご説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
ご安心ください。相続放棄をしても生命保険金は受け取れます
まず、読者の皆様が一番知りたい結論からお伝えします。亡くなった方の借金などの理由で相続放棄について手続きをしたとしても、ご自身が受取人に指定されている生命保険金(死亡保険金)は受け取ることができます。
「相続をすべて放棄するのだから、保険金ももらえなくなるのでは?」と心配されるお気持ちはよく分かります。しかし、法律上、生命保険金は特別な扱いを受けるため、相続放棄の影響を受けないのです。その理由を詳しく見ていきましょう。

なぜ?生命保険金が「相続財産」にならない理由
生命保険金(死亡保険金)が相続放棄をしても受け取れる最大の理由は、それが「相続財産」ではなく、「受取人固有の財産」だからです。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、仕組みはシンプルです。
- 相続財産とは:亡くなった方(被相続人)が所有していた預貯金、不動産、株式などのプラスの財産や、借金などのマイナスの財産のことです。
- 生命保険金とは:保険契約に基づいて、保険会社から「受取人」として指定された人に対して直接支払われるお金のことです。
つまり、生命保険金は、一度亡くなった方の財産になってから相続人に渡されるのではなく、保険会社から受取人へダイレクトに支払われます。亡くなった方の財産を経由しないため、そもそも「相続財産」にはあたらないのです。
相続放棄は、あくまで「相続財産」のすべてを引き継がないという手続きです。したがって、相続財産ではない生命保険金は、相続放棄をしても問題なく受け取ることができる、というわけです。
保険金を受け取った後でも相続放棄は可能です
「保険金を受け取る前に、相続放棄の手続きを済ませないといけないの?」というご質問もよくいただきます。この点もご安心ください。生命保険金を受け取った後からでも、相続放棄の手続きは問題なく行えます。
相続放棄ができなくなるのは、「相続財産を処分した」とみなされる行為をした場合です。例えば、亡くなった方の預金を解約して使ってしまったり、不動産を売却してしまったりすると、相続する意思があるとみなされ(法定単純承認)、原則として相続放棄は認められません。
しかし、先ほどご説明したとおり、生命保険金は受取人固有の財産です。そのため、これを受け取る行為は「相続財産の処分」にはあたりません。ですから、安心して保険金の請求手続きを進めていただいて大丈夫です。
要注意!受け取ると相続放棄できなくなる保険金とは?
「生命保険金は受け取れる」と聞いて安心されたかもしれませんが、ここで一つ、非常に重要な注意点があります。保険金の中には、受け取ってしまうと相続放棄ができなくなる可能性が高いものがあるのです。
この違いを知らずに手続きを進めてしまうと、「借金を放棄するはずが、できなくなってしまった」という取り返しのつかない事態になりかねません。どのようなケースに注意が必要か、具体的に見ていきましょう。

【要注意】医療保険の入院給付金・手術給付金
最も注意が必要なのが、医療保険から支払われる入院給付金や手術給付金です。
亡くなる前に入院や手術をされていた場合、これらの給付金を請求できる権利が発生していることがあります。しかし、この権利は誰のものでしょうか?
死亡保険金の受取人は相続人など特定の人が指定されていますが、医療保険の入院給付金などの受取人は、原則として「被保険者」、つまり亡くなった方ご本人です。
亡くなった方が受け取るはずだったお金(請求権)は、その方の「相続財産」となります。したがって、相続人がこの給付金を請求し、受け取ってしまうと、「相続財産を処分(取得)した」とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性が極めて高いのです。
死亡保険金と医療保険の給付金は、まったく性質が異なるものだとご理解ください。
保険金の受取人が「亡くなった本人」になっているケース
頻繁にあるケースではありませんが、死亡保険金の契約内容自体に注意が必要な場合もあります。それは、死亡保険金の受取人が「被相続人(亡くなった方)本人」と指定されているケースです。
この場合、死亡保険金はまず亡くなった方の財産となり、それを相続人が引き継ぐ形になるため、「相続財産」として扱われます。したがって、この保険金を受け取ってしまうと、相続放棄はできなくなります。
「そんな契約があるの?」と思われるかもしれませんが、保険契約を見直さないまま時間が経ってしまっている場合などに、このような設定になっている可能性もゼロではありません。保険金を受け取る前には、必ず保険証券などで「受取人」が誰になっているかを確認することが非常に重要です。
解約返戻金を受け取るのも「相続」とみなされます
亡くなった方が契約者となっていた保険を解約し、「解約返戻金」を受け取る行為も、相続財産の処分とみなされます。
解約返戻金は、保険契約という財産的な価値を持つ権利から生じるお金であり、これも「相続財産」の一部です。相続放棄を検討している場合は、絶対に保険の解約手続きを行ってはいけません。
もし保険料の引き落としが続いているなどの事情があっても、自己判断で解約するのではなく、まずは専門家にご相談ください。
生命保険金以外にも!相続放棄しても受け取れるお金
相続放棄をしても、相続人の生活を守るために受け取れるお金は、生命保険金だけではありません。ただし、これらは原則的な話であり、個別の契約内容や会社の規定によって取り扱いが異なる場合があるため、注意が必要です。法律上、相続財産とはみなされないものをいくつかご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。

死亡退職金・弔慰金
亡くなった方が会社員だった場合、勤務先の会社から死亡退職金や弔慰金(ちょういきん)が支払われることがあります。
これらの金銭も、会社の規程などで「死亡した従業員の遺族(配偶者や子など)」が受取人として明確に定められている場合は、遺族固有の権利とされ、相続財産には含まれません。したがって、相続放棄をしても受け取ることができます。
ただし、会社の規程に受取人の定めがなく、「本人に支払う」とされている場合などは、相続財産と判断される可能性もあります。判断に迷う場合は、勤務先の規程を確認した上で、専門家に相談することをおすすめします。
遺族年金・未支給年金
遺族年金や未支給年金も、相続財産には含まれません。
- 遺族年金:国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。これは遺族の生活を保障するための制度であり、法律によって受給権者が定められているため、遺族固有の権利となります。
- 未支給年金:亡くなった方が受け取るはずだったまだ受け取っていない年金のことです。これも年金法の規定に基づき、一定の範囲の遺族が自己の権利として請求できるものであり、相続財産ではありません。
当事務所の代表は司法書士・行政書士に加えて社会保険労務士の資格も有しておりますので、こうした年金関係の手続きについてもワンストップでサポートすることが可能です。
香典・葬祭費・埋葬料
お葬式の際に受け取る香典は、法律上、葬儀の主宰者(喪主)に対する贈与と解釈されるため、相続財産にはあたりません。
また、国民健康保険や社会保険から支払われる葬祭費・埋葬料なども、実際に葬儀を行った人(喪主など)に対して支払われる費用であり、亡くなった方の財産ではないため、相続放棄をしても受け取ることができます。
相続放棄後の生命保険金と税金の関係【知らないと損をします】
ここまで読んで、「相続放棄をしても生命保険金はもらえるし、相続財産じゃないなら税金もかからないんだな」と思われたかもしれません。しかし、ここにも大きな落とし穴があります。
民法上は「相続財産ではない」生命保険金ですが、税法上は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象になるのです。そして、相続放棄をすることで、税金面で大きなデメリットが生じる場合があります。
相続税の対象になる「みなし相続財産」とは?
「みなし相続財産」とは、本来の相続財産ではないものの、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取る財産であり、実質的に相続で財産を取得したのと同じ効果があることから、相続税の計算に含めましょう、という税法上の考え方です。生命保険金や死亡退職金は、この「みなし相続財産」の代表例です。
つまり、「民法(相続放棄のルール)」と「税法(相続税のルール)」では、財産の扱い方が違うという点を理解しておく必要があります。この複雑さが、専門家によるサポートが必要となる大きな理由の一つです。
【重要】相続放棄をすると生命保険金の非課税枠は使えない
ここが最も重要なポイントです。生命保険金には、相続人の生活保障などの観点から、税金の負担を軽くするための非課税枠が設けられています。
生命保険金の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
しかし、この非課税枠を使えるのは、原則として「相続によって財産を取得した相続人」だけです。相続放棄をした人は、法律上「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、原則としてこの非課税枠を適用することができません。個別の事案により詳細な判断が必要な場合は、税理士等の専門家にご確認ください。
具体例で見てみましょう。
【例】
- 法定相続人:子2人(長男、長女)
- 死亡保険金の受取人と金額:長女が2,000万円
- 長男は相続し、長女は相続放棄をしたケース
<非課税枠の計算>
法定相続人は長男と長女の2人なので、非課税限度額は「500万円 × 2人 = 1,000万円」です。<相続税の課税対象額>
- もし長女が相続放棄をしなかった場合:
受け取った保険金2,000万円から非課税枠1,000万円を差し引けるため、課税対象は1,000万円となります。- 長女が相続放棄をした場合:
非課税枠が使えないため、受け取った保険金2,000万円の全額が相続税の課税対象となります。
このように、相続放棄をするかどうかで、相続税の課税対象となる金額が大きく変わってしまう可能性があるのです。もちろん、相続財産全体の金額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば相続税はかかりませんが、保険金の額が大きい場合や、他に財産がある場合には注意が必要です。
自己判断は危険!相続放棄と保険金のご相談は専門家へ
ここまでお読みいただき、相続放棄と生命保険金の関係について、ご理解が深まったことと思います。しかし同時に、「受け取っていいお金とダメなお金の見極めが難しい」「税金のことが複雑でよく分からない」と感じられたのではないでしょうか。
その感覚は、まったくもって正しいものです。これらの判断を専門知識なしに行うことには、大きなリスクが伴います。大切なご家族が遺してくれた財産を確実に受け取り、ご自身の未来を守るためにも、ぜひ私たち専門家にご相談ください。
安全な財産の受け取りと確実な相続放棄を両立させるために
専門家にご相談いただく最大のメリットは、「うっかり財産に手をつけてしまい相続放棄が認められなくなる」というリスクを大幅に低減できることです。私たちは、どの保険金が受け取れるものなのかを法的な観点から正確に判断し、安全な手続きをナビゲートします。
当事務所は、相続手続きに関して豊富な相談・解決実績があり、同様のケースを数多く取り扱ってまいりました。あなたの「借金は放棄したいけれど、遺してくれた保険金は受け取りたい」という想いに寄り添い、その実現に向けて私たちが全力でサポートいたします。
複雑な税金計算や申告もワンストップで対応します
相続放棄後の生命保険金にかかる相続税の問題は、非常に専門的です。当事務所では、相続案件に精通した税理士と緊密に連携しておりますので、相続税の計算や申告が必要になった場合でも、ワンストップでスムーズに対応が可能です。
「司法書士に相談して、次は税理士を探して…」といったお手間は一切かかりません。法務から税務まで、安心してお任せいただける体制を整えています。
川崎・横浜で相続のご相談なら「いがり円満相続相談室」へ
司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所(屋号:いがり円満相続相談室)は、川崎市・横浜市を中心に、これまで多くの皆様の相続手続きをお手伝いしてまいりました。私たちは、大量の案件を機械的に処理するのではなく、司法書士である代表の猪狩 佳亮(神奈川司法書士会所属)が、原則として最初のご相談から手続き完了まで一貫して担当し、お一人おひとりに寄り添った丁寧なサポートをお約束します。(事務所所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号)
お仕事で日中お忙しい方のために、平日夜間や土日祝日のご相談にも柔軟に対応しております。
「こんなことを聞いてもいいのだろうか?」とためらう必要はまったくありません。どんな些細なご不安でも、まずはお気軽にお聞かせください。あなたの心が少しでも軽くなるよう、全力でサポートいたします。
まずは初回無料相談(60分)をご利用ください。ご連絡を心よりお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
相続登記を司法書士に依頼するメリットは?自分でやる場合との違い
相続登記、自分でやろうとしていませんか?実は9割の方が知らない落とし穴
「親が遺してくれた大切な不動産、相続登記の手続きが必要になった。でも、専門家に頼むと費用がかかりそうだし、なんとか自分でできないだろうか…」
このようにお考えになるのは、とても自然なことです。費用を少しでも抑えたいというお気持ちは、私もよく分かります。
しかし、その一歩を踏み出す前に、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。実は、ご自身で相続登記を進めようとした方の多くが、予想外の壁にぶつかり、途中で挫折してしまうという現実があるのです。
相続登記は、単に書類を作成して提出するだけの簡単な作業ではありません。法律の専門知識を必要とする複雑な手続きであり、多くの時間と大変な労力がかかります。さらに、2024年4月からは相続登記が義務化され、正当な理由なく手続きを怠ると10万円以下の過料が科される可能性も出てきました。
この記事では、ご自身で手続きを進める場合と、私たち司法書士にご依頼いただく場合の違いを徹底的に比較し、司法書士に依頼する本当のメリットをお伝えします。この記事を読み終える頃には、あなたにとって最善の選択肢がきっと見つかるはずです。
「自分でやれば無料」は本当?自分でやる場合と司法書士依頼の費用・時間比較
多くの方が「自分でやれば費用はかからない」と思いがちですが、残念ながらそれは誤解です。ご自身で手続きを行う場合でも、必ず必要になる「実費」が存在します。ここでは、費用、時間、手間、そして精神的な負担という4つの観点から、両者を比較してみましょう。

| 比較項目 | 自分でやる場合 | 司法書士に依頼する場合 |
|---|---|---|
| 費用 | 実費のみ(登録免許税、書類取得費など) | 実費 + 司法書士報酬(事案により異なりますが、目安として当事務所では7万円~15万円程度を想定するケースが多くあります。正確な金額は初回相談後に見積りします) |
| 時間 | 数十時間~(調査、書類収集、作成、法務局とのやり取りなど) | 数時間~(司法書士との打ち合わせ、書類への署名押印など) |
| 手間 | 非常に多い(役所・法務局への複数回の訪問、複雑な書類作成) | 非常に少ない(基本的に司法書士に任せられる) |
| 精神的負担 | 大きい(手続きの不安、不備への懸念、期限への焦り) | 小さい(専門家に任せる安心感) |
自分でやる場合の費用内訳と隠れたコスト
ご自身で相続登記を行う場合、司法書士への報酬はかかりませんが、以下の費用(実費)は必ず発生します。
- 登録免許税:不動産の固定資産税評価額の0.4%
- 書類取得費用:戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書など(数千円~数万円)
- その他:法務局や役所への交通費、郵送費など
そして、最も見落とされがちなのが、「あなたの貴重な時間と労力」という目に見えないコストです。平日の昼間に何度も役所や法務局に足を運んだり、慣れない法律書類の作成に頭を悩ませたり…その時間は、本来、お仕事やご家族と過ごすために使えたはずの時間ではないでしょうか。単純な金額だけでは測れない、大きな負担が隠れているのです。
司法書士に依頼した場合の費用相場とサービス範囲
司法書士に相続登記を依頼した場合、上記の「実費」に加えて「司法書士報酬」が発生します。報酬額は事案の難易度によって異なりますが、一般的には7万円~15万円程度が目安です。
「やっぱり高いな…」と感じるかもしれません。しかし、この費用には、以下のような専門的なサービスがすべて含まれています。
- 相続人の調査・確定(複雑な戸籍謄本の収集)
- 相続財産の調査
- 法的に有効な遺産分割協議書の作成サポート
- 正確な登記申請書の作成
- 法務局への登記申請代理
- 登記完了後の権利証(登記識別情報)の受け取り
つまり、相続登記に関わる煩雑で専門的な手続きのほぼすべてを、あなたに代わって正確かつ迅速に進めるための費用なのです。当事務所の具体的な費用については、料金一覧のページでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
当事務所に寄せられる「自分でやろうとして挫折した」方のリアルな声
「費用を抑えたくて、自分で相続登記を始めたのですが…」
そう言って当事務所の無料相談にお越しになる方は、決して少なくありません。皆様、最初は「なんとかなるだろう」と思ってスタートされるのですが、現実の壁は想像以上に高く、厚いようです。
ある方は、平日に休みを取って法務局の相談窓口へ向かいました。しかし、そこで告げられたのは「相談は予約制です」という一言。その日は予約の案内だけで終わり、貴重な一日が無駄になってしまったそうです。しかも、次の予約が取れるのは数週間も先…。
また、別の方は、相続人がご兄弟や甥・姪にまで及ぶ複雑なケースでした。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集めるだけでも一苦労。本籍地が全国に点在していたため、各役所とのやり取りに心身ともに疲れ果ててしまった、と話してくださいました。
「相続した不動産を早く売却したいのに、手続きが進まない」
「やっと書類を提出したと思ったら、法務局から何度も不備の連絡が…。電話で説明されても、何がどう間違っているのか全く理解できない」
「最近話題のAIに登記申請書を作らせてみたら、あっけなく補正(修正指示)になった」
これらは、すべて当事務所に寄せられたご相談からの一例です。皆様、貴重な時間と労力を費やした結果、途方に暮れて専門家のもとを訪れます。当事務所にご相談いただくことで、戸籍収集や法務局対応などの負担を軽減できる可能性があります。まずは状況を確認させてください。
時間だけじゃない!司法書士に依頼する5つの本質的なメリット
司法書士に依頼するメリットは、単に「時間が節約できる」だけではありません。手続きの正確性、精神的な負担の軽減、そして将来的なリスク回避といった、お金には代えがたい本質的な価値があります。

①複雑な戸籍収集から解放される
相続手続きの最初の関門が「戸籍謄本の収集」です。亡くなった方(被相続人)の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本をすべて集めなければならず、これだけでも大変な作業です。
特に、相続人が兄弟姉妹や甥・姪になる場合は、さらに複雑になります。亡くなった方の両親の出生から死亡までの戸籍も必要になるなど、収集範囲が格段に広がり、数十通もの戸籍を集めるケースも珍しくありません。これらの膨大で煩雑な作業から、完全に解放されることは大きなメリットです。
②正確な遺産分割協議書で将来のトラブルを防ぐ
相続人が複数いる場合、誰がどの財産を相続するかを話し合い、「遺産分割協議書」を作成します。この書類は、単なる話し合いのメモではありません。法的に効力を持つ重要な契約書です。
例えば、不動産の所在や地番などを登記簿どおりに正確に記載しなければ、登記申請は受け付けてもらえません。記載内容に曖昧な点や不備があると、後になって「そんなつもりじゃなかった」と親族間のトラブルに発展する火種にもなりかねません。司法書士が作成する正確な遺産分割協議書は、円満な相続を実現し、将来の紛争を未然に防ぐための「お守り」にもなるのです。
③登記漏れや関連手続きのミスがなくなる
ご自身で手続きをすると、私道(公衆用道路)の持分や、登記されていない建物(未登記建物)など、見落としがちな財産の登記が漏れてしまうリスクがあります。私たちは、市区町村が管理する「名寄帳」などを取り寄せて財産調査を行うため、こうした登記漏れを確実に防ぎます。
また、相続登記には、亡くなった方の住所が登記簿上の住所と異なる場合の「住所変更登記」や、住宅ローンを完済している場合の「抵当権抹消登記」など、付随する手続きが必要になることがよくあります。これらの関連手続きもまとめてワンストップで対応できるため、手続きのミスや漏れがなくなります。
④法務局との煩雑なやり取りをすべて任せられる
法務局の窓口は平日の日中しか開いていません。お仕事をされている方にとっては、相談や申請のために時間を確保するだけでも一苦労です。また、無事に申請できたとしても、書類に不備があれば法務局から連絡があり、対応に追われることになります。
司法書士にご依頼いただければ、これらの法務局との専門的で煩雑なやり取りはすべて私たちが代理で行います。あなたは、平日の貴重な時間を削られることも、慣れない役所とのやり取りにストレスを感じることもありません。
⑤【専門家が解説】「補正力」こそが司法書士の真価
以前、ある法務局の登記官の方と話をする機会がありました。その方が、こんなことをおっしゃっていたのが非常に印象的です。
「ご本人で申請されるのと、司法書士の先生が代理で申請されるのとの一番の違いは、『補正力』にあるんですよ」
「補正」とは、提出した書類に不備があった場合に、法務局から来る修正指示のことです。ご自身で申請された場合、この補正の連絡があると、多くの方が混乱してしまいます。電話で説明を受けても内容が理解できず、再び平日に法務局へ出向かなければならないことも少なくありません。
一方で、私たち司法書士が代理申請した場合、万が一補正の指示があったとしても、登記官との専門用語でのやり取りが可能です。「先生、ここの書類のこの部分をこう直してください」と電話一本で連絡が来れば、私たちはその内容を即座に理解し、スムーズに対応できます。この迅速かつ的確な「補正力」こそが、手続きを滞りなく、最短で完了させるためのプロの技なのです。この安心感は、司法書士に依頼する大きな価値と言えるでしょう。
こんな方は司法書士への依頼を強くおすすめします
ご自身の状況と照らし合わせて、一つでも当てはまるものがあれば、司法書士への相談を積極的にご検討ください。それは、あなたにとって時間的にも精神的にも、そして結果的に経済的にもメリットの大きい選択となる可能性が高いです。
- ✅ 平日は仕事が忙しく、役所や法務局に行く時間が取れない
- ✅ 相続人の数が多かったり、疎遠な親族がいたりする
- ✅ 法律の専門的な書類を読むことや作成することに苦手意識がある
- ✅ 手続きに時間をかけず、できるだけ早く確実に終わらせたい
- ✅ 相続した不動産の売却を考えている
- ✅ 自分で手続きを進めることに少しでも不安やストレスを感じる
- ✅ 相続登記以外にも、預貯金の解約など、やるべきことがたくさんある
いがり綜合事務所が選ばれる理由|円満相続への最短ルート
川崎市・横浜市を中心に数多くの相続手続きをお手伝いしてきた当事務所には、皆様に選んでいただける理由があります。それは、単に手続きを代行するだけでなく、お客様一人ひとりの心に寄り添い、円満な相続の実現を全力でサポートする姿勢です。
代表司法書士が一貫対応。安心のマンツーマンサポート
当事務所では、大量の案件を事務的に処理するようなことは決していたしません。最初のご相談から手続き完了まで、代表司法書士である猪狩が責任をもって一貫して対応いたします。途中で担当者が変わることはありませんので、どんな些細なことでも安心してご相談いただけます。
また、お仕事をされている方でもご相談しやすいよう、平日夜間(19時、20時開始)や土日祝日のご相談にも柔軟に対応しております。あなたのご都合に合わせて、じっくりとお話をお伺いします。

費用を抑えたい方もご相談ください。柔軟なプランをご提案
「専門家に頼みたいけれど、やっぱり費用が心配…」という方も、どうぞご安心ください。
当事務所では、すべてをお任せいただく「フルサポートプラン」だけでなく、お客様のご希望やご状況に合わせて、柔軟なプランをご提案することが可能です。
例えば、「戸籍謄本の収集は自分で頑張ってみるので、その後の専門的な書類作成と申請だけをお願いしたい」といったご要望にもお応えできます。ご自身でできる部分を担っていただくことで、司法書士報酬を抑えることが可能です。
無料相談では、まず何から手をつけるべきか、どこまでを自分で行い、どこからを専門家に任せるのがベストなのか、といった手続き全体の「交通整理」をさせていただきます。費用についても明確にご提示しますので、まずはお気軽にお話をお聞かせください。
まとめ|相続登記の悩みは、まず無料相談から始めませんか?
相続登記は、今や法律で定められた「義務」です。しかし、それ以上に、ご家族が遺してくれた大切な財産をご自身の名義にし、未来へとつないでいくための重要な手続きです。
ご自身で進めることも不可能ではありませんが、そこには多くの時間と労力、そして専門的な知識の壁が立ちはだかります。もし少しでも不安を感じるなら、専門家である司法書士に任せるのが、最も安全・確実、そして結果的に効率的な解決策です。
当事務所は、あなたの不安な心に寄り添い、円満な相続が実現できるよう、誠心誠意サポートいたします。煩雑な手続きは私たちプロにお任せいただき、あなたは故人を偲ぶ大切な時間をお過ごしください。
「何から相談していいか分からない」という方も、もちろん大歓迎です。まずはお話をお伺いすることから始めましょう。
お電話またはお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
【事務所情報】
司法書士・行政書士・社会保険労務士 いがり綜合事務所
代表司法書士:猪狩 佳亮
所属:神奈川県司法書士会
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
連絡が取れない相続人がいる…相続登記義務化と相続人申告登記を解説
【相談事例】連絡がつかない相続人が…相続登記できずお困りではありませんか?
「昭和の時代に亡くなった祖父の名義のままになっている、田舎の土地があるんです。相続人の一人とどうしても連絡が取れなくて、遺産分割協議が全く進みません…」
最近、このようなご相談が非常に増えています。多くの方が、2024年4月から始まった相続登記の義務化のニュースを見て、「3年以内に登記しないと10万円以下の過料(罰金)が科される」という点に、大きな不安と焦りを感じていらっしゃいます。
「価値がある土地ならまだしも、正直、誰も欲しがらないような田舎の土地。できれば相続放棄したかったけれど、亡くなってから何十年も経っていて、今さら放棄もできない。かといって、連絡のつかない相続人がいるせいで登記もできない。このままだと、私たちは罰金を払うしかないのでしょうか…?」
お気持ちは痛いほどよく分かります。ご自身ではどうにもできない状況で、法律上の義務だけが迫ってくる。本当に途方に暮れてしまいますよね。
でも、ご安心ください。まだ打つ手はあります。
この記事では、あなたと同じように連絡が取れない相続人がいてお困りの方のために、相続登記義務化の罰則を回避するための一つの有効な手段である「相続人申告登記」という制度について、専門家が分かりやすく解説します。
この記事を最後までお読みいただければ、今の不安な状況を乗り越えるための具体的な次の一歩が見えてくるはずです。一人で抱え込まず、一緒に解決策を探していきましょう。
相続登記の義務化とは?まず現状を正しく理解しましょう
まずは、皆さまの不安の根源となっている「相続登記の義務化」について、正確に理解することから始めましょう。制度を正しく知ることで、過度な不安が和らぎ、冷静に対処できるようになります。
いつから?何をしないといけないの?
相続登記の義務化は、2024年(令和6年)4月1日からスタートしました。これにより、不動産を相続した方は、「ご自身のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記を申請することが法律上の義務となりました。
重要なポイントは、この義務は過去に発生した相続にも適用されるという点です。つまり、法律が施行された2024年4月1日より前に亡くなった方の不動産で、まだ相続登記が済んでいないものも対象となります。この場合、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記を申請する必要があります。
より詳しい内容は「相続登記の義務化とは?罰則(過料)や期限を専門家が解説」のページでも解説していますので、併せてご覧ください。
本当に罰金(過料)を払うことになるの?
「3年以内に登記しないと10万円以下の過料」と聞くと、とても不安になりますよね。しかし、期限を過ぎたら即座に過料が科されるわけではありません。
法律では、「正当な理由」なく申請を怠った場合に、過料の対象となると定められています。
そして、法務省の見解では、この「正当な理由」には以下のようなケースが含まれるとされています。
- 相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
- 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
- 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
- 他の相続人によるDVや、他の相続人から音信不通の状態にあり、協力を得られないケース
つまり、「相続人の一人と連絡が取れず、遺産分割協議ができない」という状況は、この「正当な理由」に該当する可能性が十分にあるのです。ですから、ただちに過料の心配をする必要はありません。まずは落ち着いて、できることから対策を始めましょう。
参考:【法務省/相続登記の義務化】不動産を相続したらかならず …
相続人申告登記とは?義務化を回避する一つの選択肢
「正当な理由」があるとはいえ、何もしないでいるのは不安ですよね。そこで、具体的な解決策の一つとして登場するのが「相続人申告登記」という新しい制度です。これは相続登記の義務化と同時にスタートしました。
この制度は、一言でいえば、「ひとまず、私が相続人の一人であることを法務局に申し出ておきます」という手続きです。この申出をしておくことで、相続登記の申請義務を履行する一つの手段とされ、過料を免れることができます。
遺産分割協議がまとまらない、連絡が取れない相続人がいる、といった事情で、すぐに相続登記ができない場合に利用できる、いわば「緊急避難的」な措置と考えると分かりやすいでしょう。
相続登記との違いは?
従来の「相続登記」と、新しい「相続人申告登記」は、目的も効果も全く異なります。その違いをしっかり理解しておくことが重要です。
| 相続登記(通常の登記) | 相続人申告登記 | |
|---|---|---|
| 目的 | 不動産の所有権を確定的に移転する | 相続登記の申請義務を一時的に履行する |
| 効果 | 権利関係が確定し、売却や担保設定が可能になる | 権利関係は確定しない(売却等は不可) |
| 申請者 | 相続人全員の協力が必要(遺言等除く) | 相続人が単独で申請可能 |
| 費用(登録免許税) | かかる(固定資産税評価額の0.4%) | かからない。ただし、戸籍や住民票の取得実費、専門家への報酬などは別途必要です。 |
一番の大きな違いは、相続登記が不動産の権利を確定させる「本番」の手続きであるのに対し、相続人申告登記はあくまで義務を果たすための「仮」の報告に過ぎないという点です。
連絡が取れない相続人がいても申請できる?
はい、申請できます。これこそが、相続人申告登記の最大の利点です。
通常の相続登記は、遺産分割協議に基づいて行うため、原則として相続人全員の協力(実印と印鑑証明書)が必要です。だからこそ、連絡が取れない相続人が一人でもいると、手続きがストップしてしまうのです。
しかし、相続人申告登記は、ご自身の判断で、ご自身お一人だけで申請することができます。他の相続人の同意も、実印も、印鑑証明書も一切不要です。
「他の親族に迷惑はかけられない」「自分だけでも、まずやるべきことをやっておきたい」
そうお考えの方にとって、この制度はまさに希望の光となるはずです。
相続人申告登記のメリットと注意すべきデメリット
一人でも申請できる相続人申告登記は非常に便利な制度ですが、実行する前にはメリットとデメリットの両方をしっかり理解しておく必要があります。専門家として、良い面だけでなく注意すべき点も誠実にお伝えします。

メリット:まずは罰則(過料)のリスクを回避できる
相続人申告登記のメリットは、何と言ってもその手軽さにあります。
- 過料のリスクを回避: この申出をすることで、相続登記の申請義務を果たしたとみなされ、ひとまず安心できます。
- 手続きが比較的簡単: 後述しますが、通常の相続登記に比べて集める書類が少なく、手続きの負担が軽いのが特徴です。
- 費用がかからない: 通常の相続登記で必要となる登録免許税(不動産の価格に応じた税金)が、相続人申告登記ではかかりません。戸籍謄本などの取得実費のみで手続きが可能です。
まずは3年という期限のプレッシャーから解放され、落ち着いて根本的な解決策に取り組むための時間を確保できるのが最大のメリットです。
【重要】デメリットと注意点
一方で、この制度はあくまで「一時しのぎ」であることから生じるデメリットも存在します。以下の点を必ずご理解ください。
- 根本的な解決にはならない: 相続人申告登記をしても、不動産の所有権が誰になるか決まったわけではありません。いずれ遺産分割協議を成立させ、最終的な相続登記を行う必要があります。いわば「二度手間」になる可能性はあります。
- 不動産の売却や担保設定はできない: この申出では、登記簿上の所有者は亡くなった方のままです。そのため、その不動産を売却したり、住宅ローンの担保に入れたりすることはできません。
- 固定資産税の通知が届く可能性がある: 相続人申告登記をすると、登記官から市町村役場へその旨が通知されます。これにより、これまで他の相続人に届いていた固定資産税の納税通知書が、申出をしたあなたに届くようになる可能性があります。
特に3点目は重要です。申出をする前に、その不動産の固定資産税が年間いくらくらいなのかを把握しておくことをお勧めします。
相続人申告登記の手続きの流れと必要書類
では、実際に相続人申告登記を行う場合、どのような流れで進めるのでしょうか。具体的なステップと必要書類を見ていきましょう。
ステップ1:必要書類を集める
相続人申告登記に必要な書類は、主に以下の3点です。
- 申出書: 法務局のホームページからダウンロードできます。
- 申出人が被相続人の相続人であることが分かる戸籍謄本等: ここがポイントですが、通常の相続登記に比べて戸籍収集の負担が軽くなる場合が多いものの、亡くなった方と申出人との関係性によっては、複数の戸籍謄本が必要になることもあります。亡くなった方の死亡が確認できる戸籍謄本と、申出をするご自身がその相続人であることが分かる戸籍謄本があれば足ります。通常の相続登記に比べ、戸籍収集の負担が大幅に軽減されています。最近では便利な「戸籍謄本の広域交付制度とは?相続手続きでの使い方と注意点」も利用できます。
- 申出人の住所を証明する書類: 住民票の写しなどが必要です。
ステップ2:申出書を作成し、法務局へ提出する
書類が集まったら、申出書を作成します。申出書には、対象となる不動産の情報を正確に記入する必要があります。不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)や、固定資産税の納税通知書に記載されている不動産の情報を見ながら、間違いのないように記載しましょう。
作成した申出書と必要書類を、不動産の所在地を管轄する法務局へ提出します。法務局の窓口へ直接持っていく方法のほか、郵送で提出することも可能です。
参考:相続人申告登記について
相続人申告登記はゴールではない!根本的な解決に向けて
相続人申告登記を無事に終え、過料の心配がなくなると、ひとまず肩の荷が下りるかと思います。しかし、これはあくまでスタートラインです。本当のゴールは、遺産分割協議をまとめて、不動産の名義をきちんと相続人へ移すことです。
相続人申告登記で確保した時間を使って、根本的な解決に向けて一歩ずつ進んでいきましょう。

連絡が取れない相続人を探す方法
まずは、連絡が取れない相続人の現在の住所を調べることから始めます。専門家は以下のような方法で調査を行います。
- 戸籍の附票(ふひょう)を取得する: 戸籍の附票とは、その人の住所の履歴が記録されている書類です。本籍地のある役所で取得でき、現在の住民票上の住所を突き止めることができます。
- 手紙を送ってみる: 住所が判明したら、まずは手紙を送って連絡を試みます。その際は、こちらの事情を丁寧に説明し、遺産分割協議への協力をお願いする内容にします。いきなり法律的な要求を突きつけるのではなく、あくまで「ご相談」という形でアプローチすることが大切です。普通郵便で反応がなければ、相手が受け取ったことが記録される内容証明郵便を利用することも有効です。
ご自身でこれらの調査を行うことも可能ですが、戸籍の読み解きや附票の取得は慣れていないと時間と手間がかかります。このような調査は、私たち司法書士のような専門家にご依頼いただくことも可能です。
どうしても連絡がつかない場合の法的手続き
手紙を送っても返信がない、あるいは住所地に住んでいる気配がないなど、どうしても連絡がつかない場合は、家庭裁判所を利用した法的な手続きを検討することになります。
- 不在者財産管理人の選任申立て: 相続人が行方不明の場合に、その人の代わりに財産を管理し、遺産分割協議に参加する「不在者財産管理人」を家庭裁判所に選んでもらう手続きです。
- 遺産分割調停の申立て: 相手の住所は分かっているものの、話し合いを無視されたり、協議がまとまらなかったりする場合に、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを進める手続きです。
これらの手続きは、申立てに専門的な書類作成が必要となり、時間も費用もかかります。どの手続きが最適かは状況によって異なるため、実行する前には必ず司法書士などの専門家にご相談ください。
まとめ:一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください
連絡が取れない相続人がいる中での相続手続きは、精神的なご負担が本当に大きいものです。相続登記の義務化というプレッシャーも加わり、八方ふさがりのように感じてしまうかもしれません。
今回ご紹介した「相続人申告登記」は、そうした状況を打開するための、まず取り組むべき有効な一手です。この手続きでひとまず義務化の期限をクリアし、落ち着いて次のステップに進むことができます。
以前、当事務所にご相談に来られた方で、まさに同じような状況で悩んでいらっしゃるケースがありました。
【当事務所での解決事例】
ご相談者様は、何十年も前に亡くなった祖父名義の田舎の土地について、法定相続人が12名もいる上、そのうちの一人と全く連絡が取れない状況でした。相続放棄もできず、義務化の過料に怯えていらっしゃいました。
まず、私たちは「過料の適用時期は個々の事情で異なりますが、2024年4月1日より前に開始した相続については、2027年3月31日という一つの期限が設けられています。今から準備すれば十分間に合います」とお伝えし、安心いただくことから始めました。
その上で、まずは当事務所で相続人調査を行い、連絡が取れない方へ丁寧な手紙をお送りしましたが、残念ながらお返事はありませんでした。そこで、ご相談者様と連絡の取れた他の相続人様からご依頼をいただき、当事務所で相続人申告登記の手続きを代行しました。これにより、皆様の過料のリスクを低減することができました。
もちろん、これが根本的な解決ではないこと、将来的に固定資産税の通知が届く可能性があることなども丁寧にご説明し、ご納得いただいた上で手続きを進めました。今後は、不在者財産管理人の選任も視野に入れ、最終的な相続登記に向けたサポートを継続していく予定です。
このように、専門家が介入することで、複雑に絡み合った糸を一つひとつ解きほぐしていくことが可能です。
相続人申告登記はあくまで一時しのぎであり、その先の遺産分割協議や法的な手続きには、専門的な知識と経験が不可欠です。「自分の場合はどうすればいいんだろう?」と少しでも迷われたら、どうか一人で抱え込まず、私たちにご相談ください。
いがり綜合事務所(所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号、代表司法書士:猪狩 佳亮、所属:神奈川県司法書士会)では、初回のご相談は無料で承っております。まずは現状をお話しいただくだけで、気持ちが楽になり、やるべきことが明確になるはずです。川崎市・横浜市を中心に、皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
遺言書と生命保険を組み合わせた生前対策【司法書士の解決事例】
「全財産を妻に」その想い、遺言書だけでは叶わないかもしれません
「私が生涯をかけて築いた財産は、すべて愛する妻に遺したい」
「特に、この思い出の詰まった自宅だけは、妻が安心して住み続けられるようにしてあげたい」
ご相談にいらっしゃる多くの方が、このような切実な想いを抱えていらっしゃいます。そして、その想いを実現するために「遺言書」を作成しようと考えられます。
しかし、もしあなたに離婚歴があり、前妻との間にお子さんがいらっしゃる場合、遺留分の影響で希望どおりにならない可能性があるため、個別状況の確認が必要です。
たとえ遺言で全財産を特定の人に遺しても、配偶者や子など法定の遺留分権利者は、基礎財産(相続財産のほか一定の贈与等を含む)をもとに遺留分を請求できます。具体的計算は個別事情により変わります。もし遺留分請求が行われた場合、現金が不足すれば不動産の換価(売却)などの対応が必要になり得ます。換価以外にも分割や交渉による解決方法があるため、早めの検討が重要です。
この記事では、そのような最悪の事態を避け、あなたの「遺す想い」と「遺されるご家族の生活」の両方を守るための具体的な対策について、当事務所で実際に解決した事例をもとに、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。
【解決事例】遺留分請求で自宅売却の危機…生命保険で円満解決へ
遺言書と生命保険を組み合わせることで、どのように未来のトラブルを防ぐことができるのか。まずは当事務所にご相談くださったAさんの事例をご紹介します。

ご相談内容:離婚歴のあるAさん、後妻Bさんに全財産を遺したいが…
ご相談に来られたAさんは60代の男性。10年前にBさんと再婚し、穏やかな日々を過ごされていました。Aさんには離婚した前妻との間に息子Cさんがいますが、長年疎遠な状態が続いていました。
Aさんの財産は、現在Bさんと暮らしているご自宅(評価額4,000万円)と、預貯金(2,000万円)の合計6,000万円。Aさんはご自身の亡き後、Bさんがお金に困ることなく、今の自宅に住み続けてほしいと心から願っており、「全財産を妻Bに相続させる」という内容の遺言書を作成しようと考えていました。
しかし、Aさんには大きな不安がありました。
「もし私が亡くなった後、息子のCが遺留分を請求してきたらどうなるだろうか。預貯金だけでは支払いきれず、Bに家を売らせることになってしまうのではないか…」
このAさんの不安は、残念ながら現実になる可能性が非常に高いものでした。対策を何もしなかった場合、どのような未来が待っているのでしょうか。
対策なしの最悪シナリオ:遺言を書いても自宅を売るしかなくなる可能性
もしAさんが何の対策もしないまま亡くなられた場合、残されたBさんは非常に厳しい状況に立たされます。
【遺言書がない場合】
法定相続分に従い、妻Bさんが2分の1(3,000万円)、子Cさんが2分の1(3,000万円)を相続します。Aさんの預貯金は2,000万円しかないため、Cさんに3,000万円を渡すには、Bさんは自宅を売却して現金を作るしかありません。
【遺言書だけの対策をした場合】
「全財産を妻Bに相続させる」という遺言書は法的に有効です。しかし、子Cさんには遺留分(法定相続分のさらに2分の1)を請求する権利があります。Cさんの遺留分は、総財産6,000万円 × 法定相続分1/2 × 遺留分割合1/2 = 1,500万円となります。
(注)上記の計算は簡易例です。実際の遺留分額は『基礎財産』(相続財産に加え一定の贈与などを含む)を基に算定されるため、生前贈与や遺贈があると金額が変わります。
Cさんが遺留分侵害額請求を行うと、BさんはCさんに現金で1,500万円を支払わなければなりません。Aさんの遺産である預貯金は2,000万円ありますが、そこから1,500万円を支払うと、Bさんの手元に残る現金はわずか500万円。今後の生活費や固定資産税の支払いなどを考えると、とても心もとない金額です。
結局、Bさんは将来の生活不安から、Aさんが遺してくれた思い出の自宅を売却せざるを得なくなる可能性が極めて高いのです。Aさんの「妻に自宅で安心して暮らしてほしい」という一番の願いが、皮肉にも脅かされてしまうのです。
解決策:遺言書+生命保険で「遺す想い」と「遺される家族」両方を守る
そこで当事務所がAさんに提案したのは、遺言書の作成とあわせて、生命保険を活用するという方法でした。
当事務所が対応した事例(匿名化・抽象化しています)では、Aさんの状況を丁寧にお伺いした上で、具体的な対策をご提案しました。
専門家からの提案
まず、Aさんの「全財産を妻Bに相続させる」という想いを尊重し、その内容で公正証書遺言を作成することにしました。遺言書自体は有効ですし、もしCさんが遺留分請求をしてこなければ、Aさんの想い通りに実現できます。
その上で、万が一の遺留分請求に備えるため、預貯金2,000万円の一部(例えば1,000万円)を使って、Aさんを被保険者とする生命保険に加入することをお勧めしました。保険金の受取人は、妻Bさんに指定します。
この対策に期待できる主な効果は、以下の通りです。
遺留分の対象財産を減らせる
預貯金1,000万円が生命保険に変わることで、遺留分計算の基礎となる財産は、不動産4,000万円+預貯金1,000万円=5,000万円に減少します。これにより、Cさんが請求できる遺留分の額も「5,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,250万円」に減額できます。

なぜ生命保険が遺留分対策の有効なツールなのか?
なぜ、生命保険がこれほどまでに有効な遺留分対策となるのでしょうか。その理由は、生命保険金が持つ法的な性質にあります。
ポイント1:死亡保険金は「受取人固有の財産」
相続が発生した際に支払われる死亡保険金は、亡くなった方(被相続人)の財産ではなく、保険金受取人に指定された人の「固有の財産」とされています。これは、保険契約に基づいて受取人が直接保険会社から受け取るお金だからです。
そのため、死亡保険金は原則として遺産分割協議の対象となる「相続財産」には含まれません。つまり、他の相続人に分ける必要がなく、受取人が全額を受け取ることができるのです。これが、遺留分対策において生命保険が極めて強力なツールとなる最大の理由です。
ポイント2:遺留分を支払う「現金」を準備できる
Aさんの事例のように、財産の大部分が不動産というケースは少なくありません。不動産は価値が大きい一方で、すぐに現金化できないというデメリットがあります。
遺留分侵害額請求をされると、原則として現金で支払わなければなりません。手元に現金がない場合、不動産を売却してでも支払う義務が生じます。
生命保険に加入しておくことで、相続発生と同時に、受取人はまとまった現金を手にすることができます。これにより、遺留分を請求されても不動産を売却することなく、スムーズに金銭で解決することが可能になるのです。まさに「転ばぬ先の杖」として、遺されるご家族の生活を守るための大切な資金となります。
注意点:保険金が遺留分の対象になる例外的なケースとは?
原則として遺留分の対象外となる生命保険金ですが、注意すべき例外的なケースも存在します。
過去の判例(最高裁平成16年10月29日判決)では、死亡保険金の額が相続財産全体に対してあまりにも大きく、相続人間で著しく不公平な結果を生む場合には、その保険金も「特別受益」に準ずるものとして、遺留分の計算に含めるべき、と判断される可能性が示されました。
例えば、相続財産が1,000万円しかないのに、特定の相続人を受取人とする1億円の生命保険がかけられていた、といった極端なケースが想定されます。
どの程度のバランスであれば問題ないかは、個別の事情によって判断が異なるため、一概には言えません。だからこそ、ご自身の状況に合わせた最適な保険金額を設定するためにも、自己判断で進めるのではなく、相続に詳しい専門家に相談することが非常に重要です。
遺言を確実に実現する「遺言執行者」の重要性
遺言書を作成し、生命保険にも加入した。これで万全だ、と思われるかもしれません。しかし、もう一つ、あなたの想いを確実に実現するために欠かせない重要な役割があります。それが「遺言執行者」です。
遺言執行者とは、その名の通り、遺言書に書かれた内容を法的に実現するために、必要な手続きを執行する権限を与えられた人のことです。
なぜ専門家を遺言執行者に指定すべきなのか?
遺言執行者は、遺言書の中で指定することができます。相続人の中から指定することも可能ですが、Aさんの事例のように相続人間で利害が対立する可能性があるケースでは、法律専門職(司法書士など)を指定しておくことを強くお勧めします。
なぜなら、遺言執行者は相続人への通知や財産の調査・分配手続きなど多くの手続きを行いますが、それらの手続きにはさまざまな法的知識が必要になるとともに、遺言執行者には多くの法的義務・責任が課されているからです。
また、財産を受け取る側の相続人(例えば妻Bさん)が遺言執行者を兼ねてしまうと、他の相続人(子Cさん)から「手続きを不当に進めているのではないか」と疑念を抱かれ、新たなトラブルの火種になりかねません。その点、第三者である専門家が遺言執行者であれば、感情的な対立を排し、法律に則って淡々と、かつ正確に手続きを進めることができます。これにより、残されたご家族の精神的な負担を大きく軽減し、円滑な相続を実現できるのです。
司法書士に依頼するメリットと費用相場
遺言執行者には、弁護士や司法書士といった法律の専門家が就任することが一般的です。特に、Aさんのように相続財産にご自宅などの不動産が含まれる場合、司法書士を遺言執行者に指定するメリットは非常に大きいと言えます。
なぜなら、司法書士は不動産登記の専門家であり、遺言執行手続きの最終段階で必要となる不動産の名義変更(相続登記)まで、ワンストップでスムーズに対応できるからです。他の専門家に依頼した場合、別途司法書士を探して登記を依頼する必要があり、手間も費用も余計にかかってしまいます。
遺言執行者に支払う報酬は、遺産の額や手続きの複雑さによって異なり、個別のお見積りとなります。決して安い金額ではありませんが、あなたの最後の想いを確実に実現し、遺されるご家族を未来の紛争から守るための必要不可欠なコストと考えることができます。

まとめ:最適な遺留分対策は専門家との二人三脚で
今回は、遺言書だけでは防ぎきれない「遺留分」のリスクと、その最も有効な対策である「生命保険」の活用法について、実際の事例をもとに解説しました。
- 遺言書だけでは、遺留分請求によって自宅を売却せざるを得ない可能性がある。
- 生命保険金は「受取人固有の財産」であり、原則として遺留分の対象にならない。
- 遺留分相当額の生命保険に加入することで、不動産を守り、円満な相続が実現できる。
- 遺言の内容を確実に実現するためには、中立的な専門家を「遺言執行者」に指定することが重要。
遺留分対策は、ご家族構成や財産状況によって、最適な方法が異なります。今回ご紹介した生命保険の活用も、保険金額の設定などを誤ると、かえってトラブルの原因となる可能性もゼロではありません。
あなたの想いを最も良い形で未来へ繋ぐために、そして何より、遺される大切なご家族が安心して暮らしていくために。ぜひ一度、相続の専門家にご自身の状況をお聞かせください。私たち専門家が、あなたと共に考え、最適な解決策をご提案させていただきます。
初回相談は無料です|川崎・横浜の相続は当事務所へご相談ください
いがり円満相続相談室は、川崎市・横浜市を中心に、相続手続き・生前対策のご相談に多数対応してまいりました。(運営:司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所/代表 司法書士 猪狩 佳亮/神奈川県司法書士会所属/所在地:神奈川県川崎市川崎区宮前町12番14号 シャンボール川崎505号)
当事務所の特徴は、原則として司法書士である代表の猪狩が、お客様のご相談に最初から最後まで直接対応させていただくことです。流れ作業のような対応は一切いたしません。お一人おひとりのご事情や想いを丁寧にお伺いし、ご家族にとって最善の解決策をご提案いたします。
事前予約制にて、平日夜間(19時、20時開始など)や土日祝日のご相談にも対応しておりますので、お仕事でお忙しい方も、まずはお気軽にご連絡ください。ご家族の未来を守るための第一歩を、私たちが全力でサポートいたします。
初回のご相談は無料です。下記のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
相続不動産の評価額で対立!解決策と放置するリスクを解説
「実家の価値」で兄弟と対立…なぜ不動産の評価額は揉めるのか?
「兄さんは実家に住み続けるからいいけど、私たちは現金で公平にもらいたい」「この家の価値は、そんなに低いはずがない」
親御様が大切に残してくれたはずの実家をめぐり、相続人である兄弟姉妹の間で意見が食い違い、話し合いが前に進まなくなってしまう…。相続のご相談では、このようなケースが後を絶ちません。
なぜ、相続不動産の評価額はこれほどまでに揉めてしまうのでしょうか。その背景には、主に2つの根深い原因があります。ご自身の状況を客観的に見つめ直すためにも、まずはその原因から理解していきましょう。
立場が違えば希望額も違う「同床異夢」
相続不動産の評価額で対立が生まれる最大の原因は、相続人それぞれの立場によって、不動産に対する「思惑」がまったく異なるからです。
- 不動産を相続して住み続けたい相続人(例:長男)
他の相続人に対して、不動産の価値に応じた「代償金」を支払う必要があります。そのため、不動産の評価額はできるだけ低くしたいと考えます。評価額が低ければ、支払う代償金を抑えられるからです。 - 不動産は不要で、現金で公平に分けたい相続人(例:長女・次男)
不動産を相続する兄弟から受け取る「代償金」や、不動産を売却した場合の「売却代金」が自分の取り分になります。そのため、評価額はできるだけ高くしたいと考えます。評価額が高ければ、もらえるお金が増えるからです。
同じ不動産を見ているはずなのに、片や「安く」、片や「高く」と、真逆のゴールを目指している状態です。これでは、話し合いが平行線をたどってしまうのも無理はありません。

どの数字を信じる?4つの異なる「不動産の価格」
対立をさらに複雑にするのが、不動産の価格には「唯一絶対の正解」がないという事実です。一般的に、不動産の価格を示す指標には、主に以下の4つがあります。
| 評価指標 | 概要 | 価格水準の目安 |
|---|---|---|
| ①実勢価格(時価) | 実際に市場で売買される価格。不動産会社が周辺の取引事例などを基に査定する。 | 100% |
| ②公示地価 | 国が公表する土地の標準的な価格。公共事業の用地取得価格の基準になる。 | 地域・時期により異なるが、一般に実勢価格に近い水準で公表されることが多い |
| ③相続税路線価 | 相続税や贈与税を計算するために国税庁が定める価格。 | 一般に実勢価格より低めに設定される傾向があるが、比率は地域・年次で変動 |
| ④固定資産税評価額 | 固定資産税などを計算するために市町村が定める価格。3年に1度見直される。 | 一般に実勢価格より低めに評価されることが多いが、その差は地域・時期で変動 |
このように、目的の異なる複数の「価格」が存在するため、「どの価格を基準にするか」で意見が分かれてしまうのです。例えば、家に住み続けたい相続人は「税金の計算に使う固定資産税評価額を基準にすべきだ」と主張し、現金が欲しい相続人は「実際に売れる価格である実勢価格を基準にすべきだ」と主張する、といった具合です。
評価額の対立を放置する末路|起こりうる3つの最悪シナリオ
「そのうち誰かが折れるだろう」「時間が解決してくれるかもしれない」
不動産評価額の対立は、精神的にも負担が大きく、つい問題を先送りにしたくなるかもしれません。しかし、この問題を放置することは、想像以上に深刻な事態を招く可能性があります。
シナリオ1:遺産分割協議が進まず、預貯金も引き出せない
不動産の評価額が決まらないと、遺産の総額が確定できません。その結果、遺産分割協議そのものが完全にストップしてしまいます。
これは、不動産だけの問題ではありません。亡くなった方の預貯金の解約・払戻しや、株式・投資信託の名義変更など、他の相続手続きも進めることが難しくなります。遺産分割協議書には、すべての相続財産の分け方を記載し、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要だからです。
いつまでも預貯金が引き出せないままでは、ご自身の生活にも影響が出かねません。
シナリオ2:相続税の申告遅延で、無駄な税金(加算税・延滞税)が発生
相続に関する手続きで最も注意すべきなのが、相続税の申告・納付期限です。この期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められており、遺産分割協議がまとまっていなくても待ってはくれません。
もし、この期限までに申告・納付が間に合わないと、
- 本来の税額に加えて「無申告加算税」が課される
- 納付が遅れた日数に応じて「延滞税」が課される
といったペナルティが発生し、本来払う必要のなかった税金を負担することになります。さらに、遺産分割が未了のまま申告(未分割申告)をすると、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった大幅な節税につながる特例が使えません。
評価額の対立を長引かせた結果、数百万円、数千万円単位で損をしてしまう可能性もあるのです。
シナリオ3:感情的な対立が激化し、家族関係が崩壊
お金の問題以上に深刻なのが、家族関係の破綻です。最初は不動産の評価額という事務的な話だったはずが、話し合いが長引くにつれて、「昔から兄さんばかり優遇されていた」「お前は親の面倒を何も見てこなかったくせに」といった過去の不満や感情的なしこりが噴出し、収拾がつかなくなるケースは少なくありません。
お互いへの不信感が募り、やがて憎しみ合う関係にまで発展してしまうと、その亀裂を修復するのは非常に困難です。お金では決して取り戻すことのできない、最も悲しい結末と言えるでしょう。
【解決策】不動産評価額の対立を円満に解決する3ステップ
では、どうすればこの困難な状況を乗り越え、円満な解決に至ることができるのでしょうか。感情的な対立を避け、客観的な事実に基づいて冷静に話し合うための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:複数の不動産会社から査定書を取得する
まず、議論の土台となる客観的な判断材料を集めることが重要です。1社だけの査定では、その価格が妥当なのか判断が難しいため、できれば3社程度の不動産会社に査定を依頼し、査定価格とその根拠が記載された「査定書」を取得しましょう。
このとき、相続人がそれぞれバラバラに査定を依頼すると、「自分に都合の良い査定額を持ってきた」と相手に不信感を与えかねません。相続人同士で合意の上、代表者がまとめて依頼するか、全員立ち会いのもとで査定を依頼するなど、プロセスを共有することで公平性を保つことが大切です。
これにより、相続人全員が「おおよその相場観」を共有することができます。
ステップ2:客観的な資料を基に、評価額の着地点を探る
集めた複数の査定書や、固定資産評価証明書などの客観的な資料をすべてテーブルの上に並べ、相続人全員で冷静に話し合います。感情論ではなく、「どの資料を基準に、いくらと評価するのが最も合理的か」という視点で着地点を探っていきましょう。
例えば、以下のような方法が考えられます。
- 複数の査定額の平均値を取る
- 最も高い査定額と最も低い査定額の中間の金額で合意する
- 査定額の平均と、固定資産税評価額などを考慮して調整する
遺産分割における不動産の評価方法に、法律上の決まりはありません。相続人全員が納得し、合意できれば、どのような価格を基準にしても良いのです。
とはいえ、当事者だけではどうしても感情的になりがちです。そんなときは、司法書士のような相続の専門家が第三者として間に入ることで、冷静な話し合いを促進し、法的な観点から公平な解決策をご提案することも可能です。
ステップ3:合意が難しい場合は不動産鑑定士に依頼する
どうしても当事者間での合意が難しい場合の最終手段として、国家資格者である不動産鑑定士による「鑑定評価」があります。
不動産鑑定士が作成する「不動産鑑定評価書」は、専門家による詳細な評価であり、裁判所や税務署等で重要な参考資料として扱われることが多いです。ただし、評価の前提や手法が争点となる場合には異論が出ることもあります。この評価額を基準とすることで、争いに終止符を打つ有力な材料となり得ます。
ただし、不動産鑑定の費用は通常30万円~50万円程度が相場とされますが、物件によって大きく変動します。作成期間も数週間から1ヶ月以上かかる場合があるため、これはあくまで最終手段と考え、できる限りステップ2までの話し合いで解決を目指すのが望ましいでしょう。

【相談事例】評価額2,500万円と1,200万円の対立はどう解決した?
当事務所に寄せられた、実際の相談事例をご紹介します。理論だけでなく、具体的な解決プロセスを知ることで、ご自身の状況を乗り越えるヒントが見つかるかもしれません。
このケースは、長男Aさんと長女Bさんが相続人でした。遺産はご実家の土地建物と預貯金が数百万円。Aさんは「このまま実家に住み続けたい」と希望し、その代わりにBさんへ代償金を支払うことで話を進めようとしました。
しかし、その前提となる不動産の評価額について、二人の意見は真っ向から対立してしまったのです。
- Aさんの主張:「固定資産評価額は1,200万円程度。市場で売っても同じくらいのはずだ」
- Bさんの主張:「近所の不動産会社に聞いたら2,500万円と言われた。代償金として半分の1,250万円はもらわないと納得できない」
Aさんは「そんな高値で売れるはずがない」と反論し、Bさんも「査定は専門家の客観的な意見だ」と一歩も譲りません。お二人の主張の隔たりは1,000万円以上。これでは話が進むはずもなく、遺産分割協議は何ヶ月も停滞してしまいました。
ご相談を受け、私はまず、感情的になっているお二人を落ち着かせ、客観的な事実に基づいて着地点を探るための具体的なステップをご提案しました。
それは、先ほどご紹介した「解決策」のステップそのものです。まず、当事者間で信頼できる不動産会社を3社選び、共同で査定を依頼しました。その結果は、「2,100万円」「2,300万円」「2,400万円」という、Bさんの主張に近い数字でした。
この3社の査定書という客観的な資料を前にお話し合いの場を設けたところ、Aさんも当初の主張に固執することなく、冷静に現実を受け入れてくださいました。最終的には、3社の査定額の真ん中あたりである「2,300万円」で評価することに双方が納得され、無事に遺産分割協議書を作成することができたのです。
この事例の教訓は、感情的な言い争いをやめ、誰もが認めざるを得ない「客観的な材料」を揃えることが、解決への何よりの近道だということです。
争いを未然に防ぐために、今からできること
ここまで、すでに対立が起きてしまった場合の解決策についてお話ししてきました。しかし、最も望ましいのは、そもそもこのような争いが起きないようにしておくことです。
将来の相続で、大切な家族が不動産の評価額を巡って争うことを防ぐために、最も有効な対策は「遺言書を作成しておくこと」です。
遺言書で、「誰にどの不動産を相続させるか」を明確に指定しておくだけでも、争いの火種を大きく減らすことができます。さらに、「不動産の評価は、相続開始時点における固定資産税評価額を基準とする」といったように、評価の基準まで具体的に定めておくと、相続人たちが評価方法で揉める余地がなくなります。
遺言書は、残された家族への最後のメッセージであり、家族を争いから守るための強力なツールです。もしご自身の相続で家族に同じ思いをさせたくないとお考えでしたら、ぜひ遺言書を作成しなくてはいけない理由の記事もご覧ください。
不動産評価額の対立は、相続の専門家と一緒に解決しませんか?
相続不動産の評価額をめぐる対立は、当事者だけで解決しようとすると、どうしても感情的になりやすく、問題をこじらせてしまいがちです。
そんなときこそ、私たち司法書士のような相続の専門家にご相談ください。第三者である専門家が間に入ることで、冷静な話し合いの場を設け、円満な解決へのお手伝いができます。
司法書士が間に入る3つのメリット
- 公平な立場での資料収集と情報整理
対立する相続人のどちらか一方の味方をするのではなく、中立・公平な立場で、不動産査定書の手配など客観的な資料収集をサポートします。複雑な情報を整理し、話し合いの土台を整えます。 - 冷静な話し合いの進行役
専門家が同席することで、感情的な発言が抑えられ、建設的な話し合いがしやすくなります。法的な観点から、それぞれの主張の妥当性を判断し、お互いが納得できる落としどころをご提案します。 - 合意内容を法的に有効な「遺産分割協議書」に
話し合いでまとまった内容は、法的に有効な「遺産分割協議書」として正確に文書化する必要があります。登記の専門家である司法書士が作成することで、後の不動産名義変更(相続登記)までスムーズに進めることができます。
いがり円満相続相談室が選ばれる理由
川崎市・横浜市を中心に活動する当事務所は、「円満な相続」の実現を第一に、多数の相続手続きをお手伝いしています。
当事務所の最大の特徴は、司法書士である代表の猪狩佳亮(いがり よしあき)が、最初のご相談から手続き完了まで一貫して直接対応させていただくことです。流れ作業のような対応は一切せず、お客様一人ひとりのお気持ちに丁寧に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えます。
また、お仕事でお忙しい方でもご相談いただきやすいよう、平日夜間や土日祝日のご相談にも柔軟に対応(要予約)しております。
不動産の評価額で兄弟と対立し、どうすればよいか分からずお悩みでしたら、どうか一人で抱え込まないでください。あなたの不安な心に「安心」を届け、円満な相続が実現できるよう、私たちが全力でサポートいたします。
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司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
成年後見人の報酬は一生払う?費用を抑えるリレー型後見とは
「成年後見人の報酬は一生続く?」その不安、解消できます
「親の認知症が進んできたので、実家を売却して施設に入る費用にあてたい」
「でも、そのためには成年後見制度を利用しないといけないらしい…」
そうお考えになったとき、多くの方がインターネットで情報を検索されることでしょう。そして、こんな言葉を目にして不安になっていませんか?
- 「専門家が後見人になると、報酬が高額になる」
- 「一度始まったら、本人が亡くなるまで報酬を“一生”払い続けなければならない」
- 「年間30万円以上かかることもあり、10年、20年と続けば数百万円にもなる…」
大切なご家族のためとはいえ、これほど大きな経済的負担が長期間続くかもしれないと考えると、制度の利用をためらってしまうのも無理はありません。しかし、どうかご安心ください。ネットの断片的な情報だけでは見えてこない、専門家への報酬負担を賢く軽減できる具体的な方法が存在します。
この記事では、相続と成年後見を専門とする司法書士が、成年後見人の報酬に関する皆様の不安を一つひとつ丁寧に解消していきます。そして、特に不動産の売却が関わるケースで有効な「リレー型後見」という解決策について、実際の事例を交えながら分かりやすく解説します。
最後までお読みいただければ、「成年後見制度=高額な費用が一生続く」というイメージが覆り、安心して次の一歩を踏み出すための知識が身についているはずです。成年後見制度の全体像については、成年後見をご検討中の方へで体系的に解説しています。
まず知っておきたい成年後見人報酬の決まり方
漠然とした不安を解消するためには、まず成年後見人の報酬が「どのように決まるのか」という基本的な仕組みを正しく理解することが大切です。報酬は後見人が勝手に決めるものではなく、家庭裁判所が、後見人等からの報酬付与の申立てを受け、後見事務の内容や管理する財産の額、ご本人の資力などを考慮して決定します。

報酬の相場は月額2万~6万円が目安【基本報酬】
成年後見人の報酬の中心となるのが、日常的な財産管理や身上保護(生活や健康への配慮)に対して支払われる「基本報酬」です。裁判所が公表している目安によると、預貯金・有価証券等の流動資産の合計額に応じて、月額2万円から6万円程度が目安とされています。
| 流動資産額 | 基本報酬額のめやす |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 2万円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 3万円~4万円 |
| 5,000万円を超える場合 | 5万円~6万円 |
例えば、預貯金・有価証券等の流動資産が1,000万円以下の場合、基本報酬は月額2万円が目安とされています。ただし、不動産売却など特別な事務を行った場合には、別途付加報酬が認められることがあります。これが、制度を利用する上で継続的に発生するコストの基準となります。
不動産売却など特別な業務で上乗せされる【付加報酬】
「基本報酬」に加えて、通常の後見業務の範囲を超えるような特別な行為を行った場合には、その労力に応じて「付加報酬」が上乗せされます。これが、報酬総額が大きく変動する要因です。
付加報酬が発生する典型的なケースが、不動産の売却です。
ご本人のご自宅などを売却するには、家庭裁判所から「居住用不動産処分許可」を得る必要があります。この許可申立てや、不動産業者とのやり取り、売買契約の締結、登記手続きなど、一連の複雑な手続きを後見人が行います。こうした特別な業務に対して、基本報酬とは別に付加報酬が認められるのです。相続における不動産売却の流れも複雑ですが、後見人が関わる売却も同様に専門的な知識が求められます。
その他にも、遺産分割協議や保険金の請求、訴訟対応などを行った場合にも付加報酬が発生する可能性があります。
報酬はいつまで、誰が払う?
「報酬は一生払い続けるの?」というご質問に対しては、「原則として、後見が終了するまで続く」というのが答えになります。そして、後見が終了するのは、多くの場合ご本人が亡くなられたときです。
報酬は、家庭裁判所の決定に基づき、ご本人の財産から支払われます。後見人は年に一度、家庭裁判所に財産管理の状況を報告し、その際に報酬付与の申立てを行います。そして、裁判所が決定した報酬額を、ご本人の預貯金から受け取ることになります。ご家族がご自身の生活費から直接負担するわけではない、という点はぜひ覚えておいてください。
ただし、近年では目的が達成された場合に後見を終了できる「終われる後見」への法改正も進んでおり、制度のあり方も少しずつ変化しています。
より詳しい報酬の目安については、裁判所が公開している資料も参考になります。
参照:成年後見人等の報酬額のめやす(大阪家庭裁判所)
【解決策】専門家への報酬を一時的にする「リレー型後見」とは
「報酬が本人の財産から支払われるのは分かった。でも、大切な親の財産が報酬でどんどん減っていくのはやっぱり避けたい…」
そう思われるのは当然のことです。特に、不動産売却のような大きな目的がある場合、その目的が達成された後も専門家への報酬がずっと続くことに疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。
そこで私たちがご提案しているのが、「リレー型後見」という手法です。これは、専門家への報酬支払いを必要な期間だけに限定し、その後の負担を大幅に軽減できる、非常に有効な選択肢です。成年後見人を誰に頼むか迷っている方にとって、知っておくべき重要な考え方と言えます。

専門業務は司法書士、日常管理は家族へ。役割分担の流れ
リレー型後見とは、その名の通り、後見人の役割をリレーのように引き継ぐ方法です。具体的には、まず不動産の売却といった専門的な知識や手続きが必要な期間だけ、司法書士などの専門家が後見人に就任します。そして、売却手続きや代金の管理体制の構築といった最も重要なミッションが完了した時点で、後見人の役割をご家族(親族)にバトンタッチするのです。
一般的な流れは以下のようになります。
- 後見開始の申立て:司法書士などの専門家を後見人候補者として、家庭裁判所に申立てを行います。
- 専門家による後見業務:選任された専門家が、家庭裁判所の許可を得て不動産を売却します。
- 財産管理の仕組みづくり:売却で得た大きなお金を安全に管理するため、信託銀行などを活用する「後見制度支援信託」といった仕組みを利用します。これは日常的に使うお金以外は信託銀行等が管理するため、親族後見人の方の負担が減り、財産の安全性も高まります。
- 親族後見人へ交代:専門家が行うべき業務が完了した段階で、専門家は家庭裁判所の許可を得て後見人を辞任し、あらかじめ候補者としていたご家族(子など)に後見人を交代します。
このように、専門家が関わる期間を限定することで、報酬の支払いを短期化できる可能性があるのです。後見開始の申立てには様々な書類が必要ですが、より具体的な手順については、後見開始申立ての必要書類をご覧ください。また、後見制度支援信託・預貯金の仕組みは、国も利用を促進しています。
【実例で解説】リレー型後見で報酬負担を数百万円単位で軽減
「本当にそんなにうまくいくの?」と感じるかもしれません。そこで、当事務所で実際にあったご相談を基に、リレー型後見がいかに効果的かをご紹介します(※プライバシー保護のため、内容は一部変更しています)。
ある日、娘さんから切羽詰まったご様子でお電話がありました。
「母の認知症が進み、実家を売却して施設に入居させたいんです。でもネットを見ると、司法書士さんが後見人になったら、母が亡くなるまでずっと報酬を払い続けなければいけないと…。年間36万円だとしたら、10年で360万円、20年なら720万円…?そんな大金を払い続けられるか不安で…」
ご相談内容からは、お母様の生活を支えたいお気持ちと、将来の経済的負担への不安がうかがえました。
このお話をお聞きし、私はこうご提案しました。
「お気持ちはよく分かります。ですが、ご安心ください。ずっと専門家が後見人を続ける必要はありません。今回のように『不動産を売却する』という明確な目的がある場合、その専門的な手続きが終われば、後見人をお母様のことを一番よく分かっている娘さんにバトンタッチする『リレー型後見』という方法があります。専門家への報酬は、不動産売却が終わるまでの一時的なものになりますから、総額を大きく抑えられますよ」
このご提案により、娘さんには費用負担を抑えられる可能性について具体的にご理解いただけました。
ご依頼後、私たちは迅速に手続きを進めました。
- 当事務所の司法書士を後見人候補者として申立て、無事に選任。
- 複数の不動産業者から見積もりを取り、最高額を提示した業者と契約し、実家を売却。
- 売却代金を安全に管理するため「後見制度支援信託」を設定。
- 生活に必要な資金(約200万円)を普通口座に残し、司法書士は後見人を辞任。娘さんへ後見人を引き継ぐ申立てを行い、無事にバトンタッチが完了しました。
最終的に、家庭裁判所が決定した当事務所への報酬(付加報酬を含む)は約80万円でした。この金額だけを見ると高く感じられるかもしれませんが、これは不動産売却という大きな業務に対する一度きりの報酬です。もし専門家が後見人を続けた場合の360万円や720万円といった将来の負担と比較すれば、負担額には大きな差があります。
最も大変な手続きを専門家に任せ、その後の財産管理はご家族の手に戻ったことで、娘さんには大変ご安心いただくことができました。このように、不要な契約の整理など、特定の目的がある場合にも応用できる考え方です。

リレー型後見を検討する際の注意点とQ&A
リレー型後見は非常に有効な方法ですが、検討する際にはいくつか知っておくべき注意点があります。ここでは、よくあるご質問にお答えします。また、認知症対策としては家族信託という選択肢もあり、状況によって最適な方法は異なります。
Q. 親族が後見人になるための条件はありますか?
A. 特別な資格は必要ありませんが、誰でもなれるわけではありません。最終的には家庭裁判所が、その人が後見人としてふさわしいかを判断します。
具体的には、以下のような点が考慮されます。
- 過去に本人と金銭的なトラブルがないか
- 他の親族から同意を得られているか
- ご自身の生活状況が安定しており、財産管理を適切に行えるか
- ご本人の財産を不正に利用するおそれがないか
後見人に選ばれると、家庭裁判所への定期的な報告義務など、重い責任を負うことになります。その点を十分に理解した上で引き受けることが重要です。より詳しい条件や手続きについては、親族が成年後見人になるための条件や手続きをご覧ください。
Q. 専門家から親族への交代は必ず認められますか?
A. 必ず認められるとは限りません。後見人の交代(専門家の辞任と親族の選任)は、家庭裁判所の許可が必要です。
リレー型後見を実現するためには、最初の申立ての段階から「不動産売却という目的が完了した後は、親族に後見人を引き継ぎたい」という計画を家庭裁判所にしっかりと伝えることが重要です。専門的な業務が完了し、後見制度支援信託などで財産の安全性が確保されているといった合理的な理由を示すことで、交代が認められやすくなります。この計画的な申立てこそ、専門家に相談する大きなメリットの一つです。
Q. そもそも報酬が払えない場合はどうすればいいですか?
A. ご本人の財産が少なく、専門家への報酬を支払うことが難しい場合には、市区町村が費用を助成してくれる「成年後見制度利用支援事業」という制度があります。
助成の対象となる条件は自治体によって異なりますが、一般的に生活保護を受給している方や、世帯全員の住民税が非課税である方などが対象となります。経済的な理由だけで制度の利用を諦める必要はありませんので、まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談してみましょう。
国もこの制度の利用を推進しています。
参照:成年後見制度利用促進(厚生労働省)
まとめ:後見人の報酬は工夫次第。最適な方法を専門家と一緒に考えましょう
今回は、多くの方が不安に感じる成年後見人の報酬について、その仕組みと費用を抑えるための具体的な方法「リレー型後見」を解説しました。
この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 成年後見人の報酬は家庭裁判所が決定し、基本報酬は月額2~6万円が目安。
- 報酬は原則として本人が亡くなるまで、本人の財産から支払われる。
- 不動産売却など特別な業務には「付加報酬」が上乗せされる。
- 不動産売却が目的の場合、「リレー型後見」で専門家への報酬支払いを一時的なものにできる。
- 経済的に困難な場合は、公的な助成制度を利用できる可能性がある。
インターネット上の情報には、正確なものと不正確なものが混在しています。「報酬が一生続く」という一面的な情報に惑わされず、ご自身の状況に合わせた最適なプランを立てることが何より重要です。特に、不動産の売却が関わるようなケースでは、必要な業務が終わればご家族にバトンタッチするという考え方は、ご本人のためにも、ご家族の経済的・精神的な負担を軽くするためにも、非常に合理的だと私たちは考えています。
当事務所では、相続・後見案件を取り扱う司法書士が、ご家族ごとのお悩みや状況に合わせて対応方法をご提案します。もし、あなたが成年後見制度の利用や費用について少しでも不安や疑問をお持ちでしたら、一人で悩まずに、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。あなたとご家族が安心して未来へ進むためのお手伝いをさせていただきます。

司法書士・行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所の司法書士 猪狩 佳亮(いがり よしあき)です。神奈川県川崎市で生まれ育ち、現在は遺言や相続のご相談を中心に、地域の皆さまの安心につながるお手伝いをしています。8年の会社員経験を経て司法書士となり、これまで年間100件を超える相続案件に対応。実務書の執筆や研修の講師としても活動しています。どんなご相談も丁寧に伺いますので、気軽にお声がけください。
